マリーミー!

マリーミー!

一人暮らしでニートの沢本陽茉梨は、ある日突然目の前に現れた男性の秋保心から、自分は陽茉梨の夫だと衝撃の事実を告げられる。試験運用が開始された法律「ニート保護法」により、その被験者として結婚することになった二人は、出会うきっかけこそふつうではなかったが、その後本当の意味で夫婦になろうと努力し、不器用ながら愛を育んでいく。ニートと国家公務員の特殊な結婚生活を描く、強制結婚ラブコメディ。「LINEマンガ」に掲載された作品で、「100万人が選ぶ 本当に面白いWEBコミックはこれだ! 2018」の女性向け作品ランキングで1位を獲得している。なお物語の本編は第10巻で完結しており、第11巻は登場人物たちの未来を描いたスピンオフで、コミックス描き下ろしのスペシャルエピソードも収録されている。2020年TVドラマ化。

正式名称
マリーミー!
ふりがな
まりーみー
作者
ジャンル
ラブコメ
 
その他生活・家族・エッセイ
関連商品
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あらすじ

はじまり

沢本陽茉梨は物心がついた頃には両親がおらず、祖父母と共に暮らしていた。陽茉梨は、家事や介護を一手に引き受けていたため、中学卒業後は進学せずに就職もアルバイトもしないまま、いわゆるニートとなった。しかし祖父を一年前に、祖母を半年前に亡くしたことで、一人ぼっちとなってしまい、家族は高齢猫の桃太郎だけとなった。もともと自分のために生きるということを知らない陽茉梨は、孤独な自分の将来を悲観し、桃太郎が生きているあいだだけ生き永らえればいいと考え、投げやりな人生を送っていた。そんな中、突然見知らぬ男性の秋保心が陽茉梨のもとを訪れる。心は、最近可決されたばかりのニート保護法に基づき、その試験的運用の被験者第一号として選ばれた国家公務員だった。少子高齢化社会と働かない若者の増加を懸念し、その対応策として導入されたこの法律は、登録した者同士が国の定めによって結婚しなければならないという決まりがあった。心は、仕事の延長線で結婚することになったニートの陽茉梨と、この時初対面で「あなたの夫に選ばれました」と陽茉梨の保護者兼配偶者になったことについて丁寧に説明するが、陽茉梨は何も聞かされていなかったため、心を警戒して門前払いする。その後、送付された書類が未開封のままポストに入りっぱなしになっていることに気づいた心は、後日あらためて結婚の承諾を得るために陽茉梨のもとに足を運ぶ。その日、陽茉梨はぐったりした桃太郎を抱いて慌てふためいていた。桃太郎の異変に気づきながらも、病院に連れて行ったこともない陽茉梨は、どうすればいいのかわからなかったのである。そこに結婚の説得をするためにやって来た心が姿を現し、桃太郎を病院に連れて行き、事なきを得た。唯一の家族を失うかもしれない不安から、頼りなさげな陽茉梨の様子を見た心は、彼女には家族が必要だと判断。あらためて陽茉梨に結婚を申し込み、自分は愛してくれなくてもいいから、陽茉梨自身を愛せるようになってほしいと告げる。

元カノ登場

大波乱の末、半強制的に始まった沢本陽茉梨秋保心の結婚生活も、少しずつ安定を見せ始めていた。そんな中、心の勤める会社で人事異動があり、心と山田の同僚である吉浦和歌が昇進し、係長となって戻ってくる。和歌は、実は3年前まで心と付き合っており、その後に別の男性と結婚したが離婚して独身となっていた。和歌は心との久しぶりの再会を喜ぶと同時に、彼が結婚したことに興味を示す。和歌は、付き合っていた当時から一生独身でいることを宣言していた心が、ニート保護法の被験者となって結婚を決めたことに驚き、心を面白おかしく茶化してしまう。さらに、妻となった陽茉梨への興味が尽きない和歌は、山田を引き連れ、心と共に陽茉梨に会いに行くことを決める。心はなんとか拒否しようと試みるものの、あえなく失敗して自宅に到着してしまう。そんな彼らを出迎えたのは、遊びに来ていた梅村拓海梅村広樹だった。先客がいるからと家の中に入らずに帰ることを決めた和歌は、帰り際、陽茉梨に自分が3年前まで心と付き合っていたことだけを明かし、また来ることを約束して帰っていく。翌日、出社した和歌はあらためて心に陽茉梨を愛しているのかと問う。和歌の真剣な形相に圧倒され、はいはいと適当に受け流した心の様子を確認したあと、和歌は人知れず陽茉梨の家に向かう。そして和歌は陽茉梨に、心と別れてほしいと離婚届を突き付ける。一方、会社では山田から和歌はまだ心を愛していると言われた心は、必死にごまかそうとしていた。山田はそんな心に、昔から人間関係に関してドライすぎると突っ込みつつも、今は陽茉梨のことが好きなんだろうと指摘する。思いがけない言葉に、心は陽茉梨との関係は強制的なもので、彼女を幸せにすることは自分の義務だと言い訳する。しかし心は、和歌や山田とのかかわり合いの中で、次第に陽茉梨への気持ちが本気であることを自覚する。

秋保家

ある日、秋保心は母親の秋保椿からの連絡を受け、週末にしばらく疎遠だった実家に帰省することになる。悩んだ末に心は妻の沢本陽茉梨を連れていき、家族に紹介することを決意。前もって電話でおばあさんにその旨を伝えたつもりだったが、その情報は家族には正確に伝わっていなかった。突然、陽茉梨を連れてきたことで、心のおばあさんはショックを受けて倒れ込んでしまう。そんな中、事情を説明された椿は、親族が医者や弁護士、銀行員や国家公務員などいわゆるエリートばかりの秋保家に、元ニートの嫁は認めないと突っぱねようとするが、心は陽茉梨が秋保家にふさわしい女性であると反論する。二人の舌戦が繰り広げられる中、倒れたおばあさんに優しく声を掛けていた陽茉梨は、あっという間に秋保家の雰囲気を和気あいあいなものとする。そんな陽茉梨を邪険にすることもできず、椿は陽茉梨に手伝ってもらいながら晩ご飯作りを始める。そして椿は食事の支度をしながら、陽茉梨に心の弟である秋保翔のことを口にし始める。翔は、幼稚舎から大学まで一貫教育の私立の学校に通っていたが、高校からは公立校に進学。さらに最近は不登校で、自分の部屋にひきこもるようになっていた。翔が部屋から出てくるのは夜中だけで、心に連絡したのも、彼の助けを借りたいと藁をもすがる思いからであった。状況を把握した心は、陽茉梨と共に翔の部屋を訪ねる。ドアから顔を出した翔は、心と陽茉梨の結婚を真っ向から否定し、信じようともしなかった。心から不登校になっていることを指摘された翔は、心には関係ないと言い放ち、無理やりドアを閉めて部屋に閉じこもろうとする。そんな二人のあいだに入ろうとした陽茉梨は、そのはずみで翔と二人で彼の部屋に入ってしまう。謎な状況に動揺する心は、部屋のドアを破壊して陽茉梨を助けようとするが、翔と陽茉梨は部屋の中で意外にも穏やかに会話していた。

