あらすじ
第1巻
海の底にある魚の国で暮らす人魚姫の海神エラは、ある日、友人の鰹男ら数匹が人間に釣り上げられた事を知り、彼らを弔うため人間に変身して地上に出る。しかし、そこでエラが目にしたのは、魚料理店で調理され、カツオのたたきとなった鰹男の姿であった。悲しみのあまりエラは店を出ようとするが、そこで客の一人から、食べられずに捨てられてしまっては、魚は成仏できないだろうと言われてしまう。もっともだと考えたエラは鰹男を食べるが、これによって、魚料理は信じられないほどおいしいという事実を知ってしまう。この日から魚料理に目覚めたエラは、周囲の目を盗んで度々地上に出ては、かつての友人達が材料となった魚料理を食べる日々を送るようになる。そんなある日、エラは地上へ行く途中で倒れ、記憶喪失になってしまう。偶然通りがかった晴海良に助けられたエラは、その日から人間として暮らすようになるが、魚肉偽装を行っている店で料理を食べた際、本物の魚の味はこのようなものではないと感じたのを機に、記憶を取り戻す。
第2巻
海神エラは、友人であるはずの魚を食べる行為「友食い(ともぐい)」を嫌っていたにもかかわらず、魚料理が大好きになってしまった自分に戸惑っていた。そんなエラを案じた晴海良は、自宅である「魚友」にしばらくエラを住まわせていたが、サンゴが地上を訪れ、エラに母親の体調不良を知らせた事で、エラはとうとう海に戻るのだった。結局エラの母親の病状は軽く、エラは一安心するものの、今後もう地上には行かず、魚料理も食べない事を決意する。そのまま1か月が経過したが、ある日とうとう我慢できなくなったエラは、久しぶりに「魚友」へ行き、晴海良に頼んで、魚料理ではないものを食べさせてもらう事にする。出て来た料理のおいしさに感動したエラは、今後はこの料理を食べればいいと安堵するが、その材料になっていたのは、最近知り合ったばかりの紫雲丹彦、つまりウニであった。結局また仲間を食べてしまったエラは、自らの食欲を認め、「友食い」生活を謳歌するのだった。
第3巻
魚の国に戻った海神エラは、アウトロー魚同士の抗争を仲裁したり、激やせしてしまった力士魚の栄養を管理をしたりしては、最終的に彼らを食べてしまうという「友食い」生活を送っていた。そんなある日、エラがまたも地上に出た事を知ったサンゴは、エラを探すついでに、以前暇田大地から借りた服を返そうと地上に出る。その日はちょうど夏祭りで、混雑のため結局エラは見つけられなかったものの、サンゴは無事に大地に会い、いっしょに花火を見て楽しい時間を過ごす。そしてサンゴは、これまで残虐非道だとばかり思っていた人間の中には、大地のような優しい人間もいる事を知り、今後も個人的に地上へ遊びに来る事を決意するのだった。その直後、晴海良は、エラが勝手に自室に入って来たのをきっかけに、高校時代の事を思い出す。当時良と大地はコンビで漫画を描いており、プロデビューも目前だった。しかしある日突然大地が心変わりし、ケンカになった事で、コンビ解消してしまったのである。実はそれは、才能あふれる良をプロにするため、大地が身を引いた事で起きたものだったのだが、良は今でもそれを知らないままでいた。
第4巻
冬になり、海神エラとサンゴは、最近鰤恵の運営するフェイクニュースサイトで、ある事ない事を書かれて嫌な思いをしていた。しかし、王室関係のフェイクニュースは大量のアクセスが見込めると考える鰤恵の行動はエスカレートし、友人のサザナミが止めても、まるで聞かずにいた。そんなある日、鰤恵は人間に釣り上げられてしまうが、死の直前に鰤恵が見たのは、今まさに自分を食べようとしているエラの姿であった。こうして鰤恵は、自分ではとても想像できなかった恐ろしい真実を知り、そのまま亡くなるのであった。平和を取り戻したエラとサンゴは、2月29日、暇田大地の誕生日パーティーに参加し、楽しい時間を過ごす。しかしその直後サンゴは、意地悪な魚として有名な暴羅に、大地との関係を知られてしまう。サンゴに嫌がらせをしたい暴羅は、これをサザナミが働くタウン誌編集部などに垂れ込むが、サザナミはこれを真っ先にエラとサンゴに知らせ、二人は事態を把握する。こうして暴羅の悪行を知ったエラは暴羅に、暴羅が盗んだサンゴと大地のツーショット写真を返せと要求するが、その瞬間暴羅は人間に釣られて死亡。サンゴは事なきを得る。
