概要・あらすじ
人が住む8つの「人界」とそれらを隔てる「外界」で構成された世界。その中心には「王地」と呼ばれる場所があり、そこには望むものすべてが存在し、辿りついた者には世界の王たる資格が与えられるという。思わぬきっかけからリョウガの遺した「王地の書」なるものを手に入れて、「王地」への道しるべを得たタイガは、失踪した父親を探すため、未だ見知らぬ他の世界と王地に辿りつくため、「旅人」になる決意をする。
登場人物・キャラクター
タイガ
前髪は金、それ以外が黒というツートンカラーの髪に、矢印型の眉毛が特徴の少年。まだ幼い頃に旅人であるリョウガによって常春の豊来に連れてこられ、和尚やトモコ、カザルによって育てられた。カザルが持ち帰った、リョウガの形見だという「王地の書」を発動することが可能で、12歳になったその当日に「旅人」となり里を出る。 誕生日は4月1日。ちなみに名前は漢字で書くと「大河」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
黒丸 (くろまる)
タイガに助けられ、それ以来なぜか一緒にいる鳥の界魔。当初は非常に乱暴な性格だったが、タイガと共に旅を続けるにつれて性格も丸くなっていく。何かにつけて毒づく癖は変わらないものの、それでもタイガのことは憎からず思っている様子。
二尾狼 (にびろう)
リョウガの形見である「王地の書」を狙い、常春の豊来までカザルを追ってきた巨大な狼の上位の界魔。その名の通り2つの尾を持つ強力な界魔で、カザルの力でも倒せないほどの実力を誇る。しかし「王地の書」が体内で発動した際、なんらかの影響で犬程度にまで小型化してしまう。タイガが「旅人」になる際、二尾狼も自分の本来の姿を取り戻すため旅に同行する。
和尚 (おしょう)
常春の豊来のやまがみの里に住む老人。寺子屋の校長も務め、その経験や知識などから里のご意見番として周囲の人々から尊敬を集める。ひょうひょうとしているが武術の腕は相当なもので、タイガだけではなく、幼い頃のカザルの手ほどきもしていた。
トモコ
タイガが通う寺子屋の教師。タイガの育ての親の一人。カザルとは幼なじみだったが、自分を里に残したままリョウガと共に「旅人」になったことで、彼に対しては複雑な心境を持っている。またその苦い経験から「旅人」に対して嫌悪に近い感情を抱いており、タイガが「旅人」になろうとするのを快く思っていない。ちなみに名前は漢字で書くと「智子」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
カザル
トモコの幼なじみで常春の豊来で育った青年。里に現れたリョウガに憧れ、共に「旅人」となって国を出て行った。のちにリョウガが失踪し、彼の形見である「王地の書」を持って11年ぶりに里に帰ってきた。旅の途中で右腕を失っており、義手を付けている。「王地の書」をタイガに託し、自らはまた旅に出た。ちなみに名前は漢字で書くと「風瑠」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
リョウガ
12年前、タイガを連れてやまがみの里に現れた「旅人」。武術に優れるばかりか、考古学をはじめ学術にも精通している優れた人物。ある日、タイガを和尚とトモコに託し、カザルを連れて里を出る。カザルと別れた後、風の噂で死んだと囁かれ、唯一の手掛かりは生前から持っていた「王地の書」のみとなる。
カナ
リョウガが訪れた鋼の黒鉄のテツクズ温泉街で旅館を営む少女。12歳。音符をモチーフにした首飾りを付けている。突然空から降ってきた「旅人」であるタイガを歓迎し、自分の宿に泊るよう誘う。しかし、歓迎の文句を述べるのにメモを読んだり、二尾狼に警戒されたりと態度に不審なところがある。料理の腕は絶望的。 ちなみに名前は漢字で書くと「奏」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
テツ
リョウガが訪れた鋼の黒鉄のテツクズ温泉街で旅館を営む壮年の男性。丸い顔立ちに丸いメガネをかけた柔和な笑顔で、本来あまり歓迎されないはずの「旅人」についても「夢があっていい」と語る。しかし、裏ではカナと組んで何やら企んでいる素振りを見せる。ちなみに名前は漢字で書くと「鉄」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
イシマル
謎の組織「覇の亡星」において「殿下」と呼ばれ、総指揮官を自称する事実上の支配者。額にひし形、眼の周囲と頬に通る隈取のような模様を持つ相貌が特徴。見た目はまだ幼く、サコンジからも「子供」と言われているが、部下たちからは畏怖の念を持たれている。「王地の書」を探し求めており、それに選ばれたタイガに興味を持つ。 玄米茶が好物。ちなみに名前は漢字で書くと「威示丸」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
