フレンドリーな取り立て屋さん

フレンドリーな取り立て屋さん

きたみまゆの小説『フレンドリーな取り立て屋さん』のコミカライズ作品。見た目は破天荒なチンピラの取り立て屋・佐田が、借金の取り立てついでに強引にお節介を焼き、親身になって債務者たちの人生を立て直す。さまざまな事情で借金を背負った人たちが、佐田と出会い、自分の人生にとって大切なものを見つけていく姿を描いたハートフルコメディ。

正式名称
フレンドリーな取り立て屋さん
ふりがな
ふれんどりーなとりたてやさん
原作者
きたみ まゆ
漫画
ジャンル
ヒューマンドラマ
 
ヤミ金
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

ある日、ブラック企業「最黒商事」で働く日向奈緒のもとにチンピラ風の屈強な男・佐田が訪ねてきた。佐田は日向に名刺を差し出し、自分が借金の取り立てに来たことを明かす。借金を作った覚えはまったくない日向だったが、佐田がその手に持つ借用書には日向の名前が確かに記されており、その額1000万円。佐田の話によれば、菊池という男が日向奈緒の名義を使って金を借りたというのだ。日向は半年前に菊池と知り合い、交際を始めたが、その後なし崩し的に日向の自宅に入り浸るようになった菊池は、ある日突然姿を消し、連絡がつかなくなっていた。さらに日向は、菊池が同様の手口でさまざまな女性の名義を利用し、借金を繰り返していることを知り、絶望する。しかし日向は、自分のこれまでの運の悪さを理由に、どうせこの先必死に借金を返しながら生きていてもロクなことがないだろうと、文句一つ言わず、コンクリート詰めにして海に沈めるという佐田の言葉を受け入れようとする。そんな二人のやりとりを知ってか知らずか、最黒商事の社長・立花健仁は口をはさみ、日向に仕事に戻るようにうながす。だが、今日限りで日向は会社を辞めさせるという佐田の一方的な言葉に、立花は逆上。立花は日向を無責任となじり、人手不足による会社への損失を訴えて、損害賠償を求めると脅し、なんとしても辞めさせないという態度を見せつける。しかしそんな立花に対し、佐田は社員が働きやすい環境をつくるのも社長の仕事だと逆に怒鳴り、労働基準監督署に訴えると言い放ち、立花を黙らせた。これによって日向は、勤務先をあっさりと退職することになり、突然無職になってしまう。佐田はそんな日向に、沈められるならどこの海がいいかと聞き、日向は勢いまかせにどうせならハワイがいいと答える。すると、思いがけず佐田から了承を得ることになり、当面の生活費を現金で手渡される。そのうえ、顔色が悪く不健康そうな日向に対し、早寝早起き、人間らしい生活をすることを求め、明日から借金の取り立て屋「フレンドリーパートナーズ」で働くようにと言い渡す。自分の意思とは無関係にどんどん事が進んでいくことに困惑しながらも、日向は翌日には時間どおりに取り立て屋の事務所に出社。雑用兼補佐として、佐田と行動を共にすることになり、彼のモットーである親身な取り立てを目の当たりにすることになる。(第1話「社畜OL、借金を背負う」)

関連作品

小説

本作『フレンドリーな取り立て屋さん』は、きたみまゆの小説『フレンドリーな取り立て屋さん』を原作としている。原作小説版はきたみまゆがpixivに投稿したもので、2020年11月にはpixivマンガ原作コンテスト「コミカライズ・パーティ」でpixiv賞を受賞している。