不登校の理由

弟の秋保翔が不登校と知った秋保心は、自分たちの家で翔もいっしょに生活しないかと、提案する。その申し出を沢本陽茉梨が快く了承したこともあり、三人は新しい生活をスタートさせる。実家とは違い、翔に笑顔が戻ったことで心は胸をなでおろすが、翔が公立の高校を受験した理由も、不登校になった理由も見当がつかず、いつどのタイミングでこれらのことを切り出せばいいのか、心はもやもやした思いを抱えていた。翔はピアノが置いてある二階を自分の部屋として使い、沢本家に出入りする梅村拓海梅村広樹たちも交え、新しい生活を開始する。当初は自分や家族とのことに関しては、ネガティブなイメージしか持っていなかった翔だったが、陽茉梨たちと笑顔の絶えない時間を過ごす中で、自分の好きだったこと、家族との楽しかった思い出などを語り始める。そんなある日、おつかいの帰りに子猫を拾った翔は、家に帰る途中、クラスメートの林百果とばったり遭遇する。高校に通っていた頃、誰とも交流のなかった翔だったが、百果が自分のことを気に掛け、話してみたかったと言ってくれたことに歓喜し、百果にお礼の言葉を伝える。実は百果は、時折音楽室で翔が弾くピアノを聞いて彼に思いを寄せるようになるが、ある日突然、翔が学校に来なくなってしまったため、声を掛けなかったことをずっと後悔していたのだ。そんな中、偶然にも翔と再会し、自分をクラスメートと認識してくれていたことを喜んだ百果は、翔との関係を構築するために会話に夢中になる。その後百果は、翔に拾われた子猫が沢本家で飼われることになったのを見届けて翔に別れを告げ、笑顔で帰途に就く。すると心が、百果に学校での翔のことを教えてほしいと、公園のベンチに場所を移して百果の言葉に耳を傾ける。

つばめ

梅村拓海のクラスメートの紺野つばめは、女子ながら元気いっぱいで黒色のランドセルを愛用していた。クラスの男子からも男扱いされており、つばめにとってはそれが日常となっていた。しかし拓海は、そんなつばめを見るたびに複雑な思いにかられていた。拓海にはその気持ちがなんなのか理解できなかったが、ある時、拓海はつばめが無理して笑顔を作っていることに気づき、彼女を沢本陽茉梨に紹介することにした。驚くほどにカンのいい陽茉梨は、つばめが女子であることをすぐに看破し、いつもの笑顔でつばめを歓迎するが、ほどなくしてつばめは帰ってしまう。実はつばめの母親は、つばめが生まれてすぐに、自分と父親の紺野幸人を残して出て行ったため、父親と二人暮らしをしていた。幸人は娘を溺愛し、時々かわいらしいアクセサリーをお土産に買ってきていたが、つばめは自分には似合わないと、机の引き出しにしまい込んでいたのだ。それは小さい頃、つばめはピンク色が大好きな女の子らしい子供だったが、父親とランドセルを買いに行った時、見知らぬ女の子からりぼんもピンクも似合わないと暴言を吐かれてケンカになったことが原因だった。それがもとで、父親が責められ、頭を下げる姿を見ることになったつばめは、自分のせいで父親を傷つけたと思い込み、それ以降、自分の存在が父親の足かせにならないように考えるようになっていた。それが女の子らしいものを遠ざけることにつながり、ゴミ捨て場に捨ててあった黒のランドセルを拾って愛用していたのである。女の子らしさを排除することで自分を守っていたつばめだったが、拓海の気遣いと、陽茉梨の存在がそんな彼女の心を少しずつ変化させていく。

友達

林百果の尽力もあり、秋保翔は高校に復帰して楽しい学校生活を送っていた。小野原阿部という気の合う友達もでき、すっかりクラスになじんでいる翔だったが、それに従って百果と翔の会話は減り、二人の関係はどんどん希薄になっていく。新学期に学校で渡すと約束していた誕生日プレゼントも、渡すことができないまま時は過ぎ、校内は体育祭を間近に控え、にわかに慌ただしくなっていた。実は小野原は百果に思いを寄せており、そのあまりにわかりやすい言動に、学校中のみんなが知っているほどの状況になるが、百果だけがその現状にまったく気づいていなかった。実は百果と翔の関係が希薄になったのはこのことが原因で、小野原の百果への思いを知った翔は、友達を裏切ることはできないと、小野原を気遣って一歩身を引いていたのだ。翔との関係に寂しさをつのらせた百果は、沢本陽茉梨の家を訪れて相談を持ち掛け、翔に嫌われたのかもしれないと涙で訴える。梅村拓海からその事情を聞いた翔は百果を電話で呼び出し、久しぶりに二人きりで会った翔と百果は、これまでの時間を埋めるかのように話に夢中になる。そして、翔は百果への思いを伝え、百果は翔に対して以前から抱いていた思いを打ち明け、互いの気持ちを確かめ合う。これにより、大事な友達を失うかもしれないという恐怖と戦っていた翔は、陽茉梨の言葉に勇気をもらい、体育祭当日を迎えるのだった。

同級生

ある日、写真の整理をしていた沢本陽茉梨秋保心は、アルバムの中にある陽茉梨が中学生の頃の写真を見つけた。この写真は商店街にある洋菓子店「sucre」の前で撮ったもので、経営者の息子でクラスメートの三ツ木誠がいっしょに写っていた。当時、シュークリームを食べたことがなかった陽茉梨に、誠がお店のシュークリームを食べさせてくれたことを聞いた心は、心中穏やかではなかった。しかし中学卒業以来、陽茉梨が誠とは会っていないことを知ると、安堵のため息をもらすのだった。だが翌日、心は仕事場でも落ち着きなくイライラし、ずっと貧乏ゆすりを続けていた。それは今日、陽茉梨が今日sucreに行くことを知ったからだった。陽茉梨のことだから、きっとケーキのことしか考えていないだろうという楽観的な山田の言葉に自分を納得させながらも、気が気ではなかった。一方の陽茉梨は、久しぶりに訪れたsucreで、偶然にも実家に戻ってきていた誠と再会する。当時のことを覚えていた誠の両親も陽茉梨の訪問を大歓迎し、ケーキでもてなす。しかし久しぶりの会話の中で、陽茉梨が結婚したことを知った誠は大きなショックを受ける。そして陽茉梨の夫に興味を持った誠は、彼女を家まで送るという口実で心との対面を果たす。あいさつを済ませたあとに心と二人きりになった途端、誠は陽茉梨との出会いや交際年数、心の職業など、根掘り葉掘り質問して心を困らせるが、誠が陽茉梨を心配している気持ちが伝わってきたため、心は誠にこの結婚のいきさつについて打ち明けることを決意。そして、ニート保護法による制度上の結婚ではあるが、今では陽茉梨のことを大切に思っていると正直に話す。さらに心は、この婚姻関係を続けるにあたり、陽茉梨にはちゃんと自らの気持ちで結婚を承諾してほしいと伝えていることを誠に語る。それを聞いた誠は帰り際、明日二人で動物園に行こうと陽茉梨を誘う。そしてその言葉に反対することなく、楽しんできてくださいと笑顔で返す心に、陽茉梨は困惑する。

