ブレイズ・ソー・エッジ

ブレイズ・ソー・エッジ

パッとしない少女だったアンドレア・ストロウヘッド(ドレア)は、聖遺物である<<象る炎の剣>>を引き抜いたことで聖人として覚醒。そのお目付け役となったネオン・デナリウスと共に学園生活を送りつつ、カイジンや悪魔などの脅威と戦うこととなる。激動する世界に翻弄されつつも、ネオンとの絆を育みながら世界の真実を見定め、その崩壊に抗って戦うドレアの姿を描くファンタジーアクション。「月刊ヤングキングアワーズGH」2018年5月号から2020年2月号にかけて連載された作品で、吐兎モロノブにとって初の連載作品にあたる。

正式名称
ブレイズ・ソー・エッジ
ふりがな
ぶれいず そー えっじ
作者
ジャンル
アクション
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あらすじ

第1巻

アンドレア・ストロウヘッド(ドレア)は、家族とうまくいかず、通っていた学校もやめて、さえない生活を送っていた。その一方で、謎の少女と邂逅しつつも、騎士によって殺害されるという内容の夢を、頻繁に見るようになっていた。そんな中、ドレアは悪友であるロバート・ジャンクション・カニンガムから、中央教会と呼ばれる区域への落書きに誘われる。やることのないドレアはこれに付き合うが、折悪くジョーザン一味の取り引き現場に居合わせてしまい、口封じのために殺害されかかる。しかしそこに一人の少女が現れ、ドレアたちは窮地を救われる。その少女こそが、ドレアの夢の中に出てきていたというネオン・デナリウスだった。そして翌日、ドレアは気まぐれから紡錘祭に参加するが、そこでネオンと再会。案内すると申し出る彼女に同行し、道中で<<象る炎の剣>>の実物を見せられるが、そこに突如として悪魔が現れる。ネオンはドレアを逃がすために悪魔に立ち向かうが、彼女の想定をはるかに上回る悪魔の力に苦戦を強いられる。ドレアはネオンを放ってはおけないと考え、居ても立ってもいられず<<象る炎の剣>>を台座から引き抜く。その結果、髪の毛の色が白く変色、さらに体に文様が浮かび上がるなど異様な姿に変化したドレアは、<<象る炎の剣>>を振るって悪魔を打ち倒し、ネオンの命を救う。こうして、紡錘祭における騒動は鎮圧されたが、首謀者の一人であるアントワードは、アラネアストラを瓦解させるための計画を進めるべく暗躍を続ける。一方、ドレアが500年にわたって空位だった聖人として覚醒したことは、維術協会の会長であるパドマ・ドラグラインの知るところとなり、彼女の主催する蓮の議会に呼び出されたドレアは、今後の身の振り方を慎重に選ぶように求められ、さらにお目付け役としてネオンを派遣されることになる。

第2巻

<<象る炎の剣>>を引き抜いたことで、聖人として覚醒したアンドレア・ストロウヘッド(ドレア)は、維術協会タントラ教団残り火の財団など、さまざまな組織から要注意人物としてマークされるようになる。そして、これらすべての組織とつながりがあるネオンの勧めによって、彼女の父親であるゼノン・デナリウスが学院長を務める維術学院に、聖人候補科として入学することとなった。ドレアは、つかみどころのない教師のオリビエ・フィロジェニーや、努力を重ねたゆえに、ドレアを聖人として認められないでいるセラ、学院長の娘であるネオンを快く思わないゾーリャなどの曲者たちに翻弄されつつも、ネオンと絆を育みつつ、学園生活にも次第に慣れていく。そんな中、ドレアは<<象る炎の剣>>が、実際は誰にでも抜くことが可能であることと、アラネアストラ自体が、EDGEの侵食によって無と化した世界の中で、維術によって無理やり構築されていること、さらに近いうちに維術に限界が訪れ、アラネアストラもEDGEによって無に帰す可能性が高いことを明かされる。そして、これらの真実に打ちのめされそうになりつつも、「世界ではなく、私を守ってほしい」というネオンの願いを受けて、自分の存在を肯定するために<<象る炎の剣>>を振るうことを誓う。しかし、その決意をあざ笑うかのように、アントワードが襲撃を仕掛けてくる。アントワードは、聖人と化したドレアに虚飾の央環がきかないことを確認すると、本来の姿を現して全力で排除しようと挑みかかる。しかし激闘の末に、ネオンとの絆によって新しい姿を得た<<象る炎の剣>>の一撃により、跡形もなく消滅する。自らの出自を明かしたネオンは、ドレアと共にアラネアストラから飛び出す。そして、追ってきたパブロ・シュヴァイクを退け、世界の真実を探るべく、EDGEで満たされた外の世界に向けて旅立つ。

