概要・あらすじ
漫画家の山下和美は、物心ついた時から洋館が大好きだった。小学6年生まで住んでいた小樽には、明治から大正時代に建てられた洋館が数多く残っており、特に小樽商科大学学長の住んでいた「千秋閣」と呼ばれる洋館に憧れていた。残念ながら山下の父は学長選に落ち、洋館に住むことは叶わなかった。世田谷区の閑静な住宅街の一角にブルーのかわいい洋館、旧尾崎行雄邸を見つけた山下は、その建物に一目惚(ぼ)れしてしまう。その館から近いという理由で、自宅の場所を決めたほどだった。山下は自分がそこに住む妄想をしてみたり、昼も夜も寄り道をして眺めるほど、その洋館のことが大好きだった。知り合いの建築家、蔵田徹也からの連絡で、洋館、旧尾崎邸が土地ごと売りに出されたことを知り、ショックを受ける山下。最近は憧れだった家が取り壊され、その土地に隣との間隔の狭い狭小住宅が立ち並ぶ光景を見てきた。しかし山下も数寄屋造りの家を建てたばかりで、いまのローンを払うことで精いっぱい。知り合いに購入希望者がいないか聞いてみるものの館を欲しいという人物は見つからない。しばらくして近所に住む山下の姉から「ついに館を壊すみたいよ」と開発道路の計画と分譲住宅の図面を見せられる。山下と蔵田は館の解体を阻止するため、近隣住民に開発道路の同意を保留するようにお願いし、SNSで保存の呼びかけを開始。そして旧尾崎行雄邸を保存する会を立ち上げる。
登場人物・キャラクター
山下 和美 (やました かずみ)
漫画家の女性。メガネをかけて、ショートカットにしている。性格は早とちりで心配性。プレッシャーに弱い。小さい頃から古い洋館が大好きで、想像しながら図面を描いて楽しむほどだった。特に小樽の「千秋閣」という洋館の記憶は後の山下の漫画にも影響を与えている。明治時代に建てられたブルーの洋館、旧尾崎行雄邸に一目惚れし、その近くの土地に自宅を建てた。旧尾崎行雄邸の解体を阻止するために行動を起こす。同名の実在人物がモデル。
蔵田 徹也 (くらた てつや)
数寄屋建築家の男性。面長で大きな目をしている。山下和美の『数寄です!』にも登場する。山下とともにブルーの洋館、旧尾崎行雄邸の中を見学し、洋館の存続を希望する。昔、大手ゼネコンに所属していて、歴史的建造物の解体業者側にいたこともあり、保存運動の難しさを知っている。書類作りから近隣住民、不動産や役所への交渉など、旧尾崎邸を保存する会の強い味方となる。同名の実在人物がモデル。