新婚旅行

親しい人たちを呼んで行われたクリスマスパーティーで、沢本陽茉梨秋保心は、山田秋保翔から旅行券をプレゼントされ、遅ればせながら新婚旅行に行くことを決める。年末年始を秋保家で過ごした二人は、あらためて絆を深めたことで気持ちも新たに旅行先を考え始めるが、なかなか決まらない。その様子を知った山田は、自分がお勧めの温泉宿を手配すると息巻き、その勢いに負けた心は山田にお任せすることにする。旅行当日、新幹線で遠出することになった二人は、窓から見える富士山に大はしゃぎしていると、少し離れた席には、なんと山田と翔、吉浦和歌の姿があった。陽茉梨と心を案じた山田の発案により、二人の関係を進展させようとあとを尾けてきた三人は、二人が泊まる向かいの部屋に入ってスタンバイする。一方、これまでキス以上の経験のないまま、陽茉梨とそれ以上の関係になることを我慢し続けていた心は、新婚旅行でも一線を越えるつもりはなかった。これは陽茉梨との関係を、このまま大切にしたいと思う心の気持ちによるものだった。しかし陽茉梨はもっと自分を頼ってほしい、心と対等な関係になりたいと、心にせまるのだった。後日、会社には以前から考えていたことを実行に移すと決めた心の姿があった。それは、陽茉梨の被験者登録抹消と、心自身の辞職に関することだった。ニート保護法の被験者となった心には、夫婦間の詳細な状況を報告する義務があった。陽茉梨への思いが強くなるにつれ、被験者としての義務を果たすことに抵抗を感じるようになった心は、陽茉梨を守るために自分が会社を辞め、ふつうの夫婦として生活することを考え始める。

大事なもの

最近梅村家では、体調が思わしくない母親の梅村春子と、何やら不機嫌な梅村拓海のあいだで衝突が起きていた。その日の朝も拓海は、寒いからマフラーをしなさいと追い掛けてきた春子を突き飛ばして家を出た。実は拓海が不機嫌な原因は、紺野つばめにあった。つばめは、以前に比べて急に女の子らしくなり、かわいくなったことで、周囲はすっかりつばめを女子として扱うようになっていた。拓海は、つばめがとなりのクラスの男子に告白されたと聞けば不機嫌になり、女子に人気の上級生である杉山がつばめを訪ねてきた際には、勝手に敵対視して一方的に突っかかっていた。そんな中、杉山から、つばめのことが好きなんだろうと図星をつかれた拓海は、動揺して感情のコントロールができなくなり、その矛先をつばめに向け、つばめを傷つける言葉をぶつけてしまう。その日の帰り道、拓海は後悔の念に苛まれていた。周囲は日に日につばめとの仲を深めているのに、もともとつばめとの距離が一番近かった自分が取り残された気がして、その不安が不機嫌な態度となって表れていたのだ。そして拓海が帰宅すると、具合が悪い様子で便器に向かって咳込む春子の姿があった。今日は体調が悪いことを拓海にごめんとあやまった春子は、そのまま拓海の目の前で倒れてしまう。拓海はあわてて父親の梅村広樹に報告し、春子は救急車で病院に運ばれることとなる。偶然、その場に居合わせたつばめは不安そうな拓海を見て、病院まで付き添うことにする。拓海は待合の席で春子を突き飛ばしたこと、つばめに暴言を吐いたことなど、今日自分がしてしまった嫌な言動で頭の中がいっぱいになっていた。自責の念に駆られて胸が潰れそうになる拓海に、つばめは静かに寄り添い、支えてあげようとしていた。その後、春子が妊娠していることが判明。しかし春子は、自分が働くことで家計を支えていた状況を理由に、子供を産むかどうか迷っていた。それを知った広樹は、小説を書くのをやめ、働くことを決意する。

おばあちゃん

ある晴れた日の休日、吉浦和歌が朝から沢本家を訪ねてきた。沢本陽茉梨秋保心が話を聞くと、和歌は祖母のフミが自分を訪ねて上京してくることを明かし、助けてほしいと二人に懇願。フミは東京で買い物をするのが大好きで、とにかくパワフルなため、和歌一人ではとても対応しきれそうにないのだ。きっぱり断ろうとする心のとなりで、陽茉梨は笑顔を浮かべ、フミの相手をすることを了承する。東京駅で久しぶりに和歌との再会を果たしたフミは、いつになく大量の荷物を持っており、長期間こちらにいるつもりであることは明白だった。さらに、田舎でフミと同居中の紫織からの連絡で、家族に何も言わずに東京に出てきたことを知った和歌は、フミの行動に一抹の不安を感じ始める。しかしフミは、そんなことはまったく気にせず、同行していた陽茉梨と意気投合して終始上機嫌の様子だった。だが和歌も心も、自由奔放なフミに連れ回され、家に着いた頃にはぐったりしてしまう。フミには実は、上京した目的が二つあった。一つは亡くした夫との約束だった東京タワーに行くこと。そして、もう一つは離婚してしまった和歌に、西尾隆則とよりを戻してほしいというものだった。上京初日、フミは沢本家に泊まることになるが、翌日に朝からやって来た梅村拓海に助けを求められ、陽茉梨と共に梅村家に向かい、つわりでダウン中の梅村春子に代わって家事をこなす。和歌はそんなフミに苛立ち、人に迷惑を掛けているからと連れて帰ろうとするが、陽茉梨や拓海といっしょにいるフミの姿はイキイキとしており、とても楽しんでいるように見えた。心に説得され、しばらく傍観することにした和歌は、心からフミと一度きちんと話し合うことを勧められる。一方のフミは梅村家の家事を終えると、陽茉梨に頼み込んで新宿にあるカフェへと向かう。そして、電車に不慣れな二人は四苦八苦しながらもなんとかカフェに到着すると、そこに和歌の元夫である隆則が姿を現す。

妊娠

週刊誌の記者を務める桜谷航洋は、もともと猫の写真を撮りながら世界中を旅することを夢見ていた。しかし、週刊誌ではスクープ写真を撮ることを求められ、叱責される日々が続いていた。ある日、見かねた編集長からの指示により、航洋はニート保護法によって結婚した特殊な夫婦の取材を任される。気乗りしないままに沢本家へと向かい、日中に家事をする沢本陽茉梨の写真を電柱に隠れてこっそり撮影していた航洋は、学校帰りに陽茉梨を訪ねてきた梅村拓海にあっさり見つかってしまう。さらに航洋は、うっかりターゲットである陽茉梨本人と会話をしてしまい、逃げるように沢本家をあとにする。一方、秋保心は陽茉梨の被験者登録抹消に向けて会社での働きかけを続けていたが、なかなか実現しない状況に焦りを感じていた。そんな中、不意に貧血に襲われて倒れた陽茉梨は、自分が妊娠しているのではないかと疑い始める。現在妊娠中の梅村春子に相談に行った陽茉梨は、実の親に捨てられた事実を理由に、こんな自分が親になることができるのかと苦しい胸の内を明かす。そこで春子は、赤ちゃんは陽茉梨だけのものではなく、心と陽茉梨の子供なのだからと言い、その言葉に励まされた陽茉梨は、心にこの件を打ち明ける。その後の病院での検査で、陽茉梨が妊娠していることが確定するが、週刊誌に心と陽茉梨のことがスクープ記事として掲載されてしまう。写真を撮った航洋は、優しい陽茉梨を揶揄する記事は書けないと、仕事を完全に放棄したはずだったが、自分の知らないうちに急きょ穴埋めのため、航洋の写真を使って先輩記者が勝手に書いた記事が掲載されたのだ。その内容は「中卒ニート女のしたたかな日常」と題したもので、陽茉梨を貶めるものだった。雑誌を持って沢本家を訪れた航洋は、陽茉梨に頭を下げ、誠心誠意謝罪する。しかし陽茉梨は黙々と記事を読み進めると、よくまとめられていると感心する素振りすら見せ、まったく気に留めない様子だった。あまりの人の好さに動揺する航洋だったが、次の瞬間、居間の方で物音を聞く。そこには、何者かによって石が投げ込まれ、割れてしまったガラス窓が散乱していた。