登場人物・キャラクター

アンドレア・ストロウヘッド

アラネアストラの城下町で暮らしている女性。家族や親しい友人からは「アニー」と呼ばれている。ネオンからは、「アニー」が<<象る炎の剣>>の元の持ち主である聖アンデルセンと被ってしまうことから「ドレア」と呼ばれている。若干気だるげな少女で、家族とうまくいっておらず、アニーの母親に勧められた学校にもなじめず、途中退学してしまうなど、絵に描いたような落ちこぼれ。ピザ屋のアルバイトをしながら、パッとしない毎日を過ごしていたが、悪友であるロバート・ジャンクション・カニンガム(ロブ)とつるみながら、いつか自分が自分として生まれた理由と生きがいを得たいと願っている。ある日を境に謎の少女と出会い、屈強な体格の騎士に殺害されるという夢を頻繁に見るようになり、ロブと共に事件に巻き込まれた際に、夢の中で出会った少女であるネオン・デナリウスと面識を得る。そして、何げなしに参加した紡錘祭でネオンと再会し、彼女から中央教会を案内してもらう。その際に<<象る炎の剣>>が刺さっている台座を見せられ、興味を抱く。さらにそこで悪魔の襲撃に遭い、自分を守るために窮地に陥ったネオンを救うため、無我夢中で<<象る炎の剣>>を引き抜いた。この時、剣の中に眠る聖アンデルセンの記憶が流れ込み、聖人として覚醒した。このことがきっかけとなり、維術協会、タントラ教団、残り火の財団などの組織から注目されることとなり、彼らが主催する蓮の議会に呼び出された結果、聖人候補生としてネオンと共に維術学院に通うことを余儀なくされる。それからは、気だるさ感は相変わらずだったが、アンドレア・ストロウヘッド自身も新しい何かになれるかもしれないと前向きに考えるようになる。さらに、カイジンであるアントワードとの戦いを経て、ネオンと固い絆を育んだ。聖人になったことで<<象る炎の剣>>を自在に現出できるようになったほか、身体能力も飛躍的に上昇している。しかしそれでも、幼い頃からフリクトのもとで修行を重ねたセラなどには及んでいない。

ネオン・デナリウス

残り火の財団の代表を務めるゼノン・デナリウスの娘。ペケと呼ばれる生物を自在にあやつり、自身も優れた資質を持つ二級維術師として知られている。また、タントラ教団の信徒でもあり、アラネアストラの根幹を成す三つの組織のすべてに深くかかわっている。容姿も優れており、それを生かしてモデルのような仕事も請け負っている。ジョーザン一味に襲われていたアンドレア・ストロウヘッド(ドレア)を救助した際に、見ず知らずの彼女から自分を知っていると告げられ、興味を示す。そして、紡錘祭に参加した彼女に案内を申し出る形で同行させ、その道中で夢で会ったことがあると告げられたために、自分を救ってくれる存在となってくれることを期待するようになり、<<象る炎の剣>>がおさめられている台座に案内する。そして、剣を抜くように誘いかけるが、侵入してきた悪魔から襲撃を受け、ドレアを逃がすために囮を引き受ける。悪魔の予想外といえる力に苦戦を強いられるが、<<象る炎の剣>>を引き抜いて聖人として覚醒したドレアに助けられた。そして、維術協会、タントラ教団、残り火の財団から注目された彼女を、監視するという名目でそばに置くことに成功し、共に維術学院に通うことになる。学院では、理事長の娘ということもあって注目を集めており、ネオン・デナリウス自身のそっけない性格も相まって、ゾーリャなどのように、嫌ってくる学生も少なくない。その一方、知識欲や好奇心などが旺盛で、アラネアストラの外に広がる空間へ出ることを願っている。そのため、裏では蓮の議会をゆさぶるために無貌の蜘蛛やカイジンをひそかに手引きして、誰かが<<象る炎の剣>>を引き抜くことを期待していたが、ドレアがそれを行うことまでは予測していなかった。また、当初はドレアのことを、世界を変えるために必須となる要素であると考えていたが、共に戦ってアラネアストラの崩壊と向き合うにつれて、互いに掛け替えのない存在として認識し合うようになる。母親であるパリア・デナリウスは、過去の事故でEDGEに飲み込まれるものの、カイジンとして生還した過去を持つ。その影響でネオンの体にもカイジンの特徴が備わっており、高い身体能力に加え、EDGEに対して強い耐性を持つ一因となっている。ただし、聖人として覚醒できなかったり、維術の威力が不安定であるなど、弊害も持ち合わせている。

ペケ

ネオン・デナリウスが引き連れている、謎の生物。四足歩行型の動物の骨で構成されており「Woof」という独特な鳴き声を特徴としている。聴覚が極めて優れており、ネオンが発するかすかな音に反応して、彼女の意のままに動く。また、ディヴィッド・ジョーザンが、ネオンの動きを封じるためにアンドレア・ストロウヘッド(ドレア)を人質にした時も、わずかなスキをついて食らいかかり、ドレアを瞬時に救出するなど、敏捷性も群を抜いている。しかし、戦闘能力は悪魔に及ばず、中央教会を襲撃してきた悪魔と戦った際は逆に圧倒され、全身をバラバラにされるほどのダメージを負ってしまう。のちに回復して、ネオンやドレアと共に維術学院に登校する。