第5巻
サンゴはある日、海神エラの父親に呼び出された事がきっかけで、20年前、彼が人間の女性と交際していた事を知ってしまう。これによってサンゴは、エラが実は人間と人魚のハーフであり、いつか人間のように魚を食べ物として捉え、喜んで食べるようになってしまうのではと不安を抱く。しかし、話を最後まで聞くと、エラの父親とその人間女性は結局別れており、その後、エラの父親は現在の妻の妹と結婚した。だが、彼女はエラを出産してすぐに亡くなってしまい、エラの父親は、同じ悲しみを分け合った現在の妻と再婚したのだという。サンゴは安堵し、最近すっかり親しくなった暇田大地とデートを重ねるが、サンゴの誕生日が迫ったある日、大地に異変が起こる。大地は、サンゴを喜ばせるために丸実のアドバイスを真に受けすぎた結果、お金こそが最高のプレゼントと考えるようになってしまったのである。そんな大地の変化にショックを受けたサンゴは大地のもとから去ろうとするが、これに驚いた大地は、本当に渡したかったプレゼントを手渡す。それはサンゴをモデルに書いた大地の新作小説で、大地はサンゴと出会って創作意欲を取り戻したのである。これによって二人は仲直りし、元の関係に戻るのだった。
登場人物・キャラクター
海神 エラ (うみがみ えら)
女性の人魚。海底にある魚の国の姫で、年齢は20歳。前髪を目の上で切り、腰まで伸ばした青紫色のストレートロングを姫カットにしている。上半身は人間の若い女性だが、耳の位置には人間の耳ではなく、外側が白、内側が赤の魚のエラが生えている。人間に変身する事ができ、その際下半身は人間の足に、エラは人間の耳に変わる。一時期記憶を失っていた頃は、自分を人間だと思い込み、「餌羅姫子」と名乗っていた。 また、暇野大地のメイドバー「HIMADA」で働いた時は、源氏名を「姫子」としていた。穏やかで心優しい性格だが、感情があまり顔に出ない。そのため、周囲からは、無表情で感情の起伏に乏しい人物だと思われている。つね日頃から、仲間である魚達が敵に食べられて命を落とす事に胸を痛めており、魚が魚を食べる行為も「友食い(ともぐい)」と呼んで忌み嫌っていた。 しかし、ある日仲間の鰹男達の弔いのため地上に出たのがきっかけで、魚料理が非常に美味しいという事を知り、「友食い」はいけないという自身の考えと、食欲のあいだで悩むようになる。人間の言葉を理解でき、会話もできる。しかし字を書くのは苦手で晴海良しか、何と書いたのかを理解できない。
晴海 良 (はるみ りょう)
海神エラの友人。魚料理店「魚友(うおとも)」の一人息子で、現在は無職。年齢は20歳。前髪を目の上で切って左寄りの位置で分けた短髪に、眼鏡をかけている。三白眼で目つきが悪い。高校時代は札付きの不良で「人喰い鮫の良」と呼ばれていたが、最近は落ち着いている。一見ぶっきらぼうに見えるが、心優しく面倒見のいい性格。ある日浜辺で倒れていたエラを発見し、エラが記憶喪失になっている事を知り、一時期エラを「魚友」に住まわせていた。 その後エラが自宅に戻ってからも、エラが「魚友」に来店する度にいっしょに食事をしたり、遊びに行く関係になっていく。趣味は絵を描く事で、16歳の頃は、暇田大地に誘われてコンビを組み、原作が大地、作画が良で、いっしょに漫画を描いていた。 しかしある日突然大地が心変わりし、漫画は飽きたと言い出した事でケンカになり、コンビは解消。漫画も描かなくなってしまった。
