あらすじ
第1巻
広島県に住む今井しじまは、両親の突然の死により、祖母に引き取られて東京都へ引っ越すことになった。なじめない東京の暮らしの中、しじまは隣の席になった葉芝玲良に惹かれていく。しかし玲良は、フリーライターの須藤章との不倫の恋に苦しんでいた。それでも諦めきれないしじまだったが、玲良の奔放な言動に振り回され、少しずつ疲弊していく。
第2巻
葉芝玲良と須藤章の不倫関係が週刊誌に取りざたされ、玲良が失踪してしまった。不安に思う今井しじまと山本良市は玲良の足取りを追うが見つからず、ようやくかかってきた電話で、しじまは玲良から別れを告げられてしまう。深く落ち込むしじまだったが、良市や山本七臣の支えで立ち直り、また、滝沢百合男からビデオカメラを借りたのを機に、映像作りに関心を持つようになる。映画を撮りたいを考えたしじまは、良市ら友人と、美人で評判の生徒会長、叶房子を誘い、自主映画製作クラブ「○○クラブ(まるまるくらぶ)」を結成する。
第3巻
自主映画制作クラブ「○○クラブ(まるまるくらぶ)」での活動中、今井しじまたちは、叶房子を侮辱した酔っぱらいと喧嘩をして補導されてしまう。激怒した滝沢百合男の両親らの反対で「○○クラブ」は活動休止寸前となるが、しじまの「どうしても作品を完成させたい」という想いが周囲を動かし、処女作「PHOTOGENIC」が無事に完成する。さらに、コンクールに出品した「PHOTOGENIC」は特別賞を受賞するが、しじまは映画製作にはお金がかかりすぎるという理由から、活動終了を決める。だがそこに、作品を見た須藤章が現れ、「もし本気で映像作家になりたいのであれば、しじまを出版社の人間に紹介し、留学の口を利いてもいい」と告げる。しじまは留学か、夢を諦めてこのまま日本で暮らすかの選択を迫られる。
登場人物・キャラクター
今井 しじま (いまい しじま)
高校2年生の男子。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、ボリュームのあるショートカットヘアにしており、父親譲りで目つきが悪い。しかし、色白で細身なため「女性のよう」と評されることが多い。主に広島弁で話すが、次第に標準語交じりになっていく。須藤章からは「少年」と呼ばれている。高校2年次の夏、両親が事故で突如亡くなったため、祖母に引き取られる形で東京にやって来た。 しかし、転校初日から山本良市らクラスメイトに広島弁をからかわれて孤立し、孤独感を感じるようになる。そこで、クラスで隣の席となった葉芝玲良に、自分と同じような淋しさを抱いていると感じ、次第に玲良に惹かれていく。しかし玲良の奔放な性格と複雑な背景に振り回され、最終的には玲良が失踪し、そのまま東京を去っていったのを機に失恋する。 その後、玲良への想いを引きずりつつも、映像作品作りに関心を持つようになる。そこで、玲良失踪の件から親しくなった良市や、主演としてスカウトした叶房子らとともに自主映画製作クラブ「○○クラブ(まるまるくらぶ)」を結成し、短編映画を撮ることになる。絵を描くのは苦手。
葉芝 玲良 (はしば れいら)
高校2年生の女子。今井しじまのクラスメイトで、しじまの想い人でもある。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、胸まで伸ばしたロングウェーブヘアにしている。のちに髪を切り、ショートカットヘアになる。周囲からは主にカタカナで「レイラ」と呼ばれる。非常に美しく目立つ存在だが、あまり学校に来ない不良生徒。さらに留年しているため、しじまたちより年上でもある。 しじまとは教室の席が隣になったことで知り合い、しじまの独特の雰囲気と、彼の容姿が須藤章に非常に似ている点を気に入って親しくなる。ある日、しじまと一緒に遊びに行った際、突然キスをしてしじまを混乱させるが、実は長らく妻子持ちの章と不倫関係を続けている。しかも、章にはあまり大切にされておらず、妊娠と堕胎を繰り返しているなどの悪い噂が絶えない。 家庭環境も複雑で、両親は離婚している。父親とは仲が悪く、母親は別の男性と再婚しているため、どちらとも同居せず一人暮らししている。そのため深い孤独感を抱えており、自分は誰にも理解されないと考え、自殺をほのめかすような言動をすることがよくある。山本良市の家の近所に住んでおり、彼とは幼稚園時代からの付き合い。 昨年、自殺未遂をしているが、良市に発見されて事なきを得た。手首にはその際につけたリストカットの跡がある。子供の頃は気が弱く、物静かで真面目な性格だった。しかし、章に出会ってから変貌し、現在の不安定な性格になってしまった。しじまに章の面影を重ねており、しじまを振り回す日々を送っていた。 週刊誌「クライデー」に章との不倫現場をスクープされたのを機に、章から離れる決意をし、失踪する。のちに石川県金沢市へ向かったことが発覚し、電話口でしじまに別れを告げる。絵を描くのが得意で、自作の詩や、思っていることを綴ったノートを持ち歩いている。
山本 良市 (やまもと りょういち)
