あらすじ
第1巻
「全然振り回せてなんかないじゃないですか。俺の思いどおりになんか何一つなってないし。俺のほうがずっとあんたに振り回されてんだよ!!」 思いがけない告白と、それに続く突然のキス。余りの出来事に、岸本杏は困惑するばかりだった。物語の主人公・岸本杏は藍乃宮高校弓道部の部長。周囲の仲間たちが3年生になった春早々に引退する中、部長として夏のインターハイ予選まで、懸命に部を引っ張ってきた。その甲斐もあって、後輩である三神曜太は県大会優勝。しかし、自分自身はスランプで思うようなな成績を挙げられず、秋季大会を前に引退を決意。顧問に事情を告げ、次期部長候補の三神に引き継ぎを行う。これでもう部活も終わり、一抹の寂しさを感じながらも、受験に専念しようと心を切り替える。ところがそんな杏に対して、三神が自分の練習を見て欲しいと頼み込んでくる。ずば抜けた才能を持つ彼に、自分なんか役に立てるハズもない。戸惑う杏だが、半ば強引に押し切られ、三神の練習に付き合うことに。そればかりか三神は、顧問に対して杏の引退を勝手に撤回し、杏を秋季大会のメンバーとしてエントリーしていたのだ。「私のこと、もう振り回さないでよ!!」 余りにも勝手すぎる三神の振るまいに、さすがの杏も感情を爆発。しかし、そんな杏を待ち受けていたのは、さらなる困惑を呼ぶ、三神からの告白だった。
読み切り短編漫画『出来心』
「あんた全然色気ないから、浴衣を着ても変らないよ」。落研の着付け体験で、いきなり失礼な発言をされた千枝は、そのずけずけとした物言いに腹を立てつつも、妙に鋭い部分を突く前園に興味を抱く。「色気がないと言われたのが悔しいなら、いっそ前園をオトしちゃえ」。周囲の友人たちにはやし立てられた千枝は、ちょっとした意地もあって、落研へと足を運ぶようになる。落語好きな作者の想いが詰まった読み切り漫画。
第2巻
三神曜太の強引なエントリーによって参加した秋季地区大会は、岸本杏がチームに加わった団体戦は三位入賞、個人戦では三神が優勝という上々の結果で終了した。それを祝して打ちあげ会が催されたが、杏は完全に気もそぞろ。その原因は、主役の一人であるはずの三神が参加していないこと。それも「ゆき」という相手からの電話を受けてからの急遽不参加である。引き留める杏に対して「すごく大切な用事」とまで言われては、心穏やかな気分ではいられないのも無理はない。お陰で、今年のインターハイ王者である沢樹景伍に声をかけられたことすら、ロクに意識に残らなかった様子。翌日も間の悪いことが続き、杏はなかなか三神と二人きりになれない。そんなもどかしい状態にしびれを切らし、放課後ついに杏が暴走。ところが、そんな杏に対する三神の答えは、彼女の心をより大きく揺さぶるものだった。「まだ足りない。もっと俺のことを考えてください。一日なんてものじゃなくて、一生頭から離れないくらい。じゃないと、まだ俺の片想いだから」。三神の想いの深さを目の当たりにして、杏は戸惑う。そんな最中、三神に「ゆき」からメールが届く。果たして、「ゆき」と曜太の関係とは?
