モノノ怪 -鵺-

モノノ怪 -鵺-

TVアニメ『モノノ怪』のコミカライズ作品で、蜷川ヤエコの『モノノ怪 -座敷童子-』の続編。京都の公家屋敷を舞台に、モノノ怪が起こす怪事件やモノノ怪の正体を探る薬売りの活躍を描くホラー。「月刊コミックゼノン」2016年5月号から2016年11月号にかけて連載された作品。

正式名称
モノノ怪 -鵺-
ふりがな
もののけ ぬえ
原作者
~モノノ怪~製作委員会 アニメ「鵺」より
作者
ジャンル
お化け・妖怪
関連商品
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あらすじ

第1巻

深々と雪が降り積もる京の街の公家屋敷で、香の判別を競う「組香(くみこう)」が開催されようとしていた。そこからモノノ怪の気配を感じ取った薬売りは、屋敷内に入る。組香の香元を務める瑠璃姫は、婿候補を名乗り出た大澤廬房をはじめとする四人の男性から、婚姻をせまられていた。瑠璃姫は婿となる男性を、組香による勝負で決定しようと提案していた。しかし屋敷に集まったのは三人のみで、本命候補の実尊寺惟勢は時間になっても姿を現さなかった。廬房、室町具慶半井淡澄は惟勢を遅刻と見なし、屋敷から帰る様子のない薬売りを代わりに招いて、組香を開始する。瑠璃姫は組香のルールに「源氏香」を指定し、彼女から出される想像以上の難題の数々に、廬房たちは翻弄されていく。回答の結果を待っているあいだ、廬房たちは憚りに行くふりをしながら、何かを探し求めるように屋敷内を歩き回っていた。仕掛けていた天秤が一斉に傾いたのを見た薬売りは急いで奥の間を開けるが、そこには血まみれで死んでいる惟勢の死体があった。さらに組香の結果を決めていたはずの瑠璃姫も、首から血を吹き出して死んでいるのが発見される。それでも廬房たちは、瑠璃姫と惟勢が死んだ事実を尼僧に隠しながら、組香を続行しようとする。廬房たちの執念の裏には、笛小路家に伝わる香木「東大寺」の存在があった。薬売りはこの東大寺がモノノ怪に関係していると確信し、香元を務めながら屋敷に隠された真実を探ろうとする。

メディアミックス

本作『モノノ怪 -鵺-』は、2007年7月より放送されたTVアニメ『モノノ怪』を原作としている。TVアニメ版は『怪 ~ayakashi~』のエピソード「化猫」の続編で、日本古来の怪談をモチーフとした五つのエピソードをオムニバス形式で描くホラー。本作の基になったエピソード「鵺」のキャストは薬売りを櫻井孝宏が、瑠璃姫を山崎和佳奈が務めた。

関連作品

本作『モノノ怪 -鵺-』の続編として、蜷川ヤエコの『モノノ怪 -のっぺらぼう-』がある。『モノノ怪 -のっぺらぼう-』は本作と同じく薬売りが主人公を務めるホラー作品だが、彼以外の登場人物や舞台などは本作と異なる。ある武家で起こった一家惨殺事件の謎と、事件に潜むモノノ怪の正体を探る薬売りの活躍を描いている。

登場人物・キャラクター

薬売り (くすりうり)

アヤカシやモノノ怪の出現する場所に現れる謎の男性。ふだんは薬売りとして珍しい薬を売り歩きながら諸国を回っている。アヤカシやモノノ怪に対抗できる力と退魔の剣をはじめとする道具を持ち、過去にあちこちで起こった怪事件の数々を探っては、モノノ怪を退治することで解決している。瑠璃姫の婿候補ではないが、モノノ怪の気配を察知したために公家屋敷の中に入り、一向に姿を現さない実尊寺惟勢に代わって、大澤廬房たちに混じって組香(くみこう)に参加する。この際、まったく興味のない素振りを見せていたが、香道に関する知識は持っている。瑠璃姫と惟勢の死後、廬房たちの本当の目的が東大寺であったことを知り、瑠璃姫の代わりに香元を務めながらモノノ怪の「形」「真」「理」を探ろうとする。いつも背負っている大きな薬箱の中には売り物のほかにも、札や天秤などモノノ怪やアヤカシに対抗するための、さまざまな道具が入っている。売り物の薬はいずれも合法な品ばかりだが、媚薬や春画、首が動く亀の置物など、怪しい品も入っている。

瑠璃姫 (るりひめ)

香道「笛小路流」の家元で、長らく途絶えていた笛小路流を一人で守り抜いていた女性。冷静で凛とした美女だが、少々怪しげな雰囲気をまとっている。婿を名乗り出てきた四人の候補者に対し、源氏香の組香(くみこう)による婿決め勝負を提案し、自ら香元を務めて彼らに次々と難題を課す。しかし組香の結果を出す前に、香席の奥で死亡しているのが発見される。