サコンジ
謎の組織「覇の亡星」の幹部の一人。周囲からは「サコンジ隊長」と呼ばれる。総指揮官であるイシマルの前でも姿勢を正さずに足を組み、果ては軽口を叩く曲者。ちなみに名前は漢字で書くと「左近次」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
コマキ
謎の組織「覇の亡星」の幹部の一人。まだ幼い少女のような外見だが、ヒミカの姉であり、「覇の亡星」の幹部のなかでも最強の実力を誇るとされる人物。指先を動かすだけでビル一棟を破壊するほどの能力を持つ。ちなみに名前は漢字で書くと「小真貴」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
イセ
謎の組織「覇の亡星」の幹部の一人。端正な顔立ちの青年だが、左目に傷跡があり、色の薄いサングラスをかけている。言葉遣いは丁寧だが、街をひとつ破壊しても何とも思わず、物陰に隠れていたまだ少女だったころのカナを「狩り損ない」と呼ぶなど根は邪悪。コマキと2人一組で動くことが多いが、その実力は不明。ちなみに名前は漢字で書くと「伊勢」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
ヒミカ
謎の組織「覇の亡星」の幹部の一人。コマキの妹だが、姉とは対照的に非常にスタイルのいい妖艶な女性。「王地の書」の噂を聞きつけたイシマルによってその調査を命じられ、鋼の黒鉄に派遣された。結界川にいる界魔を瞬殺し、建物を破壊するほどのタイガの一撃を受けても平然と立ち上がるほどの実力を持つ。 プライドが高く、「王地の書」の情報を得るため無抵抗のカナを嬲るなど残忍な性格。チョコレートが好き。ちなみに名前は漢字で書くと「緋美香」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
ザイ
傭兵集団「朱呑組」に所属する終焉者の一人で、テツの過去を知る人物。全身を覆う黒いマントにフードをかぶり、奇妙な笑みを浮かべた仮面をつけている。「王地の書」を奪いに来たヒミカに同行し、協力する。手の甲部分に装着した刀や飛びくないなどの暗器を駆使して、タイガたちを苦しめた。ちなみに名前は漢字で書くと「斉」であることが、巻末のおまけページで明かされている。
イサム
砂の砂遊に住む少年。「旅人」であるドッポに弟子入りをしており、棒術を駆使して戦う。ドッポに認めてもらうためにシュゴビト討伐にやってきて、結果的にタイガたちを助ける形になった。
ドッポ
砂の砂遊でイサムらの家に居候をしている老年の「旅人」。背が低く、常に半開きのとぼけたような瞳が特徴。扇子を武器とする特殊な戦闘スタイルだが、扇子ひとつでシュゴビトを破壊する風を生み出すなど、その実力は計り知れない。リオの非公認ファンクラブの会報を発行している。
リオ
砂の砂遊の採掘集団のひとつを取りまとめているリーダー。イサムの叔母。イサムいわく28歳とのことだが、イサムの姉に見えるほど外見は若い。気が強い性格のいわゆる姉御肌で、家で暴れていたタイガとイサム、二尾狼にまとめてげんこつを食らわせ、説教をするほど。その容姿と性格から採掘衆からの人気も高く、非公認ながらファンクラブも存在する。
ランシュウ
砂の砂遊の城に住み、雨乞いの儀式を執り行なっているという人物。ランシュウが言うには雨乞いの儀式には太陽石を消費するとしており、またその儀式をもってしても雨は城の周囲の湖にしか降らせることができない。そのため、他に水の補給手段のない砂の砂遊において、実質的な支配者のような立ち位置にいる。結界川が閉ざされた後の砂の砂遊に来たタイガに刺客を差し向けた。
鴉 (からす)
ランシュウに仕える黒狼三人衆のひとり。全身黒ずくめの格好に、鳥の嘴を模した仮面を装着しており、素顔は分からない。ランシュウに命じられてタイガたちの命をつけ狙う。鉄線でつないだ三日月状の刃を持つ武器を操り、タイガを一度は追い詰めるも、ドッポの技の前に撃退され撤退した。
集団・組織
朱呑組 (しゅてんぐみ)
悪の道に堕ちた終焉者たちが徒党を組んだ組織のひとつ。テツいわく、終焉者の中でも比較的名を知られるほど大きな組織だという。さまざまな組織から危険な仕事を請け負う傭兵集団で、主な仕事は鋼の黒鉄の優秀な技術者をさらい、とある国に売ること。
覇の亡星 (はのぼうせい)
朱呑組に村を襲わせ、技術者などを連れ去っている謎の組織。テツが言うには、土地を持たぬものの「国」であるらしく、強大な軍を率いているという。
場所
人界 (じんかい)
空嵐の隙間にあって結界川に守られた、人が住める程度に安定した空間を持つ場所。世界には無数の人界が存在するが、大きく分類すると8つの特徴に分かれているとされ、それぞれ似た特徴を持つ人界の集合体は「~の国」と呼ばれる。現在確認されている人界・国は、雪の氷ヶ城、大火山雷電、鋼の黒鉄、常春の豊来、都の古安、闇の永夜、砂の砂遊、歌の夢音の8つ。
