神童

神童

音大に何度も挑んでは落ちている青年・菊名和音と、天才的なピアニストである少女・成瀬うた。偶然、知り合ったふたりは、お互いに影響を受け合い、音楽家として、人として成長していく。音を通しての人とのコミュニケーションや、自然など、人を取り巻く世界との触れ合いこだわった作品。1999年文化庁メディア芸術祭優秀賞および手塚治虫文化賞優秀賞受賞。

正式名称
神童
ふりがな
しんどう
作者
ジャンル
ピアノ
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概要・あらすじ

名門音楽大学の栄光音楽大学を目指して浪人をしている菊名和音(ワオ)。彼は人よりも優れた耳をもってはいたが、自分ではそれに気づいておらず、大学に合格できるかどうか悩んでいた。そんな彼は、ある日、天才的なピアニストの少女、成瀬うたと出会う。うたは、ワオが普段使っている質の低いピアノから、彼が聞いたことも無いような音を出してみせるのだった。

その才能に衝撃を受けたワオは、うたに興味をもち、彼女からピアノの指導を受けたいと思うようになる。また、うたもワオの耳のよさに興味をもち、自分の感性に刺激を与えてくれるワオに惹かれはじめていく。

登場人物・キャラクター

菊名 和音 (きくな かずお)

『神童』の主人公。プロのピアニストになるため、栄光音楽大学を目指して浪人をしているが、周囲からは合格は無理だと言われている。耳が非常によく、その能力は、天才的なピアノの才能をもつ少女成瀬うたが感心するほど。だが、このことについて本人はあまり自覚していなかった。この耳の良さによって、たびたび、うたにアドバイスを与えたり、窮地を救ったりしている。 うたのピアノの才能に惹かれてはいるが、彼女の母親のように、ピアノのことばかりを押し付けようとはせず、普通の小学生に必要な勉強をさせようとするなど、うたが健全に成長することを望んでいる。うたの音を目標にしており、ピアノに関しては、彼女のことを先生としてアドバイスを受けるなどしている。

成瀬 うた (なるせ うた)

小学五年生でありながら世界レベルの腕を持つ天才少女ピアニスト。6歳のときにリサイタルを開いている。夭逝した世界的天才指揮者、成瀬光一郎の一人娘であり、母親は彼女の才能を開花させ、世界的なピアニストにしたいと考えているため、ピアノのこと以外は、学校の勉強すら満足にさせてもらえない。 うた自身は、ピアノよりも野球のほうが楽しいと感じており、ピアノのトレーニングを野球のために利用するようなところがある。野球の練習をしていて偶然出会ったワオ(菊名和音)の耳のよさと音に対する感性に惹かれ、彼と交流をもつようになっていく。音楽のこと以外でも自分を気にかけてくれるワオに、次第に恋心を抱いていくようになる。 母親からピアノ中心の生活をさせられていたためか、年齢の割には子供っぽいところがあり、男の子のような言動をみせることが多い。一方で、女の子らしくヤキモチを妬く部分もあって、ワオが他の女性に好意を見せると、不機嫌になったり、その女性に対して間接的な嫌味を言ったりする。

成瀬 きみ (なるせ きみ)

成瀬うたの母親。典型的な親ばかでうたが音楽界に羽ばたくことを夢見て、その実現のために娘にピアノを弾かせることだけを考えている。夫の成瀬光一郎が死んでからは、女手ひとつでうたを育ててた。見栄っ張りであり、周囲の人に対して、自分たちが裕福であるかのような振る舞いをしているが、実は借金に苦しんでおり施設の清掃とクラブのホステスをしている。

鳳 月之丞 (おおとり つきのすけ)

オカマ口調の男性で、「鳳月之丞ピアノジム」の講師。ピアノのレッスンの一環として、ピアニストに必要な筋肉を鍛える。特別な器具で成瀬うたの指を伸ばすなどしていたが、うたはこのトレーニングを野球の変化球を投げるためにちょうどいいと考えていた。