それぞれのその後

小学3年生になった秋保花は、夏休みを翌日に控えた終業式の日、通知表をもらって各々が沸き立つ中、自分は母親から怒られたことがないと友達に明かす。すると、それを聞いたクラスメートから、怒られたことがないなんて変だとからかわれてしまう。気にしない方がいいとなだめる友達を傍らに、クラスメートは花の両親がふつうに結婚したわけではないらしいと、親から聞きかじったことで揶揄し始める。その日、走って帰宅した花を沢本陽茉梨は、愛おしそうに抱きしめる。クラスメートに言われたことが引っかかっていた花は、いつも自分を心配して決して怒ることなく、自分に敬語で話す母親を目の前にして、うちはみんなの言うとおりふつうではないのかもしれないと、疑問を抱き始める。ちょうどその日、陽茉梨の妊娠が明らかになり、花にもお母さんのおなかに赤ちゃんがいることが告げられた。しかし花は、自分が悪いことを言っていると理解したうえで、赤ちゃんなんていらないと陽茉梨に言い放つ。お母さんはきっと怒るだろうと考えていた花だったが、予想に反して陽茉梨は笑顔でその場を立ち去ると、となりの部屋で静かに泣き始めてしまった。翌日、責任を感じた花は、荷物を持って駅へと向かう途中で、偶然遭遇した梅村海音と二人だけで電車に乗る。花は、自分が陽茉梨を傷つけたお詫びに、たくさんお花の絵を描いてお母さんを喜ばせようと考え、山手線を一周してお花の地図を作ろうとしていたのだ。しかし、何も知らない陽茉梨と秋保心は、花がいなくなったことで大騒ぎとなり、花の知らないあいだに事態は深刻なものとなってしまう。

メディアミックス

TVドラマ

2020年10月3日に、本作『マリーミー!』のTVドラマ版『マリーミー!』がテレビ朝日系で放送された。キャッチコピーは「夫婦なのに、恋人未満。」。キャストは、沢本陽茉梨を久間田琳加、秋保心を瀬戸利樹が演じている。

登場人物・キャラクター

主人公

ニートの女性で、年齢は23歳。物心ついた時から両親はいなく、祖父母と共に暮らしていた。祖父を一年前に、祖母を半年前に亡くしており、現在は15歳になる高齢猫の桃太郎だけが同居人。家事や介護など、すべてを... 関連ページ:沢本 陽茉梨

秋保 心 (あきやす しん)

国家公務員の男性で、年齢は28歳。誕生日は6月2日。28歳になるまで独身で、さらに国家公務員という立場から、ニート保護法の試験実施において被験者第一号となり、沢本陽茉梨と結婚することになった。もともと結婚願望はなく、仕事に生きたいと考えていたため、当初は見知らぬニートとの結婚という事態に頭を痛めていた。陽茉梨からの同意を得て同居を開始し、制度自体に疑問を感じつつも、6月10日に婚姻届を提出して書類上夫婦となった。仕事の延長線上での結婚ということで、陽茉梨の人生を左右してしまうことに対する罪悪感もあったが、世間知らずで頼りない陽茉梨との生活の中で、ふと見せる彼女の笑顔に喜びを感じるようになる。そして、自分のための生き方を知らない陽茉梨を支え、幸せにしてあげたいと思うようになる。それは次第に恋愛感情へと変化し、元彼女である吉浦和歌や、同僚の山田からのアドバイスを受け、陽茉梨への思いを自覚する。実家の家族とは疎遠になっており、もう3年ほど帰省していなかったが、ある時、母親からの連絡を受けて実家に帰ることになり、陽茉梨を紹介して結婚の報告をした。おじいさんやおばあさん、母親の秋保椿、父親の秋保、弟の秋保翔たちとの家族関係は希薄で、家族それぞれに対して思うところがあり、家族の存在を恥じていた。しかし、大人になってあらためて気づくこともあり、自分がこだわって反発していた部分に誤解があったことも判明。家族ともわかり合えると気づき、家族のことを考え直す契機につながった。これをきっかけに、不登校の悩みを抱えた翔を陽茉梨と暮らす家に招き、三人でいっしょに暮らすことを提案する。人付き合いは狭く浅くがモットーで、もともと人とあまり深くかかわろうとしたことはなかった。結婚に関しては、被験者ということもあり、逐一会社や国への報告書の作成が必要とされている。陽茉梨に対しての思いが強くなるほどに、すべてを報告しなければならないという立場と陽茉梨を大事に思う気持ちがすれ違い、複雑な感情を抱えることになる。そのため会社を辞め、辞表を出して被験者を辞退し、登録を抹消することを決断する。

山田 (やまだ)

国家公務員の男性で、秋保心の職場の同僚。年齢は28歳で、10歳年上の妻がいる既婚者。外見も中身もかなりチャラい系。幼稚舎から大学まで一貫教育を行う私立の高校出身で、高校から外部入学した。その際、周囲の交友関係がすでに出来上がっている状況の中、一人も友達がいなかった自分と同じく、誰とつるむこともなく一人でいた心に話し掛けた。それがきっかけで、心とかかわるようになり、現在に至る。心の性格を熟知しており、日頃は心を軽んじているようでいて、実は一目置いている。ニート保護法によって結婚することになった心を、最初は面白がっていたが、妻となった沢本陽茉梨との関係性を知り、心が陽茉梨に恋愛感情を抱いていることに気づいて心に指摘。これにより、心が自分の気持ちを自覚することにつながった。妻とは、カフェで知り合って一目惚れし、一方的にアプローチを続けて強引に結婚に持ち込んだ。しっかり者の妻からは尻にしかれ、言われるがままに従う日常を送っているため、何かとストレスが溜まりがち。それを発散するかのように、会社で無駄に心に絡んでいる節もある。心と陽茉梨がいつまでも片思いのような関係を続けていることにやきもきしており、二人の発展を心から願い、クリスマスプレゼントとして夫妻に旅行券を贈った。その後、なかなか行き先を決めないことに業を煮やし、自分がお勧めの宿を知っているからと強引に話を進め、手配した。実は二人の新婚旅行を尾行し、旅行中になんとしても一線を越えさせようと考え、吉浦和歌や秋保翔まで巻き込んで行われた。その後、心が仕事を辞めようとしていることを知り、大反対したために大喧嘩に発展する。心とは長い付き合いだが、決して深い付き合いとはいえず、心から頼られるような関係を築けていなかったことから、自分だけが心を大事に思っているのではないかと心を痛める。

梅村 拓海 (うめむら たくみ)

梅村春子と梅村広樹の息子。小学生で、年齢は9歳。最近、コンビニエンスストアのとなりにできた新しいマンションに引っ越してきたばかり。ある日、父親がゲームのデータを初期化してしまったことに腹を立て、家出を決行。近所にある見知らぬ沢本陽茉梨の家を訪れ、招き入れてくれたことからいつまでも居座ろうとした。その時、陽茉梨の作った料理を食べて以来、すっかり胃袋をつかまれ、優しい陽茉梨を慕うようになる。朝ご飯を食べに来て、そのまま小学校へ登校するのが日常となり、沢本家に出入りするようになる。我が強いため、思ったことはなんでも言うタイプ。陽茉梨と秋保心が結婚していることを知り、二人の関係が家族に見えないと発言し、心にとって心の引っ掛かりを作ることになった。学校では、クラスメートの紺野つばめのことを気に掛け、時折無理して笑顔を作ろうとするつばめが気になって仕方がない。周りがつばめを男の子扱いする中、自分だけはつばめをちゃんと女の子として扱おうとしていて、そんなつばめの気持ちを汲みたい一心で、陽茉梨を紹介した。のちに、母親の春子の妊娠が発覚した際には、小説を書くことをやめると決めてパソコンを壊そうとした父親の広樹を阻止した。ふだんはやんちゃでやりたい放題だが、人のことをよく見ており、時には男らしい優しさがかいま見える、素直で真っすぐな友達思いの性格の持ち主。

