競馬でごはん

競馬でごはん

競走馬や騎手、厩舎など、競馬にまつわるさまざまな分野に情熱を傾ける女性たちと、競馬場のおいしい食べ物が紡ぐ、競馬女子グルメ群像劇。「ひとりごはん」No.25から掲載の作品。

正式名称
競馬でごはん
ふりがな
けいばでごはん
作者
ジャンル
グルメ
 
競馬
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あらすじ

競走馬(サラブレッド)をこよなく愛する日高万里は、東京競馬場を訪れていた。ひとしきりレースを楽しんだ日高は、次に注目するレースまで時間があいたため、腹ごしらえをしようと顔なじみになったKASUYAで「かすうどん」を注文。そしてうどんを食べながら、昨日のことを思い出す。実は昨日、日高は会社の同僚の浦河から、食事に誘われていた。だが、土日は競馬場に行きたい日高は、その申し出を断ったのである。悪いことをしたと胸を痛める日高だったが、競馬場は日高が自分らしくいられる大好きな場所であり、それを譲ることはどうしてもできなかった。そのことを再認識した日高は気を取り直し、名前が気になっていた競走馬「ゴチソーディーナ」を見るためにパドックへと向かう。そこで日高は、思いがけず浦河と顔を合わせることとなる。(一品目「かすうどん」)

登場人物・キャラクター

日高 万里 (ひだか まり)

ひかると同じ会社に勤務する女性。年齢は28歳。趣味は馬を見ることで、土日は競馬場に通い詰めている。馬と並び、競馬場でレースの実況を聞きながら食事をすることも大好き。会社の同僚・浦河のことが気になっているが、休日に彼に食事に誘われても、競馬場に行くことを優先して断るほどの筋金入りの馬好き。競馬場こそが、何よりも自分が自分らしくいられる場所だと考えており、競馬場にいるあいだは、ふだんとは比較にならないほど快活な姿を見せる。元気のない後輩のひかるを競馬場に誘ってそれとなく元気づけようとしたりと、心優しく観察眼に優れる一面がある。

鵡川 優子 (むかわ ゆうこ)

中央競馬の騎手を務める松浦宏典のファンの女性。年齢は30歳。かつて大雨の降る中山競馬場で、道悪(みちわる)の中を泥まみれになりながらも、ほかの馬を引き離して力強い走りで勝利した競走馬「ゴチソーヒーロー」と鞍上の松浦の姿に感動。以来、ゴチソーヒーローと、それ以上に松浦の大ファンとなり、競馬場に松浦の横断幕を出して応援するようになった。実は子供の頃、父親に連れられてよく競馬場に来ており、その際には必ずカツサンドを食べていた。この時、「人間は元気でいればそれだけで人生というギャンブルに勝っている」と教えられて以来、これを信条としている。のちに、横断幕を掲げて応援しているファンであることが、当の松浦に認知されるようになる。また、松浦が競走馬「マユゲ」に騎乗して中山競馬場でレースに出たことをきっかけに、マユゲファンの静内遥と面識を得て、彼女の初めての競馬友達となる。

静内 遥 (しずない はるか)

競走馬「マユゲ」のファンの女性。年齢は29歳。マユゲの出走するレースがあると必ず競馬場に駆けつけるが、いつも一人でいるため、競馬のことを話せる友人が欲しいと願っている。ただし、静内遥自身は引っ込み思案でなかなか人に話しかけることができない性質で、競馬を抜きにしても、親しい友人はほとんどいない。そんな中、中山競馬場で松浦宏典が騎乗していたマユゲを応援していた鵡川優子と知り合い、初めての競馬友達を得ることとなる。

ひかる

日高万里と同じ会社で働く社会人の女性。3年付き合った彼氏にふられてから元気をなくし、休日は家に引きこもってばかりいた。そんな中、ひかるを心配した先輩の日高に競馬場に誘われたが、その日高が当日に風邪でダウン。右も左もわからないまま、一人で中山競馬場をさまようことになった。その際、丼やらぐぅで見かけた牛すじ丼に一目惚れ。彼氏がいたあいだは丼物をかきこむことなどできなかったが、本当はこういった食べ物が大好きで、これを機に自分を取り戻し、精神を浮上させるきっかけをつかむ。以来、日高や同僚の浦河といっしょに足しげく競馬場を訪れるようになる。

吉田 つばめ (よしだ つばめ)

新潟県西蒲区巻町に住む女性。年齢は26歳。夏の新潟開催を毎年楽しみにしている競馬ファン。子供の頃は体が弱く、できないことばかりで何かを欲しがることもなかった。そんな中、祖父に連れられて新潟競馬場を訪れ、体が弱いのを理由に何もできないとか何も欲しくないとか、自分の本当の気持ちを曲げてあきらめることなく、新潟競馬場の直線コースのように、心はまっすぐ前を向いていてほしいと伝えられた。現在は元気いっぱいで食べたいものも好きなように食べることができるようになったが、この祖父の言葉が、現在の吉田つばめの原点となっている。

