概要・あらすじ
遺伝学者の凪野泰輔はディングルという名馬の血統にこだわりマルスという仔馬を作り出す。泰輔の息子で騎手の馬守は、母の遺志と父の志を受けマルスとともに競馬界へと乗り込んで行く。マルスは育成時代に宿命のライバルとなる白の一族と出会い、競走馬としてデビュー後には白の一族をはじめとする強敵と熱戦を繰り広げてゆく。
登場人物・キャラクター
凪野 馬守 (なぎの まもる)
マルスの主戦騎手。競馬騎手を目指し競馬学校に寄宿する生徒。競馬学校の成績は同年代では抜群であった。マルスの誕生時は学校から脱走するほどの行動力の持ち主。後に中央競馬会の騎手になるが、当初は2着が続き悩む。欠点に気づき初勝利を得てからは新人騎手とは思えない成績を残し、1年目にしてG1レースに騎乗する資格をクリアするほどの腕前。 名前は母が「馬を守るような優しい子になるように」と願いを込めて考えた。性格は単純明快で、楽観的なところが強い。女好きな一面も見せることがある。
マルス
『蒼き神話マルス』に登場する主役の馬。逆子で生まれた。ローマ神話最強の軍神の名をとってつけられた。主戦騎手である凪野馬守以外はレースで乗ることはなかった。虚弱体質だった父を持つため、セリに出た際には初値がなかなかつかなかったが、最終的には3000万の値がついてセリ落とされる。馬主は日崎静。シルフィードのライバルで闘神と呼ばれたマキシマムと同じディングルの血統。 初戦から連勝を重ねるが、3歳馬の重賞レース・函館ステークスでエルソル、エルルナの2頭との接戦のあと倒れる。その後、3歳G1朝日杯でエルディオス、エルソルと対戦し勝利。3歳を無敗で終わる。4歳になり最初のレース、GⅢレース共同通信杯では育成馬時代を共にしたハヤタと再会。 このレースで初黒星を喫したマルスは勝利への意欲を失いかけるが、エルアルコンの姿を見て闘争心に火をつける。4歳2戦目となるスプリングステークスでは接戦の末にエルアルコンに勝利するが、皐月賞ではエルアルコンに惜敗する。4歳4戦目には白の四天王とハヤタとともにダービーに出走。 激戦の末にダービーを制す。ダービー後に引退し種牡馬となる。しかし、海外で出走していた「シルフィードの後継者」と言われるエアリアルの登場により地方馬として再起。エアリアルとジャパンカップで対戦し勝利するも、ゴール直前で絶命。生涯成績10戦8勝、JRA東京競馬場の一角にその銅像が作られた。
凪野 泰輔 (なぎの たいすけ)
馬守の父で、明都大学に在籍する研究者。遺伝学者として最強のサラブレッドを生み出すことに挑戦し、ヘルメスを作りあげた。しかしヘルメスは病弱だった上に、妻の結を病死させてしまい挫折する。しかし、結の残した研究ノートで再起し、より強いこどもを作るため研究を重ねマルスを生み出す。
凪野 結 (なぎの ゆい)
馬守の母。夫である泰輔の研究助手としてヘルメスを作り上げた。お嬢様育ちで苦労知らずだったため、ヘルメスの世話や泰輔の手伝いで身体を壊し、馬守が中学の時に亡くなる。ヘルメスの体調を常に気にし、どうすればヘルメスの仔が丈夫に生まれるか考え続け、研究ノートに残していた。
ディングル
『蒼き神話マルス』に登場する馬。ヘルメスの父親であり、マルスの祖父にあたる。アメリカを舞台に活躍した馬で、現役時代にはGⅠを5勝し、生涯成績は13戦11勝。蒼い瞳を持つことからパーフェクトブルーと呼ばれる。引退後は種牡馬になり世界各地に子どもを残していた。後に日本で種牡馬生活を送り名馬を生み出すが、馬主の急死により転売されてしまう。 泰輔の親友の才谷僚平によって野良馬になっていたところを見つけ出されるが、子どもを作れない体になっていた。
ヘルメス
『蒼き神話マルス』に登場する馬。マルスの父。音速の旅人と呼ばれ、蒼い瞳に金色のたてがみがトレードマーク。研究用の動物を作るための明都大学付属牧場で初めて作られたサラブレッド。ディングルの血統を近親交配させ走りは他を寄せ付けない強さを持ったが、その反面で体が弱く仔馬の時から度々熱を出す。レースに出るようになってからも病気のため重賞を回避することがあった。 早期に引退し種牡馬になるが、その仔馬たちはマルスを除き死産していった。マルスのダービー出走の直前に病死。