梅村 春子 (うめむら はるこ)

梅村拓海の母親。拓海に負けない気の強さを持つしっかり者で、夫の梅村広樹を尻にしいている。家で執筆活動を行う広樹に留守を任せ、自分が外に働きに出て家計を支えている。元気一杯で明るい性格ながら、怒ると非常に怖い。拓海の家出以来、沢本陽茉梨や秋保心と家族ぐるみで親しくなり、日常的に互いの家を行き来したり、相談をし合ったりと、何かとかかわりを持つようになる。そんなある日、体調不良によって自宅で倒れ、病院に運ばれて妊娠が判明。広樹は喜んでくれたが、仕事のことを考えると産むかどうかを決められず、悩んでいた。それを知った広樹が、小説をやめて働くと言い出したため、これまで広樹に小説を書き続けてほしい一心で自分が働いていたが、それが逆に負担を掛ける結果になっていたのではないかと思い悩むようになる。その後、広樹が十年前に出版した児童書の映画化が決まり、赤ちゃんを産むことを決意。第二子となる梅村海音を出産することになる。

梅村 広樹 (うめむら ひろき)

梅村拓海の父親。マイペースで、温和な優しい性格をしている。妻の梅村春子からは尻にしかれ、一見頼りなさそうに見えるが不思議と包容力があり、大人の余裕が感じられるときもある。日常的に家にいるため、息子の拓海からはニートだと思われているが、小説家を生業としている。しかし売れない小説家のため、ニートと言われても否定できないところがあり、妻に養ってもらっている状況もあって心中は複雑。梅村広樹自身の著書が出版されたのは、もう十年も前のことで、「ぼくの花束」という児童書一冊だけ。春子の二人目の妊娠を機に、執筆活動をやめて働くことを決意するが、パソコンを壊そうとした際に拓海から抵抗され、春子が自分の執筆活動を大切に思ってくれていたことを知る。そしてこれを最後にしようと、執筆した小説を持って出版社を訪れた際、著書の映画化の話が浮上していることを知る。これ以降、再び新作出版の話が持ち上がるなど、小説家として忙しい日々を送るようになる。拓海の家出以来、沢本陽茉梨や秋保心と家族ぐるみで親しくなり、最近は何かあったときのためにと沢本家の合い鍵を預かるなど、何かとかかわりを持つようになる。

3年前まで秋保心と付き合っていた元彼女。その後、西尾隆則と結婚したが、2年で離婚した。会社では心や山田と同じ職場に同僚として勤務していたが、異動となって昇進する。係長となって再び元の職場に戻り、今度は... 関連ページ:吉浦 和歌

秋保 椿 (あきやす つばき)

秋保心と秋保翔の母親。心が3年ぶりに実家に戻ってきた時、妻の沢本陽茉梨を連れて帰ってきたことで、初めて心がニート保護法の被験者となって、結婚した事実を知る。秋保家の親族は、弁護士や医者、銀行員や国家公務員など優秀な人物が多い。そんな中にあって、心の妻が元ニートであるという事実は受け入れがたく、最初は拒絶反応を示すが、自分を偽らない正直な陽茉梨との触れ合いの中で、不器用ながらも二人を夫婦として受け入れるようになる。それ以降は、陽茉梨に秋保家秘伝のレシピノートを渡したり、髪をとかしてあげたりと彼女をかわいがるようになる。いつも冷静沈着で、つかみどころのない性格の持ち主。また、子供たちをはじめとして家族には敬語で話すため、冷たい印象を与えがち。エリート主義で、子供たちはすべて幼稚舎から大学まで一貫教育の私立校に入学させた。子供が小さい頃は、特に娘の習い事の付き添いなどに忙しく、いっしょに食卓につくことはなかったため、心や翔とは気づかないうちに距離ができてしまっていた。最近になって翔が部屋に引きこもり、不登校になったことを日々心配しており、心を頼るようになる。一見するとわかりづらいが、家族を非常に大切にしている。

秋保 翔 (あきやす しょう)

秋保心の11歳年下の弟で、高校2年生。実家暮らしをしているが、最近部屋に引きこもっており、部屋から出てくるのも夜中だけという状況が続いている。家族とのかかわり合いを拒否し、特に母親の秋保椿から心配されている。もともと、母親の独断で幼稚舎から大学まで一貫教育を受けられる私立校に通っていたが、自ら公立高校への受験を決めて入学し直した。しかし、現在は登校していない状態となっている。ニート保護法が正式に施行されたら、高校をやめて登録しようと考えていたが、心と沢本陽茉梨のおかげで家族関係が改善され、実家を出て陽茉梨の家に居候させてもらえることになったため、考えを改めた。その後は野良猫を拾って「カグヤ」と名づけてかわいがり、陽茉梨の家に出入りする梅村一家とも親しくなり、取りまく状況は一変した。特に梅村拓海とは、まるで兄弟のような信頼関係を築いた。もともと大のお兄ちゃん子で、心が自分と違って勉強もスポーツもなんでもできるところを尊敬していた。また、ただ優秀なだけでなく、気づけばいつも周りに人がいる状況にあり、人望もある兄にあこがれを抱いていた。だが、そんな心が突然家を出て行ってしまったことで、自分はどうしたいのかわからなくなり、思い悩んだ末に、外部の高校を受験するに至った。しかし学校では、私立の進学校から公立に来た異分子として生徒のあいだで噂が立ち、人見知りなこともあってそれが見えない壁を作ることになり、クラスメートから腫れもの扱いされるようになった。直接的ないじめを受けたわけではないが、みんなから話し掛けられることもなく、自分から話し掛けることもしなかった結果、孤立した学校生活を送っていた。ピアノを弾くのが好きで、学校の音楽室でよく一人でピアノを弾いていた。陽茉梨の家での生活を始めてすぐ、クラスメートの林百果と出会う。彼女との立ち話の中で、百果がピアノを聞いてくれていたことを知って親しくなり、真っすぐで温かい百果に励まされ、夏休み後に学校へ戻ることを決意。実家に戻り、9月から再開した高校生活は順調で、新たに小野原や阿部という友達もできた。その後、百果への思いを自覚するものの、小野原が百果に思いを寄せていることを知り、友達を失うかもしれない恐怖から一度は身を引こうとした。しかし、陽茉梨や拓海からの励ましのおかげで、百果と気持ちを伝え合うことができ、ようやく交際へと発展する。

秋保 (あきやす)

秋保心と秋保翔の父親。子供が小さい頃から仕事に忙しい日々を送っていたため、家族で過ごす時間はほとんどなく、自宅で食事をすることもほとんどなかった。そのため、特に心や翔からは距離を置かれ、父親として認識されていない状態となっていた。心からは、かかわりが持てなかったことを恨まれているが、実は仕事の忙しさによるイライラを子供に向けないようにするための自衛策だった。食事をいっしょにしなかったのは、胃腸が弱いということもあり、和食中心の食事しか受け付けないから。肉や洋食が好きな子供たちを自分に合わせさせるのはかわいそうだと考え、子供たちには好きなものを食べさせてやりたいという思いやりからだった。何に関しても保守的な考え方をするタイプで、物事が起きる前にそれを避けようとする慎重な性格をしている。本当は寂しがり屋で、子供たちが大好きなため、翔が家を出ることを決めた時には、寂しさから大反対した。しかし、翔がすぐ帰ってくると約束したことで嫌々同意するなど、隠れ子煩悩なところがある。心が妻として連れてきた沢本陽茉梨を温かく迎え入れ、新年は晴れ着を着た陽茉梨を一眼レフカメラで撮影するなど、陽茉梨を実の娘のようにかわいがっている。

