概要・あらすじ
命をかけてレアメタルを探し続ける者・鋼探索士。そんな鋼探索士になるためにメタルシティを目指していた、伝説のメタリカ族出身の少年・ルカは、トラブルを起こしてエルザ村の備蓄メタルを台無しにしてしまい、怒った村人から拘束されてしまう。2年前に発生した毒ガスの影響でテポ坑道が閉鎖され、寂れる一方の村を救う手立てを探すことを約束して、一時的に解放されたルカは、監視役の少女・シエラの家に連行される。
そこでルカは、毒ガスを浴びて重い病気になったシエラの弟・イルから、友達の印となる鉄鉱石をもらい、さっそくシエラとともに閉鎖されたテポ坑道周辺の現地調査へと赴く。しかし、テポ坑道の内部は、闇市場で暗躍する武器商人グループによって占拠されており、また2年前の毒ガス事件も、グループのリーダーであるウォードが仕組んだ狂言であった、という衝撃の事実が判明する。
真実を知り、殺害されそうになったルカとシエラだったが、あらゆる鉱石を自在に変形させる「槌の手」を持ったルカは、その力を巧みに操って武器商人グループを撃退。村人との約束を果たし、シエラとイルに別れを告げたルカは、再びメタルシティを目指して旅を再開するのだった。
登場人物・キャラクター
ルカ
鋼探索士になることを目指して旅をしているメタリカ族の少年。根っからの鉱石好き。鋼探索士選抜試験が行われるメタルシティへの旅すがら、危険地帯に足を踏み込んでは、命を顧みずに鉱石を掘り出していた。鉱石を自在に変形させられる特殊な能力「槌の手」の持ち主で、鉱石を、金槌や身を守る繭といった別の物に変化させ、数々のピンチを巧みに切り抜けていく。 さらに、靴の裏には金属との接触で爆風を生み出すA級のレアメタル・フラゴリウムを貼り付けており、高い場所や遠く離れた場所にも瞬時に移動できる技術を身に着けている。幼い頃に超金属と呼ばれる伝説の鉱石を求め、危険区域へと姿を消した父親のバルクを探しており、世界を自由に旅する権利を得るために、鋼探索士を目指していた。 天真爛漫な性格をしており、鉱石を掘り出すためなら、どんな危険な場所であっても、決して臆することなく出向ける胆力の持ち主。まだ年端もいかない少年なため、女性の色気に対しては完全に無頓着。
シノ
フリーのトレジャーハンターの少女。各地を巡ってお宝を探し出している。金髪のロングヘアをポニーテールにしてまとめ、ハーフパンツを履いている。豊満なボディと明晰な頭脳を武器にして、価値の高いお宝をかき集め、大豪邸を建ててセレブとして暮らすことを夢見ているアクティブな美女。自立心の旺盛な性格をしており、お宝の入念なリサーチはもちろん、戦闘も1人でこなせる万能なタイプ。 レアメタル探索中にルカと出会い、彼の特殊な力がお宝収集に役立つとの計算から、一緒に旅をするようになった。肉感的なボディによる色仕掛けも得意としていたが、ルカにはまったく通用しなかった。実は金属管理協会の会長であるバジェーナの孫娘で、ルカのサポートメンバーとして鋼探索士選抜試験に参加することになる。
ガトー
金工師の少年。メタルシティにある金属を加工する工場で働いている。禁止された飛空ボードを乗り回して街を徘徊していた悪ガキ。実家は薬屋だが、幼い頃に金属管理協会の展示室で見た美しいメタルの像に感銘を受け、金工師としての道を歩み始めた。手先が器用なため金工師としての筋はよい。実用品を重んじる親方や相弟子から、芸術品に対する想いを咎められるのを嫌がり、たびたび仕事をさぼっていた。 鋼探索士を目指すルカと一緒に、金属管理協会の展示室に忍び込んだ際に、ルカの能力と出生の秘密を知る。そこでメタリカ族の力を、己が進む金工芸術の道への糧とするために、ルカのサポートメンバーとして鋼探索士選抜試験に参加する。
ズオゥ
クールな性格の鋼探索士。メタルシティに住んでいる。頭にバンダナを巻き、マントを羽織った褐色の肌をした青年。シノの幼なじみで、若くして鋼探索士となった、街でも有数の実力者。終始冷静で、的確な判断力で指示を出すことができ、金槌一本で野盗のリーダーを打ちのめしてしまうなど、戦闘力も高い。鋼探索士選抜試験に試験官として参加し、受験生を厳しく監督していた。 シノのお色気を駆使したからかいには顔を真っ赤にするなど、少々照れ屋な一面がある。
バルク
すでに滅びたとされているメタリカ族の末裔。SS級の鋼探索士の男性。「槌の手」によって鉱石を加工し、見る者の感情を震わせる美しい像を作り出せるため、「英雄バルク」と称されていた。ルカの父親だったが、ルカが幼い頃に、メタリカ族にのみ伝わる金属種・超金属を探す旅に出たまま行方知れずとなる。バルクを探すことが、ルカが鋼探索士を目指す理由となった。
