世界観
「女装少年」が題材。全寮制中学校の寮の空きの問題で女子寮に入寮することになり、女性として暮らすことになった主人公が、学校生活の中で、女性らしくないゆえに逆に男子生徒の好感を得てトラブルに巻き込まれたり、意中の女子生徒には正体を明かせず嘘を重ねることに悩みながら学校生活を送る姿が描かれる。
作品誕生のいきさつ
作者の吉住渉は本作『ミントな僕ら』誕生のいきさつについて、コミックス1巻のフリースペースで「前作ではギャグパートを描いている時が最も楽しかったため、次回作はコメディ色の強いものにしたいと考えた」「掲載誌である「りぼん」でしか描けない、フィクションらしい物語を描こうと思った」と語っている。他にも、構想自体は連載開始の遥か前から存在したが、「女装少年もの」になかなか担当編集者の理解が得られなかったこと、また理解ある担当者相手にもファンタジー要素の強いものを提案されたものの、ファンタジー作品を執筆する自信がなかったために「女装もの」で推し通したことなどが語られている。
あらすじ
森ノ宮学園中等部転校編(1~8話)
男子中学生の南野のえるは双子の姉、南野まりあと大の仲良し。しかし、森ノ宮学園中等部バスケットボール部コーチ広部和陽に恋をしたまりあは、のえるに何も告げず森ノ宮学園中等部に転校してしまう。その行動にショックを受けたのえるは、まりあを追って転校しようとするが、その条件は、なんと「女子生徒として女子寮で暮らす」というものだった。
栗原トオル編(9話~)
牧村未有への想いを自覚したものの、彼女には女性と認識されたままの南野のえる。諦めて当面の間は友人として接そうとしていたさなか、のえるは街で未有と、本来の男子の姿で遭遇してしまう。とっさに自分を「のえるのいとこの栗原トオル」と名乗ったのえるだったが、その嘘は意外な事態に発展してしまう。
時事ネタ
作中の番外編として、南野のえる、南野まりあ、佐々龍至、牧村未有の4キャラクターが1998年に行われた長野オリンピックの観戦と解説を行うレポート漫画『長野へジャンプ!』がある。本作はコミックス2巻の巻末に収録されており、4キャラクターが各競技のルールや選手の情報、試合のレポートなどを語る内容になっている。
関連作品
関連作品として、作者・吉住渉による前作『君しかいらない』がある。ヒロインの栗原朱音と本作『ミントな僕ら』に登場する南野のえると南野まりあが血縁関係にあるという設定で、『ミントな僕ら』の作中に朱音と朱音の父親である栗原トオルの話題が登場する。トオルに関しては、本人が登場しないながらも、彼の名前が作中の重要なキーワードになるという、独特の位置を占めている。
アシスタント
第1話のスペシャルゲストとして、『美少女戦士セーラームーン』の作者、武内直子が一部コマの作画担当として参加している。参加内容はモブキャラクター9名の作画を行うという小規模なものだが、参加コマの下には武内のクレジットがあり、両作家のファンには見逃せないものとなっている。
登場人物・キャラクター
南野 のえる (みなみの のえる)
双子の姉である南野まりあを追って森ノ宮学園中等部2年A組に転校してきたが、寮の空きの都合で性別を偽ることになってしまった男子生徒。腰に届くほど長いウェーヴヘアのかつらをかぶり、かつらの境界線を隠すために常にヘアバンドをして女子生徒として暮らしている。姉のまりあと瓜二つのかわいらしい容姿から転校早々話題になったが、本来は女性と間違えられることを嫌っていた。 明るく素直で単純な性格だがやや独占欲の強いところがあり、姉離れできずまりあの恋路を邪魔しようとしていたが、次第に成長していく。
南野 まりあ (みなみの まりあ)
南野のえるの双子の姉で、森ノ宮学園中等部2年A組に所属する女子生徒。以前はのえると共に東山中学校に所属していたが、バスケットボール部の春期対抗戦で知り合った森ノ宮学園バスケットボール部のコーチ広部和陽に恋をし転校を決めた。しっかり者の姉としてのえるの女装生活を支える一方で、やや恋に落ちやすいところがあり、自分を想う男性には極端になびきやすい一面がある。
