三角の距離は限りないゼロ

三角の距離は限りないゼロ

岬鷺宮の小説『三角の距離は限りないゼロ』のコミカライズ作品。高校2年生の矢野四季は、転入して来た少女、水瀬秋玻に心惹かれる。しかし、秋玻は正反対の性格を持つ水瀬春珂と約2時間おきに入れ替わる二重人格だった。矢野は、この事実をほかの生徒には秘密にしたいという春珂の願いを聞き入れ、協力を申し出る。人前で「偽りの自分」を演じてしまうことに悩む矢野と、二重人格の美少女との切ない三画関係恋物語。「コミックアライブ」2019年6月号から2021年1月号にかけて掲載された作品。

正式名称
三角の距離は限りないゼロ
ふりがな
さんかくのきょりはかぎりないぜろ
原作者
岬 鷺宮
作者
ジャンル
恋愛
レーベル
MFコミックス アライブシリーズ(KADOKAWA)
巻数
全3巻完結
関連商品
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あらすじ

秋玻、春珂との出会い

矢野四季は、クラスメイトの前では無難なキャラクターを演じることでふつうの高校生活を送っていた。しかし、偽りの自分を演じることの窮屈さや、仲のいい須藤伊津佳広尾修司に対してウソをついているような罪悪感を抱えていた。2年生の1学期を迎えた初日、誰もいない教室で池澤夏樹の『スティルライフ』を読んでいた矢野は、その小説が好きだという少女、水瀬秋玻に声を掛けられる。人前で本を読むことに恥ずかしさを覚える矢野はとっさに本を隠すが、そんな矢野に秋玻は、人の目など気にせずに胸を張って生きていけばいいと諭す。この出会いにより、矢野にとって秋玻は気になる存在となるが、すぐにそれまでの落ち着いた態度とは正反対の秋玻を目にすることになる。それは秋玻の別人格である水瀬春珂だった。春珂は、7年前にとある事情から生まれた人格で、現在は約2時間ごとに秋玻と春珂が入れ替わり、記憶も共有していなかった。「ひとりのわたし」でありたいと願う春珂の思いに共感した矢野は、秋玻と春珂がひとつになれるよう、また二重人格であることがほかのクラスメイトにバレないように高校生活を送ることへの協力を申し出るのだった。

秋玻への思い

水瀬秋玻水瀬春珂の二重人格がクラスメイトにバレないよう協力することになった矢野四季は、情報を共有するため連絡を密に取り合っていた。さらに春珂の提案で、三人での交換日記を始めることになる。どうしてそんなに自分に協力してくれるのかという春珂の問いに、矢野は秋玻に恋していることを告白する。それを聞いた春珂は、二人の仲がうまくいくように協力することを申し出る。後日、秋玻の部屋で二人きりで話していた矢野は、秋玻へ思いを告げるチャンスを得るが、言おうとした瞬間に秋玻は春珂の人格に入れ替わり、告白できぬままに終わってしまう。そんな中、矢野と春珂は須藤伊津佳広尾修司から誘われて四人でお台場へ遊びに出掛ける。矢野と二人で観覧車に乗った春珂は、なぜ矢野が偽りのキャラを演じ続けることになったのかを尋ねる。矢野からそのいきさつを聞き終えた春珂は、突然キスしようと言い出すのだった。春珂のかわいらしさに誘惑されそうになる矢野だったが、すんでのところで思い留まる。

春珂の運命

あやういながらもなんとか二重人格がバレることなく高校生活を送っていた水瀬春珂だったが、矢野四季は春珂の人格でいる時間が短くなっていることに気づく。そのことを矢野から尋ねられた水瀬秋玻は、春珂の時間が徐々に短くなっていることを伝える。二重人格になった当初は211分、矢野に出会った頃は131分、先日お台場に出掛けた時は109分になっていた。このまま時間が短くなっていき、いずれは春珂が消えてしまうのだという。そこで春珂が目覚め、秋玻が矢野に真実を告げたことを悟ると、春珂は矢野にさよならを告げ、その場を立ち去るのだった。その日以来、春珂と話す機会を失った矢野は、担任の千代田百瀬から春珂が転校することを知らされる。三人の交換日記を見て事情を理解していた千代田に背中を押された矢野は、春珂を呼び出す。そんな矢野に秋玻は、矢野から愛される春珂への嫉妬が春珂を否定する気持ちを生み、春珂の消滅につながることを涙ながらに告白する。思わぬ秋玻の告白と誤解に驚いた矢野は、自分が好きなのは秋玻であることを告げる。そして、改めて春珂を肯定することにした二人は、須藤伊津佳広尾修司のもとへと向かう。矢野は須藤と広尾に偽りの自分を演じていたことを謝罪し、春珂は春珂として自己紹介をするのだった。