サンゴ
海神エラの友人。魚の国の海底宮殿にある、人間界研究局局長を務める女性の人魚。年齢は20歳。前髪を目の上で切って真ん中で分け、太ももまで伸ばした金色のロングヘアを、珊瑚の形の髪飾りでまとめたツインテールにしている。上半身は人間の若い女性だが、耳の位置には人間の耳ではなく、外側が白、内側が赤の魚のエラが生えている。人間に変身する事ができ、その際下半身は人間の足に、エラは人間の耳に変わる。 年齢はエラと同じだが非常に小柄で、胸が小さい事を気にしている。また、仕事中は白衣を着ているが、サイズが合っておらず、ブカブカなまま着ている。「~だし」など、語尾に「し」を付けて話す。いつも気だるげな、素直になれない性格。しかしエラの事をつねに案じており、そのため、いつも地上には行くなと警告していた。 にもかかわらず地上通いをやめないエラを追いかけてある日地上に出たところ、暇田大地と知り合う。そして親切で心優しい大地に惹かれ、それまで嫌っていた人間という存在を見直すようになっていく。
暇田 大地 (ひまだ だいち)
晴海良の友人で、メイドバー「HIMADA」を経営している男性。年齢は21歳。前髪を上げて額を全開にして撫でつけた短髪で、刈り上げている。三白眼で目つきが悪く、両目のあいだに、左から右に向かって斜めに入った大きな傷跡がある。小説を書く事が趣味で、ペンネームは「暇田ガイア」。見た目は強面だが、非常に丁寧な口調で話し、紳士的で穏やかな性格。 また、ケンカも非常に弱い。良とは17歳の時、暇田大地がプロの小説家を目指していた頃に、偶然良の描いた絵を見た事がきっかけで知り合った。これを機に良と親しくなり、原作が大地、作画が良の漫画家コンビとして活動するようになる。しかし、プロ作家手前まで来たところで、自分の書く奇抜すぎるストーリーでは、良の足を引っ張ってしまうと編集者に指摘され、わざと大地に嫌われるように振る舞って、コンビを解消した。 ある日、道でぶつかって来た海神エラと知り合い、彼女の美貌を見込んで、ぶつかって来たお詫びとして「HIMADA」で1日だけアルバイトさせた。以来、友人として付き合っていくようになる。以前指圧師の専門学校に通っていた事があり、指圧免許を持っている。 誕生日は2月29日。
亜利紗 (ありさ)
晴海良の友人で、メイドバー「HIMADA」で働く若い女性。長く伸ばした前髪を真ん中で分けて額を見せ、胸につくほどまで伸ばした内巻きロングヘアにしている。色黒で、八重歯が1本ある。源氏名は「アリス」で「HIMADA」ではつねに売上No.1をキープするほどの人気従業員。明るくノリのいい性格で、学生時代から良に思いを寄せている。 しかし、実家が魚料理店である事から、良は魚が好きな女性が好みだと思い込んでおり、魚が苦手な自分では恋愛対象になれないと考えている。そのため学生時代のある日、いつか自分が魚を食べられるようになったら、その時は良と結婚してもいいと、あくまで自分が良を選ぶという意味で一方的に思いを伝えたが、良は特にこれを了承していないという状況にある。 海神エラとは、エラが暇田大地に連れられて1日だけ「HIMADA」で働いた時に知り合った。その際自分を押しのけてすさまじい売り上げをたたき出したエラに、エラが店を去ったあとも密かにライバル心を抱いている。しかし、その後「魚友」で再会してからは、友人として付き合っていくようになる。
丸実 (まるみ)
亜利紗の友人であり同僚の、メイドバー「HIMADA」で働く若い女性。前髪を目の上で切ってカールさせ、肩につくほどのセミロングヘアにしている。体型は太めだが、一時期やせて別人のように細く美しくなった事があった。恋愛に関してややおせっかいなところがあり、亜利紗や暇田大地によくアドバイスをしている。