『あの日から僕らは』
雪のそぼ降る5歳の冬、高熱で入院した三神曜太は、長期入院していた由木直潔と出会う。人懐っこくまとわりついてくる直潔を、当初は疎ましく感じていた三神。だが、直潔の暖かさに触れるうち、頑なだった三神の心は徐々に開いていく。やがて二人は無二の親友に。三神曜太サイドの視点で、幼少期から岸本杏に出会うまでを描いた、『一礼して、キス』のSPECIAL番外編。
第3巻
「岸本先輩、俺と結婚して下さい」。三神曜太の唐突な発言にドギマギする岸本杏だが、彼の想いが本物であることは伝わってきた。かくして、かなりの紆余曲折はあったものの、杏と三神は晴れて恋人同士の関係に。ただし、再来週に推薦入試を控える杏を三神が気遣い、入試前に会うのは今日が最後ということに。なお、三神の求婚は杏の友人である理花との電話中、もう一人の友人である五十嵐も耳にしている中で行われたため、二人の関係はあっという間に周知の事実となる。ともあれ三神の気遣いに応えるためにも、受験に集中するべき所だが、人の心とはそう簡単なものではない。寝ても覚めても、杏の頭に浮かぶのは、三神のことばかり。そんな彼女の元に、沢樹景伍から電話での呼び出しが。電話の内容は、彼女の受験先である南陵星学院大学(南大)へ一緒に見学に行こうとの誘いだった。弓道の名門大学である南大は、沢樹の志望校でもあり、彼の先輩も南大弓道部に所属しているのだ。イマイチ受験に集中できない心境を変えるきっかけになれば。そう考えて、大学見学の誘いを受けた杏だったが、そんな彼女の行動が思いがけない結果を生むことになる。
『僕の花』
長い間秘めていた想いを由木直潔に告白した三神奈智だが、直潔の返事はごめんという謝罪のみ。しかし奈智は想いを諦めきれず、直潔に内緒で病室に花を届け続ける。直潔と三神奈智の関係を描いた、『一礼して、キス』のスピンオフ作。
読み切り短編漫画『SMキャッチボール』
誠実で優しく、女子の人気も高い佐々修司。そんな彼に告白して彼女となった森芝さんは、いい知れない不安を抱えていた。付き合ってからも完璧なまま、包みこむような優しさを見せる佐々くん。もっと本音でぶつかって欲しい。そんなある種贅沢とも言える想いを抱いた森芝さんは、キャッチボールで本気の投球を要求する。
読み切り短編漫画『その前にやることがある』
聡明で誰にでも優しい更科由美に憧れる矢渕良は、彼女と同じ高校に合格できたら想いを告白しようと決意する。ところが、合格祈願にやってきた神社で、偶然目にした絵馬から、由美に好きな人がいることが判明。しかも由美はイケメンと共に参拝していた模様。由美と同じ高校に通いたい一心で、必死に勉強してきたのに、告白前に失恋確定? 恋に悩む少年の葛藤を描いたキュートな恋愛物語。
第4巻
集中しきれない気持ちのままに受けた南陵星学院大学の推薦入試だったが、岸本杏は無事合格。そんな彼女に対して、三神曜太が願い事をしてくる。それは、今度の全国大会で優勝できたら、杏の誕生日である1月1日を丸一日自分にくれというものだった。「夜も帰さなくて良いように」、そう念を押すからには、トクベツな心積もりがあるに違いない。杏のドキドキは増すばかり。そして大会当日、杏が目にしたのは、今まで見たこともないほど尖った空気をまとい、恐いほど張りつめて弓を射る三神の姿だった。その鬼気迫る姿勢に相手は完全に飲まれ、三神は見事全国優勝を飾る。なお、大会では杏にとって意外な相手との再会もあった。それは、南大を見学した際に出会った桑原嵐紫である。南大弓道部のエースである彼は、祖父の代理で大会の審査員を行っていたのだ。見学時に見た射の姿勢に加え、目線を外さず話す仕草など、三神と似た部分が多く感じられる桑原に、杏は妙にドギマギ。さて、肝心の優勝のご褒美である1月1日の約束は、何故か二人きりではなく、三神が杏の家を訪問し、家族とともに過ごす運びとなる。当日、待ち合わせ場所のバス停に向った杏は、またまた桑原と再会。三神を待ちつつ、桑原との会話に応じる流れに。ところが、三神が到着した瞬間、桑原は思い掛けない行動に出る。三神の目の前で、いきなり杏にキスしてきたのだ。その日を皮切りに、桑原は三神に対して執拗に挑発を行うようになる。果たして、桑原の行動の真意とは何なのか?
