概要・あらすじ
かつて天才と言われていた真本桜羽は、誰もいない夜の野外ステージに立ち、一人歌っていた。そこは桜羽の思い出の場所で、夢を諦めるため、最後に歌い納めに来たのだ。誰もいないと思っていたのに男性に声をかけられ、驚いて歌うのをやめる桜羽。やけに整った顔の男性だなと思ったら、彼は主演も務める人気俳優の神宮樹だった。すぐに樹のファンに取り囲まれてしまい、ファンに仲を疑われた桜羽は妹だと噓をつく。樹は桜羽の華々しい経歴を知っていて、「もう歌わないの?」と聞いた。「もう歌はやめたのです」と告げる桜羽。タクシーで送ってもらう途中、樹が寝てしまったので、芸能人は忙しいのだなと思いつつ、彼を家まで送り届ける。桜羽はアルバイトとして5年ほど働いていた花屋の正社員になったばかり。いつも何かが足りないと言われ、就活に失敗した桜羽を雇ってくれた社長のために、役に立ちたいと桜羽は張り切っていた。配達先の芸能事務所で樹に再会する桜羽。「君に会いたかった」と樹は強引に桜羽を個室に引き入れた。そして「君の歌を聞いたあの日だけ、眠ることができたんだ。また歌って欲しい」と言われるが、その樹の頼みを断る桜羽。すると今度は「俺のために歌え」と強引なことを言い、キスするのかと思うほど桜羽に顔を近づけた。樹はひどい不眠症で、桜羽の歌を聞けば眠れると考え、さまざまな手を使って桜羽に歌わせようとする。脅しに近いことまでする樹に腹を立てる桜羽。しかし恋愛感情などなかった二人は、しだいに自分たちにもよくわからない感情が芽生え始めていた。
登場人物・キャラクター
真本 桜羽 (まもと さわ)
花屋「花のAYA」の女性店員。5年のアルバイトを経て正社員になったばかり。歌が上手で、天才少女と謳(うた)われ、全日本総合クラシックコンクール声楽部門など、数々の賞を総ナメにした。中学2年生で賞をとった後はよくメディアにも出演していた。ずっと歌の練習ばかりして、友達とも遊ばず、恋愛経験も乏しい。高校時代、伸び悩んでいて、音大受験直前に両親を事故で亡くす。そこで音大を受験することも諦めて、歌うことを辞めてしまった。これまであまり深く人との関わりを持とうとせず、自分には何かが足りないと感じている。
神宮 樹 (じんぐう いつき)
ドラマの主演も務める人気のイケメン俳優。深刻な不眠症を抱えており、医者の処方する睡眠薬は合わず、民間療法や生活改善も行ったが効果がなかった。真本桜羽の歌声を聞いた時だけ眠ることができたので、桜羽を利用しようとしている。目的のために手段は選ばない。強引で口も悪いが、優しいところもある。7歳から芸能界デビューしている。