概要・あらすじ
長崎のナイト系タウン誌の編集長をやりながらマンガも描くゆういち(愛称ペコロス)は、還暦を過ぎた禿頭の男。夫の死を契機に徐々に認知症を発症するようになったゆういちの母、みつえは、脳梗塞の発作で入院したことを機にグループホームに入居する。認知症によりみつえは、次第に過去と現在の記憶の境が曖昧になり、死んだ夫や過去の自分と出会う幻影を話すようになる。
ゆういちは、これを悲観的に思わずに「母の心がほどけていくのだ」と暖かく前向きにとらえ、母や父の過去の人生や、長崎という土地のこれまでをも想い返しながら、柔らかい筆致で漫画ににしてゆくのだった。
登場人物・キャラクター
ゆういち
1950年(昭和25年)生まれの、還暦を過ぎた禿頭の男。愛称のペコロス(小タマネギ)は、丸い体型と禿頭から。東京の出版社で青年向け漫画雑誌の編集長をしていたが、離婚を機に息子とともに長崎へ帰る。長崎のナイト系タウン誌の編集長をやりながらマンガも描いていた。 母みつえの認知症発症とグループホーム入居を後ろ向きに考えず、肯定的にとらえる。また、母や父の過去に思いを馳せ、同時に原爆を落とされた長崎という土地も語る。作者である岡野雄一をモデルにしている。
みつえ
1923年(大正12年)、天草で十人兄弟の長女として生まれ、長崎市で働くさとるの元へ嫁ぐ。夫の酒癖の悪さに閉口しながら二人の男子を育てる。夫が80歳で死去したあと、徐々に認知症を発症し、脳梗塞の発作による入院の後、グループホームに入居する。足を悪くして、車いすに乗っている。 丸くて小さな老いた女性。認知症で過去と現在の記憶の境が曖昧になり、作品の中では過去と現在を自由に行き来し、過去の自分に出会ったりする。作者の母、岡野光江をモデルにしている。
さとる
みつえの夫でゆういちの父。1919年(大正8年)、長崎生まれ。痩せた長身の男性。80歳で死去したが、作品中ではみつえの幻影として登場。空から降りてきて、時間を自在に移動するようなキャラクターとして描かれ、みつえと一緒に空に浮かんで過去の家族を見守る。三菱造船所で働き、被曝も経験している。 酒と短歌を愛した。いい人だったが、人間関係のストレスが飲んだ酒で爆発してしまう傾向があり、みつえは、それに悩まされ、よく子供を連れて家を出ていた。60過ぎて、ドクターストップがかかって酒をやめたあとは、静かなおとなしい老人となる。作者の父、岡野覚をモデルにしている。
つよし
ゆういちの弟。1952年(昭和27年)生まれで、兄と同時期に大学入学のため上京し、そのまま就職・結婚し、東京近郊で暮らす。年に何回か長崎に帰省し、母のみつえと会う。ゆういちと異なって髪の毛は多い。ゆういちとつよしの子供時代が描かれるとき、たいてい母の背に負われている。 作者の弟をモデルにしている。
まさき
ゆういちの息子。父の離婚により、父と一緒に長崎に来る。その後、東京の学校に通うが、就職の関係でまた長崎に戻る。祖父と祖母に育てられたせいで、おばあちゃん子。作者の息子をモデルにしている。