大澤 廬房 (おおさわ ろぼう)

瑠璃姫の婿候補の一人で、香道を嗜む公家出身の男性。京都弁交じりの「おじゃる」口調で話す。温厚な性格の老人だが、香道では相当な実力を誇る。瑠璃姫よりも東大寺に強い興味を持ち、婿決めの組香(くみこう)で優勝することで手に入れようとしている。

室町 具慶 (むろまち ともよし)

瑠璃姫の婿候補の一人で、香道にはあまり詳しくない東侍。侍口調で話す。緑色の和服を着用し、もみあげは丸みを帯びている。気性が荒く直情的な性格で、田舎侍などとバカにされることを嫌う。実は公家屋敷を下見する目的で、二番目に到着していた。御所のお役目では出世から遠のいてしまったため、東大寺を手に入れることで天下人になろうともくろんでいた。屋敷に真っ先に到着していた実尊寺惟勢にこれらのもくろみを見抜かれ、バカにされた怒りから勢いで刀を抜き、彼を殺害してしまう。

半井 淡澄 (なからい たんすい)

瑠璃姫の婿候補の一人で、廻船問屋を営む男性。先端が赤くぬられた三角錐型の付け鼻(鼻覆い)を着用している。ふだんは商人をしているが香道では名の知れた人物で、京都弁で話す。妻にはすでに先立たれている。東大寺には関心を持つものの、ほかの婿候補たちとは違って瑠璃姫に好意を寄せており、純粋に彼女と結婚したいと思っていた。瑠璃姫をめとるために、自分のすべてを失う覚悟で店や財産を売り払っていた。

実尊寺 惟勢 (じっそんじ これなり)

瑠璃姫の婿候補の一人で、有名な香道家の男性。京都弁で話す。瑠璃姫よりも東大寺に強い興味を持ち、手に入れようとしている。頭はスキンヘッドで、目と口の周りを赤くぬり、素肌の上から黒い裃(かみしも)と袴を着用している。香道には強い自信があり、大澤廬房にも負けたことがない実力者。このため、婿決めの組香(くみこう)において優勝候補の一人であったが、最後まで組香の席には現れず、公家屋敷の奥の間で血まみれになって死亡しているのが発見された。重傷を負った状態で部屋中を走り回った形跡があり、部屋のあちこちには血が飛び散っていた。実は公家屋敷には誰よりも先に到着しており、二番目に到着した室町具慶を過剰に挑発したために、激怒した彼に斬り殺されていた。

尼僧 (にそう)

瑠璃姫に仕える女中で、京都弁で話す老婆。おっとりした性格で、暗い紫色の僧衣を着用している。婿決めの組香(くみこう)のために集まった婿候補たちを出迎え、案内役を務める。視力が弱いため、実尊寺惟勢と瑠璃姫が死亡したことには気づいていない。

童女 (どうじょ)

公家屋敷のあちこちに現れては姿を消す、謎の少女。ふっくらした顔の童女で、無邪気な笑い声を上げる。屋敷内で東大寺を探していた室町具慶が廊下で遭遇した。実尊寺惟勢と瑠璃姫を殺した犯人と疑われていたが、正体は謎に包まれている。

(ぬえ)

公家屋敷に潜む謎のモノノ怪。一般的には、猿の顔と虎の手足と狸の胴を持ち、蛇の尻尾が生えた妖怪と伝えられている。しかし、これらは絵物語などに描かれた想像上の姿であり、実際は見る角度によって異なる姿で出現し、あらゆる姿に変化することで人を欺く。薬売りの前に姿を現した際は、怪しい面をかぶった瑠璃姫の姿をしていた。

その他キーワード

(ふだ)

呪文などが書かれた札で、薬売りがいつも持ち歩いている道具の一つ。札を建物などに貼ることで簡単な結界を作ったり、アヤカシやモノノ怪の動きや侵入を制限したりするのに使われている。表面には閉じた目が描かれており、モノノ怪の気配を察知した瞬間にこの目が開くようになっている。

東大寺 (とうだいじ)

笛小路家に宝として伝わる、かつて平安貴族たちから愛されていた希少な香木。ただの木ではなく、入手した者は天下人になるといわれている。正式名称は「欄奈待」であり、漢字に「東」「大」「寺」の文字がそれぞれ含まれることから、香道家たちのあいだでは「東大寺」の通称で呼ばれている。2本のうち1本は東大寺正倉院に収蔵されているが、残りの1本は瑠璃姫が持っていると噂されており、彼女の婿を名乗り出た四人の男性から狙われることになった。

夾竹桃 (きょうちくとう)

薬などにも使われている、高価で貴重な常緑小高木。夾竹桃の葉は無害だが枝部分には強力な毒性があり、毒成分の入った煙をひと吸いしただけで死んでしまう。組香(くみこう)の香元を務めることになった薬売りがうっかり混ぜてしまう。

クレジット

原作

~モノノ怪~製作委員会 アニメ「鵺」より

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