茉凛 (まりん)
晴海良の恩師で、元教師の中年女性。現在は、たい焼きやたこ焼きを売る、ホットスナック店で働いている。一児の母で「ガッツ」という名前の子供がいる。前髪を目にかからないように真ん中で分け、胸の高さまで伸ばしたセミロングヘアを1本の三つ編みでまとめている。教師時代は今よりも髪が短く、ボブヘアだった。明るく面倒見のいい性格。 4年前、当時16歳の良と出会い、不良行為をやめさせるために、無理やり美術部に入部させた。その後、良の思わぬ絵の才能に驚き、彼が暇田大地と始めた漫画制作を見守っていたが、ある日良と大地がケンカになった際、仲裁しようとして良を殴ってしまった事により、教師を首になった。しかし現在でも「魚友」に顔を出しており、良との交流は続いている。 海神エラとは、ある日エラが大地に「HIMADA」へ連れて行かれるところを見かけ、良に報告したのを機に知り合った。実は20年前、エラの父親と交際していたが、別れてしまった。
鰹男 (かつお)
海神エラの友人の若い魚。魚種はカツオで、性別はオス。「Nakajima,my friend」と書かれたバンダナを頭に巻いている。エラ達と共に海で楽しく暮らしていたが、ある日仲間達数名と共に人間に釣られ、そのまま亡くなった。その後、魚料理店「魚友」に購入され、カツオのたたき、魚の兜煮の2種類の料理に調理されたところを、エラに発見される。 そしてエラの鰹男を弔いたいという気持ちにより、食べられた。これによってエラは、魚料理のおいしさに目覚めてしまった。
鮪郎 (まぐろう)
海神エラの思い人の若い魚。魚種はマグロで、性別はオス。非常に大柄で、左目の上から下にかけて、長い1本線の傷跡がある。自然界が弱肉強食の世界なのは仕方のない事だと考えており、相手が仲間であっても平気で食べてしまう。そのため、「友食い」をよしとしないエラとは考えが対立していた。しかしエラ自身を嫌っているわけではなく、左目の傷は、人間に釣り上げられそうになったエラを助けた時にできたものである。 ある日いつものようにエラと口論になりかけたところを人間に釣られ、そのまま亡くなった。その後、寿司店「ざんまい寿司」でお寿司として調理されたところをエラに発見され、エラに食べられた。
河豚野 (ふぐの)
海神エラの料理番を務める中年の魚。魚種はフグで、性別はメス。頭に花柄のコック帽をかぶり、眼鏡をかけて口紅を塗っている。本名は「河豚野」だが、これに当代最高のコックのみが名乗れる「レミ」という称号を付けて、周囲からは現在「河豚野レミ」と呼ばれている。また、この「レミ」は「Ristorante Excellent Meister Imperial」の略である。 料理愛好家として、10年以上エラの食事を作ってきた。しかし、ある時からエラの料理に対する反応が悪くなった事を不思議に思っている。
鱈淵 (たらぶち)
海神エラの友人の若い魚。魚種はタラで、性別はオス。三白眼で目つきが悪く、左目の脇に、逆三角形型に並んだ三つのほくろがある。いつもくわえ煙草をし、左ひれに「真堕羅」と書かれた腕章を付けている。仲間と共に海を暴走する事が好きな不良魚。しかし、ある日仲間の鱈夫が人間に釣り上げられてしまい、その弔い暴走をしている最中に、自らも釣り上げられて亡くなった。 エラの事を気に入っており、自分達のチームに入ってほしいと思っていた。そのため、生前、エラにチーム名の入った特攻服をプレゼントしていた。死後は魚料理店「魚友」に購入され、鱈ちりとして調理されたところをエラに発見され、食べられた。
鮭太 (さけた)
