あらすじ
異世界に転生
ある日の休日、神田翔太、近藤早菜苗、船見加奈はトラブルに巻き込まれ、走ってきたトラックに轢(ひ)かれてしまう。意識を取り戻した三人は見覚えのない森の中におり、さらに先ほどまでの私服とは別のコスプレのような服を着ていた。翔太たちは森の中に足を踏み入れるとゴブリンの集団に襲われるが、早菜苗の圧倒な腕力で撃退に成功する。そして、ゴブリンから廻王マルディスによって異世界「譲の国」に転生させられたことを知った翔太たちは、元の世界に戻るための手段を探す旅に出る。1週間後、まったく手がかりが得られずにいた翔太たちは、川辺で休憩中にチビット族のチルミと出会い、自分たちの事情を説明してチビット族のキャンプへと向かうのだった。
情報を求めてノートランド国へ
ネグロカーンを撃退した神田翔太、近藤早菜苗、船見加奈の三人は、廻王マルディスを倒せば元の世界に戻れると考え、マルディスを打倒するためにチビット族のキャンプを出発する。世界情勢に疎い翔太たちをサポートするために同行することとなったチルミの提案で、一行は一番近いノートランド国を目指す。途中でアクシデントに見舞われながらも無事にノートランド国に到着すると、目の前ではオークの集団が人間たちを襲撃していた。早菜苗の活躍でオークたちを撤退させたが、戦力を増強したオークが再度侵攻してきたため、翔太もオークを迎え撃つこととなる。
入れ替わった体を戻すために
ノートランド国を襲ったオークたちの撃退に成功するものの、戦闘の影響で神田翔太と近藤早菜苗の体が入れ替わり、さらにノートランド国を守っていた結界も消えてしまう。二つの問題を解決するため、翔太たちは王妃のリアナ・マンフォードの提案で、近くの大森林で隠匿しているストンピンに助けを求めることにした。ストンピンは戦争に嫌気が差してどの勢力にもつかない中立を貫いているため、さまざまな魔法で大森林に入った翔太たちの進行を妨害して帰らせようとする。しかしそれらをすべて乗り越え、自分がいる場所までたどり着いた翔太たちを見て、ストンピンは協力することを決める。その後、翔太と早菜苗はストンピンの魔法で元の体に戻れて安堵するものの、廻王マルディスの大軍勢がノートランド国に侵攻していることを知って、急いで戻るのだった。
ジョラの記憶を頼りにエルフの国へ
廻王マルディスの大軍勢を撃退し、ふつうなら助からないほどのケガを負ったリアナ・マンフォードもストンピンの魔法で回復する。ノートランド国の結界も船見加奈が作り出したトークンによって復活し、ノートランド国は少しずつ復興し始める。ある日、神田翔太は自分が転生した体の元の持ち主であるジョラ・マンフォードの記憶が蘇り、七勇鋭がエルフの国であるエルミールに集まる約束をしていたことを思い出す。翔太、近藤早菜苗、船見加奈、チルミはエルミールに向かうものの、到着直後に七勇鋭の一人であるドワンから襲われる。その後、ドワンとは誤解を解いて停戦できたが、今度はジョラの妻・ネネリエルに翔太だけ体の自由を奪われて連れていかれてしまう。
七勇鋭の中の裏切り者
神田翔太たちは、ルコンから七勇鋭の中に廻王マルディスと通じている裏切り者がいる事実を伝えられる。しかし裏切り者は特定できないため、当分のあいだは七勇鋭同士で監視しながらネネリエルとの約束を果たすため、竜谷へと向かうこととなる。竜谷はマルディスの拠点の一つとなっていたが、竜谷で合流したリザルの優れた道具や知識によって翔太たちは竜谷の奥深くまで侵入することに成功。翔太たちが広場に出たところでダイガンが現れ、七勇鋭が全員そろうものの、あやつられているダイガンは問答無用に攻撃を仕掛け、最後は爆発魔法を使って自爆する。自爆したことで正気を取り戻したダイガンが、あやつられる前のことを語ろうとした時、裏切り者が正体を現すのだった。
関連作品
マンガ
本作『ポンコツが転生したら存外最強』は海月れおなの『ポンコツンデレな幼馴染』を原作とするスピンオフ作品。原作は神田翔太、近藤早菜苗、船見加奈の高校生活を描いたドタバタラブコメディで、講談社「KCデラックス」から刊行されている。