登場人物・キャラクター

佐田

借金の取り立て屋「フレンドリーパートナーズ」の経営者の男性。親身な取り立てをモットーに掲げ、債務者に寄り添った借金取り立てを行っている。金髪にサングラスをかけ、アロハシャツにハーフパンツ姿というチンピラ然とした見た目をしている。破天荒な性格ながら債務者に対して親身になり、時に強引にお節介を焼こうとする。元彼の勝手な借金の尻拭いをすることになった日向奈緒に、勤めていたブラック企業「最黒商事」を辞めさせ、自分の会社で働くように指示した。コンクリート詰めで海に沈めるとの脅し文句を口にしながらも、生活面の心配をしつつ、日向の面倒を見ることにした。通常、貸金業を営む黒木から依頼を受ける形で取り立てを行っているが、債務者に責任がない場合や債務者の事情が考慮できる場合は、その債務者に寄り添う形で支援を行い、無理な取り立てはしない。また、生きるために必要な分の現金を手渡し、時には夢を持つことや人生を楽しむことをアドバイスしたり、生活を立て直すために住居や働き口の紹介をしたりすることもある。実は龍仁組の元組長の息子で、組員の黒木のことは信頼している。父親とはもともと確執があり、多くの組員が父親を慕うのは金と権力を持つからだと思い込んでいた。そのため、若い頃は金さえあれば父親を超えられるとカンちがいし、債務者に対しても強引な取り立てを繰り返していた。しかし、そんなやり方の自分には、誰もついて来ることはなく、逆にたくさんの人から恨みを買ってしまう結果となった。その後、気づけば父親は病気であっけなくこの世を去り、ざまあみろと思った自分を尻目に、組員の全員が父親の死を本気で悲しんでいる姿を目にする。その時、ようやく父親がみんなに心から慕われていたことに気づき、結局自分が父親を超えることはかなわないと知った。今では、以前の自分の行動を後悔しており、一度でもいいから父親に認めてほしかったと思っている。さらに、父親のような存在になるためにはどうしたらいいか考え、自分のためではなく、人を助けるための取り立てをしようと決めた。それ以来、債務者に親身に寄り添うという現在のスタンスで取り立てを行うようになった。

日向 奈緒

ブラック企業「最黒商事」に勤務するOL。年齢は24歳。残業代未払いのまま長時間労働を強いられ、過労によって今にも倒れそうな状態にあり、理不尽かつ威圧的な社長・立花健仁と過ごす日常に疲弊している。ある日、勤め先に佐田がやって来たことで、元彼氏・菊池が知らぬ間に日向奈緒名義で貸金業者から金を借りたまま、返済していないことが発覚。突然1000万円もの金額を返済しなければならなくなった。菊池とは半年ほど前に知り合い、なし崩し的に付き合うことになった。その後は自分の部屋に入り浸るようになった菊池に何も言うことができないままに、ある時を境に菊池は姿を消し、連絡が取れない状態となった。自分の名義で作られた借金があることを知り、一度は絶望するが、もともと運が悪い人生を送っていたため、このまま生きていてもロクなことがないと考え、コンクリート詰めで海に沈められると脅してきた佐田の言葉を受け入れようとした。だが、取り立てに来た佐田の親身な対応によって勤め先を退職して、沈められるならハワイがいいと希望を出した結果、パスポートを取るまでのあいだ、取り立て屋「フレンドリーパートナーズ」で雇ってもらえることとなった。佐田からは当面の生活費を手渡され、顔色の悪さから健康を心配されつつ、早寝早起きの生活をしながら、新たな環境で仕事をスタートさせる。会社での仕事内容は、事務所の掃除や書類整理、佐田と共に取り立てに同行するなど。実は、子供の頃から漫画家になるのを夢見ており、寝不足の原因は夜中に漫画を描いていることにも一因があった。

黒木

龍仁組のヤクザの男性。貸金業を営んでおり、債務者への取り立てを「フレンドリーパートナーズ」の佐田に依頼している。佐田の事務所にはよく顔を出しており、佐田とも割と親しい関係。威圧感があって横暴な一面もあるが、ふだんは物静かで基本的に優しい。子供の頃に母親の手伝いでピーマンを切ったところ、中に入っていた青虫もいっしょに切断してしまったことがあった。切断されてうねうね動く青虫を見て以来、特に野菜につく虫に嫌悪感を抱き、取れたての野菜を嫌うようになった。

