科学実験のような一風変わった料理漫画
本作は「科学を使って作る料理」をメインテーマにしている。たとえば古いフライパンでオムライスを作ろうとすると半熟卵が固くなる、家で作る野菜炒めはベチャベチャになるなど、よくある料理の悩みを科学的根拠に基づいて解決していく。そのため、ふつうの料理漫画のレシピではあまり目にしない「pH」や「水溶液」といった言葉が頻繁に登場し、まるで料理という行為が科学実験のように思えてくる。
ヤンキーとダウナー教師の心の交流
千秋は中学時代から札付きの不良として知られているが、それは小学生の頃に信頼していた教師に裏切られた経験がきっかけになっている。そのため担任の蘭にも最初は反抗的な態度を見せていたが、科学を通じて自分に真摯に向き合う姿に、次第に心を開いていく。一方の蘭も、とある出来事がきっかけに生きる気力を失ったまま生活を送っていたが、千秋と料理を作るうちに、温かい生活というものに思いを馳(は)せるようになる。
科学の知識で美味しい料理を作る
本作に登場する料理は、本格的な料理ではなく手軽な家庭料理が主体となっている。弁当が腐ってしまったことをきっかけに持ちのいい鶏そぼろの弁当を作ったり、家族がピーマンを食べてくれないことをきっかけに夏野菜の揚げびたしを作ったりと、まったく料理をしたことのない蘭が、千秋に「調理も科学」と説き、科学的知見に基づいた料理を作っていく。
登場人物・キャラクター
猫村 蘭 (ねこむら らん)
惺明高等学校1年3組の担任を務める男性教師。理科を担当している。ボサボサの黒髪で、黒縁眼鏡をかけている。料理が苦手で、ふだんの昼食はもっぱらコンビニで購入した弁当や惣菜パンで済ませている。いつもはやる気のない雰囲気を漂わせているが、実験を行うと一気にテンションが上がる。不良の千秋が毎日の弁当や家族の晩ごはんを作っていることを知り、留年を回避させるため、科学で作る料理で興味を惹(ひ)き、補習授業を行うことになる。しかし極度の面倒くさがり屋なため、補習を面倒がっている節もあるが、補習によって千秋のバイト生活が圧迫されないよう配慮するなど、優しい一面を持つ。補習が終わったあとも、千秋の生活改善を考えて「科学ごはん部」を立ち上げた。
犬飼 千秋 (いぬかい ちあき)
惺明高等学校の1年3組に在籍する男子。金髪で目つきが悪く、中学時代は筋金入りのヤンキーとして知られていた。母親が刑務所に3年間服役しており、校内では腫れ物扱いされているが、弟妹に胸を張れないことはいっさいしないと宣言している。千秋の留年を回避させるため、毎日の弁当や家族の晩ごはんを調理していると知った蘭の補習を受けることになった。最初は「数学なんて社会でなんの役にも立たない」との持論から補習に乗り気ではなかったが、ふだんは料理をまったくしない蘭が、科学知識のみで自分より美味しい半熟オムライスを作ったことに感動し、補習では毎回「科学の料理」を作ることを条件に、補習を受けることを了承した。思ったことをすぐ口に出してしまうタイプで、それがもとでトラブルになることが多い。
クレジット
- 監修
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樋口 直哉
書誌情報
ヤンキー君と科学ごはん 5巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第1巻
(2023-03-17発行、 978-4088926216)
第2巻
(2023-08-18発行、 978-4088928548)
第3巻
(2024-01-18発行、 978-4088931562)
第4巻
(2024-06-19発行、 978-4088933368)
第5巻
(2024-11-19発行、 978-4088934594)