ロビン ~風の都の師弟~

ロビン ~風の都の師弟~

中山星香の『妖精国の騎士』のスピンオフ作品。秘境の地「玉ねぎ村」で治療師として修業をしていた孤児のロビン・プアルが、アルトディアスの王であるローラント・ルシル・アルドリスに導かれ、魔法使いとして大きく成長を遂げていく姿を描いた本格派ファンタジー。「FlexComix フレア」で2008年7月号から2013年3月号まで掲載の作品。

正式名称
ロビン ~風の都の師弟~
ふりがな
ろびん かぜのみやこのしてい
作者
ジャンル
ファンタジー
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あらすじ

玉ねぎ村編

辺境の地にある玉ねぎ村に住みながら、師匠ファラントのもと、治療師見習いとして修業を続けていた孤児のロビン・プアルは、ある日、狼に襲われていた幼なじみのレティーシャ・レヴィッツを助けるために村はずれに出向いた際に、ローラント・ルシル・アルドリスと名乗る謎の青年と遭遇する。彼の正体はアルトディアスの王であり、ファラントとは旧知の仲だった。ローラントは村長の養子であるチビ長が自分の甥であることを見抜き、彼をアルトディアスに連れ帰って未来の国王にしようとする。しかし、玉ねぎ村で自由奔放に育ったチビ長は、ローラントの申し出をにべもなく拒否。事情を知ったロビンはローラントに対し、チビ長の両親であったアーサーローゼリィの願いは、チビ長を王にすることではないと進言。その言葉を素直に聞き入れたローラントは、ファラントを連れて帰国を決意する。再び平穏な日々が戻ってくると思ったロビンだったが、ファラントからロビンもアルトディアスに帰国する旅に同行し、そこで魔法使いとしての修業をするように告げられる。数日の旅の末、アルトディアスに着いたロビンは、ローラントの娘である王女ディアンメリロットと出会い、修業の傍ら彼女たちの世話をすることになるのだった。

アルトディアス編

王女の世話係になったロビン・プアルは、王妃のシェンドラから叱責を受けつつ、少女たちの相手をする多忙な日々を送ることになった。ある夜、城壁の近くにいたロビンは、大蛇のような黒い影がシェンドラのいる塔へと向かおうとしていることに気づく。ファニエールが張っていた結界の力によって大事には至らなかったが、それが王宮の内部にいる者の仕業である可能性が高いと推測したファニエールは、ロビンに対して警戒をうながす。そんなある日、ストーノク王国から国王代理として城を訪問した王女スフィンミルをもてなす夜宴の席で、あの黒い影がローラント・ルシル・アルドリスとシェンドラを襲撃する。黒い影の攻撃からとっさに二人をかばったロビンは、猛毒に体を侵されて死線をさまようが、シェンドラの新しい侍女となっていたレティーシャ・レヴィッツが持っていた薬草によって一命を取り留めるのだった。ローラントを襲った犯人の正体はつかめなかったが、ロビンは再びディアンたちの世話係として働き、彼女たちに降りかかる災厄を未熟な魔力で懸命に退け、解決に導いていく。しかし、先日城を訪れたスフィンミルの一行が、国境付近で殺害されるという大事件が発生。スフィンミルがローラントの手にかかったとの流言に惑わされたストーノク国は、アルトディアスに対して挙兵するのだった。

黒き血の谷編

アルトディアスとは反勢力の軍勢が各地で挙兵し、アルトディアスの城内はにわかに慌ただしくなっていた。そんな中、ロビン・プアルファラントの導きで、目的を知らないまま旅に出ることになった。船に乗り、アルトディアスの庇護を離れた僻地まで出向いたロビンたちは、「黒き血の谷」と呼ばれる険しい山地にある谷間を訪れる。ファラントの先導で、黒き血の谷の底にあった闇の一族が根城としていた廃墟へとたどり着いたロビンは、ファラントの白魔法の加護を受け、単身で闇の世界へと突入。そこでは闇の一族が長年にわたり、女性をより代として闇の神降ろしを試みていた。闇の一族の狙いは、楽師としてアルトディアスの城に潜り込ませたファニエールを使い、多産な王妃であるシェンドラに神の子を生ませること。闇の力によってシェンドラは危機に陥るが、持てる魔力を駆使したロビンと、ローラント・ルシル・アルドリスの活躍で企みを粉砕することに成功する。その後、ロビンとファラントは計画の失敗で激高した闇の一族の追っ手に追い詰められるが、魔力を使って現場に現れたローラントが闇の一族を切り裂くのだった。