海神エラの友人の魚。魚種はサケで、性別はオス。ぎょろぎょろとした大きな目を持ち、両目のあいだに大きな×印の入れ墨が入っている。帽子をかぶり、いつもくわえ煙草をしている。鮭の一団「超鮭兵団」の団長を務めており、スパルタ教育で知られている。しかし幼い頃は、臆病で気の弱い性格で、「泣き虫鮭太」と呼ばれてからかわれていた。 だが、エラに優しく励まされたのがきっかけで精神的に成長し、現在の地位に昇りつめた。ある日、「超鮭兵団」全員で故郷に戻る途中、仲間をかばって死亡。その後、現地にいた釣り人に回収され、千代経由で魚料理店「魚友」に持ち込まれた。そして鮭のホイル焼きとして調理され、エラに食べられた。
千代 (ちよ)
晴海良の知人で、魚料理店「魚友」の常連客の女性。年齢は90歳。前髪を目の上で切り揃え、顎の高さまで伸ばした前下がりボブヘアに、サングラスをかけている。非常に小柄で三白眼が特徴。良からは「千代バア」と呼ばれている。職業は狩人で、現在も老齢でありながら山籠もりをし、スナイパーとしても未だに非常に優秀な事で知られている。 海神エラとは、エラが「魚友」に居候していた頃に知り合った。その際、エラの心の中にある狂気を見抜いた。また「魚友」に鮭太を持ち込んだのも千代である。
貝蔵 (かいぞう)
海神エラの知人の貝。ホタテ貝で、性別はオス。身体は貝に隠れていて見えない。丁寧な口調で話す。ややひねくれた性格で、自身の事を、誰も気に留めない日陰者だと捉えている。また、エラに対しても、魚達の事を口先でだけ友人と呼ぶ偽善者と考え、一方的に嫌っていた。ある日、人間に釣り上げられて魚料理店「魚友」に購入される。その後、しばらく生け簀の中で生活していたが、ある日エラが「魚友」に来店し、魚料理を嬉しそうに食べる姿を発見。 以来、エラに関心を持つようになる。その後、しばらくは生け簀からエラを観察する日々を送っていたが、とうとうホタテのお吸い物として調理される。そしてエラに食べられる事となるが、食べられる瞬間に、実はエラが目立たない貝蔵をしっかり認識していた事と、貝蔵もまた、本心ではいつかエラに食べられたいと思っていた事を自覚したうえで、食べられた。
紫 雲丹彦 (むらさき うにひこ)
海神エラの知人の若い棘皮(きょくひ)動物。魚種はウニで、性別はオス。暗殺稼業を生業としており、人間の頭のような姿をしている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、顎の高さまで放射状に伸ばしたツンツンのボブヘアにしている。ハット帽をかぶり、顎ひげを生やしている。穏やかで落ち着いた性格の持ち主。ある日、エラをよく思わない者にエラの暗殺を命じられるが、失敗。 そのまま断念しようとしたが、幼なじみであり、現在は同じ暗殺者である岩部陰子もまた暗殺に挑む事を知る。そこで陰子を説得し、もし自分がエラに一太刀浴びせる事ができたら、いっしょに暗殺稼業をやめて故郷に帰る約束をする。しかし、もう一度エラのもとへ向かう前に海女に発見され、そのまま死亡。 魚料理店「魚友」に購入され、ウニ丼として調理されてエラに食べられた。
岩部 陰子 (いわべ よりこ)
紫雲丹彦の幼なじみの若い棘皮動物。魚種はガンガゼで、性別はメス。暗殺稼業を生業としており、暗殺者として活動する時は「クイーン」と名乗っている。人間の頭に両手足が生えたような姿をしている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして真ん中で分け、顎に届かない高さで内巻きにしたボブヘアにしている。頭頂部に大きなリボンを付け、まつげが長い。 田舎から、アイドルを目指して都へやって来たが、悪質な芸能事務所に騙され、気づけば暗殺者として働くようになっていた。そしてある日、海神エラをよく思わない者にエラの暗殺を命じられるが、失敗。しかし、このままでは終われないと、もう一度エラのもとへ向かっていたところを雲丹彦に止められ、暗殺をやめる事にする。そして自分の代わりにエラのところへ行った雲丹彦を待っていたが、やがてもう戻らない事を確信し、一人で地元へ戻った。
