概要・あらすじ
西暦185年。古代ローマのコロッセウムにて、1人の男が凶暴な獅子を一太刀で葬った。男の名はルキウス・アウレリウス・コンモドゥス。「暴虐帝」とも揶揄される当代のローマ皇帝である。そんな皇帝を密かに討つべく、ルキウスの側室であるマルキアは、遠見の力を持つグルバを介して、ローマ人が失った至高の魂・ヴィルトゥスを抱く者を探す。
その人物とは、遠い未来の日本人の受刑者・鳴宮尊だった。マルキアは尊が本当にヴィルトゥスとしての力を持つかを図るため、運動場で休憩していた尊を含む受刑者たちをまとめてコロッセウムに召喚する。こうして尊をはじめとした日本人受刑者たちの、格闘士としての戦いが始まる。
登場人物・キャラクター
鳴宮 尊 (なるみや たける)
柔道世界王者の肩書を持つ青年。背中には火傷のような大きな傷がついている。日本人離れした大柄な体格をしており、体重は100キロを超す。過去に自分の父親である鳴宮凱を殺害しており、その罪で府中島刑務所に服役していた。普段は優しい性格で、看守から不当な暴力を受けそうになった神尾心を身を挺してかばったり、召喚された古代ローマのコロッセウムでの戦いの最中でも、相手を傷つけたくないと涙を流す。 だが命の危機に直面すると、亡き父親の幻影と言葉に惑わされ、暴力に身を任せてしまう。マルキアには、鳴宮尊こそがルキウス・アウレリウス・コンモドゥスを討てるヴィルトゥスだと思われているが、その真相は定かではない。
ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス (るきうすあうれりうすこんもどぅす)
鳴宮尊たちが召喚された古代ローマで、皇帝として君臨する男性。屈強な肉体を持ち、剣を振るえば、人だろうと動物だろうと一刀で両断する。かつては皆から尊敬される人物であったが、現在は暴虐の限りを尽くし、一部の裕福な民をコロッセウムに集めて日々格闘士の戦いを観戦して楽しむようになった。尊の使う柔道に興味を示し、いつか戦うことを心待ちにする一方で、夢の中で自分を殺そうとする尊の姿を見て、恐怖にも似た感情を抱く。 実在の人物、ルキウス・アウレリウス・コンモドゥスがモデル。
マルキア
ルキウス・アウレリウス・コンモドゥスの側室の女性。暴虐の限りを尽くすルキウスに対し殺意を抱いている。ある日の夜、密かに師事するグルバの力を借りて、ローマ人が失った至高の魂を持つヴィルトゥスを持つ人物を探した。その結果、鳴宮尊こそがヴィルトゥスだと判明し、彼を含む多くの受刑者を自分の時代へと召喚した。 その後は尊たちの動向を把握しつつ、来たるべき日に備えている。
神尾 心 (かみお しん)
鳴宮尊とともにローマ時代へと召喚された少年。フリースクールの講師を刺したことで罪に問われ、府中島刑務所に服役していた。身体は細く、引きこもっていたせいで卑屈な性格だった。しかし、刑務所で自分を助けてくれた尊や、ガムラの島で自分のために戦ってくれた相沢龍也の姿を見て、自分も変わろうと決意する。歴史に関する深い知識を持ち、コロッセウムに召喚された際には、いち早く自分たちが古代ローマ時代に来たことを把握した。 また物事の覚えも良く、関節技や外国語の上達も早い。
灰島 (はいじま)
鳴宮尊とともにローマ時代へ召喚された男性。皮肉屋な性格で、事あるごとに誰かを挑発している。また尊とは面識があり、彼が殺人の罪で服役していることも知っていた。そのため、神尾心が憧れている尊の姿は仮のものであり、本当の尊は血に飢えたケダモノだと考えている。格闘技に関する多くの知識を持っており、尊や他の格闘士の戦い方を、何も知らない神尾に解説することもある。
相沢 龍也 (あいざわ たつや)