登場人物・キャラクター

ロビン・プアル

見習いの治療師の青年で、赤茶の長髪に青い瞳を持つ。穏やかで優しい性格ながら、仲間の危機には体を張れる胆力の持ち主。幼少の頃に、アーサーとローゼリィによって玉ねぎ村に連れてこられたとされる孤児。師匠であるファラントの指導のもと、日々魔法の修業をしているが、まだまだ腕前は未熟。しかし、制御はできないものの秘めた魔力は強大で、魔法使いとしての素質はずば抜けている。玉ねぎ村で平穏な暮らしを営んでいたが、アルトディアスの王であるローラント・ルシル・アルドリスと会ったことで運命が一変。ローラントとファラントと共にアルトディアスの城へと移住し、そこで魔法の修業と王女であるディアンとメリロットの世話係をすることになる。実はアーサーとローゼリィの忘れ形見で、ロビン・プアル自身はそのことを知らなかった。村長の養子であるチビ長からは非常に懐かれており、ロビン自らもチビ長を家族のように思っている。立琴の演奏が得意で、楽師顔負けの弾き語りができる。

レティーシャ・レヴィッツ

玉ねぎ村に住んでいる村長の孫娘で、明るくておてんばなトラブルメーカー。ロビン・プアルに好意を抱いている。ファラントのもとに通いつめているロビンの気を引くためにいたずらをした。それが村の羊が狼に襲われるという事態を招いてしまったため、罰として村の外へ3年間行儀見習いに行くことになった。その後、アルトディアスでシェンドラの侍女として迎え入れられ、アルトディアスに移住したロビンと再会することとなる。ロビンからは「レティ」と呼ばれている。

チビ長 (ちびおさ)

玉ねぎ村に住んでいる村長の養子で、年齢は5歳。まだ年端もいかないが、人々を強く惹きつける天性の魅力を持った少年。アーサーとローゼリィから村長に託された。本名は「ローラント」だが、みんなからは愛情込めて「チビ長」というあだ名で呼ばれている。小さい頃から面倒を見てくれたロビン・プアルにとても懐いている。玉ねぎ村を訪問したローラント・ルシル・アルドリスから自分の甥であることを看破され、未来の国王としてアルトディアスに連れていかれそうになるものの、チビ長自身の意思でその誘いを拒絶。大人になるまで玉ねぎ村で暮らすことになった。のちにアルトディアスに移住したロビンに会うため、単身でアルトディアスに出向く。

ファラント

玉ねぎ村に住んでいる白魔法の使い手。美しい顔立ちをした長髪の青年。治療師として働きつつ、直弟子のロビン・プアルを育てている。かつてはアルトディアスの王であるローラント・ルシル・アルドリスに仕えており、彼の片腕として頼りにされていた存在だった。ローラントが玉ねぎ村を訪問したあとにアルトディアスに帰国し、再びローラントに仕えながら、魔力を駆使して城の防衛をすることになった。高い魔力を持ち、アルトディアスの国民からは「塔の長」と呼ばれ、尊敬されている。弟子を取らない主義であるため、一見すると魔力の素養がなさそうなロビンを、弟子にしていることを周囲からは不思議がられている。ロビンの真の力を見抜いており、ロビン自身が秘める強大な魔力を制御できるように、日々厳しい指導をしていた。チビ長からは、性格は悪いが治療師としての腕はいいと評価されている。

ローラント・ルシル・アルドリス

アルトディアスの王を務める美形の男性。淡い月光のような金髪に、青灰色の瞳を持つ。身分や見た目に反して物腰はとてもフランクで、誰からも好かれるカリスマ性にあふれた人物。王女のディアンとメリロットが生まれてから、王妃のシェンドラと折り合いが悪くなってしまったことを悩んでいる。そこで、かつての相談役だったファラントを捜すため、単身で玉ねぎ村を訪問した。玉ねぎ村で妹のローゼリィの忘れ形見であるチビ長と出会い、アルトディアスの未来の王にするために国元に連れていこうとした。政治力に優れており、国民から尊敬されている。また優れた剣技を持ち、闇の一族を相手に戦った時にも一歩も引かず、互角以上に渡り合った。

ディアン

アルトディアスの王女で、ローラント・ルシル・アルドリスとシェンドラのあいだに生まれた双子の娘の一人。まだ幼いが、父親と母親の美貌を引き継いでおり、非常に美しい顔立ちをしている。天真爛漫な性格で、多くの人々から愛されている。その浮世離れした美しさから、気難しいシェンドラに疎まれており、何かと厳しく当たられている。そのため、父親のローラントや面倒見のいいシリル・オギニアンの方によく懐いている。アリストからは「ディ」というあだ名で呼ばれている。

アリスト

アルトディアスの城に住んでいる幼い少年。美しい容姿ながら、気が強い性格の乱暴者。ローラント・ルシル・アルドリスの妹ローゼリィの子供という名目で、楽師のファニエールが城まで連れてきた。王妃のシェンドラが、アリストのことをローラントの血縁であると信じて肩入れし、また本人もそう認識しているため、未来の王として城内で傍若無人の振る舞いを繰り返している。王女のディアンにも毎日意地悪をしていた。