菊池

日向奈緒の元彼氏。半年ほど前に日向と出会って交際を始めたが、勝手に日向の部屋に入り浸るようになる。思う存分怠惰な生活を満喫したのち、いつしか姿を消した。その後、日向奈緒名義で貸金業者から1000万円もの金を借りたことが発覚。さらに、これまでも同様の手口で、複数の女性の名義を利用して多額の借金を作っていることが判明した。日向の前から姿を消して以来、行方はわかっていない。その後、老人を相手に金銭をだまし取る、いわゆるオレオレ詐欺で指示役となって歩を使い、大家から多額の金をだまし取った。この一件から、歩とのかかわりが明るみに出て、居場所が判明。佐田を介して黒木に捕まることになった。実は龍仁組のシマで好き勝手やり過ぎたせいで、以前から目を付けられており、黒木に追われていた。

立花 健仁

ブラック企業「最黒商事」の社長を務める中年の男性。社員にはつねに威圧的な態度で接し、残業代も払わずに長時間労働を強制している。会社を辞めようとした日向奈緒に対しては、ほかの社員に迷惑がかかることを引き合いに出して無責任となじり、人手不足による会社への損失を訴えて損害賠償を求めると脅し、使える人材を連れてきたら辞めてもいいと無理難題をふっかけた。だが、それを聞いた佐田から、社員が働きやすい環境をつくるのも社長の仕事だと逆に怒鳴られ、労働基準監督署に訴えると言われたことで、強気な態度を改める。

木村 茜

アパートで一人暮らし中の女性。年齢は20代。父親が作った借金によって自分が債務者となり、佐田から取り立てを受けることになった。子供の頃から父親はギャンブル中毒で、母親がパートで稼いだ生活費にも手を出すようなろくでなしだったため、いつかはこうなるだろうと覚悟していた。父親と縁を切るという選択肢もあったが、幼い頃一度だけ父親が買ってきてくれた赤いワンピースが嬉しくて、それができずにいた。ワンピースのサイズが合わずに一度も着られなかったが、今でも捨てられず、手元に置いている。その後、佐田から勧められた寮つきの風俗で働き、借金を返済することを決意するが、これまで恋愛経験がないため、風俗でうまくやっていけるか自信が持てないことを打ち明けた。すると佐田から、心躍るような趣味を見つけ、友達をつくって世界を広げることで人生を楽しむようにとアドバイスされる。さらに、大学に通う弟のための奨学金返済と、実家への仕送りを行っていることを知った佐田から多額の現金を手渡され、夢を持つようにとうながされた。

大家

日向奈緒の住むアパートの管理をしている大家の女性。家庭菜園が趣味で、殺虫剤も除草剤も使わずに立派な野菜をたくさん作っている。畑に通りかかった佐田が草むしりを手伝ってくれたことがあり、その際、野菜ができたら日向に食べさせてやってくれと言われたため、それ以来日向に野菜をおすそ分けするようになった。子供も孫もいないため、野菜をおすそ分けする先も限られていることから、日向に野菜をおすそ分けする頻度はかなり高い。ある日、自分の孫を名乗る青年・歩からの電話を受け、詐欺だと認識しながら、上からの命令で必死に金を要求してくる歩に同情し、借金をしてまで金を渡してしまった。その際の借金が佐田に伝わり、日向と共に取り立てに来たことで事の一部始終を打ち明けるものの、警察に連絡しないでほしいと懇願して歩を必死でかばおうとした。

