概要・あらすじ
高1の春休みを利用して北海道へツーリングに出かけた久世駿平。だが、旅の途中で財布を落とし、バイクはガス欠に。あたりは人通りがほとんどない雪原の一本道という有様。ついに疲れ果て、雪の中で行き倒れ寸前になるが、競走馬の生産牧場・渡会牧場の次女・渡会ひびきに拾われ、どうにか事なきを得る。その後、帰りの旅費を捻出するため、渡会牧場でアルバイトをすることになった久世駿平は、ちょっと気弱な社長、切れ者の奥さん、それに美人揃いの四姉妹に囲まれた夢のような生活をスタート。
なかでも、同い年の渡会ひびきには、助けられたときから好意を抱いており、その気持ちは日増しに大きくなっていった。その一方で、競走馬の世界とは縁もゆかりも無かった久世駿平は、牧場で働くうちに競走馬を誕生させる魅力にハマっていく。
やがて、両親の言うままに勉強し、大学に進むことに疑問を持った彼は、思春期の少年らしい親への反発も手伝って高校を中退。度会牧場の正式な従業員として働くことを決意する。そして、いつか自分の手でダービー(東京優駿)で勝利する馬を取り上げることを夢見るようになるのだった。
登場人物・キャラクター
久世 駿平 (くぜ しゅんぺい)
有名進学校に通う、埼玉県在住の高校2年生。高1の春休みに北海道へツーリングに出かけた際、行き倒れかけたところを渡会ひびきに助けられ、それがきっかけとなり人生を競走馬と共に歩むことになった。性格面では取り立てて尖ったところは無く、押しが弱い印象を与えるものの、自己主張するときは強めに物を言えるタイプ。 加えて、他者の感情を素直に思いやれる優しい心の持ち主だが、その性格が馬に対しても発揮されてしまうため、渡会ひびきとの意見の食い違いの原因になることも。一人っ子なうえに両親が共働きで、幼い頃から鍵っ子だったため家族の団欒に憧れており、渡会家での生活を非常に居心地良く感じている。 また鍵っ子の副産物として、簡単料理のレパートリーが豊富で、その腕を活かして渡会家を飢餓の危機から救ったこともあった。頭の回転が速く要領がいいので、牧場の仕事を始めて以降、ミスらしいミスを犯していないのも隠れた長所。渡会健吾とは将棋を楽しみ、渡会たづなには勉強を教え、渡会ひづめにはTVゲームの相手をするなど、仕事以外にもその要領の良さは随所に発揮されている。
渡会 ひびき (わたらい ひびき)
渡会家の次女で、渡会佑騎とは双子の姉弟である。四姉妹のなかでは最も馬への愛情が深く、久世駿平と同じ16歳(登場時)だが、高校には通わずに家業を手伝っている。根は優しい子だが、重度の馬バカであるため、馬に関わらない人間に対してはぶっきら棒で無愛想な態度になりがち。 そのことから、あらぬ誤解を招きやすい。恋愛にも基本的に興味を抱いていないが、駿平との関わりを通じて、次第に彼に惹かれていくようになっていった。幼少時から馬の生死と身近に接してきたため、競走馬に対して冷徹なリアリストとしての判断を下せる一面がある。そのため、必要以上に馬に感情移入する駿平と意見が折り合わず、ケンカになることもしばしば。 ただ、他人の気持ちを理解でき、自分を顧みることもできるので、割とすぐに非を認めて仲直りする。また、そういった彼の純粋な感性や優しさを、言葉では否定しながらも魅力的に感じており、それがゆえに彼に好意を抱くようになった。
渡会 健吾 (わたらい けんご)
渡会牧場の社長で、渡会家の家長。ただし、渡会千草の婿養子として迎えられた人物である。婿入り以前は、競走馬と縁のない生活を送っていたため、妻やベテラン従業員たちに比べるとブリーダーとしての経験は浅く、彼ら(主に渡会千草)に頭が上がらない一面も。 また、そうした経歴から、牧場を任された当初は、ブリーダー関係者のマドンナ的存在である渡会千草を射止めたことへの嫉妬とも相まって、他のブリーダーたちから軽んじられていた過去がある。根がロマンティストなので、生産馬に対しての思いやりを持ちがち。このあたりは久世駿平と共通する部分で、同じ外様の出身ということもあってか、考え方や意見が一致することが少なくない。 ちなみに趣味は将棋で、駿平を相手に時々指している。腕前は稀に駿平に勝てる程度。また、非常な愛妻家で、二人きりのときは妻の事を「チーちゃん」と呼んでいる。
渡会 千草 (わたらい ちぐさ)
渡会健吾の妻で、四姉妹及び渡会佑騎の母である。渡会健吾が婿養子である関係上、渡会牧場で生まれ育ったのは渡会千草のほうであり、彼女が本来の牧場継承者だが、夫を社長に据え、彼を立て支えることに専心している。ロマンティストな面をもつ夫とは正反対に、辣腕を振るうリアリストであり、厳しい発言も多いため「鬼」と呼ばれることも。 が、浮き沈みの激しい牧場経営を維持できているのは、ひとえに千草の力が大きい。登場時は42歳で、年相応の年輪を重ねてはいるものの若いころから美人で知られており、ブリーダー関係者の憧れの的。加えて、普段はわりと無口で無愛想だが、外面は極めて人当たりが良く振る舞うため、競馬場に赴くと多くのオジ様たちに囲まれる。 ただ、千草本人は夫に一途で、その熱愛ぶりは二人きりのときに「ケンちゃん」と呼んでいるほど。
