編集者が結ぶ、北大路魯山人の因縁
本作は、料理情報誌「男の食彩」の編集者である大丸太と、北大路魯山人の子孫である若き天才料理人・花畑瑠璃の出会いから物語が始まる。太は北大路大観が主催する美食倶楽部「料理王國」の取材に同席する前にインスタントラーメンを食べていたことで、大観から退席を命じられる。失意の中、かねてより気になっていた「瑠璃色食堂」に立ち寄り、瑠璃からスッポンを素材としたつゆを用いたラーメンをごちそうになる。そして翌日、汚名返上の条件として瑠璃と大観を引き合わせたことで二人の因縁を結び、本作の主題の一つである料理勝負へとつながっていく。
若き天才料理人は現役女子大生
主役の一人である花畑瑠璃は、瑠璃色食堂の二代目主人を務めると同時に、私立音羽女子大学の家政学部に所属する現役女子大生。瑠璃は学業は今一つながら、調理実習では優秀な成績を収めていることから、同じゼミの仲間やゼミの担当講師である土井田から高い評価を受けている。のちに北大路魯山人の教え子を祖父に持つ簗場香子が土井田のゼミに所属し、瑠璃と互いを高め合うライバル関係となる。なお、大学に通っている時は、大丸太が瑠璃色食堂の開店準備を手伝っている。
平成における料理の王国
かつて北大路魯山人が開業した料亭「星岡茶寮」は現代においても伝説として語り継がれており、料理に携わる人にとってのあこがれの存在。そして現在、星岡茶寮の跡地に立っているのが、「現代の星岡茶寮」の異名を持つ一大モニュメント「料理王國」である。料理王國の恩恵にあやかろうとする料亭や料理雑誌は数多く、「日本の食事は日本人の舌で的確な評価を下すべき」というコンセプトも料理関係者からの大きな支持を得ている。主宰者である北大路大観は、花畑瑠璃の舌すら唸らせるほどの天才的な料理人で、自分に厳しい一方でプライドも人一倍高く、自分こそ北大路魯山人の名前を受け継ぐにふさわしいと考えている。大観と瑠璃は、出会った当初こそウマが合わなかったが、ある時に自作の鯛茶漬けを披露し合ったことで互いの料理人としての矜持と技量を認め合い、やがて最大の好敵手として切磋琢磨し合うことになる。
登場人物・キャラクター
花畑 瑠璃 (はなはた るり)
北大路魯山人のひ孫で、下町で瑠璃色食堂を経営している女性。現役女子大生で、音羽女子大学に通っている。かつて魯山人の弟子だったという祖父・花畑多吉郎から料理の教えを受けて育つ。黒髪のロングヘアを髷のように結っており、仕事中は着物を着用している。明るく人懐っこい性格で、機嫌や調子がよくなると語尾に「イェイ♪」と付けてしゃべる。料理には人を幸せにする力があると心から信じており、自分の料理を食べた人たちから「おかわり」と言われることを何よりの喜びとしている。天性の優れた味覚と嗅覚、多吉郎の教えで修得した技術を生かして、和洋中問わずさまざまな創作料理を作りこなす天才ながら、多吉郎からはそれでも魯山人には遠く及ばないと言われている。当初は多吉郎の意向から「料理王國」や北大路大観のことを知らされてなかったが、大丸太の行動から大観と知り合い、やがてよきライバル関係となる。
大丸 太 (だいまる ふとし)
料理情報誌「男の食彩」の編集者を務める青年。金髪ロングヘアで、眼鏡をかけている。周囲からは「丸太くん」の愛称で呼ばれている。ライバル雑誌「男子厨房」の編集者である江口茂や、のちに後輩として男の食彩に携わる笹島卓也は大学時代の同級生。おっちょこちょいだが実直な性格で、編集部の同僚や上司から信頼されている。北大路魯山人の大ファンで、北大路大観が手掛けた魯山人の復刻シリーズの器をボーナスで購入したこともある。若い頃から出版の仕事にあこがれており、3年前から出版の仕事に携わり、2か月前から念願だった、男の食彩の編集部に配属された。のちに男の食彩が瑠璃色食堂のサポーターとして活動するきっかけとなり、その際に結成されたチーム「瑠璃番」のリーダーに抜擢される。
書誌情報
瑠璃と料理の王様と 13巻 講談社〈イブニングKC〉
第1巻
(2015-10-23発行、 978-4063545999)
第3巻
(2016-09-23発行、 978-4063546385)
第4巻
(2017-02-23発行、 978-4063546576)
第8巻
(2018-08-23発行、 978-4065125687)
第9巻
(2019-02-22発行、 978-4065145258)
第10巻
(2019-06-21発行、 978-4065160770)
第11巻
(2020-02-21発行、 978-4065189276)
第12巻
(2020-07-20発行、 978-4065203187)
第13巻
(2021-06-23発行、 978-4065233856)