第5巻
百射会で、三神曜太と桑原嵐紫の勝負に無理矢理割り込んだ岸本杏は、三神の射の音に救われる。その瞬間から、杏の心の中では三神への気持ちが押さえきれないほど大きくなっていく。わからないことがなくなるぐらい、三神に近づきたい。溢れだした想いはもう止められない。かと思いきや、突然の停電による水入りが発生。ともあれ、杏と三神の恋路は順調に進展しているかに見えた。ところが、父親が12年振りに突然帰国した日を境に、三神の様子に微妙な変化が生じ出す。互いの気持ちの昂ぶりを感じた百射会以降、杏と三神は一ヶ月もの間、まったく会えず終いになっていた。実はその間、三神は杏に黙って、猛練習を重ねていたのだ。それも百射会の際、腕を払って負った怪我が悪化することすら構わずに。三神の射型の崩れを案じ、素引きで射を見せるよう要求する杏だが、三神はそれを頑なに拒否。それどころか、三神の本心が見えない不安を口にした杏に、いきなり別れ話を切り出してくる。いったい何が三神をそんな行動に駆り立てたのか。あまりのショックに考えがまとまらない杏に対し、三神は自らの第二ボタンを手渡して去って行った。こうして、大きな喪失感を抱きつつ、杏は藍乃宮高校を卒業。南陵星学院大学での新たな生活を始めていくことになる。果たして、杏と三神の運命が、再び交わる瞬間は訪れるのか。
第6巻
三神曜太にとって、高校最後のインターハイ決勝。その場で見せた彼の射は、正に岸本杏の射をそっくりそのまま写し取ったかのようだった。不安に震えるその背中までも杏と同じ。その姿は、まるで射の形を借りた愛の告白。途中に起った腕払いをものともせず、三神は見事に優勝を決める。そして試合後、杏に対して三神はようやく真意を語る。「俺は先輩の射でインターハイで優勝したかった。あなたがいなきゃここにいない」。三神が初めて杏の練習する姿を目にしたときに感じた、まっすぐでブレない弓道への気持ち。失うことを恐れ、ずっと何かを好きになることをためらってきた三神にとって、杏の姿は嫉妬を覚えるほど。その気持ちに憧れ、ずっと背中を追い続けてきた。想いを打ち明けられ、杏の心にも改めて三神に対する想いが膨らんでいく。「もう何があっても三神くんと離れない。何があっても後悔しない」。そう決意を固めた杏は、三神とともに彼の部屋へ向う。
『とりあえず、キスして』
インターハイ一週間前、浮ノ瀬高校弓道部の部長・大友は大きな悩みを抱えていた。エースである桑原嵐紫が、いきなり欠場を申し出てきたからだ。弓なんか引かなくても生きていけるし、それより女の子と遊んでいた方がいい。ちゃらんぽらんな態度を見せる嵐紫は、大友がキスをさせてくれるなら、大会に出ても良いと、とんでもない条件を突きつけてくる。それは本気と言うより、真面目でキスの経験すらない大友をからかっているかのようだった。普段なら、そんな条件は絶対受け入れない。しかし、大友にはどうしても嵐紫に出場して欲しい事情があった。桑原嵐紫の高校時代を描いた『一礼して、キス』のスピンオフ作。
第7巻
三神曜太に東北の北従大学から、特待生推薦の勧誘があったことを知った岸本杏の心は大きく揺れる。三神と離れたくない。でも、三神の上達を願うなら、北従大学への進学を勧めるべきだ。悩んだ末に、杏が辿り着いた結論は、先輩として三神の成長を促すこと。しかし、ほんの片時でも杏から離れたくない三神は、あくまで推薦を拒否。それどころか、自分に弓道で一回も勝ったことのない先輩に、口出しして欲しくない。と、杏を挑発してくる。かくして北従大行きを賭け、杏は三神と弓道対決を行うことになる。想い出の詰まった高校の道場に、二人きりで立つ杏と三神。三神はインターハイ決勝のときよりも、さらに完璧に杏の射を焼き付けていた。その背中、弦音、息づかい、何もかもが杏への想いに溢れている。言葉にならない互いの想いをぶつけ合うかのように試合は続く。そして杏と三神のラブストーリーは、ついにクライマックスへ。