鳴宮尊とともにローマ時代へ召喚された青年。身体に龍の刺青が入っている。神尾心は、その見た目から怖い人物だと思っていたが、実際はお調子者で気のいい性格である。だが、命のやり取りを行う鉄火場にもすぐに順応。ガムラの島で元看守だった小野と戦うことになった際にも、容赦なく殺してみせるなど、肝が据わっている。その後、先輩の格闘士であるクルキスにいちゃもんをつけられた神尾を助けるため、戦いの臨んだ。 その際には敗れたものの、尊との特訓を経て、噛みつきなどを駆使し、再戦時には互角の戦いを繰り広げた。しかし、噛みつきは反則行為だったため、最後はガムラによって、右目を潰されてしまう。
宮口 (みやぐち)
鳴宮尊とともにローマ時代へ召喚された男性。見た目は小柄な老人だが、武術に精通している。過去には尊の父親である鳴宮凱とも戦っており、その時に負った怪我により右目は義眼になっている。ガムラの島で、かつて同じ囚人同士だった者と殺し合わなければいけない場面でも、皆が困惑する中、1人冷静でいた。そして人を殺すために必要なものである、相手の命を奪う喜びという感情を、灰島に語って聞かせる。
ガムラ
奴隷商を営む男性。ルキウス・アウレリウス・コンモドゥスの命令で、鳴宮尊たちを預かることになった。自分の島を持っており、そこで奴隷たちを一人前の格闘士にするべく訓練を行っている。尊たちが来た際には、多すぎる人数を減らすため、剣を持たせて戦わせた。そのため尊たちからは恐れられていたが、格闘士としての育成手腕は確かであり、尊の資質も見抜いている。 基本的に強い者を好むが、反則や関節技に頼った戦い方を嫌う。そのため、クルキスとの戦いで噛みつきをした相沢龍也に対し、その健闘ぶりを称えながらも罰として彼の右目を潰した。
パリス
ガムラのもとで格闘士として戦う男性。長身で長い手足を持ち、褐色の肌をしている。その特徴を活かし、打撃や組手といったパンクラチオンの戦いの他、関節技も得意とする。そのため周囲からは「千の技を持つ男」と称されているが、本人はそのあだ名に不満を持っている。神尾心を恋愛対象として見ており、積極的に自分の技を教えてコミュニケーションを図る。 そして外国語を覚えた暁には、愛を語らいたいと神尾本人に告げる。
クルキス
ガムラのもとで格闘士として戦う男性。ガムラの娘、アキリアに恋心を抱いている。鳴宮尊たちにとっては先輩にあたるのだが、本人は彼らを良く思っていない。ある時、自分たちより先に食事をとっていた神尾心に難癖をつけ、自分の足に挟んだパンを食べさせようとしたところ、相沢龍也の身体を張った挑発で彼と喧嘩になる。 結果的に尊とパリスによって止められたが、以降は相沢にいじめにも似た指導をするようになる。その後、相沢がアキリアの部屋へ忍び込んだため、相沢に一対一の対決を挑む。序盤は優勢だったが、マウントをとった際に相沢に左手の小指を噛みちぎられた。
アキリア
ガムラの娘。女性であるが気は強く、鳴宮尊たちの間引きを命じられた時にも、顔色一つ変えることなく殺しあえと命令し、さらには殺し合おうとしない2人の首を切り落とした。クルキスからは恋心を抱かれているが、本人は気づいておらず、アキリア自身はパリスに恋心を抱いている。
グルバ
マルキアが師事している老婆。遠見の力を持っており、時を操る秘術を使うことができる。ルキウス・アウレリウス・コンモドゥスを討つため、ヴィルトゥスの心を持つ者を呼び出そうとする。だがそれは遠い未来に住んでいる鳴宮尊たちを召喚することであり、グルバ本人も、その行いは世の理を狂わせてしまうことを理解していた。
鳴宮 凱 (なるみや がい)
鳴宮尊の父親。尊にとってはトラウマに近い存在であり、死亡しているにもかかわらず、事あるごとに息子の前に幻影として現れる。そして暴力に身を任せるよう言葉をかけ、尊を何度も惑わす。普段は尊も必死に抵抗するものの、命の危機に瀕した際には、その言葉に従ってしまう。
その他キーワード
ヴィルトゥス
グルバいわく、「ローマ人が失った至高の魂を持つ者」。至高の魂とは、「私」を一切省みず、ただ「公」に殉ずることができる清廉な魂のこと。グルバはそのことを日本語で「大和魂」と呼ぶと語った。グルバの力を介してマルキアが探した結果、鳴宮尊がヴィルトゥスを持つ者と知り、グルバの秘術を使って、彼と多くの受刑者を古代ローマへと召喚した。
クレジット
- 原作