高校2年生の男子。今井しじまのクラスメイトで、山本七臣の兄。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばした、もっさりとした癖のあるボブヘアにしている。正直で、思ったことをすぐ口にしてしまう性格。しじまの転校当初から「須藤章によく似ている」という理由で、あまり良い印象を抱いておらず、広島弁をからかうなど一方的に意地悪をする。 しかし、しじまが玲良の日記帳を誤って読んでしまったことを機に少しずつ交流を持ち、友情を築いていく。本来的には面倒見がよく、情に厚い性格。玲良とは家が近所で、幼稚園時代からの付き合い。以前は玲良に想いを寄せていたが、奔放な玲良に振り回される生活に疲れ、別の女性と交際するという形で想いを諦めた。そのため玲良に想いを寄せるしじまを案じており、諦めるように忠告する。 玲良が石川県に引っ越してしまった後はしじまのよき友人となる。映像作品作りに興味を持ったしじまに付き合って、叶房子らを誘って自主映画製作クラブ「○○クラブ(まるまるくらぶ)」を結成する。実は房子に惹かれているが、彼女には別に想い人がいることを察し、想いを隠して友人として付き合っている。 音楽が好きで、いつも耳にイヤホンをかけている。絵を描くのが得意。男子バスケットボール部の試合に、よく助っ人で参加している。
山本 七臣 (やまもと ななおみ)
今井しじまと同じ高校の1年2組に所属している女子。山本良市の妹。前髪を目の上で切ったショートカットヘアにしている。前髪の一部を上げて、ハーフアップにした髪型をすることが多い。明るく元気いっぱいで献身的な性格。しじまの転校初日、街で偶然彼を見かけて一目惚れし、良市を通じてしじまと親しくなろうとする。のちに良市に誘われ、自主映画製作クラブ「○○クラブ(まるまるくらぶ)」に参加。 しじまが玲良に想いを寄せていることを知り、想いを伝えないまま交流を深めていくこととなる。料理が得意で、将来の夢は看護師。
須藤 章 (すどう あき)
フリーライターの男性。年齢は25歳。葉芝玲良と不倫関係にある。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしたショートカットヘアで、サングラスをかけていることが多いが、その顔立ちは今井しじまによく似ている。実力派若手ライターとして知られており、特に音楽業界、映画業界とかかわりが深い。音楽雑誌に評論を書いたり、新宿区のディスコ「ビエネッタ」で毎週DJを務める他、映画の製作も行うなど、幅広く活躍している。 玲良とは長らく不倫関係を続けていたが、週刊誌に玲良との関係をスクープされたのを機に別れることとなった。その後KARIO出版の雑誌「アマチュアビデオ」主催の「アマチュアビデオコンテスト」に特別審査員のような形で呼ばれ、しじまたち「○○クラブ(まるまるくらぶ)」の作品を気に入る。 しじまの映像作家としての才能を買っており、彼に留学の話を持ち掛ける。
滝沢 百合男 (たきざわ ゆりお)
高校2年生の男子。今井しじまのクラスメイト。クラス委員長を務めているため、あだ名は「委員長」。前髪を上げて額を見せ、撫でつけ髪にして、眼鏡をかけている。真面目で落ち着いた、面倒見の良い性格。生徒会長の叶房子に憧れており、ファンを公言している。ある日、良市らが出場する男子バスケットボールの試合を撮影しに行った際に、同席したしじまにビデオカメラを貸し、彼が映像作品作りに興味を抱くきっかけを作った。 その後、しじまから映画作りに誘われ、当初は乗り気でなかったが、房子も参加するという理由から自主映画製作クラブ「○○クラブ(まるまるくらぶ)」に参加。父親が大の電化製品好きで、自宅には最新のビデオカメラなどがそろっている。
叶 房子 (かのう ふさこ)
今井しじまたちの通う高校で、生徒会長を務める3年生の女子。前髪を左寄りの位置で分け、左側は後ろに流して額を見せ、右側は目が隠れるほど伸ばした胸までのロングウェーブヘアにしている。はかなげでぼんやりとした、生気のない印象の人物。しかし周囲にはそれがセクシーと評されることが多く、異性から非常に人気が高い。実際は気が強く男勝りな性格で、自身が女性であることに違和感を抱き、「男性に生まれたかった」と考えている。 父親は亡くなっており、母親は歓楽街のバーで働いている。性を活かした母親の仕事と、母親自身の人柄を嫌悪しているため、「女性」というものに否定的。女性として扱われることや、容姿を誉められることを極端に嫌っている。しじまとは、男子バスケットボール部の試合の際に知り合い、その後、映画作りに誘われて自主映画製作クラブ「○○クラブ(まるまるくらぶ)」に参加する。 これがきっかけで七臣と親しくなり、彼女に対して友情とも恋愛感情ともつかない複雑な想いを抱くようになる。しかし、同時に七臣がしじまに想いを寄せていることに気づき、以降は2人の関係を応援する。受験生だが神奈川県横浜市の大学に進学が決まっており、時間に余裕がある。 料理が得意だが、腕前は七臣には劣る。
織田 (おりた)
高校2年生の男子。今井しじまのクラスメイト。髪型はスポーツ刈り。心優しいが、思ったことをはっきり言う性格。ある日、映画製作に関心を持ったしじまに誘われ、自主映画製作クラブ「○○クラブ(まるまるくらぶ)」に参加する。山本七臣に想いを寄せているが、彼女がしじまに片想いしていることを知っている。そのため七臣を常に案じており、同時に七臣に対して中途半端な態度をとるしじまに、強い怒りを感じている。 のちに七臣に告白するが、振られる。