ロバート・ジャンクション・カニンガム

アラネアストラの城下町で暮らしている青年。アンドレア・ストロウヘッド(ドレア)の悪友で、彼女を「アニー」と呼び、彼女からは「ロブ」と呼ばれている。無職でありながらあちこちに借金をつくったり、複数の恋人をつくって自堕落な日々を過ごすなど、典型的なろくでなしとして知られる。さらに芸術家を自称しており、中央教会付近の壁画に落書きを残そうとすることもあるなど、信心などともまったく縁がない。このような行いから、借金取りやタントラ教団などの騎士らに日々追われており、トラブルに巻き込まれることも少なくない。その反面、傲慢や横暴とは縁遠く、誰に対しても気さくに接するため、ドレアからも数少ない友人として親しまれており、ロブのせいでひどい目に遭わされても、責任を追及したり怒ったりする様子は滅多に見られない。ある時、中央教会周辺の壁に落書きを行い、さらにジョーザン一味の隠密活動の場に居合わせたため、ディヴィッド・ジョーザンから口封じとして殺害されかける。彼らの情報を察知したネオン・デナリウスおよびパブロ・シュヴァイクの介入によって助けられるものの、タントラ教団の騎士から厳重注意を受け、しばらく表立った活動ができなくなる。ドレアが聖人として覚醒してからは一度会ったきりで、それ以降は彼女が維術学院に入学したため、会うことはいっさいなかった。しかし、かつて中央教会周辺の壁に描いた落書きが、新たな聖人の誕生を示唆していたと勝手に解釈されて、さらにアラネアストラがEDGEに飲み込まれた際も、落書きの周辺は形を維持したままで、ロバート・ジャンクション・カニンガム自身もEDGEに飲み込まれず、新しい世界でドレアの帰りを待っていた。

パブロ・シュヴァイク

ネオン・デナリウスの師匠を務めている維術師の青年。部下たちからは「サー・シュヴァイク」と呼ばれる。つねに帽子をかぶっており、口元に縫い目のような模様が刻まれている。維術師としての腕はネオンをはるかにしのぎ、EDGEの力で強化されたディヴィッド・ジョーザンを一撃で倒すほか、聖人に覚醒し、カイジンであるアントワードを打ち倒すほどの力を得たアンドレア・ストロウヘッドとも互角以上に渡り合う実力を誇る。任務に私情を挟まない冷徹な性格で、他者の命を奪う判断も辞さないが、異端者である無貌の蜘蛛に対しても、情報さえ得られればあっさり退くなど、必要以上に人を傷つけることは好まない。維術協会の所属でありながら、残り火の財団の代表であるゼノン・デナリウスに深い忠誠を誓っており、私的な場では一人の友人として、対等な立場で接している。そのため、彼からの指示は維術協会の任務より優先するほどの絶対的なものとして拝命している。任務においては、ネオンと対等の目線で接しているが関係は良好で、ひねくれることのある彼女から比較的素直な様子で接されることが多い。EDGEに飲み込まれたアラネアストラが、塔の術式によって新たな形に生まれ変わろうとした際は、ゼノンの頼みによってアラネアストラから抜け出したネオンを連れ戻そうとした。

ディヴィッド・ジョーザン

ジョーザン一味の頭領を務めている男性。無貌の蜘蛛やカイジンであるアントワードとつながりがあり、彼らと連携する形でアラネアストラを崩そうと暗躍している。ただし、ネオン・デナリウスが彼らをひそかに手引きしていることは知らない。潜入工作のために中央教会へ向かったところ、アンドレア・ストロウヘッド(ドレア)およびロバート・ジャンクション・カニンガムと鉢合わせ、口封じのために彼らを部下に始末させようとする。しかし、一味の行動はすでに維術協会に把握されており、派遣されたネオンに部下ともども圧倒されてドレアを人質に取ろうとするものの、ペケによって阻止される。これによって進退窮まったことを悟ると、アントワードから受け取っていたEDGEの入っていたビンを割って、自分ごと周りのすべてを消滅させようとするが、遅れて駆けつけたパブロ・シュヴァイクによって阻止された。

大尉

タントラ教団が擁する憲兵団に所属している男性。アラネアストラの治安維持、ジョーザン一味や無貌の蜘蛛などの反社会組織やテロリストに対する尋問などを担っている。「骨董品のお守り」と揶揄したり、パブロ・シュヴァイクがジョーザン一味を捕えた際も、よけいなことをしないようにと釘を刺すなど、維術協会のことを快く思っていない。紡錘祭では中央教会の警備を担当していたが、突然現れた悪魔の襲撃を受け、悪魔が発生させたEDGEに部下ともども飲み込まれ、跡形もなく消滅する。

アンドレアの母

アンドレア・ストロウヘッド(ドレア)の母親。娘たちに対しては最低限のしつけこそ行っているが、ドレアがかつて通っていた学校に行かなくなった際も、自分のやるべきことを優先するなど、情が薄い様子を見せることが多い。そのため、ドレアからも苦手意識を持たれており、彼女があまり家に帰りたがらない一因でもある。ただし、厄介者であると認識しているロバート・ジャンクション・カニンガムとの交友を控えるように言い聞かせようとするなど、まったく心配していないわけではない。

アンドレアの妹

アンドレア・ストロウヘッド(ドレア)の妹。ドレアに似て家族との関係は悪く、姉に対しても公然と皮肉を言い、ドレアからも「ただの妹」以上の印象を持たれていないなど、冷めた印象を与え合うことが多い。

