概要・あらすじ
2155年。地球人類は、謎の集団パニック現象によって滅亡の危機に陥ってしまった。頭脳都市ゼラスで造られた実験体の少女ユズは、実験体を助けているキメラの少年タウロや、半人半獣の少年ヒュウと出会い、集団パニックの影響から逃れ、安住の地を求めて宇宙に旅立つ。そして土星の衛星タイタンで、機械の体と人の精神を持つ電化人間CA38と、宇宙船ジェダⅡのコンピュータ端末として造られた人間の女性NADA・R・22が仲間に加わり、5人で安住の地を探す旅に出ることになる。
登場人物・キャラクター
ユズ
『ブレーメン5』の主人公のひとりで、2114年10月10日に生まれた少女。地球にある頭脳都市ゼラスの住人・タシ博士の実験体として、外界から隔絶された自然環境下で、コンピュータの影響を受けずに育てられた。好奇心旺盛で、外界の情報を遮断するために作られた「果て」と呼ばれる壁の向こう側に興味を持つ。コンピュータ教育を施されていないため、知識レベルは西暦18世紀程度だが、他者に対する偏見がないため、あらゆる事象に対して素直で好意的な感情を抱く優しさを持つ。 実験体を助ける活動をしていたキメラの少年タウロによって、外の世界へ連れ出されて以来、タウロを慕っている。
タウロ
『ブレーメン5』の主人公のひとりで、2138年5月25日に生まれた少年。頭脳都市ゼラスの人種差別問題に終止符を打つ、象徴的な存在になるべく造られた実験体で、白人の右半身と黒人の左半身、黄色人種の下半身を持つ三色キメラである。5歳の時、兄のような存在だった二色キメラの少年ミザロを、自分のせいで殺してしまったことを深く悔やんでおり、ゼラスの体制に逆らって、実験体を助ける自然地区キリュートルの活動に参加していた。 知識が豊富で心も優しく、頼りがいのある少年。宇宙船ジェダⅡのコンピュータの端末として造られた女性NADA・R・22に、淡い恋心を抱く。
ヒュウ
『ブレーメン5』の主人公のひとりで、2142年3月3日に生まれた少年。頭脳都市ゼラスの住人、ドノン・ゼノ博士による遺伝子操作実験で造られた半人半獣で、人間の上半身と黒豹の下半身を持つ。好奇心が旺盛で怖いもの知らずだが、気遣いがなく思ったことをそのまま口に出したり、短気で考えるよりも先に行動したりするため、頻繁に問題を起こすトラブルメーカー。 実験体を助ける活動をしている自然地区キリュートルの基地にいたため、三色キメラの少年タウロとは知り合い。タウロが助け出した実験体の少女ユズを一目で気に入り、行動を共にするようになる。
CA38
『ブレーメン5』の主人公のひとりで、2121年前後に誕生したと推測される男性。コントロールボックスと呼ばれる機械によって制御を受けるサイボーグの体と、人間の精神を持つ電化人間。過去の記憶を失い、土星圏タイタンの労働地区でロボットのように働かされていたが、謎の集団パニック現象によって滅亡の危機に陥った地球から脱出してきた三色キメラの少年タウロ、好奇心旺盛な少女ユズ、半人半獣の少年ヒュウと出会い、自分が何者であったのか知りたいという探求心に目覚め、タウロたちの一行に加わる。 冷静な判断力を持ち、危険を最小限に抑える行動を取ろうとするが、無鉄砲なヒュウや好奇心の塊であるユズを抑えきれず、後始末に追われることになる。
NADA・R・22
『ブレーメン5』の主人公のひとりで、2133年2月12日に造られた女性。肉体は人間だが、脳をコンピュータ化されており、宇宙船ジェダIIのメインコンピュータとして機能している。人間の支配に疑問を感じ、地球上すべての動物を運ぶアークNN計画を開発した中心人物・ラスタード博士により、宇宙船ジェダIIを守るために造られ、洗脳によって人としての自我を封じられている。 しかし失敗作として破壊されそうなり、ジェダIIと共に研究地区から逃亡してきた。初めて会った時に自分の身を心配してくれた、心優しい少女ユズにだけ心を開き、人間的な執着を見せる。