渡会 あぶみ (わたらい あぶみ)
渡会家美人四姉妹の長女。他人の世話を焼くことが生き甲斐で、子供の頃から妹たちの面倒をよく見ていたほか、長じてからは母親に変わって渡会家の家事全般を担う。いつも笑顔を絶やさないおっとり系で人当たりの良い美人だが、醍醐悟のつまらない冗談に本気でウケるなど、少々天然ボケなところも。 初登場時は19歳だが、久世駿平にバスタオル一枚の姿を見られても、動揺するどころかむしろ「はしたない姿でごめんなさい」と軽く謝る始末で、年頃の女性らしい感性はほとんどない。そういった面も含め、とても寛大な心の持ち主だが芯が無いわけではなく、許容範囲を超えた場合ははっきりと拒絶する頑固さも持ち合わせている。 また非常に酒癖が悪く、酔っぱらうと手近な人間に抱き着いたり、服を脱ぎ始めたりするほど。
渡会 たづな (わたらい たづな)
渡会家美人四姉妹の三女。初登場時は13歳の中学一年生。絵にかいたような真面目な子で、いわゆる学級委員長タイプだが、ちょっと頭に血が上りやすいのが玉に瑕である。久世駿平との初対面で全裸を見られたこと(これは完全な事故であったが)から、彼に対する対応は非常に冷淡だった。 が、駿平が渡会牧場での生活に溶け込んで行くにつれ、彼に恋心を抱くようになる。13歳の少女ということでまだまだ恋愛に初心であり、直球勝負できるほどの勇気はなく、勉強を教えてもらったり、手作りのお菓子を届けたりするのが精一杯。駿平に対しても素直になりきれず、持ち前の気位の高さも相まって、俗にいうツンデレっぽい感じになってしまう。
渡会ひづめ (わたらい ひづめ)
渡会家美人四姉妹の末女。初登場時は9歳の小学三年生。姉たちとは変わって、ミーハーなマセた小学生で、余計な口を挟んではよく家族から叱られている(ただし、懲りている様子はない)。また、年上に対しても物怖じせず、かなり生意気な口を利き、ため口なのはもちろん、久世駿平のことを「しっぽ」、醍醐悟に至っては「さる」と呼ぶほど。 ちなみに、趣味はTVゲームで、駿平と対戦したり、攻略ヒントを教えてもらったりする姿がよく見られる。
醍醐 悟 (だいご さとる)
日本最大の競走馬生産牧場である醍醐ファームの四男坊で初登場時は19歳、獣医学部に通う大学生。渡会ひびきに気があるため、用事もないのによく渡会牧場を訪れる。紳士的で礼儀正しい青年であり、ぽっと出の恋敵である久世駿平に対しても良好な関係を築いた。逆に言えば、男としての執念深さや野心に欠け、そのあたりを渡会千草に指摘されたことも。 渡会牧場の従業員らとも仲良しだが、大牧場の末っ子という環境に育ったためか、意図せず実家の自慢をする癖を持つほか、冗談がつまらないことにも定評がある。ただ、周囲の人間はすでに慣れっこで、そのことは特に気にされていない。ちなみに、父である醍醐秀隆ともども観戦に行くと馬が勝てなくなるというジンクスがあり、競馬場に顔を出すなと釘を刺されている。
梅ちゃん (うめちゃん)
渡会牧場の従業員のひとりで、関西弁を喋るキツネ目の小柄な男性。本名は不明で、従業員らからは「梅ちゃん」「梅さん」と呼ばれている。渡会牧場以前の経歴も不明で、従業員に彼の過去を知る者はいない。加えて、関西方面に赴くことを非常に嫌がるため、「関西で恋人を殺して逃亡している」という噂が実しやかに囁かれた(本人は否定)。 競馬に関する知識が豊富で、馬券を買うのが趣味だが、穴狙いばかりで外すことがほとんど。一時期、当たりまくったことがあったが、同時期に渡会牧場にとって悪いことが連続したため、「梅ちゃんが馬券を当てるとよくないことが起こる」というジンクスがまかり通るようになった。
橋野 堅太郎 (はしの けんたろう)
渡会牧場の従業員のひとりで、大柄で筋肉質な体格を持つ男。従業員らからはケンさんの愛称で親しまれている。ゴツい体格の割にまつ毛の長い目、分厚い唇、気軽なボディタッチと、ゲイを連想させる要素が盛り込まれたが、実際にはノンケで渡会あぶみのことを密かに想い続けている。子供の頃は小柄だったため、騎手を目指していたが、養成学校入学後に体格が育ったために、調教師志望へと転向したという経歴の持ち主。
竹岡 竜二 (たけおか りゅうじ)
芹沢厩舎に所属する現役最年長のベテラン騎手で、初登場時は49歳。義理を重視した鞍選びで有力馬に乗る機会は少な目だが、弱い馬を予想以上の着順に持ってくる手腕を持つことから人気薄の魔術師と呼ばれている。同じ芹沢厩舎から騎手デビューした渡会佑騎を何かと目に掛けており、大先輩として様々なことを伝授した。
渡会 佑騎 (わたらり ゆうき)
渡会家の長男で、渡会ひびきの双子の弟。久世駿平が渡会家と出会ったときには、すでに家を出奔しており、競馬学校で騎手になるために寮生活を営んでいる。両親、とくに渡会千草とはかなり冷えた関係で、渡会家のなかでは「家を出て行った人間」という扱い。 ただ、姉妹たちはそこまででもなく、たまに帰宅すると普通の兄弟といった感じで接している。ひびきと似て、基本的に無愛想なのに加え、言動がかなりシニカル。とくに、渡会牧場の生産馬、及び駿平に対しては辛口な発言が多い。