チャン皇 (ちゃんこう)
海神エラの国の相撲界において横綱の魚。魚種はアンコウで、性別はオス。筋肉質で眉が太く、腰にまわしを巻いている。その身体が自慢であったが、ある日恋人から、チャン皇の体型はSNS映えしないと言われてしまう。そのショックで糖質制限を行ったところ激やせしてしまい、このままではいけないと考えたエラに、以前の体型こそ素晴らしいので、無理はいけないとたしなめられる。 そこで体型を戻して試合に挑むが、勝った瞬間人間に釣り上げられ、亡くなった。その後、魚料理店「魚友」に購入され、アンコウ鍋として調理されてエラに食べられる。
誠吾 (せいご)
海神エラの友人で、仏子の家で丁稚奉公をしている若い魚。魚種はセイゴで、性別はオス。頭に人間の髪の毛が生えており、その髪をちょんまげにしてエプロンを巻いている。仏子と身分違いの恋をしていたが、ある日仏子の結婚が決まり、身を引くつもりでいた。しかしエラに励まされた事がきっかけで駆け落ちを決意するが、その待ち合わせ場所で人間に釣られ、亡くなった。 その後魚料理店「魚友」に購入され、セイゴのバターソテーとして調理されてエラに食べられる。しかし、その際、仏子もまた「魚友」に購入されており、せめて自分のお腹の中で二人を会わせたいと考えたエラにより、フッコの刺身となった仏子と、エラのお腹で再会した。
仏子 (ふつこ)
誠吾の恋人の、若い魚。魚種はフッコで、性別はメス。頭に鞠の髪飾りを付けており、まつげが長い。誠吾と身分違いの恋をしていたが、家計が苦しい事を理由に、スズキの鈴木と結婚させられそうになる。しかし誠吾が駆け落ちを決意した事で、遅れて待ち合わせ場所に向かうが、その時にはもう誠吾は人間に釣り上げられてしまい、亡くなった事を知る。 そこで悲しみのあまり、自分から人間の垂らした釣り針にかかり、事実上の自殺をした。その後、魚料理店「魚友」に購入され、海神エラに発見される。その際エラの、せめて自分のお腹の中で誠吾と仏子を会わせたいという意向により、フッコの刺身に調理され、同時に購入されていた誠吾が材料のセイゴのバターソテーと共にエラに食べられた。
ホケ子 (ほけこ)
海神エラ達が住む国で、マジシャンとして有名な若い魚。魚種はホッケで、性別はメス。シルクハットをかぶってマントを羽織り、派手なメイクをしている。父親のデビッド・ホッケーフィールドといっしょに「𩸽(ほっけ)ファミリー」として活動していたが、仕事に夢中なあまり家族を省みないデビッドに腹を立てていた。そんなある日、シルクハットの中に隠されていた亡き母親からの手紙を読み、デビッドの思いを知る。 しかし、その直後デビッドは人間に釣り上げられてしまい、その後、魚料理店「魚友」に購入され、ホッケの開きになってしまった。そのため、デビッドの遺志を継いで一人で活動していく事になった。
鰤恵 (ぶりえ)
海神エラ達が住む国で、フェイクニュースサイトを運営する若い魚。魚種はブリで、性別はメス。魚の身体に人間の髪の毛が生えており、前髪を目の上で切り揃えた前下がりのボブヘアにしている。ヘッドフォンとゴーグルを付けており、まつげが長い。目的のためには手段を選ばない性格で、アクセス数を稼ぐため、根も葉もない噂をサイトに掲載し続けている。 それがあまりに噓ばかりであるため、周囲にはすっかり嫌われてしまっていた。それでも唯一の友人であるサザナミだけは離れず、フェイクニュースをやめるようアドバイスしてくれていたが、改心する事はないまま、ある日人間に釣られてしまう。その後、魚料理店「魚友」に購入され、ブリしゃぶとして調理されてエラに食べられる。 しかし、切り身になってもまだ意識が残っており、エラの最大の秘密は、魚料理好きである事と言う、スキャンダルを知った瞬間亡くなった。