おじいさん

秋保心の父方の祖父。心の実家で、おばあさんや秋保椿、秋保、秋保翔と生活を共にしている。同居しているが、自分とおばあさんだけは別室で食事を取っているため、心には疎外感を感じさせていたが、実はきちんとした理由があった。それは、食事中におしゃべりが多いと子供の教育に悪いと考え、自ら子供と食卓を別にしていたのだった。意外にも肉好きで洋食好きのため、胃腸が弱い息子の秋保とも食卓を別にすることになり、家族はいつもバラバラで食事をするようになった。心が妻の沢本陽茉梨を連れてきたことに驚いたが、陽茉梨の優しさに触れ、すぐに打ち解けた。

おばあさん

秋保心の父方の祖母。心の実家で、おじいさんと、秋保椿と秋保、秋保翔と生活を共にしている。同居しているが、自分とおじいさんだけ別室で食べていたため、心には疎外感を感じさせていたが、実はきちんとした理由があった。それは、食事中におしゃべりが多いと子供の教育に悪いと考え、自ら子供と食卓を別にしていたのだった。意外にも肉好きで洋食好きのため、胃腸が弱い息子の秋保とも食卓を別にすることになり、家族はいつもバラバラで食事をするようになった。心が妻の沢本陽茉梨を連れていくことは前もって電話で伝えていたが、「陽茉梨を連れていく」と言ったのを、「ひまわりを持って行く」と聞きまちがえ、実家に戻ってきた時には驚きのあまり倒れてしまう。その後、陽茉梨が優しく背中をさすってくれたりする中で、陽茉梨の優しさと素直な心に触れ、すぐに陽茉梨を受け入れた。新年には初詣に着てほしいと、陽茉梨のために晴れ着を用意した。

林 百果 (はやし ももか)

秋保翔のクラスメートの女子高校生。挙動不審なところもあるが、一途で優しい性格の持ち主。もともと翔のことを気に掛け、翔が学校に来ていた時には、よく音楽室から聞こえてくる彼のピアノを聞くのが好きだった。突然、不登校になった翔を心配しており、偶然姿を見掛けた際、こっそりあとを尾けて住んでいる場所を知ることになる。その後、帰宅途中に偶然翔と遭遇。翔が自分のことをクラスメートだと認識してくれたため、勇気を振りしぼって話し掛ける。おしゃべりはあまり得意な方ではなく、むしろ苦手意識を持っていたが、翔と話したい一心で機関銃のように話し続け、翔と親しくなる。これがきっかけで、翔の優しさを知り、学校で話し掛けなかったことを後悔した。その後は翔の兄の秋保心や、その妻の沢本陽茉梨とも親しくなり、翔とも信頼関係を築いていく。翔に思いを寄せているが、引っ込み思案な性格もあり、なかなかその一歩が踏み出せないでいる。翔の誕生日会に誘われ、プレゼントは新学期に学校で渡したいと話し、翔が学校に戻るきっかけをつくった。その後、さりげないフォローが功を奏し、翔は楽しそうに学校生活を送っていたが、翔に小野原や阿部という友人ができたため、だんだん翔と話す機会が減り、翔との距離が広がったことに落ち込んでいる。しかしその後、翔から気持ちを伝えられた結果、思いが実って交際へと発展することとなった。

紺野 つばめ (こんの つばめ)

小学生の女子で、梅村拓海のクラスメート。ショートヘアで、学芸会では王子様役に推薦されるなど、男の子っぽく見られがちだが、れっきとした女の子。ランドセルも黒を使っており、同じクラスの男女共に紺野つばめを女子として扱っていない。母親はつばめが生まれてすぐ出て行ってしまったため、父子家庭で育つ。そのため、自宅での炊事洗濯、掃除など家事のいっさいを自分で行っている。小さい頃は、祖父母からの影響もあり、ピンク色が大好きで女の子らしい格好をしていたが、ランドセルを買いに行った時、見知らぬ女の子とピンク色のランドセルの取り合いになり、服やリボン、ピンクのランドセルが全然似合っていないと暴言を吐かれる。その後、取っ組み合いのケンカになったことで、父親の紺野幸人が相手に謝罪する事態となり、傷ついたつばめは、帰り道にゴミ収集所に捨ててあった黒のランドセルをきれいに磨いて大切に使うことを決めた。大好きな父親を自分のせいで不幸にしたくないという強い思いを抱いているため、かわいい自分を捨てて、しっかりしなければと考えるようになり、男の子のように振る舞っている。だが心の奥底では、女の子らしくかわいいものにあこがれを抱いている。拓海を介して沢本陽茉梨と知り合うが、一目見て自分を女の子と言い当てたことに驚いた。かわいらしい陽茉梨に対して距離を取ろうとするが、一方で陽茉梨のような女性らしさにあこがれるなど、複雑な心境を抱えている。拓海とは、何かと口げんかになることが多いが、非常に仲がいい。なかなか素直になれない拓海との関係は一進一退を繰り返しながら、徐々に恋に発展する。陽茉梨とは、お菓子作りや学芸会の衣装作りなどを通して親しくなっていく。時には陽茉梨の悩みを聞いてあげることもあり、陽茉梨とはまるで同世代の友達のような関係を築く。

紺野 幸人 (こんの ゆきと)

紺野つばめの父親。仕事で忙しい毎日を送っているが、父子家庭ながら楽しく暮らしている。妻とは、出会ったばかりで子供を授かったため、家庭を含めてすべてはこれから築いていけばいいと楽観的に考えていたが、つばめが生まれてすぐに妻は出て行ってしまった。現在は家の炊事洗濯、掃除などのいっさいをつばめに任せている状態で、つばめには頭が上がらない。まだつばめが小さい頃、ランドセルを買いに行った時に、つばめが見知らぬ女の子と取っ組み合いのケンカとなり、相手に謝罪する事態となった。相手の子の親は、ケンカになったいきさつを知ろうともせず、一方的につばめを責め立てた。また、自分が若く見えることでまだ学生だと誤解され、父親ならチャラチャラしないできちんと子供をしつけなさいと、理不尽な暴言を吐かれた。このことから、若く見られないように髭を伸ばすなど、つばめにつらい思いをさせないように父親として努力をするようになった。ある時、電車の中で痴漢の男を捕まえ、女性を助けたことがきっかけで、その場に居合わせた秋保心と知り合う。その後、心の妻である沢本陽茉梨を紹介され、偶然にも陽茉梨が娘のつばめと面識があることを知り、梅村拓海、梅村春子、梅村広樹たちと家族ぐるみでの付き合いが始まる。外見もしゃべり方も非常にチャラく、思ったことはなんでも口にしてしまう子供っぽい性格をしている。しかし仕事はできるタイプのため、チャラい振る舞いとのギャップを魅力的に感じている女性も多く、辛辣な物言いをする割には女性にモテる。

安原 結衣 (やすはら ゆい)

安原千咲乃の妹で、梅村拓海や紺野つばめのクラスメート。学芸会で発表する劇で、王子様役につばめが推薦されたことを知り、白雪姫に立候補するが、あえなく落選。結局魔女役を務めることになった。友達を思いやる優しさを持ち、いつも明るくポジティブな性格の持ち主。希望の役ではないにもかかわらず文句を言うことなく、前向きに魔女役を楽しんでいた。学芸会では拓海とつばめの紹介で、沢本陽茉梨に衣装作りを手伝ってもらうことになり、陽茉梨と意気投合する。年齢差を感じることなく、友達のように親しくなった。女の子らしいかわいらしさがあり、のちに雑誌のモデルとして活躍する。

