メッセージアプリの新たな使い方
夫の廉三を亡くし、一人暮らしを始めたミカコは、孫の勧めでスマホを持ち、メッセージアプリ「TALK」を導入する。その際、廉三のアカウントを発見したミカコは友達登録をし、亡き夫に日々の出来事を報告するようになる。周囲の人々は当初その行動に驚くものの、「墓参りに行って仏様に話しかけるようなものだ」というミカコの説明を聞いて納得する。しかし、ミカコにとってそれはあくまで建前で、実際は生前無口だった廉三との心の会話にほかならなかった。こうしてミカコは、時に嬉しい報告をし、時に愚痴をこぼしながら、穏やかに日々を過ごしていく。
「今だから言える」夫婦の関係性
ミカコは時おり、見栄っ張りで、老いて体が思うように動かず、さらに気難しくなった廉三を思い出し、そのことに関する文句を彼に告げるかのようにTALKに書き込んでいく。「今だから言える」ことを吐き出しながら、彼からの反応を現実のように予想するミカコの姿は、長年連れ添った夫婦の、ある意味「阿吽(あうん)の呼吸」を感じさせる。既読がつかなくても返信が来なくても、確かな夫婦の会話がそこに成立しているかのようで、よくも悪くもそのすべてをドライに受け止めるミカコの包容力が、ほんのりと心温まる読後感につながっている。
ミカコが周囲に与える影響
亡くなった人からの返事がないことを承知のうえで、メッセージアプリを通じて話しかけるミカコの行為は、周囲の人々に不思議なものとして受け止められる。しかし、その人が疲弊したり迷ったりした際に、「ただ話を聞いてもらう」だけの行為が、人が生きるうえでいかに重要であるかに気づく場面が、作中では非常に多く描かれている。一方通行に見えるが実はそうではなく、小さいながらもさまざまな示唆を含んでいるミカコのこの行為は、周囲の人々に「気づき」を与え、その人生をより豊かにしていく。
登場人物・キャラクター
瀬戸内 ミカコ (せとうち みかこ)
1か月ほど前に夫を亡くした高齢女性。年齢は72歳。広島の一軒家で一人暮らしをしている。近所に住む娘の万寿香や孫の桃実が心配して頻繁に様子を見に来ているが、ミカコ自身はまだまだ元気で、オリーブ内科医院の受付として現役で働いているほど。それでも心配が尽きない桃実の勧めで、いつでも連絡を取れるようにスマホを持つことにした。その際、メッセージアプリ「TALK」で亡き夫の廉三のアカウントを見つけて友達登録し、以後は何かにつけてコメントを残して、まるで廉三に話しかけるかのように近況を報告している。わりと新しいもの好きで、メキシカンやアジアンエスニックなどスパイシーな料理を好む。また甘いものも大好きで、よく甘酒を何杯もおかわりして飲んでいる。性格診断によると、ISFPの「冒険家」タイプ。
桃実 (ももみ)
ミカコの孫娘。明るく活発な性格の女子大学生。連れ合いを亡くして一人暮らしをしている高齢のミカコを心配し、様子を見るために彼女のもとへ足しげく通っている。ミカコとは非常に気が合い、しっかり者である一方で何かと意見を押し付けがちな母親の万寿香と、マイペースなミカコのあいだに入り、調停役を買って出ることが多い。ミカコのことが大好きなおばあちゃん子で、その事実は大学の友人間でも知られ、好意的に受け止められている。ミカコにスマホを持つことを勧めた人物で、それ以来、何かとスマホの使い方をミカコに教える師匠的存在となっている。性格診断によると、INFPの「仲介者」タイプ。
書誌情報
ミカコ72歳 4巻 コアミックス〈ゼノンコミックス〉
第1巻
(2022-02-19発行、978-4867203057)
第2巻
(2023-02-20発行、978-4867204702)
第3巻
(2024-02-20発行、978-4867206188)
第4巻
(2025-08-20発行、978-4867207420)







