夢をあきらめた社会人のリアルな夢追いコメディ
本作は、漫画家や漫画業界をテーマに、一度は夢をあきらめた社会人の二人が協力し、再びその夢に向かって突き進む姿を描いている。生真面目なサラリーマンの花壱は、母親の死をきっかけに絵で生きる夢をあきらめた過去を持つ。そんな花壱が背景アシスタントとして漫画制作に携わるようになり、先輩社員の紗織と共に、一度は手放した夢と青春を取り戻すための挑戦が始まる。作中では、単なる作画にとどまらないリアルな漫画制作の過程や、漫画賞に関する豆知識も盛り込まれている。また、夢を追う楽しさややりがいだけでなく、新人作家を取り巻く厳しい現実にも光を当てることで、物語に深い奥行きを与えている。
サラリーマン、花壱の漫画アシスタント奮闘記
類まれな絵の才能と情熱を持ちながらも、妹を養うために夢をあきらめ、サラリーマンとして働く花壱。ある日、彼はコピー機の前で倒れている先輩社員の紗織を見つける。社内では優秀な社員として知られる紗織だったが、実は仕事の合間に漫画の原稿を描いており、自分の画力不足に絶望し、疲労不足も重なって倒れてしまったのだ。以前から花壱の類まれな画力を知っていた紗織は、彼にアシスタントを依頼する。突然の申し出に戸惑いながらも、紗織の熱意に押され、花壱は背景作画を担当するアシスタントとして彼女をサポートすることを決意する。
紗織と花壱の漫画賞への道
紗織のアシスタントを、どこかアルバイト感覚でこなしていた花壱。しかし、紗織が自分を単なるアシスタントではなく、対等なパートナーとして迎え入れていたことを知り、花壱は本気で漫画制作に向き合う決意を固める。そんな二人は、ある漫画賞への応募をきっかけに、大ヒット漫画の原作者である薔薇園華子の目に留まる。華子の監修のもと、「月刊マリア四季漫画賞」への新作制作が始まる。新作のテーマがファンタジーに決まり、紗織はイメージを膨らませるために花壱を誘い、美術館を訪れる。そこで花壱は、過去に因縁のある人物と予期せぬ再会を果たす。一方、花壱のコンセプトアートをもとにプロットを完成させた紗織は、華子から賞を狙うための条件を突きつけられる。それは、ネームの面白さを競う「ネームバトル」での一対一の勝負だった。
登場人物・キャラクター
不動 花壱 (ふどう はないち)
優秀で生真面目なサラリーマン。年齢は24歳。幼い頃から絵を描くことが好きで、中学時代には水彩画で受賞するほどの才能を持ち、かつては絵の道で生きることを決意していた。しかし、15歳の時に母親が急逝したことで、その夢を断念。妹の夏菜と共に祖母のもとで暮らすことになった。現在は妹を養うために安定した職に就きながらも、夢をあきらめきれない思いを胸に秘めている。休日もアルバイトに追われ、妹からは体を心配されている。そんなある日、会社の先輩、紗織から漫画の背景アシスタントの依頼を受け、かつての夢が再び燃え上がり始める。
若葉 紗織 (わかば さおり)
花壱と同じ会社に勤める先輩で、営業部トップの成績を誇る優秀な女性。年齢は25歳。かつては漫画家を目指して投稿を続けていたが、夢をあきらめて就職した過去がある。ある日、後輩の花壱の絵を目にしたことで、心の奥底に眠っていた漫画への情熱が再び燃え上がり、休日や終業後に投稿作の制作に励むようになる。キャラクターや演出は得意だが、背景の作画が苦手。投稿作の締め切りがせまる中、藁(わら)にもすがる思いで花壱をアシスタントに誘う。有名な漫画原作者の華子にあこがれている。
書誌情報
モノクロのふたり 3巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2024-12-04発行、978-4088843162)
第2巻
(2025-05-02発行、978-4088845364)
第3巻
(2025-10-03発行、978-4088846859)