小野原 (おのはら)

高校生の男子で、林百果と秋保翔のクラスメート。明るい性格の軽いノリで、新学期から学校に復帰した翔となかよくなる。お昼ご飯はいつも母親が作ってくれたのり弁当を食べている。ごはんとのりだけでおかずがないため、いっしょに食べている翔のお弁当の中身をうらやましがり、毎日のように翔のお弁当のおかずを欲しがっている。実は百果に思いを寄せており、その事実は学校中のみんなが知っているのではないかと思われるほどだが、肝心の百果だけは気づいていない。その後、友人づてに翔と百果が両思いになった事実を知り、一時はすっかり意気消沈していたが、百果本人にはっきりとふってもらったことで踏ん切りがつき、二人の交際を認めた。友達思いで優しい性格のため、翔には百果の好きな人がお前でよかったと、笑顔で引導を渡して翔を安心させた。

榎本 奈澄菜 (えのもと なずな)

高校生の女子で、林百果と秋保翔のクラスメート。百果や安原千咲乃とは仲がよく、お弁当を食べたり、放課後に寄り道したりと、いっしょに過ごしている。百果の翔への思いを応援しており、二人の恋の行く末を見守っている。受験を終え、家庭教師をしていた大学生との交際を始めた。卒業を間近に控え、千咲乃が企画した卒業旅行に百果や阿部、小野原、翔と共に六人で行くことになった。日に日に言動が荒んでいく千咲乃と一触即発の状態となり、旅行当日は不穏な空気になってしまうが、阿部のおかげで自分を取り戻した千咲乃と向き合って仲直りする。

安原 千咲乃 (やすはら ちさの)

高校生の女子。林百果と秋保翔のクラスメートで、安原結衣の姉。百果や榎本奈澄菜とは仲がよく、お弁当を食べたり、放課後に寄り道したりと、いっしょに過ごしている。百果の翔への思いを応援しており、二人の恋の行く末を見守っている。テニス部に所属しており、在校中は部活に青春を捧げていた。部活引退後も、頻繁に部活に顔を出していた。卒業を間近に控えた頃、ふと恋愛をしていないのが仲間内では自分だけという事実に気づく。自らが企画した卒業旅行に、百果や奈澄菜、翔、阿部、小野原の六人で行くことになった。もうすぐ卒業という寂しすぎる現実に耐え切れず、どんどん心が荒んでいき、みんなにあたりちらして卒業旅行を台なしにしそうになるが、阿部の気遣いのおかげで自分を取り戻すことができた。

阿部 (あべ)

高校生の男子で、林百果と秋保翔のクラスメート。学校に復帰した翔や小野原と仲がよく、いっしょにお弁当を食べたり、学校帰りに買い食いしたりしている。小野原とは対照的に、物静かでクールなタイプ。高校が始まったばかりの頃、翔から目をそらしたことで、翔が不登校になるきっかけをつくったといっても過言ではない。だが、いい意味で他人への興味は薄く、特に深い意味があったわけではなかった。女子から人気があり、よく告白されるが、断ることができない性格のために、付き合っては別れることを繰り返している。卒業を間近に控え、安原千咲乃が企画した卒業旅行に、百果や榎本奈澄菜、小野原、翔と共に六人で行くことになった。日に日に言動が荒んでいく千咲乃の様子に気づき、旅行当日に観覧者に乗ろうと声を掛けてフォローした。

室長 (しつちょう)

秋保心の直属の上司にあたる中年男性。心が「ニート保護法」によって結婚しなくてはならなくなったことについて、表向きには試験的な運用を成功させて国民のよい手本となるようにと前向きな姿勢を見せている。だが、実は室長自身はこの法律には懐疑的で、施行自体には大反対している。この法案を通した国会議員たちが、結婚させればニートが減り、子供が増えるのではと都合よく考えていることを不安視している。この失敗を気づかせるためにも、この試験運用をきちんと実施し、うまくいかないことを証明しなければいけないと考えている。しかし、順調な様子の心を目の当たりにして、うまくいくに越したことはないと楽観視するようになる。その後、心から辞職と被験者辞退、心の妻である沢本陽茉梨の登録抹消の申し出があった際には、必死に引き止めた。

杉元 (すぎもと)

沢本陽茉梨の家の向かいに住んでいる中年女性。もともと陽茉梨が小さい頃は、明るい性格だったことを知っており、祖母を亡くしてからあまり見かけなくなったと心配していた。明るい性格でおしゃべりが大好き。陽茉梨に自分のお下がりの服をゆずっているが、意外と若めの服が多い。

三ツ木 誠 (みつぎ まこと)

沢本陽茉梨の中学時代のクラスメートだった男性で、穏やかな性格をしている。実家の両親は洋菓子店「sucre」を営んでいる。中学生の頃、シュークリームを食べたことがないと言った陽茉梨に、実家のシュークリームを食べさせたことがあった。中学卒業後、野球での実力を評価され、野球の強い全寮制高校へと進学したが、その後肩を壊して野球はやめてしまった。現在は実家を出て社会人として一人暮らしをしているが、久しぶりに実家に戻ったところで偶然にも陽茉梨が店を訪れ、卒業以来の再会を果たした。その際、陽茉梨が結婚したこと、祖父母が亡くなったことを知り、陽茉梨の自宅を訪問した。そこで、秋保心と顔を合わせ、二人の結婚がニート保護法によるものだったことを明かされる。それをきっかけに、中学生の頃からの陽茉梨への思いを募らせる。陽茉梨を誘って動物園に行った時、これまでのさまざまな思いがよみがえって、陽茉梨を抱きしめるが、陽茉梨からは心配されるばかりで手ごたえはまったくなかった。その後、抱きしめた現場を偶然見た紺野幸人と梅村広樹、梅村拓海に声を掛けられ、話をしたことで心の人間性を知り、心と陽茉梨の関係性をかいま見る。身長は188センチと高く、店内の鴨居によく頭をぶつけてしまう。

太一 (たいち)

三ツ木誠が中学時代に友人だった男性。当時は野球部に所属しており、誠とは切磋琢磨していた関係。誠が野球部の強い高校への推薦の話をもらいながら、自信がないと気落ちしていた際には、絶対大丈夫だと声を掛けて元気づけた。その後、誠が肩を壊して野球をやめたことを知って心配していた。現在は、仕事の傍ら中学時代の同級生たちで作った草野球チームに参加し、野球を続けている。同窓会で誠と久しぶりに再会した際には、誠を草野球に誘う。

西尾 隆則 (にしお たかのり)

吉浦和歌の元夫。よく笑い、よく泣く感情豊かな男性。仕事で日々忙しい和歌を気遣って、毎日朝食を用意するのが日課となっていた。一つの卵から二つの黄身が出てくると喜ぶような子供っぽいところがあり、離婚届にサインした日も、いつものように朝食を用意していた。和歌の卵に黄身が二つ入っていたことから、未来はたくさんの幸せが待っていると言葉を贈り、家を出て行ったが、実は和歌のために卵を二つ用意していたのだった。自分と別れたあとの和歌のことを心配しており、定期的に連絡を取っていた。のちに、和歌の祖母であるフミからの連絡を受け、新宿のカフェで和歌と久しぶりに再会することとなる。

(つま)

