あらすじ
第1巻
小学校に入学した小日向希儚は、その名前から「儚いくん」というあだ名を付けられた。ある日、希儚は捨てられていた子犬を拾ってくる。毎日散歩に連れていくという初めての約束を父親と交わし、飼うことを許された希儚は、犬に「ワイ」と名づける。その後も希儚はクラスメイトにいじめられたり、転校生の女の子を好きになったりと忙しい日々を送っていた。そんなある日、突然おじいちゃんが学校に迎えにやって来て、父親が交通事故で亡くなったことを知らされる。(第1話。ほか、13エピソード収録)
登場人物・キャラクター
小日向 希儚 (こひなた きぼう)
人生に儚さを感じている男性。小学生の頃に父親の小日向彰人を交通事故で亡くしたが、母親や姉、祖父に支えられて成長する。しかし、父親を轢いて死なせてしまった加害者の男性から、泣きながら土下座された経験がトラウマとなり、人生に漠然とした不安を抱え、愛する人を失うことを恐れるあまり、結婚して家庭を持つことに抵抗を感じている。学生時代は何も夢中になれるものが見つからず、平凡な青春時代を過ごしたが、高校を卒業して文房具を作る会社に就職後は、仕事にやりがいを感じている。「希儚」という名前は彰人の命名だが、なぜ「希望」ではなく「儚い」という字にしたのかを疑問に感じている。
小日向 ミツ子 (こひなた みつこ)
小日向希儚の母親。気丈な性格のうえに気品のある美女。夫の小日向彰人を交通事故で亡くしてからは、家を売却してアパートへ移り、働きに出て女手一つで二人の子供を育て上げた。義父から再婚を勧められても、夫は彰人だけだと決して再婚はしなかった。エレベーターは乗る人より降りる人が優先であることを教えたり、エレベーターで「開く」のボタンを押してくれた人にはちゃんとお辞儀をするようにうながしたりと、子供たちをしっかりとしつけていた。
小日向 彰人 (こひなた あきひと)
小日向希儚の父親。希儚が小学生の時に交通事故で他界した。イケメンで、妻の小日向ミツ子や小日向希儚の姉に愛されており、希儚が拾ってきた犬のために犬小屋を作ったりと、希儚にとっても優しい父親であった。「人生は儚い」ことを詠んだ豊臣秀吉の辞世の句が好きだったが、なぜ希儚の名前に「儚い」という字を入れたのかは、希儚をはじめ、妻のミツ子にすら教えていなかった。
小日向希儚の姉 (こひなたきぼうのあね)
小日向希儚の2歳上の姉。クラス委員を務めたり、生徒会に選ばれたりと、勉強ができて頭がいい。面倒見がよくて、母親の小日向ミツ子が仕事の時は代わりにご飯を作ったり、洗濯をしたりするしっかり者。本当は世界中を飛び回る仕事をしたかったが、父親を亡くして母親一人の収入では家計が苦しいと考え、夢をあきらめた。その後、結婚して愛する子供もでき、専業主婦として幸せに暮らしている。家庭を作ることに不安を感じている希儚に、たとえ愛する人を失おうとも、その悲しみも含めてすべてを味わえばいいとエールを送る。
小日向希儚の祖父 (こひなたきぼうのそふ)
小日向希儚の祖父。小日向彰人の父親。早くに妻を亡くし、男手一つで彰人を育て上げた。彰人が亡くなったあと、アパート暮らしのために飼えなくなった小日向家の飼い犬、ワイを引き取った。希儚のことをかわいがっていた。
コウキ
小日向希儚の中学時代の友達の男子。いつも髪の毛がベトベトで変なニオイもするため、クラスメイトからは軽くいじめられていた。母親は家を出ていっており、父親から暴力を受けて虐待されている。チン毛が生えたら、すべてを捨ててこの街から出ていくと希儚にだけは打ち明けており、それを実行した。
ナッチャン
小日向希儚が高校生の時に付き合っていた女性。希儚のとなりのクラスに在籍しており、ナッチャンの方から希儚に告白した。希儚には、ペンギンみたいな顔をしているという第一印象を持たれていたが、胸の大きさが決め手となって交際にこぎつけた。高校を卒業後は大学に進学し、就職で離ればなれになる希儚とは遠距離恋愛を続けるつもりだったが、希儚の方から一方的に交際を打ち切られた。
吉川 弘子 (よしかわ ひろこ)
小日向希儚が就職した文房具会社に勤める女性で、江戸時代から続いている老舗の着物屋の一人娘。年齢は25歳。係長となった希儚の後輩で、希儚に食事に誘われたことをきっかけに交際を始める。良好な関係が続いていたが、吉川弘子が希儚の子供を妊娠したことを打ち明けると、家庭を持つことを恐れる希儚にいったん拒まれてしまう。
ワイ
小日向希儚が小学生の時に拾ってきた犬。希儚が毎日散歩に連れていくという条件で小日向家で飼われることになる。鳴き声が「ワイ」と聞こえるところから、希儚に「ワイ」と名づけられた。亡き父親の小日向彰人との約束を守った希儚に、雨の日も雪の日も、風邪で熱がある時も、毎日散歩に連れていってもらった。希儚が成人したのちに、癌を患い息を引き取る。