関連作品

小説

本作『三角の距離は限りないゼロ』は、岬鷺宮の小説『三角の距離は限りないゼロ』を原作としている。イラストはHitenが担当している。本作では、原作小説版第1巻の内容が描かれている。

登場人物・キャラクター

矢野 四季 (やの しき)

宮前高校の2年4組に在籍する男子。中学時代にイジられキャラがドSキャラにイジメられるなど、クラスメイトたちが人にキャラクターというレッテルを張ることで、人間関係がおかしくなっていることを注意したのをきっかけに孤立したトラウマを持つ。そのため高校では、文学が好きな自分をひた隠しにしている。仲のいい須藤伊津佳や広尾修司の前では軽口を叩くノリのいい人物を、担任の千代田百瀬の前では聞き分けのいい生徒と、状況に合わせたキャラを演じることで当たり障りのない高校生活を送っている。しかし内心では偽りのキャラを演じることを嫌悪し、友達に対してもウソをついているような罪悪感を感じている。そんな矢野四季に対し、人の目など気にせず自分の思うように生きればいいと言ってくれた水瀬秋玻に恋をする。その後、秋玻が水瀬春珂という別人格を持つ二重人格であることを知り、この事実がほかのクラスメイトにバレないように協力を申し出る。

水瀬 秋玻 (みなせ あきは)

宮前高校の2年4組に在籍する女子。ガラス細工のような整った顔立ちと、何光年もの深さを湛えた銀河渦巻く瞳の持ち主。7年前に水瀬春珂という別人格が生まれ、それ以来約2時間おきに春珂と人格が入れ替わるようになる。二人の人格は記憶を共有しないため、身の回りに起きたことをスマホにメモするなどして連絡を取り合っている。記憶を共有しないため、勉強はふつうの人の2倍時間がかかってしまう。つねに冷静な性格のしっかり者で、落ち着いた雰囲気を漂わせているが、他人に対してはそっけない態度を取る。「~かしら」や「~ね」といった大人っぽい口調で話すことが多い。好きな音楽はジャズ。映画が大好きで毎日最低1本は見ているが、2時間以上の映画だと人格が入れ替わってしまうので一気に見られないことに思い悩んでいる。春珂のことは「あの子」と呼び、春珂の姉のように振る舞っている。周囲にしっかり者と見られている自分に対し、周囲から心配されて人を引きつける魅力のある春珂のことをうらやましく思っている。運動も得意としている。

水瀬 春珂 (みなせ はるか)

7年前に生まれた水瀬秋玻の別人格の女子。人懐っこい性格で、かわいらしい雰囲気を漂わせている。二重人格であることがバレないよう、秋玻と同じ人物に見えるよう振る舞っている。しかし落ち着いた性格の秋玻とは対照的な性格でドジっ子のため、矢野四季にもすぐに秋玻でないことがバレてしまう。運動も苦手のため、体育の授業の時に運動が得意の水瀬秋玻に入れ替わると非常に苦労している。秋玻とは違ってジャズや映画にも詳しくはないが、恋愛マンガは多数読破している。自分に自信が持てないだけで、成績も優秀で記憶力にも長(た)けている。

須藤 伊津佳 (すどう いつか)

宮前高校の2年4組に在籍する女子。クラスメイトの矢野四季や広尾修司とは仲がよく、三人で行動を共にしている。ノリのいい性格で、異性として意識をせずに、矢野や広尾と軽口を叩き合っている。矢野が水瀬秋玻に恋していることを知り、応援している。

広尾 修司 (ひろお しゅうじ)

宮前高校の2年4組に在籍する男子。クラスメイトの矢野四季や須藤伊津佳と仲がよく、三人で行動を共にしている。ノリのいい須藤へのツッコミ役を担っている。

千代田 百瀬 (ちよだ ももせ)

宮前高校の2年4組の担任を務める女性教師。教室に二人きりでいた矢野四季と水瀬秋玻の関係を怪しむが、矢野の説得によって誤解を解いた。生徒のことを信頼する心優しい人物。

クレジット

原作

岬 鷺宮

キャラクター原案

Hiten

書誌情報

三角の距離は限りないゼロ 全3巻 KADOKAWA〈MFコミックス アライブシリーズ〉

第1巻

(2019-10-23発行、 978-4040641386)

第2巻

(2020-06-23発行、 978-4040646992)

第3巻

(2020-12-23発行、 978-4046800312)

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