アントワード

アラネアストラの転覆を企んでいる、カイジンの少女。自由奔放な性格で、悪魔はおろか維術師すら圧倒するほどの実力を誇る。ディヴィッド・ジョーザンにEDGEが内包されたビンを渡して超人化するように仕向けたり、無貌の蜘蛛と結託してタントラ教団の信仰をゆるがそうとするなど、世界の姿を変化させるために暗躍している。人間のことを基本的には見下しているが、強い意志を持つものに対しては敬意を向けることが多い。紡錘祭では中央教会に悪魔を差し向けるが、追ってきたフリクトを聖具である虚飾の央環で返り討ちにし、灰に変えることで消滅させる。また、ある意味アントワード自身と似たような身である聖人に強い興味を抱いており、アンドレア・ストロウヘッド(ドレア)が<<象る炎の剣>>を引き抜いて聖人になった際は、アラネアストラがEDGEに侵食される前に彼女に会うことを望み、自ら維術学院に赴く。そして、虚飾の央環を無効化させる聖人を前に真の姿を現し、ネオン・デナリウスを守るために戦う彼女を賞賛しつつも、間もなく終わりを迎える世界の中では意味がないとうそぶく。しかし、自分の意志は自分のものであると主張したドレアと、ネオンのあいだに芽生えた絆によって強化された<<象る炎の剣>>の新たな姿の前に敗北する。

オーム

アラネアストラの転覆を企んでいる、カイジンの青年。ある程度人間に近い姿をしているアントワードとは対照的に、聖像のような見た目をしている。淡々と任務をこなす冷静沈着な性格で、アントワードの行動のフォローなどに追われることが多い。アントワードと異なり、人間を見下すことはせず、強い相手と戦うことを望んでいる節がある。タントラ教団の信仰がゆるぎ、その影響でアラネアストラがEDGEに侵食されると、後始末のために維術学院に現れる。そして、多数の悪魔を単身で打ち倒したセラに対してその力量に興味を抱き、戦いを挑む。

フリクト

維術協会に所属している特等維術師の男性。ひたすらに強さを求め続けるストイックな性格の持ち主。過去の偉人たちが書き記した奇蹟の記録を、両手および両足に文様として刻んでおり、そこから生み出される力を全身に宿すことで、悪魔をたやすく制圧するほどのパワーを得られる。その実力から、協会では過去500年のあいだで最も聖人に近づいた維術師と称えられている。しかしフリクト自身は、自分の力に満足してしまってはこれ以上は強くなれないと考え、つねに上を目指そうと志している。弟子のセラからは、力量ならば聖人と呼ばれるにふさわしいとまで考えられているなど、強く敬愛されているが、パドマ・ドラグラインからは、この要素をメサイア・コンプレックスと揶揄されている。紡錘祭を悪魔に襲撃されると真っ先に出動し、三体のうちの一体を瞬く間に行動不能にした。さらに、アントワードの姿を確認すると追いすがり、そのまま捕えようとする。しかし、彼女の持つ虚飾の央環によって全身の時の流れを加速させられ、老化の末に消滅してしまう。フリクトの死はすぐにセラに伝えられ、彼女が憤る原因の一つとなった。

パドマ・ドラグライン

維術協会の会長を務めている女性。蓮の議会の議長も兼任し、アラネアストラにおける事実上の統治者として知られる。誰に対しても穏やかな物腰で接しており、残り火の財団の代表であるゼノン・デナリウスとの関係もおおむね良好。ただし、フリクトのことをメサイア・コンプレックスと揶揄するなど、親しい関係の人間に対してはくだけた態度を取ることも少なくない。アンドレア・ストロウヘッドが<<象る炎の剣>>を引き抜き、聖人として覚醒した際は、近いうちにアラネアストラがEDGEに飲み込まれて形を失うことを知っており、歴史のすべてを織り成した記録を遠い未来の人々に継承させるため、塔の術式と呼ばれる計画を実行に移そうとしている。その正体は、かつてEDGEに飲み込まれながらも強靱な意志で自分をつなぎ止めたカイジンの一人で、蜘蛛に似た真の姿を持つ。このことは、ゼノンなどのごく少数の関係者以外からは知られていなかったが、無貌の蜘蛛のメンバーから襲撃を受けた際に正体を現し、彼らを完膚なきまでに駆逐し尽くした。

オリビエ・フィロジェニー

維術協会に所属している維術師で、維術学院の教師も務めている青年。協会の関係者からは「サー・フィロジェニー」の敬称で呼ばれていることが多い。知的な雰囲気を漂わせた風貌で、実際に豊富な知識と優れた洞察力を持ち合わせている。しかしその一方で、ひょうひょうとした食えない性格の持ち主でもあり、無貌の蜘蛛やアントワードの暗躍が発覚した際には、協会の会議で内通者の存在を示唆し、パブロ・シュヴァイクから難色を示され、パドマ・ドラグラインからもたしなめられた。また、<<象る炎の剣>>を引き抜いて聖人となったアンドレア・ストロウヘッド(ドレア)に強い興味を示しており、彼女の担任となったことを幸いとして、聖人の詳しい能力を検証しようとしてドレアから苦手意識を持たれるなど、好奇心が旺盛な一面も持つ。また、生徒たちに対しては放任主義で、セラがドレアを聖人として認めず、決闘を仕掛けた時も、止めるようなことはしなかった。なお、ネオン・デナリウスが自身のルーツや世界の真相を知りたがっていることを把握しており、そのために無貌の蜘蛛や悪魔たちが中央教会を襲撃するように手引きしたことも指摘する。

