怪 ~ayakashi~ 化猫 モノノ怪前日譚

怪 ~ayakashi~ 化猫 モノノ怪前日譚

TVアニメ『怪 ~ayakashi~』のコミカライズ作品。江戸時代の武家、坂井家で起こる謎の怪死事件と、事件の発端となったモノノ怪の正体を探る薬売りの活躍を描くファンタジーホラー。「ヤングガンガン」2007年17号から2008年16号にかけて連載された作品。

正式名称
怪 ~ayakashi~ 化猫 モノノ怪前日譚
ふりがな
あやかし ばけねこ もののけぜんじつたん
原作者
怪~ayakashi~製作委員会
作者
ジャンル
お化け・妖怪
関連商品
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あらすじ

第1巻

坂井家では財政を立て直すために、坂井真央が塩野家に嫁入りすることになり、その輿入れが行われようとしていた。坂井家の屋敷を通りかかった謎の男、薬売りはそこに漂う不審な気配を感じ取って足を止める。薬売りは使用人の加世に話を聞くが、坂井家はネズミ被害に困っているにもかかわらず、苦手な人がいるという理由で猫を飼っていなかった。そんな中、輿入れの最中だった真央が、突然の怪死を遂げる。その様子を見ていた薬売りは「モノノ怪の仕業だ」と坂井伊顕たちに告げながら、屋敷のあちこちに札を貼る。屋敷中が混乱する中、薬売りは伊顕たちに捕われて荷物を調べられ、さまざまな道具と謎の剣を持っていることから怪しまれてしまう。そうこうするうちに、薬売りの予想どおり、坂井家では謎の怪死事件が次々と起こり始める。そして伊顕たちが事件への対応を議論している最中、屋敷内には猫の鳴き声が響き渡り、次の瞬間には天井から弥平の死体が落ちてくる。薬売りは周囲を探る中で、一連の事件は化猫の仕業であることを悟り、化猫退治のために動き出す。化猫が坂井家の人々に恨みを持っていると察した薬売りは、まず化猫の正体を明確にするために、坂井家の過去や因縁をヒモ解こうとする。薬売りが作った結界の中に集められた伊顕たちは、閉鎖空間に閉じ込められた緊張と化猫への恐怖から冷静さを失い、いがみ合いを始める。化猫が坂井家を狙う理由には、25年前に起こった狂気の出来事とある人物の欲望が、深く関係していた。そして怯える人々と薬売りの前に化猫が現れ、真の姿へと変化するのだった。

メディアミックス

本作『怪 ~ayakashi~ 化猫 モノノ怪前日譚』は、2006年1月より放送されたTVアニメ『怪 ~ayakashi~』を原作としている。TVアニメ版は日本古来の怪談をモチーフとした「四谷怪談」「天守物語」「化猫」の三つのエピソードをオムニバス形式で描いたホラー作品となっている。なお、本作の基となった「化猫」のキャストは薬売りを櫻井孝宏が、加世をゆかなが務めた。

関連作品

本作『怪 ~ayakashi~ 化猫 モノノ怪前日譚』の続編として、蜷川ヤエコの『モノノ怪 -海坊主-』がある。『モノノ怪 -海坊主-』は本作と同じく薬売りが主人公を務めるホラー作品だが、彼以外の登場人物や舞台などは本作と異なる。怪しい海に迷い込んだ大型商船を舞台に、モノノ怪が起こす怪事件や薬売りの活躍を描いている。

登場人物・キャラクター

薬売り (くすりうり)

坂井真央の輿入れ当日に、坂井家を訪れた謎の男性。本名や素性、年齢などは不明。薄茶色の癖毛の長髪で、肌が白く中性的で整った顔立ちだが耳は長く尖っているなど、異人的な風貌を持つ。目の周囲には隈取のような赤い化粧で紋様が描かれ、頭には頭巾をかぶっている。真の力を発現した退魔の剣でモノノ怪を祓うときは、後ろに結んでいた髪がほどけて肌が褐色に変わり、体中に黄色い紋様が浮かび上がるなど、別人のような姿に変身する。行商人や薬売りとして諸国を回っているが、怪しげな体術と不思議な道具の数々をあやつるため、行く先々で怪しまれることが多い。加世に薬を売ろうとしている最中に真央の怪死事件に遭遇し、モノノ怪の仕業であることを悟る。以後は生き残った坂井家の人々を守りながら、事件の発端となったモノノ怪の正体を探り始める。生まじめな小田島のことをよくからかっているが、怪死事件の真相と解決を望む彼の必死の願いには応えようとしている。モノノ怪と戦う際は退魔の剣を使用するが、そのためにはモノノ怪の「形」「理(ことわり)」「真(まこと)」の三つを見極める必要がある。いつも背負っている大きな薬箱の中には、売り物である珍しい薬以外にも、天秤や結界を張るための札、退魔の剣が収納されている。淡々とした性格で、どんな時にも感情を荒らげることなく、冷静に対応する。他者への気遣いができなくはないが、誰でも積極的に助けるというわけではなく、自業自得な者や欲深い者は基本的に相手にしない。

