あらすじ
リコとエイト
アルバイトをクビになった冴木リコは、車に轢かれそうになっていた家出中の少年エイトを助けたのをきっかけに、彼の面倒を見ることになる。しかし、エイトを捕獲するために軍の部隊が出動しており、食事中のエイトはいきなり狙撃されてしまう。だがエイトは植物化させた腕で、その銃弾を受け止める。エイトは、特殊な植物を細胞に移植されて超人的な能力を持つ軍事機密の亜童で、施設から脱走して追われていたのだった。なんとか逃げ切ったリコとエイトだったが、別の亜童レンジが、エイト捕獲の任務を受けて姿を現す。レンジの襲撃を受けて始まった争いの中、リコは軍の銃撃で倒れてしまうが、レンジはこの騒動を利用してエイトと共に姿をくらます。
亜童たちの戦い
逃げ出したエイトとレンジを捕まえるため、研究施設の関係者である鈴木太郎と志賀博士は、さらに六人の亜童を街に放つ。デミアン、アイン、リン、シオン、ジョー、ハルは、いずれも移植された植物の影響が出過ぎて人間性を失い、凶暴になった亜童の失敗作であった。レンジに個人的な恨みを持つデミアンは、急襲したレンジをパワーで圧倒するが、エイトに頭部を裂かれて死亡する。後日、アインとリンに見つかったエイトはピンチに陥るが、レンジによって救出されるのだった。
登場人物・キャラクター
エイト
特殊な植物を細胞に移植されて超人的な能力を持つ亜童の少年。小学校低学年くらいの気の弱そうな見た目で、口数が極端に少ない。腕を植物の蔓のように変化させて自在に動かせるほかに、離れた場所の植物もある程度動かすことができる。研究目的で監禁されていた施設から脱走し、逃亡中にたまたま助けてくれた冴木リコと出会った。監禁中は、電流を流す首輪をつけられていたが、破壊した方法は不明ながら脱走時には外していた。施設では落ちこぼれだったが、感情が爆発したときには能力が覚醒し、驚異的なパワーを発揮する。その際は人間の首を切り飛ばすほどの破壊力を見せる。
レンジ
特殊な植物を細胞に移植されて超人的な能力を持つ亜童の少年。金髪でヤンキー風の中高生くらいの見た目をしている。辻浦大佐から、脱走したエイトの捜索任務を受け、街へやって来た。施設で育ったため、社会的な常識を持ち合わせておらず、買い物をするときにお金がいることすら知らなかった。植物化させた腕は、金庫を楽に切断するほどの威力を誇る。ウソをつかれることが大嫌いで、平気で人を殺害する冷酷な一面がある。施設でつけられた首輪によって辻浦大佐に逆らうことができなかったが、街中で出会った下呂のおかげで首輪を外すことに成功する。
冴木 リコ (さえき りこ)
日本人女性で、年齢は19歳。金髪をショートカットにしている。毒舌家で、横柄な態度を取る。宗教にハマった母親による拘束や監視生活に耐えられず、15歳の時に家出し、それ以来一人で生きている。コンビニエンスストアでアルバイトをしていたが、勤務態度が悪いために店長にクビにされた。スクーターで移動中、車に轢かれそうになったエイトを助けたことがきっかけで、行き場のないエイトの面倒を見ることとなる。エイトを捕えるために派遣された辻浦大佐が指揮する部隊に襲われるが、一命を取り留めて施設で保護、監禁されている。
辻浦大佐 (つじうらたいさ)
軍人の男性。亜童を研究する政府施設に協力し、施設から脱走したエイトの捜索を指揮している。任務のためなら、一般市民の犠牲もいとわない冷酷な一面がある。
直兄 (なおにい)
医師を務める男性。冴木リコと親交があり、リコからは「直兄」と呼ばれている。リコから負傷したエイトの保護を依頼され、実際にエイトの亜童の能力を見て、強い興味と感心を示す。
ユーゴ
亜童の研究施設で実験対象にされている少年。施設では亜童として優秀な成績を誇り、亜童同士で戦う実験ではランキング2位の実力の持ち主。
ノア
亜童の研究施設で実験対象にされている少女。施設では亜童として落ちこぼれのエイトを励ましていた優しい性格の女の子。成績不振のため、処分されそうになったエイトの脱走を手助けした。
下呂 (げろ)
街で暮らす中年の男性。賭場でイカサマをしている。頭がハゲており背が低く、ネズミのような顔をしている。借金を抱えており、借金取りから追われている。街中で戦っているエイトとレンジの特殊能力を見て、これは金になると目をつけて二人を助けて利用しようとした。
鈴木 太郎 (すずき たろう)
亜童を研究する施設や、辻浦大佐を指揮している政府の要人。見た目はスーツ姿の地味な中年の男性。ふだんは温厚で柔和な印象だが、志賀博士からエイトを捜す理由を尋ねられた際は、長生きしたかったらその質問は二度とするなと警告した。
志賀博士 (しがはかせ)
亜童の研究を指揮している主任の中年男性。目つきが悪く、歯が抜けており、不気味な容姿をしている。何よりも研究至上主義者で、部下にも非常に厳しく接する。実験によって凶暴になり過ぎた失敗作である、デミアンやアインたちを施設内で監禁して監視している。
デミアン
