概要・あらすじ
西暦188年。古代ローマのコロッセウムに立つ1人の日本人がいた。彼の本名は神尾心、現在は「シン」と名乗っている。彼は試合を見に来た貴族の令嬢のサリーナに好きな数字を尋ねる。そして戦いのさなか、彼女が答えた数の分だけ、対戦相手の骨を折ってみせた。大歓声の中コロッセウムを去るシン。だが、3年前、鳴宮尊とともに日本からローマ時代へ召喚されたあの日から、彼の心は変わってしまった。
その後もシンの狂気の目は、対戦相手だけではなく、ともに日本から召喚された仲間、そしてサリーナへと向けられていくのであった。
登場人物・キャラクター
神尾 心 (かみお しん)
3年前に鳴宮尊とともにローマ時代へ召喚された青年。現在は「シン」と名乗り、ガムラのもとで格闘士として戦っている。関節技を得意とし、試合前に必ず観客に何本の骨を折ってほしいか尋ね、それを実行するというパフォーマンスを行う。かつては気弱だった性格も、3年の時を経て変貌したように見えるが、心の奥底では、尊敬していた鳴宮との別れや、さらに幼少時に継父に首輪をつけられ、ペットとして飼われていた過去に悩まされている。 そのため、自分を哀れむような目で見る者や、幸福に恵まれる者には容赦しない。その結果、ともに戦ってきた相沢龍也の左目を奪い、サリーナの貞操を汚した。その後、その事実を知ったサリーナの婚約者であるレクシウスと対戦し彼を殺害。 降参した相手を殺した罪、そしてサリーナを汚した罪に問われ、地獄車輪の刑を執行されたが、ルキウス・アウレリウス・コンモドゥスによって、生かされることとなる。
サリーナ
アテナイを治める総督・ロガトスの娘。実の母親とは死別しており、ベルマは継母にあたる。またレクシウスを兄と呼び慕っているが、許嫁であり、いずれ婚約する定めにあった。神尾心(シン)の試合を見た際に、彼から好きな数字を聞かれて答えたが、その数字が対戦相手の骨を折る数だと知り、恐怖を抱く。その後はレクシウスとの婚約が決まり、その日を心待ちにしていたが、シンによって貞操を汚される。 その事実を知ったレクシウスが自分のために戦うことを知り、コロッセウムに赴くが、本当の目的は応援ではなくシンを殺害するためであった。ナイフを片手に、試合前のシンを狙ったものの計画は失敗。だが、その際に彼の心の奥底にある悩みを知り、恨みつつも愛情にも似た感情を抱く。
レクシウス
アテナイの名門貴族の男性。サリーナとは許嫁の関係にあたる。将来はローマの指導者として期待されているが、民の上に立つには自分も強くなければならないと信じ、格闘士として戦っている。その戦いぶりは天才と言われ、強靭な足腰から、的確に人体を破壊する打撃を繰り出す。さらに神尾心(シン)は自分には勝てないと本人の前で語り、シンの強さの裏に隠された心の弱さを見抜く。 その後サリーナとの婚約の話を決めるが、シンが彼女を汚し、そのことをレクシウスに語ったことで逆上、対戦を決意する。試合ではシンを瀕死の状態まで追い詰めるものの、サリーナの叱咤によって息を吹き返したシンにより頸椎を砕かれる。その後、命と引き換えにサリーナが汚されたことを大声で告白したが、殺害された。
ルキウス・アウレリウス・コンモドゥス (るきうすあうれりうすこんもどぅす)
神尾心(シン)たちが召喚された時代のローマを治める男性。3年前にシンたちと出会った際には、自身の持つ強靭な力を見せたが、現在も衰えてはいない。今は灰島を側近に置き、ローマ各地の強い格闘士を調べさせている。そしてレクシウスと戦ったシンに目をつけ、処刑されそうになったところを助けた。その後はシンを友人のように扱い、彼が対戦相手の骨を1000本折った暁には、貴族に取り立てると約束した。 実在の人物、ルキウス・アウレリウス・コンモドゥスがモデル。
相沢 龍也 (あいざわ たつや)
