概要・あらすじ
ある嵐の夜、早坂牧場で仔馬が生まれた。だがその仔馬は優れた血筋であるのにも関わらず、その出自からサラブレッドとしての血統登録ができないかもしれないという状況にあった。一方で、鷹司グループの令嬢でありながら父親と血の繋がりのない養女の鷹司美貴は、自分の運命を達観していた。そんなある日、美貴は早坂牧場で件の馬レディーホークと出会う。
過酷な運命に翻弄されながらも力強く生きるレディーホークを見た美貴は、自分の人生を自力で切り開くことを決心し、日本中央競馬会競馬学校に願書を提出。同期生たち、特にライバルの呉羽雄二と切磋琢磨しながら、美貴は力強く成長していく。
登場人物・キャラクター
鷹司 美貴 (たかつかさ みき)
鷹司家の令嬢で、高飛車な美少女。どんな荒馬でも大人しくさせ、逆に最大限の能力を引き出す才能がある。養女であることから自らの人生を達観している部分もあったが、複雑な出自を持つレディーホークと出会うことで、自らの人生を自分で切り開く決心をする。両親の反対を押し切って日本中央競馬会競馬学校に合格し、同校初の女子入学生4人のうちの1人となった。
鷹司 (たかつかさ)
ホテル王として知られる鷹司グループ代表の壮年男性で、鷹司美貴の父親。鷹司夫妻には子供がいなかったため美貴を養女にしたが、鷹司自身は実の娘のように溺愛しており、いずれ経営能力に長けた男性と結婚させて事業を継がせるつもりでいる。ジャパン・カップに出場したシルヴァリーホーク、将来を嘱望されるレディーホークなどの馬主をしており、GⅠ馬を何頭も所有している。
宇津木 (うつぎ)
馬の調教師を務める初老の男性。早坂牧場や、富豪で馬主の鷹司と親交がある。いわくつきの仔馬であるレディーホークの引き取り手として、早坂牧場に鷹司とその令嬢の鷹司美貴を紹介する。
早坂 未来 (はやさか みき)
早坂牧場の牧場主の娘。かつて種付けのために他の牧場へ移送中だったサラブレッドが嵐で立ち往生し、早坂牧場に泊まった際、早坂牧場の牝馬に勝手に種付けさせてレディーホークを産ませた。鷹司美貴とは同じ「みき」という名前ということで親近感を持つ。
レディーホーク
サラブレッドの父馬がたまたま立ち寄った早坂牧場で、早坂未来が無理に種付けして生まれた牝馬。その出自が明らかではないことから、血統登録できるかどうかの瀬戸際にあった。無事に競走馬となり、鷹司家へ引き取られてからは順調に育ち、ずっと「チビ」と呼ばれていたが正式に「レディーホーク」と名付けられる。鷹司美貴は、養女である自分と正統ではない存在とされそうになったレディーホークとを重ね、自らの運命を切り開く決心をした。
呉羽 雄二 (くれは ゆうじ)
鷹司美貴と同年代の少年。馬術クラブの誘いで馬術大会に出場し、同大会で初めて美貴を制して優勝した。日本中央競馬会競馬学校で美貴と再会し、同期生となる。他の男子生徒たちが、女性でなおかつお嬢様である美貴のことを差別的な目で見るなか、美貴の実力を正当に認めている。学校でともに切磋琢磨するうちに、美貴に対してライバル心と淡い恋心を抱くようになっていく。
シュガーボーイ
未勝利のまま引退し、誘導馬になることになった元競走馬。鷹司美貴が誘導馬に必要な常足(なみあし)などの調教にあたることとなったが、これがもともとシュガーボーイの調教をするはずだった呉羽雄二と揉める原因になってしまう。
海老沢 (えびさわ)
日本中央競馬会競馬学校の教官で、痩身の中年男性。鷹司美貴が競馬学校を受験したことを金持ちのお嬢様の道楽だと批判的に捉えていた。しかし馬と真摯に向き合う美貴の姿を見て考え方を改め、美貴の入学を鷹司に認めてもらえるように働きかける。
兵藤 安奈 (ひょうどう あんな)
日本中央競馬会競馬学校の初めての女子入学生4人のうちの1人で、鷹司美貴とは同期。ショートカットできつい性格の少女。父親と兄が地方競馬の騎手を務めていることから自分も騎手を目指すようになり、必死の思いで入学した。それだけに美貴のことを金持ちの道楽と捉え、目の敵にしている。また馬に詳しくない同期の男子生徒たちや高木智之たちもバカにしており、トラブルメーカーとなっている。
由利 ひな子 (ゆり ひなこ)
日本中央競馬会競馬学校の初めての女子入学生4人のうちの1人で、鷹司美貴とは同期。髪をお下げにした優しい風貌の少女。父親が地方競馬の調教師をしていることもあり、競馬の世界を目指すようになった。江崎澪とともに、美貴には好意的に接する。
江崎 澪 (えざき みお)
日本中央競馬会競馬学校の初めての女子入学生4人のうちの1人で、鷹司美貴とは同期。耳より少し長い黒髪の優しそうな少女。実家が牧場を経営していることもあり、競馬の世界を目指すようになった。由利ひな子とともに、美貴には好意的に接する。