ゼノン・デナリウス

残り火の財団の代表を務めている男性で、ネオン・デナリウスの父親。維術協会のスポンサーの一人でもあり、蓮の議会にも名を連ねている。その関係から協会の会長であるパドマ・ドラグラインとも同格と認識されており、パブロ・シュヴァイクとも固い友情で結ばれている。かつて、妻であるパリア・デナリウスと共に、アラネアストラの周辺の侵食を進めるEDGEの調査を行っていた。しかし、その最中に事故が発生して右目を失う重傷を負ったうえに、ネオンを妊娠していたパリアがEDGEの海に沈んだことで行方不明となる。しかし、絆を頼りにEDGEから元の世界へ戻れるという仮説をパリアに聞いていたことから、生存をあきらめずに必死に捜索する。その結果、カイジンに姿を変えたパリアと再会し、娘となるネオンの出産も滞りなく終えられたが、世間体を考えて養子という形を取って彼女を育て上げた。ネオンに対しては厳格に接しているが、実際は強い愛情を抱いており、アラネアストラがEDGEに侵食されそうになった時も、共に塔の術式で記憶を残すため、アラネアストラから脱出しようとした彼女を連れ戻そうとパブロを派遣する。

セラ

聖人候補生として維術学院に通っている、維術師の少女。かつてフリクトに師事しており、彼と同様に聖人の奇蹟の記録を文様として手足に刻んでいる。勝気な性格で、フリクトが聖人に最も近い維術師と呼ばれていることを誇りに思っているなど、師のことを誰よりも慕っている。それだけに、フリクトがアントワードに敗れて死亡した際には憤りをあらわにし、蓮の議会から彼のあとを継いで特等維術師として活動するように要請された時も、師を失った悲しみと怒りで胸がいっぱいになり、それを誇るどころではなかった。維術師としての修行を積んでいない市井の娘でありながら、<<象る炎の剣>>を引き抜いたことで聖人となったアンドレア・ストロウヘッド(ドレア)を認められず、その力を確かめるために決闘を申し込む。そして、聖人としての力に不慣れだったドレアを圧倒し、努力で聖人を超える宣言を行った。このことから、ドレアからは気難しい性格と思われていたが、友人であるルシアを大切にしていたり、悪魔が街を襲撃した際は率先して他者を守るために動いたりするなど、実際は勇敢かつ筋の通った性格の持ち主。アラネアストラがEDGEに侵食され、維術学院に多くの悪魔が現れた際もすべて撃退し、仕掛け人の一人であるオームを感嘆させ、彼から真の姿を見せられるまでに至る。オームとの戦いでケガを負うものの、ルシアを塔の術式に参加させるために囮を引き受け、最後まで戦い抜いた。

ルシア

維術学院に通っている少女で、学芸員を目指すために勉強している。維術師ではないために戦闘能力は皆無だが、聖遺物などに非常に詳しく、アラネアストラにまつわる秘密や<<象る炎の剣>>に関する情報も持ち合わせている。セラと仲がよく、いっしょに行動することが多いが、彼女とは逆に控えめな性格で、振り回されることもしばしば。一方で、彼女が敬愛する師匠であるフリクトを失ったことで、気持ちを整理しきれてないことも理解しており、アンドレア・ストロウヘッドがセラから勝負を挑まれたあとに、そのことを伝えながら友人の非礼を詫びる。アラネアストラがEDGEに侵食され、維術学院に多くの悪魔が襲撃してきた際は、セラによって守られる。そして、セラのことを記憶する一人として塔の術式に参加してほしいと頼まれ、囮を引き受けた彼女と泣く泣く別れて、中央教会へと走っていった。

ゾーリャ

維術学院に通っている少女。おしゃべり好きの皮肉屋で、取りまきの女生徒と共に行動することが多い。目立つ生徒に対して対抗心を抱く傾向があり、学院長の息女で、優秀な腕を持つ維術師であるネオン・デナリウスに事あるごとに突っかかっている。一方で、<<象る炎の剣>>を引き抜いたことで聖人として覚醒したアンドレア・ストロウヘッドに対しては、ネオンにそそのかされて聖人になったと認識しており、<<象る炎の剣>>が実際は誰でも引き抜けることを明かす。このような言動から、ネオンからも嫌われており、彼女のペットであるペケからも絶えず警戒心を向けられている。しかし、友達に対しては優しく、アラネアストラがEDGEに侵食された際は、怖がる仲間を叱咤して、自分たちがのちの世界の記録として残ることを共に願うように呼びかけながら、塔の術式へと臨んだ。

パリア・デナリウス

ネオン・デナリウスの母親で、ゼノン・デナリウスの妻。かつては残り火の財団が主宰する調査機関に在籍しており、ゼノンとは職場恋愛の末に結ばれた。真実を追求することをつねに求めており、調査機関に所属した理由も、世界の成り立ちや、EDGEの謎を解明するため。ただし研究の虫というわけではなく、むしろ感情が豊かで、ネオンを妊娠した際も喜びをあらわにしながら、彼女が生きることになる世界を解明し、よくしていきたいと願っていた。その一環として、EDGEに侵食されつつある世界で、人間やその創造物などがいかにして存在しているかを検証し続け、何かとつながっていたいという思い、すなわち「絆」こそが、EDGEの中においても自身の姿を維持し続けるための鍵であることを仮定するに至る。しかし、その直後に事故が発生し、EDGEに飲み込まれてしまう。だが、ゼノンとおなかの中にいるネオンへの思いから、EDGEの中でも自分の姿を保ち続け、カイジンとして生まれ変わることで生還した。そのあとネオンを出産するが、カイジンとしての特徴もある程度引き継がせてしまう。

