あらすじ
鬼頭史樹が大家を務めるシェアハウス「エンカウンター」に、次々と入居者がやって来る。つねに自分の手を洗い続け、他人の作ったものや触ったものを食べたり、触ったりすることができない強迫性障害を持った男子中学生の祖父江蓮、発達障害の傾向があるものの病名が不明の「グレーゾーン」だからこそ生きにくいフリーターの女性、高林アオイ、そして場面緘黙で動画配信中しか声を出して話すことのできない無職男性の水野虎太郎。榊原拓海は自らもPTSDに苦しみながら、自分を救ってくれた史樹の役に立つため、エンカウンターの住人たちのことを理解しようと奮闘する。
登場人物・キャラクター
榊原 拓海 (さかきばら たくみ)
シェアハウス「エンカウンター」の案内役兼リーダーとして大家の鬼頭史樹に協力している男子大学生。パーマをかけた白髪に眼鏡をかけている。顔立ちが女性的であることから、同級生の男子複数人に毎日のように犯されるという経験をしており、それが原因となってPTSDを発症している。史樹によって、その環境から救われたことで現在は被害を受けていないが、手首を強く握られたりするとフラッシュバックを起こし、過呼吸に陥る。史樹から受けた恩を返したいと考えており、率先して住人たちと交流しているが、PTSDの詳細についてはエンカウンターの住人たちには明かしていない。
鬼頭 史樹 (きとう しき)
シェアハウス「エンカウンター」の大家を務める男子大学生。黒髪ロングヘアで、パフスリーブになっている黒いクラシックワンピースを身につけている女装家。大企業の社長令息であり、父親の跡を継ぐために非常に厳しく育てられてきた。何事においても完璧であることを強制する父親に反発するようになり、女装を始めた。勉強に関しても父親の求めるレベルからかけ離れてしまったため失望されている。3年前に母親が首吊(つ)り自殺によって亡くなっているが、その際に父親から、母親の自殺が鬼頭史樹の責任であるかのように発言されたことで反発心を強めた。父親が忌み嫌う「ふつうではない人間」が当たり前に生きる姿を父親に見せつけることを目的に、エンカウンターの運営を行っている。
祖父江 蓮 (そぶえ れん)
中学1年生の男子。黒髪のショートカットヘアにしている。年齢は15歳で、身長は145センチ、体重は41キロ。8月15日生まれの獅子(しし)座で、血液型はB型。つねに自分の手が汚れているように感じて、手を洗い続ける強迫性障害を患い、他人の作ったものや触ったものを食べたり、触ったりすることができない。不登校のため鬼頭史樹の運営するシェアハウス「エンカウンター」の住人となる。エンカウンターに引っ越して来た当初は両親から捨てられたと思い込み、一人でカップ麺ばかりを食べていた。しかし、榊原拓海の説得によって捨てられたわけではないと理解すると、態度を軟化させた。また、母親が食事を毎回配達してくれるようになってからは、拓海たちと共に食事を摂(と)れるようになる。
高林 アオイ (たかばやし あおい)
フリーターで古着屋で働いている女性。年齢は27歳。白いメッシュを入れた黒髪のショートカットヘアで、パンキッシュな服を着用している。身長は158センチ、体重は40キロ。2月8日生まれの水瓶(みずがめ)座で、血液型はA型。発達障害の傾向があるものの病名が不明の「グレーゾーン」であり、その時々によってできることが変わってしまうことに生きづらさを感じている。そのため病名と「できないこと」がはっきりしており、他人にも自分のことをさらけ出せる祖父江蓮にコンプレックスを持っている。また、シェアハウス「エンカウンター」に引っ越して来た当初は、他人の役に立とうと必要以上に気負ってしまい、高林アオイ自身も気づかないうちにストレスになっている。頭に血が上ると「言ってはいけない」と理解しながら言ってしまい、それが原因で前の職場では騒動を起こして退職した。
水野 虎太郎 (みずの とらたろう)
無職の男性。年齢は28歳。腰まである黒髪ロングヘアで眉毛がなく、歯には歯列矯正器具を付けている。身長は185センチ、体重は73キロ。11月20日生まれの蠍(さそり)座で、血液型はA型。場面緘黙を患っており、5年以上も家族の人たちとも会話していない。基本的には筆談でコミュニケーションを取っているが、唯一ゲーム実況や雑談などの動画配信中のみ声を出して話すことができる。また実家を嫌悪しており、社会不適合者がふつうに扱われるシェアハウス「エンカウンター」を最高の居場所だと考えている。動画配信者としてのハンドルネームは「とらまる」。
場所
エンカウンター
鬼頭史樹が大家、榊原拓海が案内役兼リーダーを務めるシェアハウス。なんらかの生きづらさを抱えた人たちだけが入居することができる場所で、住人は史樹のスカウトなどによって決められている。共同生活をする上でのルールは「嫌なことは伝える」だけで、どんな障害や症状を患っていても、個人個人がありのまま生活することを推奨されている。