坂井 真央 (さかい まお)

坂井伊顕と坂井水江の娘。坂井家の借金を帳消しにするために、塩野家に嫁入りすることになる。家の経済面を立て直すことを考えて嫁入りを決意するものの、本音ではあまり乗り気ではなかった。塩野家との婚礼当日、輿入れの最中に水江たちの目の前で突然転倒し、謎の怪死を遂げる。

加世 (かよ)

坂井家の下働きをしている若い女性。褐色の肌を持ち、左目の下に泣きボクロがある。屋敷を訪れた薬売りを一目で気に入って好意的に対応し、坂井家の事情を話した。坂井真央の怪死事件が起こってからは、真相を探ろうとする彼に積極的に協力するようになる。明るい性格だが自由奔放すぎるため、さとからはよく叱られている。

小田島 (おだじま)

坂井家の若党(武家奉公人)をしている男性。不審な行動が多い薬売りを真っ先に怪しんで、事あるごとに突っかかっているが、彼からは軽くあしらわれたり、からかわれたりすることが多い。当初は薬売りの語るモノノ怪の存在をまったく信じてはいなかったが、怪死事件が起こるたびに彼に真相解明と解決をゆだね、加世と共に積極的に協力するようになる。生まじめだが熱い性格で、その直情的な強い思いや行動が、周囲の心を動かすこともある。

坂井 伊顕 (さかい よしあき)

坂井家の次男で、現当主を務めている。長男の坂井伊國を当主にふさわしくないと判断した坂井伊行から、家を継いで当主となった。人柄はいいが気が弱いため、妻の坂井水江には頭が上がらず、彼女や伊國の言いなりになることが多い。また金のやりくりも不得意なため、坂井家の財政難を招いた。突如現れた薬売りを怪しく思い、捕えて尋問する。化猫に襲撃された際に水江、勝山と共に死亡する。

坂井 水江 (さかい みずえ)

坂井伊顕の妻で、坂井真央の母親。気が強い女性で、夫の伊顕を言いなり状態にしている。塩野家に輿入れ中だった愛娘の真央が怪死したのを目の当たりにしたため、床に臥してしまう。真央の死体に取り憑いた珠生の出現に酷く怯えて発狂し、その後、伊顕と勝山と共に、化猫の襲撃を受けて死亡した。25年前に幽閉された珠生に食事を運んでいたが、わずかな量しか与えずに冷淡に接し、衰弱していく彼女のことを厄介者のように思って見捨てていた。

坂井 伊國 (さかい よしくに)

坂井家の長男で、坂井伊顕の兄。酒好きで性格も悪くあまり人望がないため、坂井伊行に当主にふさわしくないと判断され、弟の伊顕が家督を継ぐこととなった。過去に坂井水江が買って弥平が連れてきた数十匹の猫を、刀の試し斬りや余興のために惨殺している。また、珠生が幽閉されていた座敷牢に忍び込み、彼女に暴力を振るったことがある。化猫に襲撃され、笹岡とさとと共に死亡する。

坂井 伊行 (さかい よしゆき)

坂井伊國と坂井伊顕の父親で、坂井家の前当主を務めていた。家督は次男の伊顕に継がせて、現在は隠居しており、加世たちからは「御隠居様」と呼ばれている。財政を立て直すために孫娘の坂井真央を嫁入りさせることには、心を痛めている。現在はおとなしそうな老人に見えるが、当主を務めていた若い頃は、欲望のままに数々の悪事を働いていた。真央が死亡した謎の怪死事件には冷静に対応し、薬売りのことも信用していたが、一連の出来事に珠生が関係していると確信したあとは、自分が化猫に殺されることを覚悟する。実は25年前に輿入れ中だった珠生を気まぐれでさらった張本人であり、化猫が生まれた悲劇の元凶でもある。坂井家に連れ込んだ珠生を座敷牢に幽閉し、足の腱を切って逃げ出せないようにしたうえで暴力を振るうなど、彼女への虐待行為を繰り返していた。ほかの女性を気に入って珠生に飽きる頃には、衰弱した彼女を死に追いやり、彼女がかわいがっていた子猫に強く恨まれるようになる。

勝山 (かつやま)

坂井家の用人を務める男性で、坂井伊顕に味方する伊顕派。実直な性格だが、笹岡とは仲が悪く、対立することが多い。化猫に襲撃された際に、伊顕と坂井水江と共に死亡した。

笹岡 (ささおか)

坂井家の用人を務める男性で、坂井伊國に味方する伊國派。勝山とは仲が悪く、対立することが多い。勝山とは対照的に冷静だが、情に薄く冷淡な性格をしている。化猫に襲撃され、伊國とさとと共に死亡した。