集団・組織

維術協会

中央教会の本堂である「糸車の塔」に本拠を構える、維術師による組合。アラネアストラの根幹を成す三つの組織の一つで、通常時はアラネアストラの中に眠っている聖遺物などの回収や調査を主な任務としているが、悪魔やカイジンなど、通常の人間では対応できない事案を解決するために行動することも多い。一方で、それらとつながりがあると疑われる組織を強制摘発することもあり、警察としての役割を持つタントラ教団の憲兵団とは縄張り争いをすることもある。会長のパドマ・ドラグラインは蓮の議会の議長も兼任しているが、あくまで発言権はほかの組織と同等である。

タントラ教団

アラネアストラで信仰されている宗教団体。アラネアストラの根幹を成す三つの組織の一つで、憲兵団と呼ばれる戦力を有しており、治安維持を一手に引き受けている。ただし、憲兵団は維術師を擁していないため、悪魔やカイジン、EDGEなどが絡んだ案件に手を出すことはできない。維術協会や残り火の財団とは、基本的には協力し合っているが、悪魔やカイジンとつながりがあるとされる無貌の蜘蛛の処遇を巡って対立することもあるなど、その関係は良好とはいえない。かつてはアラネアストラの住民の大半から信仰されており、治安維持活動などの実績もあることから蓮の議会に対しても強い影響を及ぼしていた。しかし、紡錘祭の日に悪魔やカイジンの襲撃を受け、それらの対処を維術協会に解決されたことから、ゼノン・デナリウスから不信を表明されてしまう。さらに、アンドレア・ストロウヘッドが<<象る炎の剣>>を引き抜いて聖人となったことで、新たな信仰の対象となる動きが発生し、結果的にアラネアストラの住民からの求心力も低下した。

残り火の財団

ゼノン・デナリウスが代表を務める財団。アラネアストラの根幹を成す三つの組織の一つで、EDGEについての調査、検証を第一目的としている。かつてはゼノン自らも研究員として、妻のパリア・デナリウスと共にEDGEに侵食された区域の調査を行っていた。現在は維術協会やタントラ教団のスポンサーとして、多くの活動資金を提供しているほか、一人前の維術師や維術協会の会員候補となる学芸員、そして聖人の候補を育て上げるための機関である維術学院を設立および運営するなど、幅広い分野において活動を行っている。これらの実績から、アラネアストラの住民たちから十分な信頼を得ており、蓮の議会への出席も求められるほど。

蓮の議会

アラネアストラの意思決定機関。維術協会、タントラ教団、残り火の財団の上層部によって構成されている。悪魔やカイジンの襲来や、聖人の誕生といった、アラネアストラをゆるがしかねない自体が発生した際に開かれ、そこで決定した事項は簡単に覆すことができない。その一方で、民意の反映がなされていないと不満を持つ住民もおり、無貌の蜘蛛をはじめとするテロリストを生み出すことにもつながっている。アンドレア・ストロウヘッド(ドレア)が<<象る炎の剣>>を引き抜いて聖人になった際には、彼女を強引に招集する形で開かれ、聖人となったことの重大さを説くとともに、今後の身の振り方について詮議がなされる。その結果、ドレアを聖人候補生として維術学院に通わせ、蓮の議会を構成する三つの団体のすべてに影響力を持つネオン・デナリウスを、お目付け役として派遣することを決定した。

ジョーザン一味

アラネアストラで暗躍している、反社会組織。ディヴィッド・ジョーザンが頭目を務めていることから、維術協会から「ジョーザン一味」と名づけられた。無貌の蜘蛛やアントワードなど、一部のカイジンと結託しており、紡錘祭に合わせて中央教会を混乱させようともくろむ。その下準備として中央教会付近の下見に訪れるが、そこにイタズラのために訪れたアンドレア・ストロウヘッドおよびロバート・ジャンクション・カニンガムと鉢合わせてしまう。一度は見逃そうとするものの、明らかな背信行為であることから目撃者を出すリスクを避けるため、二人を秘密裏に始末しようとせまる。しかし、先んじて情報を得ていたネオン・デナリウスとパブロ・シュヴァイクによって構成員がすべて鎮圧され、窮地に陥ったジョーザンも先んじてアントワードから受け取っていたEDGEの塊で異形の存在になりかかるものの、パブロによって一撃で倒された。残ったメンバーは憲兵隊に引き渡され、異端者として処罰されることとなった。

無貌の蜘蛛 (むぼうのくも)

アラネアストラで暗躍しているテロ組織。蓮の議会と、それを構成する維術協会、タントラ教団、残り火の財団を強く憎悪しており、自分たちを見捨てられた民であると主張する。アントワードら一部のカイジンやジョーザン一味などの反社会組織とひそかにつながり、紡錘祭への襲撃や塔の術式の妨害を試みる。アラネアストラがEDGEに侵食された時は、これ幸いと騒ぎに乗じて国の中心部に攻め入り、蓮の議会を統率するパドマ・ドラグラインやゼノン・デナリウスを暗殺しようとした。しかし、カイジンとしての正体を現したパドマによって全員が刺殺され、全滅する。