『呼んで、キスして -由木と奈智の恋』
三神曜太のインターハイを観戦した直後に倒れて以来、外出禁止となってしまった由木直潔。そんな直潔のために何かしたいと思い立った三神奈智は、直潔に内緒でマフラーを編んでいた。ところが、その現場を直潔に見つかってしまう。マフラーが直潔のためだと口に出せない奈智は、何故か直潔に頼まれて編み物を教えることに。『僕の花』に続いて、由木直潔と三神奈智の恋愛模様を描いた『一礼して、キス』のスピンオフ作。
『毎日、キスして』
三神曜太の大学卒業を機に、結婚することを決めた岸本杏は、三神と共にブライダルフェアの会場へやってきた。ウェディングドレスの試着を勧める係員に、尻込みする杏だが、三神はノリノリで承諾。おなじみの偏愛ぶりを遺憾なく発揮する。杏と三神のその後を描いた『一礼して、キス』の後日談。
読み切り短編漫画『僕の真昼の月』
転校生の明城由栄は、匂い立つような色気とミステリアスな雰囲気で、学校中の男子の注目の的。そんな由栄が不良に絡まれているところを偶然目にした鳴宮は、助けに入ろうとして衝撃の光景を目撃する。実は由栄は吸血鬼だったのだ。不良たちを吸血する現場を見られた由栄は、鳴宮に襲いかかり、彼の血を吸って記憶を消去しようと試みる。その最中、鳴宮が感じたのは恐怖ではなく、身体が全部心臓になったかのようなドキドキする感覚。わりとモテるにも関わらず、今まで女子に対して胸がときめくことなど一切なかった。こんな感覚は生まれて初めて。そんな鳴宮が思わず口に出した言葉は、やめないで。かくして、鳴宮は記憶を消さない代わりに自らエサになることを申し出る。氷の心臓を持つ吸血鬼の由栄と、吸血に胸の高まりを感じる感じる変人・鳴宮。二人の関係の行方は如何に?
メディアミックス
実写映画
2017年11月11日公開。監督は『ReLIFE リライフ』を手がけた古澤健、脚本は浅野晋康が務める。人気モデルの池田エライザが主人公の岸本杏、『動物戦隊ジュウオウジャー』シリーズで好評を博した中尾暢樹が後輩の三神曜太を演じる。中尾は三神を演じるに当って弓道特訓を行い、初段を認定された。また、原作では名字のみしか表記されていなかった五十嵐の名前が、キャスト表で明らかになっている(五十嵐克乙)。
登場人物・キャラクター
岸本 杏 (きしもと あん)
藍乃宮高校3年2組。1月1日の元日生まれ。四人家族で、3歳年下の弟がいる。花柄好きでインナーや小物も花柄のものが多い。弓道部部長。中学から弓道を始めており、弓道歴は6年。弓の実力は並レベル。セミロングの髪を後頭部にお団子で結い上げている。責任感の強い頑張り屋だが、上がり症で周囲の期待をプレッシャーに感じやすい脆さがある。 また、押しに弱い一面も。見るだけのつもりでアパレル店に入っても、店員の押しに負けて、さほど欲しくないのに買ってしまうほど。夏の高校選抜を最後に引退を決意。その一因となったのは、まばゆいばかりの才能を見せる後輩・三神曜太の存在だった。
三神 曜太 (みかみ ようた)