ボルドー
鋼探索士選抜試験の二次審査を任されていたA級の鋼探索士。ゴーグルを付け、丸々と太った体をしている男性で、鋼探索士の中でも有数のレアメタル鉱脈の発見者。ヴォルカノ山周辺の採掘場から、3時間以内にレアメタルを見つけ出して持って来る、という課題を受験生に課していた。匂いによって、ヴォルカノ山から発掘された鉱石と、そうでない鉱石を判別することができる能力の持ち主。
トレンカ
鋼探索士選抜試験の受験者。美しい顔立ちをした長髪の男性。柔和な見た目とは裏腹に不遜な物言いをする人物で、その言葉通りかなりの実力者。A級の鋼探索士であるボルドーのことを知らなかったり、ゲインに対し、顔にメタルを埋め込んだ人間を知らないかと尋ねるなど、試験の合格が目的ではないようなそぶりを見せていた。
ゲイン
鋼探索士選抜試験の受験者。顔の右半分にメタルを埋め込み、黒服で身を包んだ目つきの鋭い男性。両腕がトランステンで作られた義手となっており、そこから強烈な衝撃波を繰り出すことができる。メタリカ族の弱点についても詳しく、メタリカ族の末裔であるルカを何処かへ連行しようとしていた。
デスリサ
鋼探索士選抜試験の三次審査を任されていたB級の鋼探索士。ゴスロリ風の服を着たスレンダーな美女。非常に若く見えるが、実は知人のシノよりもずっと年上。試験の前に、胸の大きさでシノに負けたことに激しいショックを受けていた。受験者に対し、ラビリム監獄からの脱獄を課す。
バジェーナ
メタルシティに住む金属管理協会の会長。シノの祖父でもある。とても鷹揚な性格で、協会に忍び込んでメタルの像を眺めていたルカとガトーの存在を面白がる。彼らにバルクが作ったという像の写真を見せ、メタリカ族の詳細を語っていた。ルカの鋼探索士選抜試験参加も特別に許可していた。
シエラ
鋼探索士が開いたというエルザ村で暮らしている女性。村の備蓄メタルを破壊してしまったルカの監視役を任され、彼を自宅に置いていた。村の生命線となっていたテポ坑道で起こった毒ガス事故により、病に冒された弟のイルを看病している。ウォードとの戦いでルカの力を目の当たりにし、いずれ彼が英雄になることを予感する。
イル
エルザ村に暮らしている少年。シエラの弟。2年前にテポ坑道で起こった毒ガス事故の影響で体が弱り、寝たきりの状態になってしまった。日々ベッドの上で読書しているため、自室には学者並みの蔵書量があり、鉱石にも詳しい。早く病気を治し、一人前の金工師になることを夢見ていた。
ウォード
2年ほど前にエルザ村へと流れ着いた新参の男性。テポ坑道で起きた毒ガス事故に巻き込まれ、イルとともに満身創痍で村へと帰還する。それ以来、長らく療養中と思われていた。その正体は武器商人のリーダーを務めている悪党で、テポ坑道に毒ガスを撒き散らした張本人。人がいなくなったテポ坑道に各地から武器を集め、闇市場で売りさばいていた。 秘密を知ったルカとシノを殺害しようとする。
長老 (ちょうろう)
エルザ村に暮らしている長老。地面に着くほど長い顎鬚を特徴とする男性。村の財産である備蓄メタルを破壊してしまったルカと対面した際、彼が鋼探索士を目指している理由が単なる私欲ではないと悟る。ルカに対し、毒ガス騒動で寂れた村を救う手立ての発見を依頼する。
ネブラオス
強大な小型竜の一種。羽根はないが、頭部に生えた2本の角と、水かきが付いた足が特徴。二親で子育てし、卵を狙う外敵に対しては執拗に攻撃を加える。卵の殻の成分がレアメタルのフィロミウムであるため、一攫千金を狙ったシノが、リスクを承知で巣に忍び込んでいた。
エレクティゴラ
四足歩行の大きな猛獣。竜ですら襲うといわれる獰猛な人喰い雷獣。高圧の電気を放出して獲物をしびれさせて、無力化して捕食する。鋼探索士選抜試験に参加したルカ達に襲い掛かり、苦戦させていた。
ロックドラゴン
全身が強固な岩で覆われている巨大な竜。ヴォルカノ山を住処にしていた。背中にレアメタルのルーメニウムが埋まっており、鋼探索士選抜試験に参加していたルカが掘り出そうとしていた。凶暴だが、怪我をした子供を助けてくれた人間を識別して攻撃しないなど、知能は高め。
集団・組織
メタリカ族 (めたりかぞく)
金属を求め続け、常に金属と過ごす、金属の深奥に触れた人々。「槌の手」と呼ばれる、触れた金属を瞬間自在に変化させられる異能を持った一族。金属をその手に摑むと力が数倍になるが、常にA級以上のレアメタルに触れていないと、体が硬直してしまうという大きな弱点を併せ持つ。彼らの造形物は人の心を動かす大きな力を持っていたが、人心を惑わす物として、一族ごと排除されてしまった。 さらに、その異能を国々の大戦に利用され尽くしたために衰退し、現在では滅亡した幻の一族とされている。ルカとバルクは、メタリカ族最後の生き残りだった。