サザナミ
鰤恵の友人の、人魚の若い女性。職業は記者で、タウン誌をを作る仕事をしている。前髪を目の上で切り揃え、顎の高さまで伸ばして切り揃えたボブヘアにしている。太眉で胸が大きい。上半身は人間の若い女性だが、耳の位置には人間の耳ではなく、魚のエラが生えている。穏やかでおっとりとした性格。鰤恵とは学生時代からの付き合いで、鰤恵が過激なフェイクニュースサイトの管理人となった現在も、唯一の友人として接している。
平目 (ひらめ)
河豚野の師匠で、中年の魚。魚種はヒラメで、性別はメス。頭に人間の髪の毛が生えており、前髪を目の上で切ったもじゃもじゃのパーマヘアにしている。コック帽をかぶり眼鏡をかけ、口紅を塗っている。河豚野よりひとつ前の世代の最高のコックであり、当時は名前の「平目」に、当代最高のコックのみが名乗れる「レミ」という称号を足して「平目レミ」と呼ばれていた。 しかしその後、河豚野に「レミ」を譲ったため、現在はただの「平目」に戻っている。称号を譲った際は河豚野を祝福しているかのように振る舞っていたが、実際は河豚野に強い嫉妬心を抱いており、また、そんな醜い自分に絶望していた。そこで救いを求めて一人あてもない旅に出るが、旅先で見た醜い物達にますます心を蝕まれる。 そしてやがて、自分の料理ですべてを毒殺して滅ぼせば、憎しみや争いそのものが消滅すると考えるようになってしまった。そのためある日、首脳会議のコックを務める事になった際、各国の王を毒殺しようとする。しかしそれに気づいた河豚野に止められて改心しかけるが、その直後人間に釣り上げられてしまい、死亡。その後、魚料理店「魚友」に購入され、ヒラメのカルパッチョとなり、海神エラに食べられた。
マダム鰹子 (まだむかつこ)
海神エラ達が住む国で占い師をしていた中年の魚で、すでに亡くなっている。魚種はカツオで、性別はメス。頭にヴェールをかぶり、頭上には天使の輪っかが浮かんでいる。生前はいかさま占い師であったが、死んでエラに食べられてしまったあとに徳を積み、幽霊の「聖・鰹子」として、魚達の悩みを聞く存在となった。そのため、魚達の中で、エラの「友食い」を知る唯一の存在である。 仲間を食べ続けるエラの罪は非常に重いが、生前悪党だった自分が改心できた以上、エラにも希望はあると思っている。そのため、エラに以前の自分のように徳を積むように勧める。これによってエラは刑務所に慰問に行き、凶悪犯達を改心させるという大きな徳を積んだが、その直後に人間に釣り上げられた魚を食べに行ってしまったため、もはや更生は難しいと判断。 その後は、エラに呼び掛けられても応じなくなった。
暴羅 (ぼら)
海神エラ達が住む国にある警察「ひみつ警察」の長官の息子である、若い魚。魚種はボラで、性別はオス。ボラの魚の姿に人間の前髪が生えており、前髪を顎の下まで伸ばして、真ん中で分けている。警察帽をかぶり、下まつげが長く、左目尻にほくろが一つある。傲慢で意地悪な性格なため、ひみつ警察に勤めているのも、父親の七光りだと陰口を叩かれている。 サンゴに思いを寄せているが、まるで相手にされておらず、いつもデートの誘いを断られていた。そんなある日、サンゴが暇田大地と撮った写真を発見し、サンゴが最近人間の男性と親しくしているらしい事を知る。そこで、サザナミの働くタウン誌など、各種メディアに情報を垂れ込むが、怒ったエラに写真を返すように求められ、抵抗しようとしたところを人間に釣り上げられ、亡くなった。 魚料理店「魚友」に購入され、ボラのムニエルとして調理されたところをエラに食べられた。
乙姫 (おとひめ)
