上を下へのジレッタ

「ジレッタ」と呼ばれる妄想の世界に他人を引きずり込むことができる山辺音彦を利用し、名声を得ようと企む門前市郎。だが「ジレッタ」と山辺は次第に暴走を始めていくのだった。状況を制御できず、右往左往する門前の姿を描くブラックユーモアにあふれた作品。「週刊漫画サンデー」1968年8月14日号から1969年9月10日号まで掲載された。

正式名称
上を下へのジレッタ
ふりがな
うえをしたへのじれった
作者
ジャンル
ブラックコメディ
レーベル
手塚治虫漫画全集(講談社)
巻数
全2巻完結
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概要・あらすじ

テレビ局で働いていた門前市郎は、自分が制作した番組を批判され、会社にタンカをきって退職する。次のビジネスとして、空腹だと美人になるという特異体質を持つ、晴美なぎさを売り出す計画を立てる。そんななか、門前ははずみでなぎさの幼なじみである山辺音彦をビルから突き落としてしまう。ところが山辺は奇跡的に助かり、さらに「ジレッタ」と呼ばれる妄想の世界を他人と共有できる能力を手に入れていた。

門前は山辺を利用し、名声を手に入れようと画策する。しかし山辺の「ジレッタ」は次第に暴走し始め、門前の予想を超えた力を持ち始めるのだった。

登場人物・キャラクター

門前 市郎 (もんぜん いちろう)

才能あふれる演出家にして脚本家、また小説家にして評論家でもある。依頼を受ければ誰にでもアイデアを提供する。過去に竹中プロダクションの竹中郁子社長に無能よばわりされたことを恨んでおり、竹中プロダクションをクビになった晴美なぎさを利用して復讐しようと考えている。世界的なミュージカルスターのジミー・アンドリュウスとなぎさの合同リサイタルを実現しようと奔走するなか、なぎさの幼なじみである山辺音彦と言い争いになってビルから突き落としてしまう。 自分が犯人だとばれてしまわないかとビクビクしていたが、山辺がすべてを忘れてしまっていたため事なきを得る。ジミーとなぎさの合同リサイタルが失敗に終わったため、今度は山辺が作り出す「ジレッタ」を増幅させて日本中へ流す放送局を作り、マスコミに大革命を起こして名声を手に入れようと企む。

間 リエ (はざま りえ)

門前市郎の元妻。最初から契約結婚の約束だったが、一方的に破棄された。アシスタントとして門前の口述筆記をしており、別れてからも仕事を手伝っている。門前が晴美なぎさを「小百合チエ」としてデビューさせた後は、小百合の偽の経歴を設定した。門前の独善的な性格に振り回されつつも、ずるずると関係を続けていたが、門前がジレッタを利用してのし上がった後は、彼に見切りをつけて日本を離れ、ジュネーブで再婚する。

晴美 なぎさ (はるみ なぎさ)

本名は越後君子。芸能事務所「竹中プロダクション」に所属し、顔を見せない覆面歌手「晴美なぎさ」として売り出された女性。しかし故郷で巡業した際に親に頼まれてマスクを取ったところ観客に大笑いされ、事務所をクビになってしまう。歌うとすぐ空腹になるが、空腹で死にそうになると人相も体型も変わって美女に変身する。この体質を門前市郎に目を付けられ、空腹状態でいることを条件に、「小百合チエ」という別名で新たに歌手としてデビューする契約をさせられる。 結婚の約束をしていた幼なじみの山辺音彦が事故で死んだと思っている。自分に会いに来日したジミー・アンドリュウスと惹かれあったが、合同リサイタルの直前に偶然ジミーの喉の奥にあったマイクを吸い出し飲みこんでしまう。 リサイタルの失敗後は打ちひしがれていたが、山辺の生存を知り元気を取り戻す。

山辺 音彦 (やまべ おとひこ)

晴美なぎさと同郷の幼なじみで、漫画家を夢見て東京に出てきた。なかなか芽が出ずエロ漫画家の四方山三平のアシスタントをして食いつないでいたものの、四方山に逆らったことで追い出されてしまう。なぎさと再会してからは恋人関係になり、なぎさにプロポーズするが、それが理由で門前市郎と言い争いになり、ビルの工事現場から墜落した。 命は取り留めたものの、「ジレッタ」と呼ばれる妄想の世界に迷い込む。埋められていたビルの配線工事で発見されたが、目を覚ました時には何もかも忘れて朦朧とした状態になっており、以後は門前によってジレッタ教の教祖として祀り上げられる。次第に意思と記憶を取り戻し「ジレッタ」を操れるようになるが、いつしか暴走し始める。