登場人物・キャラクター
神田 翔太 (かんだ しょうた)
トラックに轢(ひ)かれて異世界「譲の国」に転生した高校1年の男子。年齢は16歳。廻王マルディスの弱体化転生術によって、七勇鋭のジョラ・マンフォードと精神が入れ替わる形で転生している。転生時に絶対防御というスキルを入手しているため、戦闘では最前線に立って敵の攻撃を引き受ける役を担う。気遣い上手な優しい性格で、みんなを陽動したり変な行動を取る人に対してツッコミ役を担ったりしている。
近藤 早菜苗 (こんどう さなえ)
トラックに轢(ひ)かれて異世界「譲の国」に転生した高校1年の女子。年齢は16歳。廻王マルディスの弱体化転生術によって、七勇鋭のエナリエルと精神が入れ替わる形で転生している。転生時にポンコツ無双というスキルを入手しており、意図しないまま敵を圧倒するポンコツ体質で、周囲が驚くような行動を取ることが多い。転生前から力が非常に強く、それは転生後も変わっていないため、人より重い樹木や岩を持ち上げることができる。裏表のない素直な性格で行動力もある。幼なじみの神田翔太に好意を寄せており、翔太がほかの女性となかよくしていると嫉妬する。
船見 加奈 (ふなみ かな)
トラックに轢(ひ)かれて異世界「譲の国」に転生した高校1年の女子。年齢は15歳。廻王マルディスの弱体化転生術によって、七勇鋭のナカタリンと精神が入れ替わる形で転生している。転生時に癒しの胸部というスキルを入手しており、戦闘や近藤早菜苗のトラブルに巻き込まれてケガを負った神田翔太を治療している。慎ましくて優しい性格の持ち主。小さい頃から大きな胸にコンプレックスを抱いており、毎回癒しの胸部を恥ずかしいと思いながら行っている。幼なじみの翔太に好意を寄せているが、引っ込み思案のためにアプローチできずにいる。
チルミ
チビット族で、手先が非常に器用な女性。見た目は幼いが年齢は34歳。18年前に当時6歳のジョラ・マンフォードのお世話役を務めており、その時に結婚の約束を交わすと共にジョラから指輪をもらっている。結婚の約束自体は子供のお遊びだとわかっているが、今でも好意を寄せて指輪を大事に身につけている。料理や裁縫など家事全般の能力が高い。ジョラと精神が入れ替わった形で転生した神田翔太と出会ったあとは、翔太をサポートするためにいっしょに世界を旅している。
ルコン
チビット族の男性。手先が非常に器用な一面を持つ。チルミに好意を寄せており、チルミと結婚の約束を交わしたジョラ・マンフォードが別の女性と結婚したことで、ジョラのことを嫌悪している。口は悪いが一途な性格で、チルミにジョラのことを忘れて自分と結婚しないかとアプローチしている。一部の仲間にしか明かしていないが、実は七勇鋭の一人であり、その時は「カゲ」と名乗っている。影の中に潜むことができる能力を持ち、斥候などを担っている。廻王マルディスを暗殺する計画が失敗に終わったのは七勇鋭の中に裏切り者がいたからだと考えており、ルコン自身が一人でずっと調査している。
ジョラ・マンフォード
人間が住むノートランド国の第2王子。年齢は24歳。シャリア・マンフォードの兄で、リアナ・マンフォードの息子にあたる。七勇鋭の一人でもあり、廻王マルディスと戦っている。ナカタリン、エナリエルと共にマルディス暗策計画の実行犯として暗躍していたが計画は失敗し、マルディスの弱体化転生術によって神田翔太と精神が入れ替わる形で別次元の世界に転生してしまう。
シャリア・マンフォード
人間が住むノートランド国の王女。ジョラ・マンフォードの妹で、リアナ・マンフォードの娘。男勝りな性格で、昔から剣術の訓練をしている。ノートランド国が敵に襲われた時も、率先して戦いに出て多大な戦果を挙げる。
リアナ・マンフォード