牧村 未有 (まきむら みゆう)
南野のえるのルームメイトとなった、森ノ宮学園中等部2年C組に所属する女子生徒。ショートカットにヘアピンを留めた、クールな印象の人物。無表情で人見知りする性格が災いし、教室では一匹狼的な存在となっており、夜間の外出が多いことから援助交際をしているという噂が立っている。ある件からのえると親しくなり、親しみやすい笑顔と真面目で心優しい本来の姿を見せるようになる。 少林寺拳法の覚えがあり一般的な女性よりも強いが、虫が非常に苦手という可愛らしい面もある。
佐々 龍至 (ささ りゅうじ)
南野のえるが森ノ宮学園中等部に来て最初に親しくなった人物で、森ノ宮学園2年A組に所属する男子生徒。部活動は男子バスケットボール部に所属し、その端正な容姿から女子生徒からの多大な人気を集めている。一見無口で無愛想だが、実際は面倒見のよい性格で、自身の趣味である釣りにのえるが関心を持ったことで親しくなる。普段は落ち着いているが、夢中になれるものの前では別人のように熱くなるところがある。 実の父親を事故で亡くしており、現在の父親とは血がつながっていない。
麻生 可南子 (あそう かなこ)
南野まりあの友人で、森ノ宮学園中等部2年C組に所属する女子生徒。前髪を斜めに分け、肩までの髪を外にはねさせた、たれ目が特徴の人物。まりあとは寮のルームメイトでもあり同じ女子バスケットボール部に所属していることから、よく一緒に行動している。容姿のいい男性に熱を上げがちなミーハーな一面がある一方、冷静な視点を持っており、悩める南野のえるとまりあに客観的立場から意見や助言をすることもある。
広部 和陽 (ひろべ かずあき)
南野まりあの片想い相手で、森ノ宮学園中等部女子バスケットボール部のコーチを務める男子大学生。森ノ宮学園中等部の卒業生でもあり、現在はK大学の2年生。優しく温和な性格だが、中学生は恋愛対象に捉えていないのか、まりあのアプローチに気づかない鈍いところがある。弟の広部良陽には、コーチ業務や部員の様子についてよく話していた。
広部 良陽 (ひろべ よしあき)
広部和陽の弟で、日野中学校に所属する3年生の男子生徒。穏やかで誠実な、自分に自信のある人物。部活は男子バスケットボール部に所属しており、キャプテンを務めている。南野のえるたちとは練習試合で知り合ったが、かねてから兄より森ノ宮学園中等部女子バスケットボールについて話をよく聞いていたため、南野まりあには強い関心を抱いていた。
桜井 大輔 (さくらい だいすけ)
南野のえると南野まりあの友人で、2人が以前通っていた東山中学校に所属する2年生の男子生徒。短めの髪を外にはねさせた、つり目が特徴の人物。まりあの転校前から彼女を想っており、練習試合で再会したのを機に交際を申し込む。まりあに比べ自分の想いが遥かに重いことを自覚しており、それに悩むこととなる。
立原 果林 (たちはら かりん)
南野のえると南野まりあの友人で、2人が以前通っていた東山中学校に所属する2年生の女子生徒。前髪を斜めに分け、高めの位置でツインテールにしている人物。のえるの転校前から彼のことを想っており、ある情報を聞きつけても諦めきれずアタックをするが、それがきっかけでのえるが性別を偽って森ノ宮学園中等部に転校したのではないかと疑い始める。
中山 晶 (なかやま あきら)
広部良陽の幼なじみで、南野のえるたちの2歳年上にあたる少女。前髪を斜めに分け、ストレートロングヘアの気の強い性格の人物。良陽とは家が隣同士で、晶が一人っ子で両親が不在がちだったのも手伝い幼い頃は常に一緒にいた。そのため、良陽のことを自らの所有物のように捉えており、良陽に執着したびたび理不尽な要求をする。
栗栖 慈朗 (くりす じろう)
南野のえるに関心を持って近づいてきた、森ノ宮学園中等部2年D組に所属する男子生徒。髪を赤く染めた派手な印象の人物で、佐々龍至と2年生女子生徒の人気を2分するほどの存在。部活動は軽音部に所属し、ボーカルを務めるバンド「アンブラッセ・モア」は学祭ライヴのチケットが入手困難になるほどの人気を誇っている。 性格は恵まれた容姿からか極端なナルシストで、女性に冷たくされると恋に落ちるという一風変わった好みをしている。