3年前に鳴宮尊とともにローマ時代へと召喚された青年。現在は神尾心(シン)と同じく、ガムラのもとで格闘士として戦っている。かつてシンを助けるためクルキスと戦い、その際に使った噛みつきをガムラに咎められ、右目を失った。3年の時を経て変わってしまったシンを、今でも気にかけている。サリーナの父親であるロガトスが開いた宴席に参加した際に、彼女と出会う。 冗談を言って笑わせていたが、サリーナの母親であるベルマの計略で罪に問われてシンと戦い、身体の骨を折られることとなった。さらにシンのことを哀れんだ目で見たと判断され、左目も奪われた。それからは物乞いとして生きていたが、依然と変わらぬ明るさを見せている。
灰島 (はいじま)
3年前に鳴宮尊とともにローマ時代へ召喚された男性。当初は神尾心(シン)らとともにガムラの島で格闘士としての訓練をしていたが、コロッセウムでの興行中にスキを見て脱走。それからは古代ローマ人相手に、ねずみ講を仕掛けて金を稼いでいた。そしてその金を使って貴族の身分を買い、現在はルキウス・アウレリウス・コンモドゥスの側近を務めている。 ルキウスの命令でローマ各地の格闘士を見分していた際にガムラたちと再会。ともにシンとレクシウスの戦いを観戦し、随所で得意の格闘知識を披露した。その後ルキウスによって生かされたシンとともに、ローマへと渡る。
パリス
神尾心(シン)とともにガムラのもとで格闘士として戦う男性。その成績はシンと並ぶほどで、二枚看板として人気を博している。打撃以外に関節技も得意で、シンが使う技はすべてパリスが教えたもの。3年の時を経て変わってしまったシンを心配していたが、相沢龍也の左目を奪ったこと、そして次の標的は自分たちだと、シンに宣言されて恐怖を抱く。
ガムラ
奴隷商を営む男性。3年前に鳴宮尊たちがコロッセウムに召喚された折に、ルキウス・アウレリウス・コンモドゥスから格闘士として鍛えるように命じられた。その後は的確な指導方法で神尾心(シン)たちを鍛えていき、現在はシンとパリスの二枚看板で興行を行っている。シンの変化には気づいているものの、格闘士としては優秀なため、彼の狂気に満ちた行動も黙認している。
クルキス
ガムラのもとで格闘士として戦う男性。かつて神尾心(シン)をかばおうとした相沢龍也との戦いで、彼に左手の小指を噛みちぎられている。だが当の相沢とは、ライバルのような良好な関係であった。2年前にガムラの島でシンと練習試合をした際、彼から挑発されて逆上。だがいつの間にか力をつけていたシンに翻弄され、骨を折られて敗北した。 その際にシンに感じた恐怖心のせいで、誰を相手にしても委縮するようになり、現在の戦績は芳しくない。
ベルマ
サリーナの継母。幼い頃に両親を亡くし、父親の友人に引き取られて虐待された過去を持つ。その後はサリーナの父親であるロガトスの後妻となったが、義理の娘であるサリーナが心を開かないことを嫌悪していた。また夫であるロガトスとの間にも子ができず、さらにはレクシウスが婿入りを考えていることを知り、自分の居場所を守るため、サリーナを貶めようと画策していた。 神尾心(シン)のファンであり、彼が行うパフォーマンスを楽しんでいる。さらにシンがサリーナの貞操を汚す瞬間も見ており、そのことをサリーナに告げ、彼女を精神的に追い込んでいった。
ガイ
神尾心(シン)が住むアテナイの街で、酒場兼宿泊所を営む男性。レクシウスに自身の弱さを見抜かれ、放心状態で歩いていたシンをもてなした。その際にシンから心の奥底にある悩みを聞き、会話を通じて立ち直るきっかけを与えた。シンと別れた後は、なぜか店に残った客を皆殺しにし、姿を消した。
鳴宮 尊 (なるみや たける)
ルキウス・アウレリウス・コンモドゥスを討つため、3年前にルキウスの側室によって古代ローマ時代へ召喚された青年。神尾心(シン)たちは、鳴宮に巻き込まれる形でタイムスリップをした。強く、そして優しい心の持ち主で、シンにとっては憧れの存在であった。だが、ガムラの仕掛けた最終試験、島に住む子供たちを自分たちの刺客として放つというそのやり方を否定し、ガムラと敵対。 その後、子供たちに愛という感情を教えるため、自らの身体を犠牲にした。結果的に子供たちは心を入れ替えて、シンたちも一安心することになった。ところが、その際に落雷を受けて崖から落ち、その後の消息は不明。この出来事が、シンが今のような性格になるきっかけとなった。
クレジット
- 原作