小類人

小類人

「孔雀王」シリーズで知られる荻野真の代表作の一つ。20世紀末の日本を舞台に、人間とは異なる種族の雛形平次が小類人(ちゃいるど)同士の争いや、天敵ともいえる「亜大類人」(あだると)との抗争に巻き込まれながら、自らのルーツを辿るSFバトルアクション。人類の脅威となる種族たちの暗躍や、一見するとさえない少年、平次の活躍と独自の進化論に基づいた深遠な世界観が大きな見どころとなっている。集英社「週刊ヤングジャンプ」1996年47号から掲載の作品で、2000年に完結。

正式名称
小類人
ふりがな
ちゃいるど
作者
ジャンル
ダークファンタジー
 
学園
レーベル
ヤングジャンプコミックス(集英社)
巻数
全7巻完結
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人類と異なる生態を持つ進化体

本作は人間の子供に擬態し、成長しない肉体と長い寿命と共に、特殊な能力を持つ「小類人」、寿命が短く特殊能力を持たないものの、小類人を遥かに上回る戦闘能力を誇るクローン集団「亜大類人」、亜大類人への遺伝子提供者にあたる「大類人」(おおるど)など、人類と似て非なる超人たちが多数登場する。彼らは人間に擬態して一般社会に溶け込んでいるが、いざとなれば人類に牙を剝(む)くことも辞さない。その存在は完全に隠されているわけではなく、一般市民のあいだでも小類人の存在が噂レベルで語られている。しかし日本政府の高官からは、その存在をはっきりと認識されており、雛形平次の仲間でもある小類人「頭馬」は、総理大臣と交渉してジェット機を借り受けたこともある。

戦いの中で進化を遂げる雛形平次

雛形平次は自らの正体を隠しつつ、東京の各地を転々としていた。そんな中、平次は自分と同じく正体を隠して生活していた小類人の淵島幽子と出会うが、幽子が亜大類人に利用されていることを知り、平次は彼女を救うため亜大類人たちに立ち向かう。だが亜大類人たちもまた、当初は幽子と同じ顔を持つ、「先生(ドクター)」と呼ばれる研究員の手駒に過ぎなかったが、彼らが暴走し反逆したことで、利害が一致した平次と幽子、先生は共同戦線を張る。そんな中、平次は圧倒的な力の差がある亜大類人に苦戦を強いられ、やがて力尽き死亡する。平次を失った幽子は激しく狼狽するが、先生からの助言を受けて、平次と物理的な融合を果たすことで互いの命を共有する。先生は、融合体の主導権は幽子が握ると考えていたが、二人の融合は平次の進化をうながし、亜大類人を圧倒するほどの力を得る。

人類の進化を歪めた根源

淵島幽子と融合したことで新たな進化を遂げた雛形平次は、父親の雛形平蔵の指示により、小類人だけが暮らす島に身を隠すことになる。そして小類人でありながら、成長を続けている謎の女性・常盤遺と出会って心を通わせる。そんな中、人体の中に眠るジャンクDNAを活性化させることで誕生した新たな進化体「ジャンク」の集団が、島に襲撃を仕掛ける。首謀者である前園は、その圧倒的な力をもって島の小類人を追い詰めるが、平次はあえて前園の誘いに乗って自ら前園の体内に潜入する。その体内で、平次の前世であるオスカー・ライザーの記憶を追体験し、自らが1940年代のナチスによる、人間の進化に関する研究の産物であること、そして前園こそが人類の進化を歪めて、やがて滅亡に導こうとしている「蛇」であることを知る。自分の正体と使命を確信した平次は「蛇」を倒す力を求め、自らの半身といえる逆樹と融合して最後の進化を果たす。

登場人物・キャラクター

雛形 平次 (ひながた へいじ)

人間と異なる生態を持つ少年。自らを小類人だと思っているが、実際は人間や小類人、亜大類人、大類人、ジャンクとも異なる新たな人類の進化系に属している。無機物に血をかけることで生命を与え、自在にあやつる「人形遣い」で、持ち前の戦闘センスと能力を活かし、ほかの小類人を圧倒するほどの実力を秘める。かつては目立たないように、人間の小学生を装ってひっそりと暮らしていた。しかし淵島幽子との出会いをきっかけに、亜大類人や裏で暗躍する大類人、ジャンクと本格的に敵対するようになる。そして戦いの中でさらなる進化を重ね、ジャンクすら寄せ付けないほどの力を得る。以前は「オスカー・ライザー」という名前のドイツ人で、約50年前にアドルフ・ヒトラーの研究機関により、ジャンクへと進化させられた。だが、ドイツの監視下で人類の進化に携わっていたユダヤ人の娘、マリー・ファウストの能力を受けて新たな進化の道筋を獲得し、雛形平次として新生する。

逆樹 (さかき)

女性型の生物。全身が包帯で包まれている。半径20メートル内に存在する小類人の能力を無効化させる能力を持つ。雛形平蔵とは数十年前からの知り合いだが、彼以外にその正体を明かしたことはない。一時は前園が率いるジャンク部隊に利用され、仲間の小類人たちを窮地に陥らせるが、雛形平次がジャンクたちを圧倒する姿を目の当たりにすると、自らの正体が平次の半身にあたることを明かす。平次がオスカー・ライザーの記憶を追体験する中で、マリー・ファウストの姿で現れ、人類の進化を歪めて滅ぼそうと目論む「蛇」を倒すためのヒントを与える。そして自分の使命に目覚めた平次と融合すると、彼を進化の到達点といえる存在へと変質させた。

書誌情報

小類人 全7巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉

第1巻

(1997-07-23発行、 978-4088755038)

第7巻

(2000-01-24発行、 978-4088758695)

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