ラスダード
トラとの半身半獣の実験体だったが、異例として博士となる。遺伝子操作実験で自分を生み出した人間の支配に疑問を感じ、地球上すべての動物を運び、動物だけのユートピアを創造するアークNN計画を開発した中心人物で、宇宙船ジェダⅡのコンピュータの端末として、主人公のひとりNADA・R・22を造り出した。 しかしナダを失敗作として処分しようとして逃したため、ジェダⅡを奪還するべく、ナダたちに攻撃をしかける。
ヴィーマー
『ブレーメン5』に登場する、岩石状知的生体。ユズたちが太陽系外で見つけた、黒い惑星に存在しており、「ヴィーマー」という奇声を発している。最初に出会ったユズとNADA・R・22を分析しようとして、姿形を真似た分身をつくりあげた。ナダの分析によれば、その分身がヴィーマーの思考の表現だという。 ユズたちの宇宙船ジェダⅡが出発する際に、宇宙船の外壁に張り付いて惑星を脱出し、宇宙への進出を果たした。
ユズモドキ
『ブレーメン5』に登場する岩石状知的生体ヴィーマーの1体で、ユズにそっくりの形をしたもの。ユズたちが黒い惑星に着陸した際に作られたもののうち、1体が宇宙船ジェダⅡの内部に入り込んでいた。知的生命体の言語を即時にコピーし、知っている言語と置き換えることを楽しむ行動をするため、新しい知的生命体とファーストコンタクトを取る際には、良き通訳となる。
ぷわんぷわん
『ブレーメン5』に登場する電気生命体。アレット星系にある常に放電現象が起きている惑星に存在していたもので、バレーボールぐらいの大きさの、球状で発光する体を持っている。言語は使用しないが、人の思考エネルギーに敏感に反応し、主人公のひとりで半人半獣の少年ヒュウが敵意を持って攻撃した時には攻撃を、好奇心旺盛な少女ユズが好意を示した時は好意を持って接した。 一時は消えたかと思われていたが、後に宇宙船ジェダⅡの電気系統の中で存在していたことが判明する。
ルディ
すべての種と混血できる銀色生物と、主人公のひとりタウロの遺伝子を持つ地球人型銀色生物。アレット星系にある惑星で、動く銀色の大木が残した卵から生まれた後、タウロに好意を寄せる少女ユズに育てられる。水と銀色生物しか口にすることができないが、すさまじいスピードで成長し、数日で成人した姿になった。 本能として銀色生物に関する知識が備わっており、ユズたちの元を去って、純粋な銀色生物がいるとされるシルバーバレィへ向かう。
ティデューシュ
さまざまな星のさまざまな知的生命体による複合文明社会アレット星系2256種族のうち、地球人と同じ種だというハシュープ・ベーテ種の男性。体長は2メートルを越える大きさで、体温は40度ぐらい。長くて毛並みの良い毛髪と尻尾を持っている。コミュニケーションを精神感応(テレパシー)でとるため、アレット星系では、通信士としての仕事に従事している種族となる。 主人公のひとりで、三色キメラの少年タウロの兄のような存在で、ワープ事故で命を落とした二色キメラの少年ミザロによく似ている。アレット星系に不法侵入したタウロたちが捕らえられた後、タウロを気に入って買い取る。
ドゥルグィ