人間が住むノートランド国の王妃で、ジョラ・マンフォードとシャリア・マンフォードの母親。穏やかな性格で、ジョラを溺愛して気にかけている。嫁ぐまでは王のロイヤルガードの隊長を務めていたため、戦闘能力は非常に高く、料理や掃除にも使える多くの武具を所持している。ノートランド国が攻め込まれて戦える住民が少なくなると自ら武器を取り、圧倒的な力で敵を蹴散らした。
ナカタリン
「白亜の魔法使い」の異名を持つ魔法使い族の女性。七勇鋭の一人で、廻王マルディスと戦っている。強力な魔力の持ち主で、人間が住むノートランド国に結界を張った人物でもある。ジョラ・マンフォード、エナリエルと共にマルディス暗策計画の実行犯として暗躍していたが計画は失敗し、マルディスの弱体化転生術によって船見加奈と精神が入れ替わる形で別次元の世界に転生してしまう。
ストンピン
「新緑の魔法使い」の異名を持つ魔法使い族。戦争に嫌気が差して中立の立場を取っており、「根源の大森林」と呼ばれる場所で隠遁生活を送っている。大森林と一体化しているために肉体の概念から解放され、現在の体が壊れても死ぬことはなく、魂を別の物に移せばこれまでと同様に行動できる。
ドワン
ドワーフ族の王を務める男性。七勇鋭の一人でもあり、廻王マルディスと戦っている。「美髯の貴公子」という異名を持つ。ドワーフ族は老けるのが早い種族なため、12歳という年齢ながら中年のような見た目をしている。過去に起こったドワーフ族とエルフ族の争いを再び起こさないため、エナリエルと政略結婚をしたが、自分に優しくしてくれるエナリエルに心から惚れている。
エナリエル
エルフ族の王族に連なる女性。ドワンの妻で、ネネリエルの妹。七勇鋭の一人で、廻王マルディスと戦っている。過去に起こったドワーフ族とエルフ族の争いを再び起こさないため、ドワンと政略結婚したが彼を心から愛している。ストレスが溜まったときは、ドワンの長くてふわふわな髭を触って癒されている。ジョラ・マンフォード、ナカタリンと共にマルディス暗策計画の実行犯として暗躍していたが計画は失敗し、マルディスの弱体化転生術によって近藤早菜苗と精神が入れ替わる形で別次元の世界に転生してしまう。
ネネリエル
エルフ族が住むエルミールの女王。ジョラ・マンフォードの妻で、エナリエルの姉。「歩く地雷原」や「冷酷無姫」と呼ばれるほど独占欲が強く、ネネリエル自身を敵視している者には身内であっても容赦しない。相手を自由にあやつることができる「魅了」を使える。最初はジョラに関心を持っていなかったが、ジョラが魅了に負けずに自分の意志を貫いていることに気づくと、ジョラに思いを寄せるようになり、自分からプロポーズして結婚した。
リザル
蜥蜴族の男性。「七勇鋭の頭脳」の異名を持つ。冷静沈着な性格で、物腰が柔らかいしゃべり方をする。七勇鋭の一人で廻王マルディスと戦っていたが、マルディス暗殺計画が失敗すると、次の攻勢のために祖国である竜谷に戻って極秘に情報収集を行っていた。神田翔太たちが竜谷に来た時は、開発した道具を使って道案内を買って出る。
セツメイ
神田翔太に従うゴブリン=ハイの女性。もともとは廻王マルディスに従うゴブリン族の男性で、手柄を立てて上位種族であるゴブリン=ハイに進化するために七勇鋭を狙う任務に就いていた。しかし、任務中にエルフ族の体に入った翔太の「魅了」を受けて翔太に従うようになる。その後、翔太たちから「セツメイ」という名前をもらったことで、ゴブリン=ハイに進化した。その進化の過程で性別も女性に変化した。
ダイガン
巨人族の男性。七勇鋭の一人で、廻王マルディスと戦っている。並はずれた大きい体と強面という見た目に反して、人当たりがよくて気さくな性格で、冗談を言って場を和ませている。また、他人と距離を置くルコンに声をかけるなど、七勇鋭のムードメーカー的な存在。竜谷でほかの七勇鋭と再会するものの、何者かにあやつられて正気を失っており、問答無用で神田翔太たちに攻撃を仕掛ける。
廻王マルディス (かいおうまるでぃす)