藍乃宮高校2年。梅雨時生まれ。次期弓道部部長。夏の高校選抜県大会優勝。イケメンの上に頭も良く、ロクに練習もしないでインターハイ出場を決めた完璧超人。入部初日で的に当て、初参加の大会でいきなり優勝という天才ぶり。現在は高校全国ランキング第二位。弱点は好物の熱々スープ小籠包。猫舌なので冷まさないと食べられない。本当は熱々で食べたいと思っている。 その場の空気や立場に関係なく、思ったことはズバズバ言うタイプ。良くも悪くも自分に正直な少年だが、その遠慮のない言動は誤解を招きやすく、周囲を大いに振り回すことになる。その一方で、本当に大切なことは口に出せない不器用な一面もある。岸本杏に惚れたのは、弓を引き絞る後ろ姿がエロイから。その姿を間近で見たいという理由で、秋季大会の立ち順で杏を「大前」、自分を「中」に指定したほど。
五十嵐 (いがらし)
藍乃宮高校3年2組。秋口生まれ。好きなおやつはハッピーターンで、一度食べ出すと止まらなくなる。元弓道部副部長の眼鏡男子。三神曜太の完璧ぶりに自信を無くし、3年の春早々に部活を引退した。岸本杏と同じ予備校に通っており、五十嵐とクラスメイトの理花、杏の3人は仲の良い友達。休み時間や放課後に、3人でつるんで行動することも多い。 受験シーズンが真っ盛りに差し掛かる中で、曜太と付き合いだした杏を心配しているが、それは友情故か、それともそれ以上の想い故なのかは複雑なところ。
沢樹 景伍 (さわき けいご)
京都翔流高校3年。真夏生まれ。右目尻の泣きぼくろがチャームポイントの熱血系イケメン男子。携帯を充電せずにどこまでも行ってしまうので、友人たちからは「使えねー携帯だな」と、文句を言われていたが、スマホに変えてからはアプリが楽しいのでマメに充電している。今年度の弓道インターハイ優勝者にして、高校全国ランキング第一位。 三神曜太の途中棄権によって優勝したのがスッキリせず、本気の三神と試合で完全決着することを求めて引退を延期し、秋期大会への出場を決意した。三神の敵情視察目的で秋季地区大会を観戦に来た際、岸本杏と出会って一目惚れ。一方的にメアドを渡す。
由木 直潔 (ゆぎ なおゆき)
三神曜太の親友。曜太が幼少の頃、高熱を出して入院した際に出会って以来の付き合い。曜太との仲の良さは、中学時代ホモ疑惑が囁かれるほど。中学から弓道を始めており、曜太が高校から弓道を始めるきっかけを作った。病弱で長期入院を繰り返している。優しく気さくな性格で、入院患者の子供たちの人気者。好奇心旺盛でハマるととことんハマるタイプ。 今現在は宇宙にハマっていて、写真集が出たら曜太に頼んで買ってきてもらっている。プラネタリウムにある惑星のフィギュアを集めるのが楽しい。細かいものが好きで食玩にもハマっているので、食玩で宇宙シリーズが出ることを期待している。
三神 奈智 (みかみ なち)
21歳。三神曜太の従姉。普段はしっかり者だが、集中すると周りが見えなくなることがある。曜太が5歳で両親に引き取られ以来、彼の姉的な存在となっている。四歳年下の由木直潔に片想い中。以前直潔に告白して振られているにも関わらず、直潔の病室の花を彼に内緒で替えに来る。花屋に行くようになってから植物が好きになり、直潔を花見に誘いたいと思っているが、自分が花粉症のため誘えずにいる。 それ以外にも、直潔の通院を送迎するために運転免許を取得するなど、彼に対する献身ぶりは涙ぐましくさえある。
桑原 嵐紫 (くわはら あらし)
11月6日生まれのサソリ座。20歳で南陵星学院大学の2年生。コンタクトレンズと眼鏡を併用している。祖父は錬士で、自分自身も四段を持つ弓道一家。南大には弓道のセレクション入試で合格し、入学後は新人戦を総なめ。部の将来を担うと期待される若きエースである。優しげな顔立ちにふさわしく、礼儀正しく、人当たりの良い好青年。 しかし、時折妙に寂しげな表情を見せるなど、どこか危うい雰囲気も感じさせる。夜はバーテンダーのバイトをしているが、あまり酒は強くないため、普段は全然飲まない。甘いものが大好物。「来る者を拒まず、去る者は追わず」をモットーとしている。しかし実際の所、女性に関してはイレグイ状態の模様。