レン
栗栖慈朗のバンド仲間で、森ノ宮学園中等部3年A組に所属する男子生徒。長髪を青く染めた、派手な容姿に反し気さくな人物。学祭で所属バンド「アンブラッセ・モア」のメンバーが欠場した際、佐々龍至を見出し臨時メンバーとして声をかける。以降縁ができ、体育祭でも佐々に手助けをする。
岩崎 理々子 (いわさき りりこ)
南野のえると佐々龍至が原宿で知り合った中学2年生の少女。肩までの髪をふんわりとウェーヴさせ、ヘアピンで留めた活発な雰囲気の人物。社交的で顔が広く、思い立ったらすぐに行動する性格から、のえると佐々にも理々子の方から声をかけた。趣味は釣りやスポーツ観戦で、話の合う佐々を気に入り、交際を持ちかける。
聡子 (さとこ)
牧村未有の知り合いの女性。歌舞伎町で、地下にある喫茶店を経営している。髪を肩まで伸ばした、落ち着いた雰囲気の人物。ある時、1人で歌舞伎町を歩いていた未有を心配して声をかけ、店に招いたことで親しくなった。
信吾 (しんご)
聡子の弟で、大学に通いながら彼女の喫茶店を手伝う男子大学生。長髪の、聡子によく似た雰囲気の人物。聡子が牧村未有を店に招いたことで未有と知り合い、その後常連客となった彼女と顔見知りになり親しく話すようになった。
のえるとまりあの父 (のえるとまりあのちち)
南野のえると南野まりあの父親。旧姓は栗原で、南野家には婿養子としてやってきた。作者吉住渉の別作品『君しかいらない』のヒロイン栗原朱音の父親とは双子の兄弟にあたり、少しえらの張った輪郭が特徴の中年の人物。婿養子という立場上妻には逆らいにくいところがあり、まりあが転校を望んだ際も反対しつつ従った。やや船に酔いやすい。
のえるとまりあの母 (のえるとまりあのはは)
南野のえると南野まりあの母親。肩までの髪を外巻きにした、若々しい雰囲気の人物。まりあが広部和陽と接触するため転校を望んだ際承諾し、のえるの反対に遭わないうちに転校させるという形で協力した。全寮制中学への転校をあっさり許可したり、別荘を所持していることなどから、かなり裕福な家庭であることが推測される。
森ノ宮 志津子 (もりのみや しづこ)
森ノ宮学園の理事長を務める初老の女性。理事長就任前は、教師として森ノ宮学園に勤めていた。髪を1つにまとめた、上品な雰囲気の人物。親しみやすい性格の持ち主で、南野のえるの森ノ宮学園中等部への転校を許可したり、のえるに「志津子さんと、下の名前で呼んで」と呼びかけるほど気さく。元教え子の娘である牧村未有を気にかけており、のえるに彼女と親しくしてほしいと頼む。
集団・組織
アンブラッセ・モア (あんぶらっせもあ)
栗栖慈朗が所属する、森ノ宮学園中等部軽音部部員で結成されたロックバンドのこと。クリス、レン、ミチヤ、タクミの4名で構成され、ドラムパートを務める人物がいないという事情から、ライヴではあらかじめ録音した演奏に当て振りをしボーカルのみ生で歌う形式をとっている。オリジナルの曲は制作しているが、作詞できる人物がいないという理由で、コピーバンドとして活動している。 バンド名はフランス語で「キスして」という意味の「embrasse-moi」から付けられた。
場所
森ノ宮学園中等部 (もりのみやがくえんちゅうとうぶ)
森ノ宮志津子が理事長を務める、南野のえるが転校してきた中学校のこと。全寮制で、生徒は各自に割り当てられた部屋で2名1室、あるいは単独で生活する。大浴場の他、各部屋にはシャワー室も設置されている。朝食は学生食堂で取り、冷蔵庫はラウンジに設置された共用のものを使うのがルールとなっている。
その他キーワード
栗原 トオル (くりはら とおる)
南野のえるが女装時の姿しか知らない相手と本来の男子の格好で接する時に使う偽名のこと。のえると南野まりあのおじから名前を拝借しており「父親同士が双子なため、その子ども同士のまりあ、のえる、トオルも三つ子のように似ている」と説明することで難を逃れている。