藤野 すみれ (ふじの すみれ)

那須田厩舎ファンの女性。年齢は30歳。競走馬では、那須田厩舎の「ウマカバイ」を特に応援している。かつて仕事がうまくいかず落ち込んでいた時、レースで勝利したウマカバイが、所属する那須田厩舎のスタッフ総出で温かく褒められ、かわいがられている姿を見て元気をもらったという過去がある。それ以来、那須田調教師をはじめ、厩務員や調教助手、女性騎手の那須田みちるまで、那須田厩舎の関係者全員のファンになった。その思い入れの強さは、ついに那須田厩舎を応援する横断幕を作ってしまうほど。

那須田 みちる (なすだ みちる)

デビューから6年目を迎える女性騎手。年齢は26歳。未だに現役騎手の父親・那須田心造と、那須田厩舎の那須田調教師を兄に持つ競馬界のサラブレッド。ラッキーフードはカツ丼で、重要なレースの前には必ずカツ丼を食べる。これは幼少期の那須田みちるに心造が、「勝つ」ためのゲン担ぎというだけではなく、思いどおりにならず落ち込んでもうまいものを夢中で食えば、不思議と何事にも精いっぱい挑みたくなってくるものだと豪快に語ったことに端を発している。まだ若いこともあって、レース前に心造の意味不明な挑発に乗って心を乱したりと、勝負師として甘さを見せてしまうときもある。

京野 夕 (きょうの ゆう)

競走馬「クロバラ」と「ミルクチャン」のファンであるOLの女性。年齢は31歳。東京競馬場の常連で、同じく競馬ファンの日高万里やひかるとも面識がある。競馬新聞を見たり、スマホを見たりしながら食べられる競馬場のワンハンドフードが好き。幼い頃から父親といっしょに競馬場を訪れており、当時はよく肉まんを買ってもらっていた。この肉まんが好きだったこともあり、そのまま競馬好きになったという経緯がある。また餃子も大好きで、焼き餃子の焼き目が直接舌に触れるように、焼き目を下にした状態で食べるというこだわりがある。

橘 みゆき (たちばな みゆき)

OLの若い女性。競馬ファンで、仕事終わりに川崎競馬場のナイターに行くのが趣味。何より川崎競馬場のグルメが大好きで、中でも特にコロッケとビールがお気に入り。子供の頃は家族とよく競馬場に来ていたが、大人になってからも地元の友人たちと、ただコロッケを食べるためだけに川崎競馬場に来ていた。

東雲 美里 (しののめ みさと)

OLの若い女性。競馬ファンで、仕事終わりに大井競馬場のナイターに行くのが趣味。ちなみに大井競馬が好きなのは所属騎手にイケメンが多いことが理由で、中でも騎手・矢真本文男を推している。会社では仕事にも慣れた中堅OLという位置づけで、東雲美里自身はそつがない代わりに愛想もなく、ただ淡々と業務をこなしている。そのため周囲からはクールな性格と見られ、中には東雲にあこがれる女性社員もいる。ただし競馬場に来て推しを前にすると一変し、頰を緩ませた恋する乙女になってしまう。

浦河 (うらかわ)

日高万里と同じ会社で働く同僚の青年。日高に興味を持って休日に食事に誘ったが、日高は休日は競馬場に入り浸りのため、あっさりと断られた。だが、この一件によって浦河自身も競馬に興味を持ち、単身東京競馬場を訪れた際に日高と遭遇。同時に、競馬と競馬場の魅力に触れることとなった。以来、日高や同僚のひかるを交えて、いっしょに競馬を楽しむようになる。

松浦 宏典 (まつうら ひろのり)

中央競馬の騎手を務める青年。しばらく不調が続き、レースでは連敗していたが、次のレースで力強い走りを見せてみごと勝利。これにより、からくも連敗を299で止めることとなった。会場に自分の横断幕を出して応援してくれているファンの存在には気づいており、連敗を止めたレースで、横断幕を出していたファンが鵡川優子であることを知る。

那須田調教師 (なすだちょうきょうし)

那須田厩舎の調教師を務める青年で、那須田みちるの兄。馬のことを心から愛し、レースの勝敗にかかわらず、ゴール後は出走馬のことを温かく称える心優しい人物。この姿勢は、那須田厩舎のスタッフ一人一人にまで浸透している。浦和競馬場所属の旗手である父親・那須田心造の珍妙な言動に関しても、即座にライバルであるみちるのペースを乱そうとする策略であることに気づいたりと、洞察力に優れる知性派でもある。

那須田 心造 (なすだ しんぞう)

浦和競馬場に所属する男性騎手で、那須田調教師、那須田みちる兄妹の父親。破天荒でつかみどころがなく、レース中にも鞍上から訳のわからないことを言ってみちるを挑発したりと、勝つためなら手段を選ばない子供っぽいところがあるが、その実力は確か。「浦和のナス」という、格好いいのかふざけているのかわからない異名を自称しており、浦和競馬場の騎手仲間からは「ナッスー」と呼ばれている。

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