場所
メタルシティ
周囲を城壁で囲まれた巨大な都市。東西南北に分けられた4つの地区に加え、金属管理協会の本部が置かれた中央区が存在する。夢を持つ者にとっては希望にあふれた街だが、油断するとすぐに最下層へ転落する、競争の激しい街でもある。
その他キーワード
鋼探索士 (みねあ)
世界経済の動力源となるレアメタルを命をかけて求める者。怪物が潜む森やマグマが噴出す山岳など、どんな危険な場所にも潜入し、困難を己の力で乗り超えて、レアメタルを回収する。鋼探索士になるには、メタルシティで毎年定期的に行われている鋼探索士選抜試験に合格する必要がある。鋼探索士になった者は、莫大な生活補償金に加え、世界のどんな危険区にも自由に出入りできる特別な資格を得ることができる。
鋼探索士選抜試験 (みねあせんばつしけん)
鋼探索士の資格を得られる試験。メタルシティにある金属管理協会が毎年行っていた。毎回数千人以上の受験生が参加する大規模な試験で、その内容は命の危険さえある極めて過酷なもの。そのため、個人を識別するナンバーリングはレアメタル合金を用いた救急装置になっている。装置のボタンを押すとバブリウムの加工物が放出され、失格と引き換えに受験者を包み込んで、あらゆる衝撃から保護する。
レアメタル
特別な性質を持った、希少価値が高い金属種の総称。あるものはダイヤモンドより硬く、あるものは質量を数千倍も変化させるなど、その特性はさまざま。その発見は人間社会を大きく発展させ、いまでは日常に浸透した生活必需品となっている。市場に出回る量でランク付けがなされており、埋蔵量が多くても採掘に大きな危険が伴うものはレア度が高くなる。 命知らずな凄腕の鋼探索士が、これらのレアメタルを採掘していた。
フラゴリウム
レア度Aのレアメタル。金属による強い衝撃が加わると、爆発反応を起こす。フラゴリウム同士であれば、小さな衝撃であっても爆発反応を引き起こせる。ルカは靴裏にフラゴリウムを張り、爆発反応を活用して、高い場所や遠くの場所に瞬時に移動していた。
フィロミウム
レア度Cのレアメタル。どこまでも伸ばせる超延性を備えている。通常状態では脆いものの、細く伸ばしたフィロミウムは鋼鉄よりも硬くなるため、容易には破壊されなくなる。ネブラオスの卵の成分がほぼフィロミウムだった。ひとかけらであっても、かなりの高額で取引される。
リペリウム
レア度Cのレアメタル。鉱物などが発する微弱な磁場に反応して、反発する作用を引き起こす。主にメタルシティの街道に埋め込まれ、流通用の移動手段であるリベリウムカーゴを動かすのに用いられていた。反発力を利用し、磁石の掘削にも使われることもあった。
ジオブ
レア度Sのレアメタル。超高効率な熱伝導を有する。伝わった差位熱量をすべて磁力に変化させる特性を持つ。瞬間的に強大な磁力を発するため、電気を誘発することも多いとされており、十分に活用できる人間はごくわずかしかいない。ルカとの別れ際に、バルクが使っていた。
グランステン
レア度Bのレアメタル。高温のマグマにも耐えるほど融点が高く、非常に重い。その多くは火山付近や地下深くといった、採掘が困難な場所に存在する。マグマを押さえ込むような位置に埋まっているので、「大地の栓」とも呼ばれている。そのため、採掘には細心の注意が必要となる。
トランステン
レア度Aのレアメタル。圧力を加えられると、そのエネルギーを衝撃波に変換し、打撃などの衝撃を加えられると、エネルギーをその物の硬度に変換させる特性を持つ、そのエネルギーを外部に逃がす性質を持つため、加工には極めて高度な技術が必要となる。ゲインの義手に使われていた。
ファントミウム
周囲1mほどの範囲の光を屈折させるため、その存在すら視認できない幻のレアメタル。採掘の困難さはレアメタルの中でもトップクラスで、レア度は破格のSに設定されている。その希少さゆえに研究はあまり進んでおらず、屈折変化の条件などは未だに謎のヴェールに包まれている。見つけたものは死ぬと噂されるほど、いわくつきのレアメタルとなっていた。
超金属 (ちょうきんぞく)
メタリカ族にのみ伝わる謎多き金属種。レアメタルの中でも特に希少なもので、メタリカ族の力の源とされる存在。メタリカ族の末裔であるバルクは、一族がなぜこの力に縛られるのかを解明するために、ルカを残してS級の危険区域へと旅立った。