エミリーと謎の少年、シュラの不思議な共同生活
エミリーは夏休みを利用して、高祖父シャルルがかつて所有していた土地「はざま丘」の別荘で過ごすことにした。一人暮らしに胸を躍らせていた彼女だったが、到着して間もなく、家の中で見知らぬ少年が眠っているのを見つける。少年は「シュラ」と名乗り、偶然出会った日本人バックパッカーのタカユキから譲り受けたという家の権利書と鍵を見せながら、3日前から滞在していることを告げ、「1日だけここに泊めてほしい」と申し出る。エミリーは1日を共に過ごすうちにシュラの優しさに触れ、やがて「1日だけでなく、夏休みのあいだずっといっしょに過ごしたい」と願うようになる。こうして二人は、お互いの素性を深く知らないまま、不思議な共同生活を始めるのだった。
妖精たちを家族として迎え入れる
物語の舞台である「はざま丘」は、エミリーの高祖父、シャルルがかつて所有していた土地である。中心には、シャルルが過ごした別荘が建っており、その近くにはシモン家と親交の深いジョゼフ・エヴァンが暮らす村がある。周囲には、ハリネズミの姿をした妖精、エリソンや、3匹組の小型妖精、トロワをはじめ、多くの妖精たちがひそかに生活している。実はシャルルは別荘の鍵と権利書を3組残しており、現在はエミリー、シュラ、そしてエリソンがそれぞれ所有している。引っ越してきた当初、エミリーとシュラは妖精の姿を見ることができなかったが、エリソンに別荘での生活を認められたことで、妖精が見えるようになる。そして二人は、エリソンとトロワを新たな家族として迎え入れる。
エミリーとヴァンサンの再会
「はざま丘」での生活に慣れてきたある夜、エミリーは幼い頃に謎の人物と出会った夢を見た。翌日、エミリーたちは叫び声を発することで悪夢を見せる妖精に取り憑(つ)かれてしまうが、ヴァンサンに助けられて窮地を脱する。自らを「はざま丘の化身」と名乗るヴァンサンを見たエミリーは、彼こそが幼少期の夢に現れた謎の人物であることを思い出す。時計や楽器の話題で意気投合した二人は、やがて話題をエミリーの高祖父であるシャルルに移す。その言葉の端々から、ヴァンサンがシャルルに特別な感情を抱いていたことに気づいたエミリーは、ヴァンサンがいつでもシャルルを思い出せるよう、彼らが生前に共に楽しんでいたグラスを使った楽器を再現するのだった。
登場人物・キャラクター
エミリー・シモン
「はざま丘」の別荘でひと夏を過ごすことになった少女。年齢は15歳。生まれつき箱入り娘で、幼い頃から母親のニコールにピアノを教わりながら育った。しかし、希望していた音楽学校に不合格となって以来、次第にピアノに対して嫌悪感を抱くようになり、やがてピアノを弾くだけで吐き気を催すほど強い拒否反応を示すようになってしまった。傷心の中、愛読していた小説『エミリーの冒険』の主人公に倣い、夏休みを利用して「はざま丘」で暮らす決意を固める。シュラやエリソン、トロワらと共に生活を始め、妖精の気配を弦楽器の「ピチカート」のような音として感じ取る独特の感性を持つため、エリソンたちともすぐに打ち解け、相性は抜群だった。一方で、ピアノ以外の経験が乏しく生活能力はほとんどなく、身の回りの多くをシュラたちに助けられている。実は幼少期に一度「はざま丘」を訪れ、ヴァンサンと出会っているが、現在はそのことをまったく覚えていない。
シュラ
「旅人」を自称する少年。年齢は17歳で、本名は「レイ・マーロウ」。明るく素直で、誰とでもすぐに打ち解ける社交的な性格の持ち主。かつては養父母のもとで幸せに暮らしていたが、二人に実子が生まれたことで自分が邪魔になるのではないかと恐れ、自ら家を出た過去がある。その後は「プーサー」や「ハンゾー・モンセン」など複数の偽名を使いながら各地を巡り、旅先で出会った日本人青年のタカユキから別荘の鍵と権利書を譲り受け、「シュラ」と名乗って「はざま丘」の別荘で暮らすようになる。当初は別荘の先住者である妖精のエリソンやトロワに警戒され、密かに嫌がらせを受けていたが、誠実な生活態度や後に訪れたエミリーに対する紳士的な振る舞いによって信頼を得る。以降はエミリーや彼らと共に暮らし、「はざま丘」付近の村を訪れる際には「パトリス」と名乗っている。
書誌情報
ピチカートの眠る森 5巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉
第1巻
(2023-03-20発行、978-4592224358)
第2巻
(2023-10-20発行、978-4592224686)
第3巻
(2024-02-20発行、978-4592224754)
第4巻
(2024-09-20発行、978-4592224976)
第5巻
(2025-05-20発行、978-4592225294)







