概要・あらすじ
多くの敵対勢力を葬ってきたオリンポスの主神・ゼウスは、残された敵、大蛇ピュトンを滅ぼすための策としてポエニケの王・アゲノルの娘・エウロペを誘拐。王は息子・カドモスに娘の探索を命じる。世界中を探索したカドモスはピュトンと巡り逢い、殺害する。ここまではゼウスの布石通りの展開だったが、カドモスがピュトンの卵から孵ったハルモニアを妻とし、テーバイに王国を築いてしまった。
ゼウスは様々な策略によって王家とピュトンの末裔を破滅に導こうとする。かくしてカドモスの孫で、タイトルロールであるペンテウスの前に、ゼウスの子でペンテウスのいとこでもあるバッコスが立ちふさがる。
登場人物・キャラクター
ペンテウス
ペローロスとアガヴェの子。カドモスとハルモニアの孫。テーバイの選ばれた王パシュレウスとなる。ヤキ族との戦いを主導し、老王カドモスを権力者とするが、いとこに当たるバッコスの信徒を迫害。最期はバッコスの信徒となって狂乱状態の叔母アウトノエ、母アガヴェを含む信徒達に生きながら引き裂かれて惨死する。
ゼウス
オリンポスの主神。敵対するタイタン、巨人族(ギガンテス)、アマゾン、リュカオンを滅ぼし、ピュトンを倒すために策略を巡らす。
ピュトン
テーバイに棲む大蛇。
ヘルメス
オリンポスの神。ゼウスの息子。
アゲノル
ポエニケの王。娘・エウロペを溺愛しているが、息子・カドモスには厳しい。誘拐されたエウロペ探索をカドモスに命じる。
エウロペ
ポエニケの王アゲノルの娘。雄牛に変身したゼウスに誘拐される。
カドモス
ポエニケの王アゲノルの息子。エウロペ探索中にピュトンと遭遇し、打ち倒す。瀕死のピュトンから巨大な卵を託される。卵から孵った美女ハルモニアと結ばれ、テーバイを築く。
ハルモニア
ピュトンの卵から孵化した美女。カドモスの妻となり、二人でテーバイに都を築く。
エキオン
カドモスに仕えるスパルトイのリーダー。カドモスとハルモニアの娘アウトノネと結ばれ、一子アクタエオンをもうけるが、神託通り、ゼウスの雷に打たれて死亡する。
アウトノエ
カドモスとハルモニアの娘。エキオンと結ばれ、アクタエオンを生む。
イノ
カドモスとハルモニアの娘。
アガヴェ
カドモスとハルモニアの娘。スパルトイのペローロスと結ばれ、ペンテウスを生む。
セメレ
カドモスとハルモニアの娘。実父に恋し、禁じられた恋に絶望し、自殺しようとしたところをカドモスに化けたゼウスに誘惑され、結ばれる。しかし、ゼウスの心を掴めず不安になる。それを察したハルモニアはゼウスを滅ぼすための死の長衣を、心の扉を開くウェヌスの長衣として娘に贈る。 セメレは長衣をゼウスに着せず、自分の心を見せるため自分でまとい、死んでしまう。彼女の胎内に宿っていたバッコスはゼウスに救い出される。
アクタエオン
エキオンとアウトノエの子、カドモスとハルモニアの孫。狩の名手。過ってガルガビエの谷に迷い込み、処女神ディアナの怒りをかい、鹿に姿を変えられ、仲間の狩人と猟犬に襲われ惨殺される。
キロン
エキオンの友人。半身半馬のケンタウロス。アクタエオンの父親代わりとなって教育する。
ディアナ
オリンポスの十二神の一人。森の女神で処女神。ローマ神話に登場する女神で、作中の書き文字でダイアナはディアナの英語読み。作中に括弧内に表記されるアルテミスはギリシア神話の女神であったが、ほとんど同一視されている。自身の裸身を見てしまったアクタエオンを鹿に変えてしまう。
ペローロス
アクタエオンの死により、スパルトイの血筋が絶えることを恐れたハルモニアがピュトンに祈りを捧げて賜った牙から生まれた戦士。エキオンと瓜二つで、やはりゼウスの雷に打たれるが、死の間際にアガヴェと結ばれ、ペンテウスをもうける。
勇者の王 (ゆうじゃのおう)
名前不明のヤキ族の勇者。その勇猛さにペンテウスが心を動かされ、勇者の王としてスパルトイの神殿の生贄にならないかと持ちかける。勇者はそれを喜んで受諾し、凄まじい拷問に耐えて勇者の王と認められ、スパルトイの戦士10名と戦いことごとく打ち倒し、最期は自らの心臓をえぐり出してスパルトイに捧げた。
テレイシャス
ゼウスに予言の力を授かった予言者。カドモスとは旧知の間柄で、カドモスの娘セメレとゼウスの子である新しい神、バッコスに帰依すべきと説く。カドモスは心を動かされるが、ペンテウスが拒絶する。
バッコス
カドモスの娘セメレとゼウスの子。数々の奇跡と、聖なる葡萄酒の力で民衆を惹き付ける。バッコスの信徒らは酒に酔い、怪力を発揮して、家畜を引き裂いて喰らい、兵士の刃にも傷付かない。テーバイに勢力を拡げ、ペンテウスと対決することになる。
集団・組織
テーバイ
『ペンテウス』に登場する古代ギリシアの都市国家。ポエニケ王の息子・カドモスが建国。
ポエニケ
『ペンテウス』に登場する登場する地中海の都市国家。一般的な表記ではフェニキア。歴史的にはレバノン南西部の都市国家群。
スパルトイ
『ペンテウス』に登場する戦士たち。「播かれた者」を意味する言葉で、カドモスが播いたピュトンの牙から武装した戦士の姿で生まれた者たち。カドモスが制止するまで、兄弟で殺し合った。カドモスに仕え、テーバイを発展させる。
ヤキ
『ペンテウス』に登場するテーバイ近隣の部族。王の息子がテーバイの女を襲い、彼女の弟を殺したことからペンテウス率いるテーバイ軍と戦争になり、男は皆殺しにされる。
場所
オリンポス
『ペンテウス』の登場するギリシア神話の神々が住む山。
ガルガビエ
『ペンテウス』に登場する谷と泉。オリンポスの神々の一人で、森の女神であるディアナに捧げられた不入の地(禁域)で、人間が入ることは許されない。
その他キーワード
ウェヌスの長衣 (うぇぬすのぺぷろす)
『ペンテウス』に登場する衣服。ハルモニアがセメレに、恋人の心を開く力があるとして贈ったもの。ウェヌスは恋愛を司る神の名である。しかし、実際にはセメレの恋人となったゼウスを滅ぼすための死の長衣だった。
死の長衣 (しのぺぷろす)
『ペンテウス』に登場する衣服。娘セメレの恋人がゼウスであることを知ったハルモニアがウェヌスの長衣として娘に贈った。これを着たゼウスが自らの雷によって滅びるように金糸が織り込まれている。