同期の男子生徒たち (どうきのだんしせいとたち)
日本中央競馬会競馬学校の男子生徒で、鷹司美貴と同期の2人。名前は安達克則(あだちかつのり)、綿海武(わたうみたけし)。これまでにきちんと馬を扱った経験がないため、兵藤安奈にバカにされ、由利ひな子、江崎澪を含めた女子全員に敵意を持つようになる。柔道の授業時に女子生徒たちが一度も柔道に触れていなかったことをあげつらい、仕返しのようにバカにする。
高木 智之 (たかぎ ともゆき)
日本中央競馬会競馬学校の男子生徒で、鷹司美貴とは同期。テレビで競馬を見て憧れ、騎手を目指したことから、他の生徒に比べて知識や能力は劣る。それを理由に兵藤安奈に罵倒されたことをきっかけに落ち込み、女子全体に悪いイメージを持つようになる。しかし、弱気な性格なので他の男子のようにあからさまな悪口は言えないでいる。
カレン・スチュアート (かれんすちゅあーと)
アメリカでトップクラスの実力を持つ女性騎手。GⅠレースであるジャパン・カップの招待騎手の1人として来日する。いつも笑顔ではきはきとした元気な性格の女性。招待騎手の中で唯一の女性ということもあり、メディアや鷹司美貴などの女性騎手候補からも注目されている。記者のクリスとは何かと衝突するが、恋人同士でもある。 日本中央競馬会競馬学校で走る美貴の姿を見て、そのフォームの美しさに感心する。
早乙女 陸 (さおとめ りく)
スポーツ紙の若い男性記者で、眼鏡をかけた背の高いハンサムな青年。鷹司美貴の実力を高く評価し、カレン・スチュアートが美貴を褒めていたことなども伝えたが、その好意的な対応から他の記者からは逆玉を狙っているのかと揶揄されていた。しかし、実際には大手新聞社の三男坊で、鷹司が選んだ婚約者の1人だったことが後に判明する。 日本中央競馬会競馬学校に所属する周囲の男子生徒は皆背が低いということもあり、由利ひな子や江崎澪に憧れられている。
招待騎手たち (しょうたいきしゅたち)
ジャパン・カップのために招待された、各国でトップレベルの実績を誇る男性騎手で、アメリカ人のマクファーソンとイギリス人のハミルトンの2人。マクファーソンはアメリカのチャンピオンジョッキー、ハミルトンはイギリスで「女王陛下の騎手」と呼ばれる実力の持ち主で、レースではいずれもその名に恥じない好勝負を演じる。
クリス
南部出身のアメリカ人男性記者でジャパン・カップの取材のために来日した。カレン・スチュアートに対し、「女らしく家に引っ込んでいろ」などといつも突っかかっている。実はカレンの恋人であり、カレンの実力も認めていながら、その身を案じて馬に乗るのをやめて欲しいと願っている。
松沢 (まつざわ)
レディーホークの主戦を務め、勝ち続けているベテランの中年男性騎手。鷹司美貴はレディーホークに運命を感じ騎乗したいと常々考えていたが、松沢は美貴に対し、レースでレディーホークに乗せることはないときっぱりと告げる。
場所
早坂牧場 (はやさかぼくじょう)
宇津木の紹介で鷹司と鷹司美貴がレディホークを見るために訪れた牧場。美貴はここでレディーホークと出会ったことをきっかけに、自分の人生を切り開く決心をする。ちなみに牧場主の娘の早坂未来は、名前の読みが同じだったことから、勝手に美貴に親近感を抱いていた。
日本中央競馬会競馬学校 (にほんちゅうおうけいばかいけいばがっこう)
千葉にある競馬学校で、中央競馬に出場するためにはこの学校に入学する必要がある。入学試験は毎年9月の初めに一次試験が行われ、筆記試験は国語、数学、社会の3教科。さらに身体検査、簡単な運動機能テストがある。鷹司美貴と呉羽雄二はここの試験会場で再会し、受験生の中でトップを争う結果を残して合格した。この時の試験では、美貴の他に、兵藤安奈、由利ひな子、江崎澪が初めての女子生徒となった。 実在の同名施設がモデルとなっている。
イベント・出来事
ジャパン・カップ (じゃぱんかっぷ)
東京競馬場で行われるGⅠレース。世界中からトップレベルの馬や騎手を集めて行われる国際大会。年々国際評価が高まっており、凱旋門賞やブリーダーズカップなどの有名レースの誘いを蹴ってまで参加する一流選手も目立つ。作中では唯一の女性騎手であるカレン・スチュアートに鷹司美貴は期待を込めて応援した。
中山大障害 (なかやまだいしょうがい)
中山競馬場で行われる、平地レースの最長距離より長い4100メートルを走る障害レース。4100メートルの間に11の障害を飛ぶ難関レース。鷹司美貴のデビューレースとなる。新人が障害でデビューすることは珍しいが、日本中央競馬会競馬学校をトップの成績で卒業したのにも関わらず、お嬢様だという理由で騎乗依頼がなかった美貴に唯一依頼が来たレース。