四方山 三平 (よもやま さんぺい)

山辺音彦の師匠のエロ漫画家。かなりの売れっ子で忙しくしているが、アイディアはすべて山辺に出させている。締め切りまでに山辺がアイディアを思いつけない時は、とにかく裸の女性を出してごまかすのがいつものパターンで、編集者からは「裸以外なんにもかけないくせに大家ぶる」と思われている。自分でアイディアを出し、描いた原稿を山辺にくだらないと言われ、腹を立てて追い出した。

木座神 明 (きざがみ あきら)

国際的に活動しているプロモーター。かつてはエリザベス・テイラーを日本に呼んだこともある。世界的ミュージカルスターのジミー・アンドリュウスを日本に呼ぼうと尽力していた。門前市郎に頼まれて、「小百合チエ」に変身した晴美なぎさの写真をジミーに見せた。

熊坂 丁半 (くまさか ちょうはん)

万朝日報の記者。門前市郎がデビューさせた「小百合チエ」を、芸能事務所「竹中プロダクション」にいた晴美なぎさと同一人物ではないかと疑い、調査をしている。自分に独占スクープをさせてくれないかと門前に申し入れて断られたことを根に持ち、その後も門前を追い回す。そのさなか「ジレッタ」の危険性に気づき、門前の計画を妨害しようとする。

竹中 郁子 (たけなか いくこ)

芸能事務所「竹中プロダクション」の社長。かつて「竹中プロダクション」が構成したユニット番組で、演出を担当した門前市郎を無能だと罵ったことがあり、門前から恨まれている。晴美なぎさを覆面歌手として売り出したが、なぎさが故郷の巡業で覆面を取ってしまい笑いものになったため、事務所をクビにした。

ジミー・アンドリュウス (じみーあんどりゅうす)

世界的なミュージカルスター。門前市郎が木座神明に提供した晴美なぎさの写真を見て興味を抱き、なぎさに会うために来日した。実はコンピューターの力で人工的に美声を作り出しており、喉の奥にマイクを隠しているが、世間には秘密にしている。来日してなぎさと会ってからは強く惹かれあうが、なぎさとの合同リサイタルの直前に、なぎさに喉の奥に仕込んだマイクを吸い出されて飲み込まれてしまう。

有木 足 (ありき たり)

41個の肩書を持つ実業家。そのうち一番有名なものは、「日本天然肥料製造株式会社代表取締役」。門前市郎から「ジレッタ」を放送する計画に出資するよう持ちかけられ、興味を持つ。実際に「ジレッタ」を体験し、富士メトロポリスの裾野公園にジレッタ館を設立することを決めた。

南野 名仁樫 (なんの なにがし)

静岡県警所属の刑事。門前市郎に「ジレッタ」を機動隊のために貸して欲しいと依頼した。5月1日のメーデーをきっかけに学生・労働者が富士メトロポリスを占拠封鎖しようとしているという動きを察知し、「ジレッタ」を使って彼らを平和な妄想の世界に送って鎮圧しようと考えている。

御用 金兵衛 (ごよう きんべえ)

政界の大ボス。有木足が「ジレッタ」で大成功を収めているのを知り、政府に「ジレッタ」を使わせて欲しいと申し入れる。「ジレッタ」を暴走させた結果、妄想で人を殺してしまい裁判にかけられた山辺音彦を、裏に手を回して無罪にした。首相の塩釜を門前市郎に紹介し、「ジレッタ」の全国放送を可能にした。

柳下 土丈 (やなか どじょう)

間リエの再婚相手で、繊維関係のバイヤーをしている。門前市郎がドイツのライン川の岸に借りた城の対岸に、部屋を借りてリエと共に暮らしている。海外に住む日本人相手に商売をしているが、日本人はバカ正直で金を持っているから他の国の人間に売るより楽だと考えている。「ジレッタ」を放送している門前のことも、空想を他人に見せるだけの商売だと馬鹿にしている。

その他キーワード

ジレッタ

山辺音彦がビルの地下に閉じ込められていた時に迷い込んだ妄想の世界。東京中の騒音が上空で渾然一体となり、そのなかの特定の音が共鳴現象を起こした。工事中の鉄柱からその音が伝わり、地下にいた山辺の頭の中に入り込んで脳細胞を刺激したため妄想を起こさせたという。山辺の身体に聴診器を当てて聞くと、失神したのと同じ状態になり妄想の中に入り込むことができる。

書誌情報

上を下へのジレッタ 全2巻 講談社〈手塚治虫漫画全集〉 完結

第1巻

(1983年7月12日発行、 978-4061087712)

第2巻

(1983年8月10日発行、 978-4061087729)

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