海神エラ達が住む国の、隣国の王女。前髪を目の上で切り、腰まで伸ばしたストレートロングヘアの一部を頭頂部で二つの輪っかにしてまとめる飛仙髻(ひせんけい)ヘアにしている。着物を着た人間の少女のような姿をしている。耳の位置には、人間の耳ではなく魚のエラが生えているが、下半身は着物で隠れているため見えない。人見知りで引っ込み思案な性格の自分に嫌気がさしており、エラのような、周囲に愛される王女になりたいと考えている。 そのため、ある日エラ達の国を訪れ、エラにアドバイスしてもらう事にする。また、その過程でカサゴロヲと親しくなった。
カサゴロヲ
海神エラの国で役者をしている中年の魚。魚種はオニカサゴで、性別はオス。三白眼で、眉が太い。役者として長年活動しているが、カサゴの目立たない容姿が災いして、万年脇役となってしまっている。しかし、ある日それでもめげずに演技の練習をしていたところ、偶然通りがかった乙姫と出会い、自分と同じように目立たない事に悩んでいる彼女にアドバイスをする。 その直後、ついに主演の話が舞い込むが、その瞬間人間に釣り上げられる。そしてそのまま亡くなり、魚料理店「魚友」に購入され、オニカサゴの煮つけとして調理されたところをエラに食べられた。
カズ
海神エラの国に住む年老いた魚。魚種はニシンで、性別はオス。眉が太く、口ひげを生やしている。15年前までは幼なじみのマイワシの七星(ななほし)と共に、彼女の自宅である昆布農園で楽しく過ごしていた。しかし15年前に発生した第二次海洋戦争により七星を亡くし、また、昆布農園も敵に攻撃され、不毛の地にされてしまった。現在も七星の事を思っており、昆布農園を再生させようと、日々跡地を耕す生活を送っている。 エラとは、ある日エラが昆布農園に訪れた時に知り合い、その際七星との思い出を話した。しかし、その直後人間に釣り上げられてしまい、亡くなった。その後、魚料理店「魚友」に購入されるが、せめて昆布と関連のある調理をしてほしいというエラの頼みで、ニシンの昆布巻きとして調理され、エラに食べられた。
ギルチャン
海神エラの知人の、半魚人の男性。頭は魚で、全身が鱗で覆われているが、体型は人間の若い男性によく似ており、二足歩行する。エラが病院「深海こころクリニック」で行った「愛のカウンセラー エラ姫様 グループカウンセリング」の参加者で、エラとはこれがきっかけで出会った。15年前に起きた第二次海洋戦争で学徒動員され、半魚海兵隊に徴兵される。 しかし、そこで出会ったハーモマン軍曹から厳しい指導を受け、次第に彼への恨みを募らせていく。そして戦争が始まるが、やがてギルチャンの隊は孤立させられ、ギルチャンとハーモマン軍曹だけが生き残った状態で助けを待つ事になってしまう。その際、弱り切ったハーモマン軍曹の額に、出来心で「肉」と落書きしてしまった事を15年経った今でも後悔しており、グループカウンセリングではこの話を打ち明けた。 しかしエラの励ましにより、ハーモマン軍曹に連絡し、謝罪する決意をする。だが、電話をかけようと思った直前にハーモマン軍曹は人間に釣り上げられて亡くなり、とうとう謝罪できずに終わった。
クレジット
- 原作
書誌情報
人魚姫のごめんねごはん 7巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2017-05-12発行、 978-4091895547)
第2巻
(2017-09-12発行、 978-4091896698)
第3巻
(2018-01-12発行、 978-4091897701)
第4巻
(2018-06-12発行、 978-4098600090)
第5巻
(2018-10-12発行、 978-4098601073)
第6巻
(2019-04-12発行、 978-4098602636)
第7巻
(2019-06-12発行、 978-4098603459)