場所

アラネアストラ

長い歴史と数多の奇蹟を輩出してきたとされる宗教都市。蓮の議会によって統治されており、議会の大部分を占める維術協会、タントラ教団、残り火の財団が人心を集めている。維術師や、タントラ教団が擁する憲兵団によって治安維持がなされており、おおむね平和が保たれている。しかしその裏では、ジョーザン一味や無貌の蜘蛛などのテロリストや、謎の存在とされるカイジンが権威を脅かそうとしている。アラネアストラの外の世界は、その大部分がEDGEによって侵食されたことで常人では立ち入れない場所に変化している。また、近いうちにアラネアストラ自体もEDGEに飲み込まれる可能性が示唆されているが、それを知っているのは蓮の議会の構成員など、一部の人間だけである。

中央教会 (みゅぜお)

アラネアストラの中枢として機能している区画。維術協会の本部である「糸車の塔」が存在するほか、世界各地から集められた聖遺物の保管場所としても利用される。ふだんは一般人の出入りを厳しく制限しており、4年に一度開催される紡錘祭の期間のみ、一般開放される。こういった要素から、信心深い住民にとっては半ば聖域のような扱いを受けているが、無貌の蜘蛛をはじめとするテロリストからは攻撃目標とされることも多い。アンドレア・ストロウヘッド(ドレア)が参加した年の紡錘祭では、無貌の蜘蛛が差し向けた悪魔が複数入り込み、憲兵団の多数が殉職するという多大な被害を被った。なお、最深部には最も重要な聖遺物である<<象る炎の剣>>が保管されており、紡錘祭においても長らく一般開放されることはなかった。しかし、ネオン・デナリウスの進言によって展示が決まり、このことがドレアが聖人として覚醒するきっかけの一つとなる。

維術学院

残り火の財団の代表であるゼノン・デナリウスが学院長を務めている教育機関。維術協会への所属を志す少年や少女たちを育成するためのカリキュラムが組まれており、維術師のほか、聖遺物の鑑定や収集を行う学芸員も多数輩出している。また、少数ながら聖人の候補生も育成しており、維術協会きってのエリートといわれるフリクトの弟子であるセラも、聖人にふさわしい力を得るために修行を重ねている。また、<<象る炎の剣>>を引き抜いたことで聖人として覚醒したアンドレア・ストロウヘッドも、お目付け役となったネオン・デナリウスの目が届きやすい場所であるという理由で、維術学院への入学を果たしている。

その他キーワード

<<象る炎の剣>> (おーなめんとぶれいず)

かつてアラネアストラを救った聖人「聖アンデルセン」が振るっていたとされる剣。「三つ編みの光彩」や「緑を織る赤剣」など、さまざまな異名を持つ。引き抜くことで聖アンデルセンの記録が全身に流れ込み、聖人として覚醒させるという効果がある。また、持ち主の思いによって刀身が変化するという特性を持っており、他者との絆が深まると、カイジンすら一撃で倒すほどの圧倒的な破壊力を発揮するに至る。中央教会に秘匿されている聖遺物の中でも特に希少および重要なものとして知られており、残り火の財団の意向により、紡錘祭などにおいても長らく一般市民に公開されることはなかった。しかし、タントラ教団への信仰を深めるという名目で、ネオン・デナリウスの提案によって、60年ぶりに衆目に晒されることとなった。これは世界の真実を知ることを望むネオンが、誰かを聖人として覚醒させることでアラネアストラの現状を変えるために仕組んだもので、ネオンと同行していたアンドレア・ストロウヘッド(ドレア)の手によって引き抜かれ、彼女を聖人として覚醒させた。それ以降はドレアの体内に吸収され、彼女の意思に応じて現出するようになる。

虚飾の央環 (なるみとら)

アントワードが使用する、チャクラムの形状をした聖遺物の一つ。命中させた相手の時間を加速させて、急速に老化させるという効果を持つ。常人であれば即座に灰化、および消滅させるほどの威力を持つ。強力な力を持つ維術師は、ある程度抵抗することが可能。また、時の流れから遮断されているとされる聖人に対しては、まったく効果を及ぼさない。

聖人 (ぶれざー)

聖遺物によって主と認識された人間が、その聖遺物と融合することで覚醒して誕生する超人。覚醒した直後は、常人よりわずかに強靭な体を得られるだけだが、聖遺物との融合を深めるにつれて、悪魔や維術師はおろか、カイジンすら歯牙にもかけないほどの身体能力を獲得できる。また、虚飾の央環による加速効果を無効化したり、首を斬られても死ななかったり、EDGEの中でも形を失わず自由に行動できたりと、圧倒的な耐久力も備えるようになる。アラネアストラにおいては「聖火」とも呼称され、EDGEの侵食に対抗するために存在するといわれている。<<象る炎の剣>>のかつての持ち主であった聖アンデルセンが姿を消してから500年ものあいだ、その存在は確認されていなかった。しかし、ネオン・デナリウスの誘導によって、<<象る炎の剣>>を引き抜いたアンドレア・ストロウヘッドが聖人として覚醒し、維術協会やタントラ教団、残り火の財団など、多数の勢力から注目されることになった。

EDGE (えっじ)