篠崎 琢人 (しのざき たくと)
5月4日生まれ。北従大学4年生。鋭い洞察力を備えたクール系の眼鏡男子。その容姿に相応しく、理路整然とした口調で話す。弓道部の部長であり、選手とコーチを兼務している。弓道を始めたのは高校からで、現在は怪我で選手としてはお休み中。大学弓道界ではかなりの有名人で、自称「魔性のコーチ」。三神曜太の才能を高く評価し、北従大へスカウトすることを決める。 南陵星学院大学弓道部の部長である小笠原とは、高校時代からのライバル。好きな射法八節は残身。好きなアイスはチョコミント。
集団・組織
南陵星学院大学 (なんりょうせいがくいんだいがく)
東京にある私立大学。文武両道を校訓に掲げ、高校から全国レベルの選手を数多くスカウトしている。校章が弓道にちなんだ図柄であることからも、弓道に対する力の入れようが覗える。ちなみに紺色の胴着を着用する弓道部は、岸本杏の受験年度にインカレ優勝を達成している。
場所
藍乃宮高校 (あいのみやこうこう)
東京にある高校。主人公の岸本杏や、三神曜太などが通っている。
京都翔流高校 (きょうとしょうりゅうこうこう)
京都にある高校。沢樹景伍が通っている。
北従大学 (ほくとだいがく)
東北にある大学。南陵星学院大学に匹敵する弓道の強豪大学で、有望な選手をスカウトして入学させている。
その他キーワード
大前 (おおまえ)
弓道の試合での立ち順(弓を射る順番)を示す用語。三人一組で行う弓道の団体戦では、一番最初に射る者を「大前」、次に射る者を「中」、最後に射る者を「落」という。一本目を当てて流れを作るため、的中率の一番高いエース格の者が大前を務めるのが基本となる。
錬士 (れんし)
弓道における第三位の称号。ちなみに第一位は「範士」で、第二位は「教士」となっている。1.志操堅実にして弓道指導の実力を有し、且つ精錬の功績顕著なること。2.五段以上の段位を受有すること。これらの資格を満たす者に対して、全日本弓道連盟が審査を経て弓道錬士号を授与している。なお、弓道だけでなく、剣道、空手、なぎなた、銃剣道、槍道といった伝統武術に加え、水泳などにもほぼ同様の称号が存在する。
射 (しゃ)
弓を射る一連の所作を示す弓道の用語。基本的には足踏み、胴造り、弓構え、打起し、引分け、会、離れ、残身(心)という八節の動作に別れており、これらを射法八節という。ちなみに最後の残身(心)は弓道だけでなく、空手や居合道など、他の武道でも同様の意味を持つ用語が存在する。
百射会 (ひゃくしゃかい)
文字通り、100回弓を射て、その的中率を競う競技会。四ツ矢(矢を四回単位で射る)が基本のインターハイなどと異なり、長時間連続で射を行うため、集中力に加えて、体力や持久力なども要求される。
腕払い (うでばらい)
射の際に、何らかのミスで弓の弦が腕に当ってしまうこと。捻りの甘さや引きの小ささなど、原因は様々あるが、あざになったり、出血を伴う大怪我になることもありうる。
素引き (すびき)
矢をつがえずに弓を引くこと。野球やテニスなどでいうところの素振りのようなもの。
書誌情報
一礼して、キス 全8巻 小学館〈フラワーコミックス〉
第1巻
(2013-01-25発行、 978-4091350831)
第7巻
(2015-04-24発行、 978-4091371232)
第8巻
(2017-10-26発行、 978-4091398079)