エアリアル
『蒼き神話マルス』に登場する馬。名前は「風の妖精」が由来である。「白い稲妻」と呼ばれたシルフィードの孫にあたるサラブレッド。母はシルフィードの初仔のシルフィーナ。アメリカ生まれで海外を主戦場としていたため、4歳時にはマルスたちとの対戦はなかった。シルフィードの真の後継者として白の四天王を次々と破っていく。
天田 荒一郎 (あまだ こういちろう)
マルスが白の四天王に対抗するため、新しい育成牧場として選んだ天荒牧場の主で、馬の育成の名人と呼ばれている。北海道の北東部の海の近くに牧場を持っている。過去にはダービー馬となったレッドドラゴンを輩出したが、同僚の厩務員の陰謀で馬にドーピングをした疑いをかけられ競馬会から追放状態になっている。 マルスの初出走の前にはドーピング疑惑が再燃するが、疑いが晴れ積極的に育成へと取り組むようになる。
谷村 建太郎 (たにむら けんたろう)
中央競馬会に所属する調教師。元騎手で、過去にはシルフィードにも騎乗していた。馬守が騎手実習生の時から世話になり、そのまま馬守を所属騎手として受け入れた。マルスの活躍で人気厩舎になる。
フェイユン号 (ふぇいゆんごう)
『蒼き神話マルス』に登場する馬。マルスの母親。ディングルと無縁の血統の牝馬を探していた馬守たちが見つけた馬。銀行家の後藤一弥の持ち馬で、50戦3勝の決して名馬とはいえない成績だったが、体が丈夫だったため走り続けさせられていた。しかし、酷使させられたため右前脚が曲がっている。購入の際、後藤が2千万円の値を提示し、泰輔が家を売り払った上、退職金の前借りまでして購入。 気丈な馬で出産の際には逆子で生まれそうになった子どもを、体を揺すって正しい位置にして産み落とした。難産だったためマルスを非常に可愛がり離さず、マルスの乳離れを遅らせる結果になった。
紅藤 サキ (くどう さき)
白の一族の馬主。紅藤財閥の一人娘。腹違いの兄、早川ジンがいる。10歳の時にユキカゼとサザンウインドという馬に出会い、馬に魅せられる。社長補佐の相島の陰謀で死にかけるもユキカゼに助けられる。その後、急逝した父の跡を継ぎ、ユキカゼの仔シルフィードを見守る。 さらにシルフィードの子どもの1頭を引き取り、その血統で宿敵であるディングルの血統に挑むことを決意する。性格は非常に冷徹できつく見えるが、それは競馬に対しての熱意のあらわれであり、馬に接するときには無邪気な笑顔や、心配し涙を見せることもある。
ハヤタ
『蒼き神話マルス』に登場する馬。漆黒のたてがみと、額に黒い星を持つ。育成時代のマルスの仲間で、マルスが育成牧場に入るまでは同世代のリーダー的な立場だった。後から育成牧場に入った白の四天王にマルスとともに挑むが、幼い体に負担がかかりすぎ肺から出血してしまい倒れる。しかし、関西一の調教師である河原崎玄三によって再起。 関西で活躍し、黒い幽霊と呼ばれるほどになる。主戦騎手は馬守と同期の野々村那智。
日崎 静 (ひざき しずか)
結の父親で、馬守の祖父に当たる。日崎商事の会長。結と泰輔の結婚を認めていなかったため、娘を盗んだ上に死に追いやったと考えていた。結の研究ノートを見て心を動かされ、後藤一弥とセリあいながらもマルスの馬主となる。
トール
『蒼き神話マルス』に登場する馬。雷神の異名を持つマルスの息子。母に白の一族を持ち、ディングルの虚弱体質を補い生まれた最高傑作と呼ばれる。白い馬体と蒼い瞳を持ち、黒いたてがみは父親のマルス譲りである。マルス血統の最初の馬となる。
集団・組織
白の一族 (しろのいちぞく)
『蒼き神話マルス』に登場するサラブレッドの集団。「白い稲妻」と呼ばれたシルフィードの血を受け継いだサラブレッドの一族。シルフィードが事故で急逝したため、シルフィードジュニアが一族の種牡馬となっている。マルスと同世代では「白の四天王」と呼ばれる4頭が特に注目されている。白の四天王は、「戦慄の白き翼」と呼ばれるエルアルコン、白の破壊神と呼ばれるエルディオス、「双頭の白魔」と呼ばれるエルソルとエルアルコンの4頭。 いずれも紅藤サキが馬主である。