ストライクイーグル
『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』に登場する競走馬。渡会牧場産駒の牡馬で、父はダイゴアンバー、母はインデアナゴッデス。デビューから三連勝した後、1995年のスプリングステークスで優勝。その後、京都新聞杯3着、菊花賞優勝、ジャパンカップ3着など順調な成果を上げた。素晴らしい差し脚をもつステイヤーだが、故障しやすいことや気分屋であることが欠点。 ストライクイーグルのレースは、物語のひとつの軸となっており、久世駿平の成長にも大きな影響を与えている。
アルデバラン
『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』に登場する競走馬。醍醐ファーム産駒の牝馬で、父はサドンリィシングス、母はダイゴアルテミス。新馬戦優勝後、弥生賞、皐月賞優勝、東京優駿2着、京都新聞杯優勝などそうそうたる結果を積み上げたスターホース。短~中距離に極めて強く、2200m以下では生涯負けなしだが、それ以上の距離になると弱い。 実家の生産馬のなかでも醍醐悟がとくに贔屓している一頭で、ストライクイーグルとはライバル関係に当たる。
弓削 匠 (ゆげ たくみ)
男性。競走馬の騎手。競馬新聞などで「天才」と呼ばれる現役では最強。最年少・最速で通算1000勝を挙げている。競走馬ヤシロハイネスの主な騎手だがストライクイーグルにものり、菊花賞を制した。
猪口 繁行 (いぐち しげゆき)
男性。北海道にある北稜グループを経営する猪口家の次男。渡会あぶみの見合い相手。仕事上は有能な人物だが自信家で強引に物事を進めることがある。渡会あぶみに結婚を断られる。
ベルエキップ
『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』に登場する競走馬。牡。渡会牧場の生産馬。北海道を旅行中にいきだおれていた久世駿平を発見し、渡会ひびきとの出会いを作った馬。
アダタラヨイチ
『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』に登場する競走馬。牡。渡会牧場の生産馬。ドルチェヴィータの双子の弟。ヒルダの初の仔。双子という理由で売れなかったが、久世駿平を育てるために処分を免れ渡会牧場で育成される。育ったところを調教師の目にとまり競走馬としてデビューした。我慢強くて騎手の言うことをよくきく。 抽選に通って日本ダービーに出場した。
場所
渡会牧場 (わたらいぼくじょう)
『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』に登場する架空の牧場。北海道静内郡静内町御園にある中規模牧場。渡会健吾が社長を務める。競走馬の生産が中心だったが、渡会健吾が育成も始めた。生産馬にはストライクイーグルなどがある。
醍醐ファーム (だいごふぁーむ)
『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』に登場する架空の牧場。北海道千歳市にあり日本最大の競走馬の生産牧場。社長は醍醐秀隆。傘下にオタワホースパークや醍醐レーシングクラブを有する競走馬の一大グループでもある。生産馬は多くのタイトルを獲得している。馬主に競走馬を販売するほか、社長などの名義でも多くの馬を走らせている。
書誌情報
じゃじゃ馬グルーミン★UP! 14巻 小学館〈コミック文庫(青年)〉
第1巻
(2003-12-13発行、 978-4091935014)
第3巻
(2004-02-14発行、 978-4091935038)
第4巻
(2004-02-14発行、 978-4091935045)
第5巻
(2004-04-15発行、 978-4091935052)
第6巻
(2004-04-15発行、 978-4091935069)
第7巻
(2004-05-15発行、 978-4091935076)
第8巻
(2004-06-15発行、 978-4091935083)
第9巻
(2004-07-15発行、 978-4091935090)
第10巻
(2004-08-10発行、 978-4091935106)
第11巻
(2004-09-15発行、 978-4091935410)
第12巻
(2004-10-15発行、 978-4091935427)
第13巻
(2004-11-13発行、 978-4091935434)
第14巻
(2004-12-15発行、 978-4091935441)
じゃじゃ馬グルーミン★UP! 2巻 小学館〈コミック文庫(青年)〉
第2巻
(2003-12-13発行、 978-4091935021)