神田翔太たちが転生した異世界「譲の国」の王。多くの魔物を率いて人間やエルフ族と戦っている。次元に干渉できる能力を持ち、自分を狙う七勇鋭に対して、別次元の人間と精神を入れ替えて転生させる弱体化転生術をかけた。その能力を維持するために頭部以外の体は捨て去り、ふだんは黒い霧のようなものの中に隠れている。
ネグロカーン
魔法使い族の男性。「常闇の魔法使い」の異名を持つ。仲間だったナカタリンやストンピンを裏切り、廻王マルディスに忠誠を誓っている。強化魔法をはじめとした数々の魔法をマルディス配下の魔物に使い、劣勢だったマルディス軍の戦況を打開した。大量の魔物がやられた原因の調査中に神田翔太たちを見つけ、マルディスの邪魔となる存在と認識して翔太たちに攻撃を仕掛ける。
ツナナ
人間とヌーベルキャットのあいだに生まれた交雑種の女性。人間に猫耳と尻尾が生えた姿をしており、幼い頃にその見た目の異様さからほかの人間に虐げられてきた。父親はヌーベルキャットと子を成したことで罵られ、母親は心労によって病死している。家族が人間から迫害されたことで人間を憎悪しており、廻王マルディスに協力して人間の住むノートランド国に攻め入る。高い身体能力を生かした接近戦が得意で、ウソを見破る野性感覚を持っている。神田翔太が交雑種を好意的に見ていることを知ると、翔太に憎しみと好意が入り混じった感覚を抱く。
集団・組織
七勇鋭 (しちゆうえい)
廻王マルディスを倒すために集った、多種族の中から選ばれた七人の勇者。メンバーは人間のジョラ・マンフォード、魔法使い族のナカタリン、エルフ族のエナリエル、ドワーフ族のドワン、チビット族のルコン、蜥蜴族のリザル、巨人族のダイガン。全員が神から「上の器」を与えられている。
その他キーワード
絶対防御 (あぶそりゅーとでぃふぇんす)
異世界「譲の国」に転生した神田翔太が使えるスキル。意識している攻撃を完全に回避したり防いだりすることができるが、意識外の攻撃にはまったくの無防備となる。攻撃を防いだ場合は、相手に攻撃を受けたときのダメージをそのまま跳ね返すことができる。防御面には優れているが、翔太から攻撃すると自分がダメージを受けてしまう。
ポンコツ無双 (ぽんこつむそう)
異世界「譲の国」に転生した近藤早菜苗が使えるスキル。何もない場所で転んだり、クシャミをしたりするなどポンコツな行動を取ることで、超絶なパワーを引き出すことができる。意図的に発動することはできないものの、引き出したパワーで地面を割ったり敵を粉砕したりと、さまざまな場面で活躍している。
癒しの胸部 (ひーりんぐばすと)
異世界「譲の国」に転生した船見加奈が使えるスキル。神田翔太に胸を当てることでケガや病気を一瞬で治し、死亡しても生き返らせることができる。翔太以外に使う場合は加奈が翔太と手をつなぐ必要がある。
上の器 (じょうのうつわ)
神が七勇鋭に与えたアイテム。所持する者に、基礎能力を底上げする「強化因子」と、死亡しても霊体となって霊体の状態で体に戻れば生き返ることができる「煉獄門」の効果を付与する。上の器は譲渡したり奪ったりすることも可能。二つ所持するとなりたい自分になれる「願望進化」、三つ所持すると上の器の元の持ち主のスキルが使えるようになる「能力コピー」、四つ所持すると他人のスキルを無効化できる「能力無効」が追加される。
書誌情報
ポンコツが転生したら存外最強 5巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2019-02-08発行、 978-4065146262)
第2巻
(2019-07-09発行、 978-4065162989)
第3巻
(2019-12-04発行、 978-4065180303)
第4巻
(2020-05-08発行、 978-4065194263)
第5巻
(2020-12-09発行、 978-4065217870)
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