さまざまな星のさまざまな知的生命体による複合文明社会アレット星系2256種族のうち、地球人と同じ種だというハシュープ・ベーテ種の遺伝子を持つ、ハシュープ・ベーテの銀色生物。すべての種と混血できる銀色生物は、アレット星系に存在する全文明の潤滑油としての役割を担っており、遺伝子情報を得た種の誇りと、銀色生物としての種の誇りを併せ持つ、優れた種として認知されている。 ドゥルグィは、ルディたち地球種との間に生まれた銀色生物を文明圏へと連れ出した女性。理知的だが、アレット星系で神と呼ばれているゴーデルの意志に逆らうことができず、ユズたちを危険な状態に追いこんでしまう。
ゴーデル
『ブレーメン5』の登場する、アレット星系2256種の頂点に立つ神のような存在。アレット星系では、さまざまな星のさまざまな知的生命体による複合文明社会が築かれており、その文明圏は、太陽規模の主系列星が、同一平面上に正六角形の形を成すよう、意図的に配置されている。ゴーデルは、アレット星系の中核を成す恒星・パラセミダに存在していると信じられている。 アレット星系の文明は、生命体の持つ力をもっとも重要だと考えており、銀河系全体をひとつの生命として機能させている存在が、ゴーデルだとされている。そのため、銀河系に存在する知的生命体で、アレット星系の文明への参加を拒否した星を消滅させるなど、巨大な力を有している。
場所
頭脳都市ゼラス (ずのうとしぜらす)
2155年の地球に存在する、超個人主義的社会を築いている都市。住民は自らを「完全体」だと称し、頭髪などの体毛を原始的であるとして排除し、動物的な喜怒哀楽の感情を切り捨てて、己の研究のみに没頭している。頭脳都市ゼラスでは唯一、遺伝子操作による実験が許可されており、タウロのような黒人・白人・黄色人種の三色キメラや、ヒュウのような半人半獣など、実験体を使った様々な研究に没頭している。 市民は細胞情報によってA~Gの階級に分けられており、実験体に使用される細胞はG級という規定があるが、コンピュータの影響を受けず自然の中で育てられた少女ユズは、ゼラス市民と同じA級細胞から造り出されている。
ジェダⅡ (じぇだせかんど)
NADA・R・22がメインコンピュータとなって制御している宇宙船。地球上すべての動物を運び、動物だけのユートピアを創造するアークNN計画を開発した中心人物・ラスダードによってナダと共に造られたが、実験失敗により破壊されそうになり、土星圏タイタンにあった研究基地から逃亡する。 逃亡中に、地球人で心優しい少女ユズ、三色キメラの少年タウロ、半身半獣の少年ヒュウ、そしてタイタンの労働地区でロボットのように働かされていた電化人間CA38と出会い、ナダの意志に従って行動を共にする。かなり大型の宇宙船で、ワープ機構や地球上の動物全種の遺伝子を冷凍し、任意で解凍・成長させる養育システム、食堂や娯楽室など充実した施設を有している。
その他キーワード
アレット文明 (あれっとぶんめい)
『ブレーメン5』に登場する、銀河系の巨大文明。アレット星系には、さまざまな星のさまざまな知的生命体2256種によって、銀河複合連盟と呼ばれる複合文明社会が築かれている。アレット星系の文明は、生命体の持つ力をもっとも重要だと考えており、銀河系全体をひとつの生命として機能させている神のような存在・ゴーデルが、絶対的な力を持っている。 未知の知的生命体を文明圏に案内するため、1光年ごとに18の恒星を置き、そこに通信機能を備えた巨大なピラミッド状の建造物を残していた。また、太陽規模の主系列星が、一辺3光年の正六角形を同一平面上に成すよう恒星の位置を替え、安定軌道を持たせるといったとてつもない科学力を有しており、辺境にある地球は文明的に遅れている場所だと認知されている。
Pカード (ぴーかーど)
銀河複合連盟の大文明圏で使用されている、権利や身分証明、クレジットそのほかいっさいを引き受ける中央地・パラセミダ直属のカード。所持せず文明圏に入ると、不法侵入で殺されかねない。