シェンドラ

ローラント・ルシル・アルドリスの王妃にして、ロリマーの女王を務める。非常に美しく聡明ながら、わがままで気難しい性格をしており、しきたりやしつけに対しては非常に厳格。ローラントとは結婚当初は仲睦まじかったが、ディアンやメリロットを授かってから折り合いが悪くなり、度々衝突するようになった。ディアンたちにも厳しく礼儀作法を叩き込もうとし、母親らしい愛情をあまり見せないことから、懐かれていない。本当は娘たちのことを愛しているが、あまりにも美しすぎるために自分の娘のように思えず、ローラントとのあいだにある障害物のように感じてしまっている。現在は城に出入りする楽師のファニエールの歌に夢中で、彼の連れてきた少年アリストを王の血族と認め、とてもかわいがっている。闇の一族によって狙われており、神の子を呼び出す道具として利用されそうになる。

シリル・オギニアン

アルトディアスに住んでいる魔法使いの男性。ひょうひょうとした性格で、誰からも好感を持たれている青年。妖精の血を引いており、高い魔力を誇る。ローラント・ルシル・アルドリスとつながりがあり、その縁でディアンやメリロットの面倒も見ている。ディアンたちからは母親であるシェンドラ以上に懐かれている。かつてファラントと旅をしたことがあり、結界が張られており、ふつうの人間では見つけられない玉ねぎ村を発見した功績を持つ。

ファニエール

アルトディアスに住んでいる吟遊詩人の男性。美しい歌声で多くの人々を魅了している。その声でシェンドラの歓心を買い、自分を周囲に信頼させたうえ、王の血縁という触れ込みでアリストを城に連れ込んだ。実は闇の一族の使者で、闇の一族が崇めている闇の神の子供をシェンドラに宿らせようと画策している。

アーサー

ロリマーの王子で、ローゼリィの恋人。かつてはローラント・ルシル・アルドリスの親友だった。3年前にローゼリィと共に玉ねぎ村を訪れ、村の繁栄に力を尽くした。その後、息子のチビ長とロビン・プアルを村に遺して再びどこかへと旅立った。

ローゼリィ

アルトディアスの姫で、ローラント・ルシル・アルドリスの妹。3年前に恋人のアーサーと共に玉ねぎ村を訪れ、息子のチビ長とロビン・プアルを村に残して再びどこかへと旅立った。玉ねぎ村に結界を張り、ふつうの人間が村に入れないようにした張本人。

シルフィン

アルトディアスの王女。穏やかな性格で、誰に対しても優しく接する人格者。アルトディアスに移住したロビン・プアルが、乱暴者のアリストからディアンを守ってくれたことを知り、お礼を言うためにロビンのもとを訪問していた。シェンドラとローラント・ルシル・アルドリスの折り合いが悪くなっていることに心を痛めており、再びなかよくなってほしいと思っている。

メリロット

アルトディアスの王女で、ローラント・ルシル・アルドリスとシェンドラのあいだに生まれた双子の娘の一人。まだ幼いが、父親と母親の美貌を引き継いでおり、非常に美しい容姿をしている。天真爛漫な性格で、多くの人々から愛されている。その浮世離れした美しさから、気難しいシェンドラに疎まれており、何かと厳しく当たられている。そのため、父親のローラントや面倒見のいいシリル・オギニアンによく懐いている。シリルとシルフィンの力を借り、シェンドラとローラントの仲がよくなるように、一芝居を打ったこともある。

スフィンミル

ストーノク国の王女を務める妖精のように美しい女性。王の代理でアルトディアスを訪問し、夜宴では美しい舞を見せていた。しかし、ストーノク国に帰国する途中で何者かの襲撃を受け、命を落としてしまう。ローラント・ルシル・アルドリスによって殺害されたとの噂が流れたため、ストーノクがアルトディアスに対して挙兵する事態となった。

場所

アルトディアス

ローラント・ルシル・アルドリスがおさめている王国。「風の都」や「風のよりし都」とも呼ばれている。近隣の国王や各国の名代が頻繁に訪れる大国。そのため、策謀の対象になることも多く、事実王妃であるシェンドラは闇の一族によって狙われている。

玉ねぎ村 (たまねぎむら)

辺境の地にある小さな村。貧しい村だったが、この地を訪れたアーサーとローゼリィが農業を中心に村を発展させ、誰にも見つからないように周囲に結界を張った。アーサーたちが旅立った以後も平穏な暮らしが営まれ続け、ファラントが村を偶然発見し、住み着いた以外に大きな変化は起こらなかった。のちにファラントを捜しに来たアルトディアスの王ローラント・ルシル・アルドリスによって再び発見され、それによって住民のロビン・プアルの運命は一変する。

黒き血の谷 (くろきちのたに)

辺境の山間にある深い谷。闇の一族が起こした国が根城にしていた地で、国が滅びた今もなお、一族の生き残りが女性をより代にした神の子を降ろすためのおぞましい儀式を行っている。アルトディアスのシェンドラに目をつけ、ファニエールを派遣して、シェンドラに闇の神の子供を宿そうと目論む。

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