800年前に維術協会によって発見された「闇」を彷彿とさせる物質。「綻び」や「淵」とも呼ばれている。気体、固体、液体のいずれにも該当せず、有機物や無機物の区別なく、空間を無制限に侵食し、記録や記憶を含めた「存在そのもの」をぬりつぶしていく特性を持つ。ぬりつぶされた箇所は闇そのものとなり、そこに取り込まれた人間は、ほとんどの場合は自分の姿を保てずに消滅してしまう。ただし、強靭な意志や他者とつながっていたいという絆を持っていた場合、カイジンとして新生し、新たな姿と力を獲得できるといわれている。信仰によって侵食が抑えられたり、逆に不信によって侵食が加速したりと、その実態には謎が多い。また、維術を使うことで侵食を抑えたり、<<象る炎の剣>>などの聖遺物を使うことで逆に侵食を押し返したりと、対抗手段も存在する。

維術師 (えんぱーまー)

維術を使いこなす人間を指す呼称。ネオン・デナリウスやパブロ・シュヴァイク、フリクトなどが該当する。特等維術師、一級維術師、二級維術師などのランク分けがなされているが、いずれも常人をはるかに上回る身体能力を持ち、ジョーザン一味や無貌の蜘蛛などのテロリストたちを簡単に制圧できる。維装と呼ばれる武具を身につけており、EDGEを発見した際は維装を展開し、維術を発動して封印することが義務付けられている。維術師の多くは維術協会に所属しており、アラネアストラの市民たちからはあこがれの対象となっている。

聖遺物 (しぐねいちゃー)

維術協会によって収集されている、古代より伝わる武具の総称。<<象る炎の剣>>や虚飾の央環などが該当する。時間や空間に干渉し、物理法則すら書き換える力を持つ。また、特に優れた力を持つ聖遺物は持ち主と定めた人間と融合し、聖人として覚醒させる効果も有する。

カイジン

蓮の議会にのみ知られている、謎の存在。ふだんの姿は人間と大して変わらないが、体に刻まれている菱形の文様に触れることで、異形の存在へと変化できる。身体能力は圧倒的で、維術協会きっての精鋭であるフリクトすら凌駕する。カイジンの一人であるアントワードは、世界をあるべき姿に戻すために闇より生まれ落ちた「χ人」と名乗っている。その正体は、EDGEの侵食に巻き込まれながらも、自らの形を失わないまま生き残った人間が進化した存在。そのため、EDGEに侵食された箇所に入っても、存在が消滅するどころか傷一つ負うことはない。また、子供を妊娠している最中に侵食に巻き込まれてカイジンとなった場合、生まれてくる子供にもその影響が及ぶ場合がある。

悪魔 (すたふど)

体内におびただしい量のEDGEが詰まっている謎の生物。その特性から「詰められたもの」と呼ばれることもある。体の強度はさほどではなく、重火器によって破壊することが可能。しかし、悪魔の肉体を破壊すると、その隙間から貯蔵されていたEDGEが流れ出て、周囲を一気に侵食されてしまう。そのため、悪魔を行動不能にするには維術を使い、EDGEごと封印する必要がある。ただし、聖人として覚醒したアンドレア・ストロウヘッドがネオン・デナリウスを守るために<<象る炎の剣>>を振るい、悪魔を跡形もなく消滅させたりと、EDGEを消滅させる力を持つ聖遺物はこの限りではない。

維術

EDGEを封印し、侵食を防ぐための技法。点を突いて侵食を一時的に停止させる「点穴」、複数の点穴を線としてつないで、EDGEに形を与える「裁断」。裁断したEDGEを固着し、消滅させる「面制圧」と三つの段階に分けられる。これらは、かつて聖人が聖遺物を使ってEDGEの侵食を押し返した技法が流用されており、維術は聖遺物のもたらす奇蹟を模倣したものであるといえる。維術を使用するには「維装」と呼ばれる武具を用いるのが一般的だが、フリクトやセラのように肉体に直接、偉人の記録を刻むことで自分の体そのものを武器とする活用法も存在する。維術の使い手は維術師と呼ばれており、維術協会に所属するのが一般的とされている。

塔の術式

パドマ・ドラグラインによって提唱された術式。中央教会に存在する「糸車の塔」に蓄えられたすべての記録と、世界中から集められた聖遺物のデータおよびアラネアストラの住民すべての記憶を、EDGEですら侵食できない場所に保存し、別の世界や別の未来に生まれる誰かに継承することができる。近いうちに信仰に限界が訪れ、アラネアストラがEDGEに侵食されることを予見したパドマの手によって実行された。また、ルシアやゾーリャなど、維術学院の生徒も参加していたりと、記憶を残すことを強く切望する市民たちの力も利用されている。

紡錘祭 (すぴんどるふぇす)

アラネアストラの住民たちに中央教会が開放される、4年に一度の催し。タントラ教の教義である「正しき歴史の記録と伝承」を人々に啓蒙するための行事であり、3日間にわたって盛大に催される。そのため、特にタントラ教団にとっては重要となるイベントで、期間中は教団が抱える憲兵団が多数派遣される。アンドレア・ストロウヘッドが参加した際は、ネオン・デナリウスの意向によって<<象る炎の剣>>が展示されることが決まるが、期間中に悪魔が中央教会に入り込み、多くの死傷者を出すという惨事が発生してしまう。

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