山田の10歳年上の妻。気が強くしっかり者で、山田を尻にしいている。朝はプランターの水やりと、愛犬の散歩を夫に任せている。そのあいだにゴミを出して、掃除や洗濯を済ませて朝食を用意し、ニュースを見ながら新聞を読むことをルーティンとしている。夫をこき使う恐妻家のイメージだが、自分の担った役割をしっかりとこなしており、山田からは前世は聖徳太子ではないかと感謝されるほど。山田とは、カフェで知り合って一方的に一目惚れされ、頼み込まれた形で結婚に至った。厳しいだけではなく、人を気遣える優しさを持つ。

杉山 (すぎやま)

小学5年生の男子。紺野つばめとは、同じ図書委員として面識があり、親しい。サッカーが上手なイケメンで、女子からの人気が高い。ある日、図書委員の連絡をするため、つばめのクラスを訪れた時に梅村拓海がやたらと突っかかってきたため、つばめのことが好きなんだろうと拓海に指摘。その言葉が拓海をあおる結果となり、拓海から敵視されることになる。

松嶋 (まつしま)

秋保心の勤める会社で、事務次官を務める男性。心の父親である秋保の旧友でもあり、心からは「おじさん」と呼ばれる親しい間柄。その関係性が会社で表沙汰になると面倒だと考えているため、知り合いであることは社内の誰も知らない。ある時、心が退職とニート保護法の被験者辞退、心の妻である沢本陽茉梨の登録抹消を願い出たため、話し合いに参加して説得しようとした。

藤平 (ふじひら)

秋保心と同じ会社に勤める男性で、日常的にミスを繰り返している。しかし出世欲だけはあり、ニート保護法の被験者になれば出世コースに乗って、官僚候補確約という噂を聞きつけ、興味を持つ。実は田舎の祖父母が、藤平が将来総理大臣になると近所に吹聴して回っていると聞いて困惑している。結婚は人生の墓場という声を多く聞いてきたため、結婚にはまったく興味がなかったが、いっそ仕事と割り切ってみようと考えていた。しかし心の話から、そもそも仕事ができる人でないと被験者の対象とならないことを知り、結局自分ではだめなのだと気落ちしてしまう。

フミ

吉浦和歌の祖母。歳の割に非常に元気がよく、思い立ったら実行しないと気が済まない。和歌の母親の紫織と同居しているが、古くなった自分の家がきれいにリフォームされてしまい、まるで知らない人の家のようになってしまったことに不満を抱えている。そして誰にも知らせずに、ぬか床や亡き夫の遺影など大事なものはすべて持って、田舎から東京へ出てきた。夫は亭主関白で、夫婦生活は非常に苦労したために夫が亡くなってからは、その反動で遊び回るようになった。夫婦関係を知る周囲からは哀れまれているが、フミ自身は夫はとても大切な存在で、結婚生活は幸せなものだったと思っている。その夫が病床で東京タワーに行きたいと言っていたため、東京に出てきた目的の一つには、東京タワーに行くことが含まれており、秋保心と和歌を強引に連れ回して観光を楽しんだ。その際、同行した沢本陽茉梨と、ヘアスタイルが同じ三つ編みということで意気投合する。もともと子供の頃から勉強好きだったが、妹弟が多かったために学校にも通わせてもらえず、早々にお見合いで結婚した経緯がある。そんな過去が影響しているのか、女性にも学歴やキャリアが大事だと考え、和歌が小さい頃から勉強を見てあげて、向上心を高めてきた。一方で、今でも和歌のことを小さい子供のように心配しており、別れてしまった夫の西尾隆則と和歌の関係を修復させたいと思っている。そのため、和歌に内緒で隆則を呼び出し、新宿のカフェで待ち合わせをさせるなど、陽茉梨も驚くほどの行動力を見せる。上京中は陽茉梨の家に居座り、梅村拓海から妊娠中の母親の梅村春子がダウンしていると聞いて梅村家を訪れ、梅村広樹に代わって炊事洗濯を行うなど、陽茉梨にかかわる人ともすっかり顔なじみとなった。

紫織 (しおり)

吉浦和歌の母親。田舎で義母のフミといっしょに暮らしており、フミとはいい関係を築いている。何も言わずに家を出て行ってしまったフミを心配し、和歌のもとまで迎えに来た。フミが家出したことを嘆き、再会した時にはフミを思って号泣するなど、おちゃめでかわいらしい性格をしている。

桜谷 航洋 (さくらや こうよう)

フリーで週刊誌の記者を務める男性で、年齢は26歳。寄稿している「週刊文旬」の編集長からは、芸能人や政治家などのスクープ写真を撮ってくるように言われているが、望まれるような写真を撮ることができず、日々叱責されている。ある日、編集長からニート保護法によって結婚した一般人の沢本陽茉梨の写真を見せられ、陽茉梨に張り付いてこっそりと写真を撮っていたが、陽茉梨の家に遊びに来た梅村拓海に見つかってしまう。なんとか言い逃れようとするものの、思わず陽茉梨や拓海と会話をしたことで陽茉梨の人柄に触れて、こんないい人を揶揄することはできないと記事を書くことはしなかった。しかしその後、穴埋めの記事が必要になり、自分が撮った写真を使って先輩が勝手に記事を作成し、雑誌に掲載されてしまう事態となった。それを知り、掲載誌を持って陽茉梨のもとを訪れて謝罪した。もともと猫の写真を撮りながら、世界中を旅するのを夢見ていた。

秋保 花 (あきやす はな)

秋保心と沢本陽茉梨の娘。心優しいが気の強い性格をしている。幼児の頃、中学生になった梅村拓海のことが大好きだった。父親の心も大好きだったが、父親が自分と結婚できないことを知ると素っ気ない態度を取るようになり、それがまたかわいいと周囲を悶絶させていた。小学3年生になった頃、これまで一度も母親に怒られたことがないと話したことがきっかけで、クラスメートから変だと言われ、さらに両親が「ニート保護法」で結婚をしたらしいと教えられる。もやもやした思いを抱いていたところ、陽茉梨に二人目の子供ができたことを告げられた。その際に赤ちゃんなんていらないとつっぱね、陽茉梨に怒られるだろうと構えていたが、予想に反して陽茉梨は笑顔で立ち去り、となりの部屋で泣き始めてしまう。それを見て、自責の念に駆られた秋保花は、陽茉梨を喜ばせるために山手線を一周してお花の地図を作ろうと思い立ち、偶然会った梅村海音と二人で電車に乗り込む。その後、周囲を巻き込む大騒動を巻き起こすこととなる。

梅村 海音 (うめむら かいと)

梅村春子と梅村広樹の息子で、梅村拓海の弟。秋保花の一歳年上だが、気弱な性格で花に言われるがまま、付き合って行動している。ある時、花から誘われて二人だけで山手線に乗って知らない町に降り立ち、花と共に行方不明になったと大騒動を巻き起こす。

その他キーワード

ニート保護法 (にーとほごほう)

少子高齢化社会と、いわゆる「ニート」と呼ばれる働かない若者が増加していることを懸念し、その対応策として作られた法律。世間から取り残されたニートたちを結婚という形で救済しようという目的のもとに施行され、登録した者同士は国の決定によって結婚することが義務づけられる。これによってニートは減少し、ひいては子供の増加が見込まれるのではないかと期待されている。また身体的な問題がない場合は、社会に出て働くことで登録を無効化することも可能。正式な施行に先立ち、国家公務員による試験的な実施が水面下で行われることになり、沢本陽茉梨と秋保心がその被験者第一号となった。「ニート保護法」は通称で、正式名称は「若年無業者保護法」。

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