あらすじ
第1巻
釣り好きの小澤隆と付き合っている蒲山ユキは、自分もいっしょに釣りに連れて行ってほしいとお願いしてみたものの、ひどい言葉と共に、釣りへの興味を一蹴されてしまう。いじけたユキは意地になり、自分にだって釣りくらいできると、単身乗り合いの釣り船に乗り込む。だが、海釣りの予備知識などまったくないユキは、波をかぶってびしょ濡れになったり、釣り餌のイソメには触る事もできないなどさんざんな目に遭う。そんな彼女を見るに見かねて、船に同乗していた女性、内海が助け舟を出す。内海の手を借り、餌を釣り針に付けてもらってようやく釣りを始める事ができたユキは、ビギナーズラックなのか、大きなシロギスを釣り上げる。感動もひとしおだったが、今度は魚が飲み込んだ針を外す作業に罪悪感を感じてしまう。魚に謝り続けるユキの様子に、内海はおいしく食べてあげれば大丈夫だと諭し、へこみかけていたユキは釣りに対するモチベーションを取り戻す。結局この日の釣果は散々なものに終わったが、釣り仲間の優しさに触れ、釣りの楽しさを知ったユキは、また釣りに来る事を誓う。そして自宅に帰ったユキは、内海から教わった方法で釣ったキスを調理し、釣りの最大の醍醐味を味わうのだった。(一品目「キスの天ぷら」。ほか、7エピソード収録)
登場人物・キャラクター
蒲山 ユキ (かばやま ゆき)
彼氏とのケンカがきっかけで釣りを始めた女性。色白でかわいらしく、頼りない印象を与えるが、自己主張は強め。釣り好きの彼氏、小澤隆に、いっしょに釣りに行きたいとねだったところ、全力で拒否された。この時、一人でなにもできないくせにと言われた事でケンカになり、半ばやけになって、一人で乗り合いの釣り船に乗り込む。そこで知り合った女性、内海からのサポートのおかげで、釣りに関してはまったく無知な初心者だった蒲山ユキは、釣り好きになり、釣りにのめり込んでいく。毎回釣果はイマイチだが、気のいい釣り仲間から分けてもらった魚でおいしい料理を作り、隆との仲を深めていく。もともと甘ったれなところがあり、釣り餌のイソメにすら触れられなかったが、釣りに取り組む内海の姿にあこがれて次第に逞しくなっていく。隆とは、日常的にちょっとした事を理由にしたケンカが絶えないが、素直な性格のために仲直りするのも早い。彼の話に出て来る職場の先輩が、自分のよく知る内海と同一人物であるという事は気づいていない。釣る事以上に食べる事が大好きで、釣った魚の調理はお手のもの。苗字をもじった「カバちゃん」というあだ名で呼ばれる事があるが、ユキ本人はこのあだ名を嫌っている。
小澤 隆 (おざわ たかし)
蒲山ユキと付き合っている彼氏。釣り好きだが、いっしょに行きたがったユキに、日にあたるのも汚れるのも嫌がるし、一人ではなにもできないくせにと、きつい言葉を投げつけた。この発言でユキとはケンカになり、ユキが釣りを始めるきっかけとなった。その後はユキが釣って来たキスを食べて、ユキの行動力を認めて自分の発言を謝罪した。無事仲直りするに至ったが、照れ屋で素直になれない性格で、日常的にユキに対してキツい事を言っては、なにかとケンカになる事が多い。しかしユキとは相性が合うのか、仲直りするのも早い。会社の先輩にあたる内海に対しては、仕事ができる事への尊敬とは別に、きりっとした美人女性である事からあこがれも抱いており、もう少しお近づきになりたいという願望も心に秘めている。ユキが釣りで世話になっている「お姉さん」と、内海が同一人物であるという事は、まったく気づいていない。
内海 (うちうみ)
釣り好きの女性。蒲山ユキとは、よく利用する乗り合いの釣り船で知り合い、釣りに不慣れなユキをフォローするうちになかよくなった。釣りに関しては腕も知識もプロ級で、釣った魚は美味しく食べるのがモットー。魚の種類別に、よりおいしく食べる方法をよく知っている。毎回、思ったような釣果が出せないユキに、自分が釣った魚を分け、お勧めの食べ方を具体的にレクチャーする。また、ユキの彼氏である小澤隆と同じ会社に勤めており、隆の先輩にあたる。職場では営業成績トップを誇り、仕事に厳しくクールな美人というイメージから、彼女が釣り好きであるという事は知られていない。だが、携帯電話の着信音がCS釣りチャンネルのテーマソングだったり、竿を振る仕草がつい手に出てしまったりと、釣り好きが見ればすぐにそれとわかるような言動が見られる。負けず嫌いな性格だが、考え方は柔軟。弟とは、二人でワカサギ釣りに行ったり、いっしょに料理をしたりと仲がいいが、実際には少々気の強い姉と、それに逆らえない弟という構図となっている。ユキからは「お姉さん」と呼ばれており、ユキの事は「カバちゃん」と呼んでいるが、彼女がそのあだ名を嫌がっている事には気づいていない。また、隆からよく聞いている「釣り好きの彼女」が、ユキであるという事は知らない。
弟 (おとうと)
内海の弟。海に近いところにある自宅の庭で、ローストビーフを調理していた時、偶然通りかかった蒲山ユキと知り合った。姉に似て綺麗な顔立ちをしており、料理上手のため、初めはユキに女性と勘違いされた。釣りデート中だったユキが困っていたため、調理済みのローストビーフをおすそ分けし、男がむくれている時は肉を食べさせれば大抵解決するとアドバイスした。これにより、ユキと小澤隆のケンカの仲裁に一役買った形となった。