概要・あらすじ
平和な時代が続き、人間が世界中に溢れたことによる人口問題の解決策として、リーマン博士は人間を魚に改造して海へ住まわせることを提唱した。笑いものにされた博士は自分の息子を魚に改造し、水中人間第一号の成功例とするが、彼は水の中でしか生きられなくなってしまう。やむを得ず海へ放たれた息子は、海の中でカメに助けられ、自分の出自を知らぬまま「ピピ」という名前を付けてくれたカメを母親と慕って成長する。
一方で博士は息子を殺した容疑をかけられ、妻と共に刑務所に入れられていた。そんなある日、海底に現れた潜水艇ノーチラス号に母親ガメを潰されてしまい、ピピは兄弟ガメのガボと共に、母親の仇を取るため冒険の旅に出る。博士の研究を引き継いだポンカン先生や、自分の意志で動ける不思議な車のエンジリン、仇のネモ艇長の娘であるヒヤシンスとの出会いを通して、人間でも魚でもある自分に悩みながら成長していく。
登場人物・キャラクター
ピピ
父親のリーマン博士によって、産まれてすぐに魚のようなエラとヒレを持つ水中人間に改造されてしまった少年。物心つく前に海に放されたせいで両親のことをまったく覚えておらず、助けてくれたカメを母親と思って育つ。人魚のようなピピの姿を珍しがる人間に狙われて捕らえられたり、母親と慕うカメをネモ艇長に潰された経験から、人間を敵視している。 自分の本当の親が人間だと知って、思い悩むこととなる。
リーマン博士 (りーまんはかせ)
ピピの父親。爆発的な人口過密による住宅問題を解決する策として、人間を魚に改造して海に住ませることを提唱した。世間に相手にされず笑いものにされたことから、息子のピピを水中人間に改造する実験に踏み切る。水の中でしか暮らせなくなったピピを海に放ったのを秘密にしたため、子供を実験材料にしたうえに殺したという容疑をかけられて投獄された。
ガボ
海に放たれたピピを助けたカメの子供で、兄弟としてピピと一緒に育った。おっちょこちょいでドジなところもあるが、面倒見が良く、ピピが自分とは違う種族だと理解しつつも、本当の弟のように可愛がっている。母親ガメを潰された仇を取るため、ピピと共にネモ艇長を探す旅に出る。
ポンカン先生 (ぽんかんせんせい)
リーマン博士の友人。ますます増えていく人口の問題を解決するために、博士の研究を引き継いで人間を海に住めるようにしたいと考えている。偶然に出会ったピピが博士の息子であることを知り、親子を引き合わせて、博士を釈放させようと奮闘する。
ポリネシヤ
ポンカン先生の家で、お手伝いさん代わりに働いているメスのダチョウ。先生に娘のように可愛がられている。気の小さい性格だが、非常に頭が良く勇敢で、先生の相棒として活躍する。ピピを探している時に、誤ってネモ艇長の持っていた緋色の真珠を飲み込んでしまう。
ネモ艇長 (ねもていちょう)
実業家で、潜水艇ノーチラス号の艇長でもある。潜水艇ノーチラス号がエンジントラブルを起こして海底に沈んだ際、ピピとガボの母親ガメを潰してしまった。欲深い性格で、ピピを捕まえて一儲けしようと企んだり、ポリネシヤが飲み込んだ緋色の真珠の代わりの真珠を取って来るようにピピに命令し、逆らえばポンカン先生もポリネシヤもガボも始末すると脅した。
ヒヤシンス
ネモ艇長の娘。子供の頃に海で遭難して売り飛ばされ、無理やりジュゴンと結婚させられそうになったところをピピに助けられたことがある。それ以来、ピピに会いたくてずっと探していた。リーマン博士を釈放させようとするポンカン先生に協力する。
エンジリン
真珠貝の中に閉じ込められていたところ、偶然にピピに助けられた車。ただの自動車ではなく、意志を持ち、自分で動くこともできる。人間に作られた機械たちが住んでいる島の王子でもある。流行病により島の人間たちはみんな死んでしまい、人間の知恵を求めてピピに島の大統領になって欲しいと頼んだ。母親ガメの仇であるネモ艇長を追うピピに同行する。
船長 (せんちょう)
遠洋漁船アロハ号の船長。人口過密のため土地を追われ、住む場所を求めてエンジリンの島にたどり着いた。人魚姿のピピを発見し、捕まえて見世物にしようとしたが、逆に網で捕らえられる。島の場所を秘密にすると約束して解放されたが、約束を破って引き返す。
絵描き (えかき)
昔リーマン博士が家族と住んでいた家に、妹と一緒に滞在している絵描き。熱意はあるが、絵の腕はそれほどでもない。両親のことを思い出して家を訪れたピピと出会う。ピピが博士の子供であることを察し、真相を明らかにしようと調査する。
ドッグブル判事 (どっぐぶるはんじ)
判事を務める男性で警察にも顔が利くが、かなりの恐妻家で妻の意見には逆らえない。息子がおり、彼が橋から川に落ちた際にピピに助けられる。そこに居合わせたドックブル判事の妻が、ピピの両親が無実の罪で投獄されていることを知り、恩返しのために釈放させるよう、警視総監に依頼して手を回す。