特殊な植物を細胞に移植されて超人的な能力を持つ亜童の一人。スキンヘッドで巨漢の男性。植物の細胞の影響が強く出過ぎて人間性を失い、凶暴になった亜童の失敗作とされている。本来は処分されるはずだったが、志賀博士によって施設内で首輪をつけられずに監禁されている。施設から脱走したエイトとレンジの捕獲任務を受けて、五人の仲間と共に街へやって来る。かつて、太っているからとレンジによって口の両端を裂かれ、さらに「でぶやん」というあだ名を付けられたため、レンジのことを激しく憎んでいる。腕を硬質化させた打撃戦を得意としている。
アイン
特殊な植物を細胞に移植されて超人的な能力を持つ亜童の一人。小柄な体型の少年で、包帯を巻いて両目を隠している。植物の細胞の影響が強く出過ぎて人間性を失い、凶暴になった亜童の失敗作とされている。本来は処分されるはずだったが、志賀博士によって施設内で首輪をつけられずに監禁されている。施設から脱走したエイトとレンジの捕獲任務を受けて、五人の仲間と共に街へやって来る。左腕を食虫植物のように変化させ、そこから噴出される強力な酸で相手を溶かす。純粋に戦いを楽しむタイプだが、飽きると興味を失って戦いの途中でもやめてしまう。
リン
特殊な植物を細胞に移植されて超人的な能力を持つ亜童の一人。両目に傷を負っており、ふだんは鉄のアイマスクで傷を隠している女性。唇にピアスをつけ、黒いボンデージドレスを着ている。植物の細胞の影響が強く出過ぎて人間性を失い、凶暴になった亜童の失敗作とされている。本来は処分されるはずだったが、志賀博士によって施設内で首輪をつけられずに監禁されている。施設から脱走したエイトとレンジの捕獲任務を受けて、五人の仲間と共に街へやって来る。両腕を鋭い巨大なドリル状に変形させて戦う。非常に怒りっぽい性格で、戦いではタイマンを好む。
シオン
特殊な植物を細胞に移植されて超人的な能力を持つ亜童の一人。マントやマスクで顔を隠している男性。植物の細胞の影響が強く出過ぎて人間性を失い、凶暴になった亜童の失敗作とされている。本来は処分されるはずだったが、志賀博士によって施設内で首輪をつけられずに監禁されている。施設から脱走したエイトとレンジの捕獲任務を受けて、五人の仲間と共に街へやって来る。五人の中では一番落ち着いた性格で、理性的なタイプ。
ジョー
特殊な植物を細胞に移植されて超人的な能力を持つ亜童の一人。スーツ姿の髭面の男性で、オネエ言葉で話す。植物の細胞の影響が強く出過ぎて人間性を失い、凶暴になった亜童の失敗作とされている。本来は処分されるはずだったが、志賀博士によって施設内で首輪をつけられずに監禁されている。施設から脱走したエイトとレンジの捕獲任務を受けて、五人の仲間と共に街へやって来る。
ハル
特殊な植物を細胞に移植されて超人的な能力を持つ亜童の一人。フードをかぶり、前髪で目を隠した若い男性。植物の細胞の影響が強く出過ぎて人間性を失い、凶暴になった亜童の失敗作とされている。本来は処分されるはずだったが、志賀博士によって施設内で首輪をつけられずに監禁されている。施設から脱走したエイトとレンジの捕獲任務を受けて、五人の仲間と共に街へやって来る。五人の中では最も物静かな性格の持ち主。
ユアン
生き物を治癒する能力を持つ亜童の少年。末期の癌患者として孤児院から亜童の研究施設へ送られてきた。施設で植物の種を植えられて亜童となり、治癒能力を覚醒させた。負傷した冴木リコを治療する。
その他キーワード
亜童 (あどう)
特殊な植物の細胞を移植され、体を植物に変形できる能力を発現させた子供。さまざまな生物と植物のDNAを掛け合わせた新種の植物の種を、子供の腕に注射することで生み出される。注射された種は、腕から体内に根を広げ、人体の細胞と融合する。初期段階で近くの植物と感応し、植物の声が聞こえたり、動かせたりするようになる。第2段階になると体が発光して覚醒し、完全に自分の意志で体を植物化できるようになる。融合に失敗すると、細胞が壊死して腐敗するか、宿主は完全に植物に飲み込まれてしまう。孤児などを使った人体実験を繰り返しているため、陸の孤島のような研究室で秘密裏に行われている。亜童が能力を使うと、ある程度離れていてもほかの亜童から場所を感知されてしまう。
書誌情報
亜童 10巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2020-02-06発行、 978-4065184943)
第2巻
(2020-10-06発行、 978-4065209943)
第3巻
(2021-04-06発行、 978-4065229309)
第4巻
(2021-10-20発行、 978-4065250846)
第5巻
(2022-04-20発行、 978-4065274712)
第6巻
(2022-10-20発行、 978-4065294758)
第7巻
(2023-05-18発行、 978-4065317075)
第8巻
(2023-10-19発行、 978-4065333907)
第9巻
(2024-05-20発行、 978-4065356289)
第10巻
(2024-11-20発行、 978-4065375181)