ワオの父親 (わおのちちおや)

ワオ(菊名和音)の父親。「菊名青果店」を経営しており、果物を叩いた際の音でどれがより美味しいかを当てる才能がある。息子のことを陰ながら応援しており、ワオの演奏で近所からクレームが来た際は、息子がいつになく真剣であることを見て近所の人に売り物のメロンを渡して許しを請うなどしている。

相原 こずえ (あいはら こずえ)

栄光音楽大学を目指している。ワオ(菊名和音)がピアノをはじめたきっかけとなった人物であり、今も恋心を抱かれている。ワオのことを友人として好ましくは思っているが、異性としては意識の対象となっていない。後に、八王子充と付き合うようになる。成瀬うたの影響を受け成長したワオの音にショックを受け落ち込んだことがある。

八王子 充 (はちおうじ みつる)

栄光音楽大学を目指している。自信家でやや高慢な性格をしているが、ピアノの腕は確か。相原こずえと付き合っている。

賀茂川 香音 (かもがわ かのん)

栄光音楽大学の歌科の生徒。レッスンの際に伴奏ピアノのコーラスを担当したことがきっかけでワオ(菊名和音)と恋仲になった。彼女を初め、声科の人たちは、何かあると歌って感情を表現するくせがある。ワオが伴奏ピアニストを志すきっかけを作った女性。

御木柴 薫 (みこしば かおる)

栄光音楽大学の教授。アル中。かつて天才ピアニストと呼ばれていたが、腱鞘炎になり酒に溺れ入水自殺をはかったこともあった。成瀬うたとの出会いによって、その父成瀬光一郎との栄光の日々を思い出しもう一度理想の音である「天色の音(あまいろのおと)」を求め始める。

成瀬 光一郎 (なるせ こういちろう)

成瀬うたの父。世界的な指揮者であったが、うたが幼いころに不慮の事故により他界している。御木柴薫とはかつて共演していた。乗り物に弱く酔いやすい。

ウラディミール=ロブコウィッツ

伝説のピアニストと呼ばれる巨匠。飛行機嫌いで御木柴薫の説得の結果やっと来日し公演することとなった。キャンセル魔として有名で日本での公演も直前でキャンセルをし、代演に成瀬うたを指名した。老境に達しているが、非常に子供っぽい性格をしており、気に入らないことがあると、子供のように駄々をこねる。 うたとの最初の出会いでは、音を使ったかくれんぼを楽しんでいる。ショートケーキが好物。

ハセガワ

ウラディミール=ロブコウィッツのピアノの調律師として共に来日。成瀬うたがロブコウィッツの代演をした以降はうたのピアノの調律も度々行っている。演奏者に対する理解力も高く、本人が希望する音よりも本人がより良い音を出すための調律を行うことがある。

中杉 淳一 (なかすぎ じゅんいち)

世界的に有名な指揮者。若い女性に目が無く、肉体関係を結んだ女性を協奏曲のソリストに指名していた。

その他キーワード

スタちゃん

正式な名前はスタインウェイであり、アメリカ合衆国のニューヨークで設立されたピアノ製造会社および、そこで作られたピアノを指して呼ばれる。現在は、ドイツのハンブルクにも欧州支社がある。成瀬光一郎もスタインウェイ所持しており、娘の成瀬うたはこれをスタちゃんと呼んで愛用していた。 成瀬家の借金のかたとして、債権者に回収されることとなった際には、うたが別れのための曲を弾いており、歌の気持ちを乗せたその音に、近所の人たちが我知らず、涙をこぼしていた。うたの家にあったのは、ハンブルクスタインウェイと呼ばれており、ドイツで生産されたものと思われる。なお、債権者はこのピアノを5000万円の価値はあると評価していた。 同じスタインウェイでも、1つ1つ音が違っており、うたはその違いを聞き分けることができた。

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