さと

坂井家の奥女中を務める女性。坂井伊行が当主の時代から坂井家に仕えている。奔放な加世には厳しく当たることが多い。化猫に襲撃され、坂井伊國と笹岡と共に死亡した。

弥平 (やへい)

坂井家の中間をしている男性。下働きの中では古株の老人だが、頼りないために加世からはあまりよく思われていない。医者を呼ぶために薬売りが作った結界の外に出てしまい、化猫に殺された状態で天井から落ちてきた。死体には猫の毛が付着していた。

化猫 (ばけねこ)

坂井家に突如出現し、謎の怪死事件を次々と起こしているモノノ怪。巨大で凶暴な黒い猫の化物で、坂井家の人間を激しく恨んでいる。うめき声のようなおぞましい鳴き声とともに現れ、人々を恐怖に陥れる。元は珠生がかわいがって心のよりどころにしていた子猫であり、彼女を苦しめていた坂井家の人々に強い恨みを抱くうちに、化猫の姿へと変貌していった。坂井家の大半を殺害したあとは薬売りによって退魔の剣で斬られ、元の子猫の姿に戻った。

珠生 (たまき)

かつて坂井家の隠し部屋に住まわされていた若い美女で、故人。坂井真央の遺体に取り憑き、化猫と共に坂井水江たちの前に姿を現す。その正体は坂井家の暗い過去や因縁の犠牲となった不幸な娘であり、25年前に輿入れに向かう途中で、若い頃の坂井伊行に気まぐれでさらわれていた。坂井家に連れ込まれたあとは伊行に暴力を振るわれ、足の腱を切られた状態で隠し部屋の座敷牢に幽閉されるようになり、わずかな食事しか与えられないまま不自由と絶望の日々を送っていた。そんな中、座敷牢に迷い込んだ子猫と出会い、与えられた食事をすべて与えるなど、子猫を唯一の心のよりどころにするようにかわいがっていた。のちに隠し部屋に忍び込んだ坂井伊國によって暴行を受け、それを知った伊行によってさらなる暴行を受けるうちに激しく衰弱していき、逃げ出した子猫の背中を見届けながら息絶えた。死ぬ間際に子猫に自らの願いと希望を託し、坂井家から逃げ出すように告げている。珠生の遺体は笹岡によって、庭の井戸に投げ捨てられていた。

子猫 (こねこ)

25年前に坂井家に迷い込んだ黒い子猫で、当時座敷牢に閉じ込められていた珠生にかわいがられていた。孤独と絶望に追いやられた珠生の心のよりどころとなり、彼女に出されていたわずかな食事も、すべてもらっていた。死ぬ直前の珠生に「大きく強くなって欲しい」という願いと希望を託されたうえで、坂井家から逃がされている。元はなんの力も持たないふつうの子猫であったが、珠生を苦しめて死に追いやった坂井家の人々を強く恨むようになり、復讐に燃える化猫へと変貌していった。

集団・組織

坂井家 (さかいけ)

財政難に陥っている武家で、次男の坂井伊顕が当主を務めている。とある事情から屋敷内は猫が一匹も飼われておらず、ネズミ被害が絶えないため、ネズミ捕りがあちこちに置かれている。財政を立て直すために塩野家に嫁ぐことになった坂井真央の輿入れ当日、彼女が謎の怪死を遂げる。これ以降、屋敷内の人々が次々と死んでいく謎の怪死事件が発生するが、一連の出来事は坂井家に恨みを持つ化猫の仕業であったことが判明する。化猫の出現と怪死事件の元凶には、25年前に坂井家で起こった悲劇的な出来事や、昔からの複雑な人間関係が関係している。

その他キーワード

天秤 (てんびん)

薬売りが持ち歩いている道具の一つで、モノノ怪に反応してその位置を知らせる不思議な天秤。両端に小さな鈴が付いた、投扇興(とうせんきょう)の的に使われる蝶のような形状をしている。

退魔の剣 (たいまのけん)

薬売りが持ち歩いている謎の懐剣で、モノノ怪を斬ることのできる希少な宝具。使い手がモノノ怪の「形」「理」「真」をすべて見極めなければ真の力が発動せず、通常時は鞘から抜くことすらできない。

モノノ怪 (もののけ)

この世に不思議な現象や災いをもたらし、人を病のように祟る妖怪や化物のような存在。人の因果と縁(えにし)によって成り立っている。この世の道理とは別の世界にある「アヤカシ」と呼ばれる存在が、この世に生まれた激しい情念や怨念に結び付いたときに、より強力な力を持つ「モノノ怪」へと変貌する。このため、大半のモノノ怪は強い恨みなどがもとで生まれているが、その行動原理などを人が理解するのは非常に困難とされる。すべてのモノノ怪は「真(事の有様)と「理(心の有様)」を持ち、刀などふつうの武器では退治することはできず、いくつかの条件を満たしたうえで退魔の剣によって斬る必要がある。

クレジット

原作

怪~ayakashi~製作委員会

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