あらすじ
第1巻
絶望君は、周囲から認められるために勉強や塾通いを人一倍頑張っているが、なかなか成果が出ずにいた。そのため、体調が悪くても無理をして勉強し、好きな絵を描くことも後回しにする生活を続けている。絶望君は自らの中に知らないあいだに不満を溜め込んでおり、ある時、自分の中に現れたもう一人の自分に「がんばらなくていい」と励まされるようになる。それでも努力を続ける絶望君は、ついに教室で倒れてしまう。(第1章「はじめまして、絶望君」。ほか、5エピソード収録)
登場人物・キャラクター
絶望君 (ぜつぼうくん)
エピソード「はじめまして、絶望君」「ダイダイダイ」に登場する。不器用な男子高校生。日々勉強に追われている。自分は出来が悪いから人一倍努力をしなければいけないと考えており、自分の中に蓄積されていく不満に気づかないふりをして生活を送っている。また、本当は絵を描くことが好きだが、それだけでは社会で生きていけないために優先順位を下げており、自分の感情に蓋をするうちに、自分の中にいるもう一人の自分に「がんばらなくていい」と励まされるようになる。大とは同じクラスに在籍しており、教室で倒れた際に助けてもらったことをきっかけに、会話をするようになる。いつも笑顔を絶やさない穏やかな性格ながら、周囲の目を気にしすぎて自己主張することができない。また、嫌われているわけではないが、友達と呼べる存在はいない。
大 (だい)
エピソード「ダイダイダイ」に登場する。明るく社交的な男子高校生。いつも友達に囲まれている。しかし、実際には友達グループのそばにいるだけで仲間とは認められておらず、距離を置かれている。そのため、周囲からは大勢の中にいる人気者のように見えるが、大自身は深い孤独を感じている。教室で倒れていた絶望君を助けたことをきっかけに、彼と会話をするようになる。
ハル
エピソード「感情があったとしても」に登場する。人間ではなく、サクラに作られた「ロボット子」という機械の人形。サクラがママと契約をしたことで貸し出され、重い病気を患って入院しているママの実子の代わりに、ママといっしょに暮らしている。記憶は実子と同じものがインプットされている。ママから愛され幸せに暮らしていたが、実子の病気が完治したことで唐突に契約が打ち切られる。その後、友達が欲しいと思っている冬樹と親しくなり、同じ学校に通うようになる。機械の人形ではあるものの、見た目は人間の男子小学生くらいの容姿をしており、胸にハート形の部品がある。また、ママと別れた際には感情をあらわにするなど、人間と同じ心を持つ。
冬樹 (ふゆき)
エピソード「感情があったとしても」に登場する。激しいいじめを受けている男子小学生。つねに顔にケガやあざがある。本当は友達が欲しいもののうまくいかず、お気に入りのウサギのぬいぐるみや壊れかけのおもちゃと話すのが日課となっている。サクラにお願いをして、機械の人形である「ロボット子」のハルを友達として譲り受ける。穏やかで心優しい性格ながら、嫌だと言えないことからいじめっ子に目を付けられている。
サクラ
エピソード「感情がなかったとしても」に登場する。少年の容姿をした人間型のロボット。廃棄される予定だったが「感情が芽生えたから」と制作者からスミレに託され、スミレの助手としてロボット開発の技術を学ぶ。のちに機械の人形の「ロボット子」を開発し、ハルを制作する。非常に合理的なものの考え方をしており、一時の寂しさをしのぐために「ロボット子」をレンタルするママのような人間を見下している。
スミレ
エピソード「感情がなかったとしても」に登場する。青年の容姿をした人間型のロボット。廃棄予定だったが「感情が芽生えたから」という理由から処理されなかったサクラといっしょに暮らしている。サクラにロボット開発の技術を教えるうちに、情が湧いていく。
月 (つき)
エピソード「1/1000000」に登場する。100万分の1の確率で生まれた性別不詳の怪物。家族からも虐げられ、森の中で身を隠すように一人で暮らしていた。ある日、星に発見され、彼の屋敷でいっしょに暮らすようになる。最初は周囲の目を気にしながら生きていたが、星との生活を通して少しずつ人間らしい生き方を取り戻していく。星と執事以外からは「怪物」と呼ばれているが、頭に角が2本ある以外は人間と変わらない容姿を持つ。家族との縁が薄かったこともあり、最初は消極的でネガティブな性格だったが、次第にたくましく前向きな性格へと変わっていく。
星 (ほし)
エピソード「1/1000000」に登場する。裕福な家庭に育つ男子高校生。100万分の1の確率で生まれた「天使」。以前から近くの森に怪物の月が住んでいると聞いており、自分と同じ100万分の1の確率で生まれた存在と知ってから、ずっと気になっていた。ある日、月と遭遇して自分の住む屋敷でいっしょに暮らし始める。存在するだけで周囲から疎外される月とは異なり、生きているだけで素晴らしい存在だと人々から信仰を受け、特別扱いをされている。その一方で周囲から「見た目の通り天使のような、完璧で慈悲深い存在」であることを強要され、疲弊している。背中には白い翼があり、頭の上には輪っかが浮かんでいる。穏やかで心優しい性格の持ち主で、月と執事以外からは「天使様」と呼ばれている。
空 (そら)
エピソード「風がなければ空もない」に登場する。愛犬の風を愛する少女。幼い頃に子犬の風と出会い、生まれながらにして呼吸器に疾患を持つ風と、少しでも多くの思い出を作ろうと奮起する。当初は短命だと告知をされていた風だったが、1年、また1年と長生きしてくれることに喜んでいる。一方で、どれだけいっしょに過ごしても風が自分に懐いてくれないことを寂しく感じている。
ママ
エピソード「感情があったとしても」に登場する。難病の子供を持つ母親。実子が入院中の心の隙間を埋めるために、機械の人形である「ロボット子」をレンタルする契約をサクラと結ぶ。実子の記憶をそのまま引き継ぐ処理を施されたハルを借りてかわいがっていたが、実子が病気から快復したことであっさり契約を打ち切る。
執事 (しつじ)
エピソード「1/1000000」に登場する。資産家である星の屋敷で、執事を務める男性。星のことは幼い頃から知っている。突然、怪物の月と住みたいと言い出した星に困惑しつつも、星の望みだからと受け入れる。星に対しては甘やかすだけでなく、怠けると苦言を呈することもある。
お父様 (おとうさま)
エピソード「1/1000000」に登場する。資産家の男性。息子の星が100万分の1の確率で、「天使」として生まれてきたことを誇りに思っている。星には天使として周囲をがっかりさせないように厳しい教育を施す。あくまで「天使の星」としての名を必要としており、一人の人間としては関心を示さない。
風 (かぜ)
エピソード「風がなければ空もない」に登場する。幼い頃の空に拾われ、いっしょに暮らすことになった犬。生まれながらにして呼吸器に疾患を持ち、子犬の時に獣医から長くは生きられないと告知を受ける。しかし、空との時間を楽しむかのように長生きをしている。一方で、いつも自分の世話をしてくれる空に対して、なぜか距離を置いている。