人類を脅かす「ショウジョウ」の謎
約40年前、日本に「ショウジョウ」と呼ばれる猿のような怪物が突如として現れた。全身を覆う白い体毛と、目を覆うように発達した独特の器官が特徴で、非常に凶暴であり、周囲の生物に対して無差別に攻撃を仕掛ける性質を持つ。ショウジョウに噛まれた人間は、瞬く間に知性を失い、やがて自らもショウジョウへと変貌してしまう。その正体は、かつて地球外惑星からもたらされた「PL-41」というウイルスに感染した人間だった。噛まれた傷口からウイルスが伝染することで、この変異が引き起こされる。また、ショウジョウと人間との意思疎通は不可能とされているが、ごく稀に南のように彼らの考えを漠然と理解できる人間も存在する。
自らの死を望む南と監視役、宮地の出会い
南は、一人で多数の「ショウジョウ」を倒し、各地で目覚ましい戦果を挙げていたことから、「ブラックガルド」という異名で称えられていた。しかし、南の心にはつねに、戦いの果てに自ら朽ちることを望む希死念慮を抱えており、これは株式会社白盾警備でも問題視されていた。そんな中、白盾警備のA地区遊軍に所属する宮地は、社長から直々に呼び出され、南とコンビを組み、彼が死なないよう監視するよう命じられる。南と出会った宮地は、彼が戦場で自らを危険に晒す行動をとっていることに気づくが、戦場を離れれば、ふつうに楽しんだり笑ったりする姿も目撃する。そのギャップに興味を抱いた宮地は、戦場だけでなく私生活においても南との交流を深めていくのだった。
南の転機と仲間との絆
長らく単独で行動してきた南は、宮地とのコンビ結成をきっかけに、新たな転機を迎える。わずか15歳にして卓越した技術と能力を持つ荻野千波夜、そして優秀で面倒見がいい一方で、命に対してやや歪んだ価値観を抱く川上左嬢から興味を持たれ、やがて彼らと共に「ショウジョウ」との戦いに身を投じることになる。その過程で、南は宮地や荻野たちとの交流を通じて心境に変化が生まれ、仲間意識を持つようになる。また、南の前に現れた女性型ヒューマノイドの愛は、当初は人間の生存のみを追求するようプログラムされていたが、人間性を獲得した南に触発され、大切な人の意志を守るために自らの判断で行動するようになる。
登場人物・キャラクター
南 七雄 (みなみ ななお)
株式会社白盾警備の警備課に所属する青年。年齢は27歳。「モルビス・サイ」と呼ばれる精神疾患の影響で、淡い希死念慮を抱えている。しかし、その死への願望とは裏腹に、極めて高い戦闘能力を誇る。現場では意図的に「ショウジョウ」と呼ばれる敵を引き寄せ、愛用の長刀「黒刀」を使って殲滅する。つねに身にまとっている黒いマントはショウジョウを誘き寄せるためのもので、その姿から「ブラックガルド」と呼ばれている。一方で、戦場を離れれば南は世間知らずで、どこかのんびりとした青年である。その特異な性格と戦闘能力のため、これまではショウジョウとの戦いを単独でこなしてきた。しかし、南の希死念慮を問題視した白盾警備の社長の計らいにより、宮地とコンビを組むことになり、状況は一変する。B地区遊軍として活動する中で、やがて仲間との連携を覚え、単独での戦い方から変化していく。
宮地 クリス (みやじ くりす)
株式会社白盾警備の警備課に所属する青年。年齢は24歳。A地区遊軍のエースとして、戦闘ではダブルバレルショットガンを巧みにあやつり、「ショウジョウ」を次々と蹴散らしていく。強気な性格で、社長からの直々の命令でさえ「面倒だから」と一蹴することもある。白盾警備には社員寮が完備されているにもかかわらず、宮地自身は寮を利用せず、下町の団地で一般市民と同じように暮らしている。ふだんは祖母から譲り受けた着物を身にまとっている。そんな中、宮地は南の監視役としてコンビを組むよう命じられる。自らの死を望む南に対し、宮地は生きることも死ぬことも肯定せず、「命の管理は自分自身がすべきだ」と説きながら、やがて南が本当に求めているものを理解しようと努めるようになる。
書誌情報
ブラックガルド 5巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2020-02-21発行、978-4065185254)
第2巻
(2020-08-20発行、978-4065202678)
第3巻
(2021-02-22発行、978-4065222645)
第4巻
(2021-07-20発行、978-4065242216)
第5巻
(2021-12-23発行、978-4065262221)