外界 (げかい)
それぞれの人界を隔てている場所。安定した時空を持つ人界とは異なり、距離や時間、方向までもが曖昧な空間で、その全容はまったく知られていない。また、人知を超えた巨獣や界魔の棲家でもあるため、一度でも外界に足を踏み入れると生きては帰れないとされている。
王地 (おうち)
世界の中心にあるとされる場所。およそ人が考えうるすべての望みがあるとされていて、そこにたどり着いたものは世界の王たる資格を得られると言われている。「旅人」が目指す最上の地。
常春の豊来 (とこはるのほうらい)
タイガが育った場所。二つ名の通り、非常に穏やかな気候を持った人界。リョウガいわく、人界の中で最も小さいが最も美しい国だという。和尚やトモコ、里の人々の服装はチャイナドレスやチマチョゴリに似たような中国や韓国の伝統的な服装、文化様式は中世以前の日本の文化に似ている。
鋼の黒鉄 (はがねのくろがね)
機械文明の発達した国で近代のようなビルが立ち並ぶ風景を持つ。錬鉄技術などに優れており、またそれらを生業にする技術者を多数抱えていたが、謎の組織「覇の亡星」の襲撃により、多くの技術者が失われた。その結果、いくつかの街は破壊・廃棄され、廃墟と化してしまっている。タイガが訪れたのは黒鉄の最果てにあるテツクズ温泉街。 常春の豊来とは違い、温泉の湯が結界川の役割を果たし、外界との境界線になっている。
砂の砂遊 (すなのさゆう)
多数の人界が連なり国を形成している他の国とは異なり、広大な砂漠の中にひとつだけ街が存在するという珍しい国。6年前まで外界と人界をつなぐ結界川であるオアシスがあったが、ドッポが砂の砂遊に来たのと時を同じくしてオアシスがすべて消滅。外界との接触や幸運者による水の調達が望めなくなり、現在は街の中心に坐する城の周囲にある湖だけを水源として生活している。
その他キーワード
旅人 (ふーる)
世界を股にかけ、「王地」を目指して旅をする人々の総称。安定した人界を捨てて、常に命の危険が付きまとう外界に望んで出ていく姿勢から「愚か者」の意味である「フール」と呼ばれている。また、一般人とは異なる価値観を持つ者への差別意識から「土地を穢す」「災いを呼ぶ」と忌み嫌われている。
空嵐 (くうらん)
世界を覆う空間の歪みのことで、このなかでは、1歩歩けば10センチになり、また1歩歩けば1キロになるなど、「安定」という概念がない。また距離はもちろん、方向も時間感覚も曖昧で星の位置も虚ろにして把握できない。
結界川 (らいん)
空嵐の歪みから人界を守っている霧の川の結界のこと。空高くまで立ち上った霧で描写され、人界と外界の境界とされている。常春の豊来の場合、この結界川と人界の間に巨大な柵が敷かれ、容易に立ち入りができないようになっている。
界魔 (かいま)
外界に住む人智を超えた生物たちのこと。上位、下位などのランクがあるが、総じてプライドが高い上に狂暴で、人間のことは下等生物と思っているため、懐くことはほぼない。なお、黒丸は下位、二尾狼は上位の界魔だが、黒丸でも人語を解し、話すことができる。
王地の書 (おうちのしょ)
リョウガが持っており、現在はタイガの手に渡った謎の巻物。火にくべても燃えず、刀で切っても傷一つつかない不思議な物質で作られている。なんらかの封印が施されているようで、リョウガが何をどうやっても開かなかったが、タイガに反応して開き、「王地」への道しるべを示した。
終焉者 (えんど)
「王地」を目指して「旅人」になるも、夢破れて目的を見失ってしまった者たちの総称。元が災いを呼ぶとされる「旅人」であるため人里に近寄れず、故郷にも戻ることができず、それでも外界を旅するだけの知略と実力を持つため、ほとんどが各地で略奪など悪事に手を染めることとなる。
シュゴビト
岩で作られたペンギンのような見た目の巨大兵器。普段は砂の中に隠れているが、衝撃を受けたり、侵入者を見つけると動き出す。口から衝撃を伴うビームを吐き、目から当たると痺れるレーザーを出す。また、破壊されても自己修復する機能を持っており、完全に破壊するためにはコアらしきものを潰すしかない。
幸運者 (ふぉーちゅん)
外界で得た物資を人界で売る商人のこと。外界に出るという点では同じものの、「王地」を目指す「旅人」とはそもそも行動原理が違う。生活に必要な物資を運んでくれる存在であり、砂の砂遊など生活環境の苦しい国では感謝と尊敬を持って受け入れられる。
太陽石 (たいようせき)
砂遊の遺跡を発掘することで得られる貴重な鉱石。ランシュウが雨乞いの儀式を行なうのに絶対に必要なものとされており、砂の砂遊の住民は太陽石と交換することで水を得ることができる。
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