渋谷

借金取りに追われている会社員の男性。勤務する会社の社長が借金を作ったあと行方がわからなくなり、渋谷自身の住むアパートには連日借金の取り立て屋が訪れるようになった。社長の代わりに金を返せと脅されて殴られたが、逃げることなくただ耐え続け、佐田と日向奈緒が訪れた時には自殺を図ろうとする寸前だった。実は社長からは日々使えないと罵られ、おまえのような無能に居場所はないと蔑まれ続けてきた。そのため、一種の洗脳状態にあり、このような状況に陥ったのは自分が悪い、自分のような無能には逃げても居場所がないと思い込んでいた。佐田からは、社長の居場所を問われたものの、借金の取り立てを受けることはなく、日向から手渡された取れたての野菜を口にすることになり、農家の祖母から送られてくる野菜を思い出した。毎年夏になるとたくさんの野菜が送られてきたが、多忙を理由にお礼も言わない状態が続き、いつしか野菜も送られてこなくなってしまった。無視していたことを後悔し、佐田から祖母のもとを訪ねてこいと、引っ越し費用として多額の現金を渡された。その後は祖母のもとで畑仕事を手伝いながら、生活を立て直すことができた。

橋場

借金取りに追われているぽっちゃり体型の男性。友人に誘われて行った裏カジノで、当初は何度も多額の儲けを出したものの、いつしか400万円の借金を背負うことになった。その友人は自分にとって唯一の友達であり、カモにされているとわかっていても、友達を失ったら自分は一人になってしまうという孤独への恐怖心から、騙されている事実を認めることができなかった。ある時、取り立て屋に追いつめられ、借金のかたに臓器を売ることを強要されそうになったが、騒ぎを聞きつけて事務所から出てきた佐田に助けられた。事情を説明すると、「孤独が嫌なら自分が変われ」という言葉を突き付けられるとともに、400万円の借金を佐田に肩代わりしてもらうことになった。その後、佐田の紹介で北海道の利尻島に移住。早朝から昆布干しの手伝いと小さな民宿「やどや ふじむら」の手伝いをすることになり、佐田に対して地道に借金返済を行うことを誓った。島での生活は、完備された宿舎で三食付き。おせっかいな島民に囲まれ、寂しさを感じることなく安定したものとなった。

藤井

妻・美雪を亡くしたばかりの男性。病に冒されていてもう長くないといわれた美雪に、なんとかして少しでも長く生きてもらいたい一心で、さまざまな治療を受けさせるために多方面から借金をしている。借金返済のために昼も夜も労働に明け暮れ、美雪の見舞いに行く余裕もなくなってしまい、余生をいっしょに過ごしたいという美雪の最後の願いをかなえてやることすらできなかった。結局妻を一人ぼっちで逝かせてしまったことを後悔しており、美雪が亡くなったあとは自暴自棄となり、生活がままならない状態となった。その後、借金の取り立てに来た佐田から、家中に貼ってあるメモのことについて指摘され、美雪が「自分亡きあとの夫」を思ってしたのだということに改めて気づかされた。さらに、佐田には借金を肩代わりしてもらうこととなり、改めて日常生活を取り戻し、やり直し始めた。その際、写真に写るのが苦手で美雪と二人で撮った写真がなかったことを日向奈緒にこぼしたことで、後日日向から美雪と自分の描かれた絵をプレゼントされた。

いわゆるオレオレ詐欺の受け子を務める青年。大家をターゲットに孫になりきり、何度となく金を奪い取った。電話口では、ばあちゃん元気かと優しく声をかけるものの、金を貸してほしいと言い出せず、後ろに控えていた菊池からは殺されたいのかと脅される一幕もあった。指示役の菊池に対しては、落ちこぼれの自分に居場所をくれたことに恩を感じている。高級な店に連れて行ってくれて、酒を次々に注文して女性をはべらせた菊池の姿を見て、いつか菊池のようになりたいと思うようになった。菊池がただの詐欺師であることは薄々感づいていたが、あこがれの存在だっただけにそれを認めることはできなかった。それは幼い頃から、自分を落ちこぼれ扱いし続けた両親を、将来金持ちになって見返してやりたいという強い思いがあったからである。結局、大家と日向奈緒に諭され、佐田からはまだいくらでもやり直せると言われたうえ、罪を償えば、その後は「フレンドリーパートナーズ」で働かせてやってもいいと言われ、罪を償うことを決心した。

クレジット

原作

きたみ まゆ

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