今際の国のアリス

今際の国のアリス

突如荒廃した東京で目を覚ました少年たちは、わけもわからぬまま、命がけのゲームに参加させられる。極限状態を乗り越えて成長していく少年たちの姿を描くアクション・サスペンス。小学館「週刊少年サンデーS」2010年10月号から2015年5月号、その後「週刊少年サンデー」2015年19号から2016年14号にかけて連載。2014年10月OVA化。2020年9月Netflix配信で実写ドラマ化。

正式名称
今際の国のアリス
ふりがな
いまわのくにのありす
作者
ジャンル
サスペンス
レーベル
少年サンデーコミックス(小学館)
巻数
既刊18巻
関連商品
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作品構成

物語は1部、2部、特別編で構成されており、第1巻から第8巻までは、謎の世界に迷い込んだ有栖良平が、生き残りをかけてさまざまなげぇむに挑む第1部「ふぁあすとすてぇじ」編、第9巻から第18巻までは、げぇむの首謀者たちと直接対決をする第2部「ねくすとすてぇじ」編となっている。特別編は不定期に収録されており、主人公以外のさまざまなキャラクターが、別のげぇむに挑む姿が描かれている。

あらすじ

ふぁあすとすてぇじ編(第1巻~第8巻)

平凡な高校生の有栖良平は、友人の苅部大吉勢川張太とともに自堕落な日々を送っていた。ある時3人は巨大な花火を目撃する。そして目が覚めると、そこは長い年月が経過し荒廃した街であった。街を彷徨うなかで、3人は先にこの世界へ来ていた紫吹小織という女性と出会う。そして、この世界が「今際の国」と呼ばれる異世界であり、生き残るためには、そこで開催されるげぇむに勝ち続けなければならないことを知る。

ねくすとすてぇじ編(第9巻~第18巻)

絵札を除いたすべてのげぇむに生き残った有栖良平たちぷれいやぁは、今際の国の国民と直接対決する、ねくすとすてぇじの段階へと進んだ。なぜげぇむが存在し、自分たちが選ばれて参加させられているのかを突き止めるため、生き残ったぷれいやぁたちは、更に苛烈な難易度を誇る絵札のげぇむに挑む。

特別編 はあとのよん(第5巻~第6巻)

失恋と親友の喪失を同時に経験した堂道隼人は、自暴自棄のなか、巨大な花火を目撃し、今際の国へと迷い込む。そこで待ち受けていたのは、人の心を試すおぞましいげぇむであった。有栖良平ビーチへやって来た翌日からの4日間を描く特別編。

特別編 くらぶのよん(第8巻)

日没を迎えた今際の国では、今日も生き残りをかけたげぇむが開かれる。元暴力団組員の山根魁翔は、もとの世界で自分を待つ恋人のために、必ず生きて帰ることを決意する。だが、待ち受けていたげぇむは、そんな想いを嘲笑うかのような残酷なものであった。

特別編 だいやのろく(第9巻)

今際の国に迷い込んだ苣屋駿太郎(チシヤ)は、わけもわからぬまま、命がけのげぇむ「ぶらっくじゃっく」に挑むこととなる。だが、そのげぇむは公平ではなく、自分1人だけ重いハンデを背負ったものであった。ビーチへやって来る前のチシヤの戦いを描く特別編。

特別編 すぺえどのなな(第10巻)

人生に冷め切った女子高生塀谷朱音は、巻き込まれたげぇむで瀕死の重傷を負う。自分以外の参加者が全滅した絶望的状況のなか、少女は生と死の間で懸命に足掻(あが)き続ける。ねくすとすてぇじでキーパーソンとなる少女の始まりを描く特別編。

特別編 すぺえどのきんぐ(第14巻)

ねくすとすてぇじ開始までなんとか生き残った堂道隼人は、粟国杜園塀谷朱音の2人に出会い、♠のKとの戦いに立ち向かう。それぞれの絶望を抱えた3人が、協力して再生していく姿を描いた特別篇。

特別編 だいやのきんぐ(第15巻)

ねくすとすてぇじ開催まで生き残った苣屋駿太郎(チシヤ)は、最難関の絵札のげぇむ♦のKに挑む。壮絶な知能戦の果てに、チシヤは、生を軽視し続けてきた自らの生き方に疑問を抱いていく。賢すぎるがゆえの苦しみを背負ったチシヤの戦いを描く特別編。

表現上の特徴

げぇむにトランプのマークと番号が振られていたり、登場人物の名前に「アリス」や「ウサギ」が使われていたりと、作品の随所からイギリスの児童小説『不思議の国のアリス』のテイストがうかがえる。また、げぇむ、ぷれいやぁふぁあすとすてぇじなど、今際の国にまつわる固有名詞は、ひらがな表記で統一されている。

メディアミックス

OVA

「週刊少年サンデー」に連載の7作品を連続OVA化する「アニサン企画」の1つとして、2014年から本作『今際の国のアリス』第12巻、第13巻、第14巻は、それぞれOVA付きの特別版も発売された。アニメーション制作はSILVER LINK./CONNECTが行った。アニメ化されたエピソードは、第12巻が「くらぶのさん」、第13巻が「すぺえどのご」、第14巻が「はあとのなな」である。

実写ドラマ

2020年12月10日からNetflixにて実写ドラマが配信。監督は佐藤信介。主人公の有栖良平を山﨑賢人が演じる。2022年12月22日からシーズン2が配信。

登場人物・キャラクター

有栖 良平 (ありす りょうへい)

高校3年生の男子。何ひとつ秀でているところのない落ちこぼれ。裕福な家庭に生まれるが、何かと優秀な弟と比べられて息苦しい思いをしている。自分に居場所を作ってくれた苅部大吉(カルベ)と勢川張太(チョータ)を強く信頼している。カルベとチョータが自分を生かすために死亡した際には、自暴自棄になりかける。そこを宇佐木柚葉(ウサギ)に心身ともに救われ、今際の国の謎を解き明かすことを決意する。 ねくすとすてぇじでは♣のKをクリア。結果として、またも自分のために仲間を犠牲にしたことに絶望し、げぇむへの参加を拒否。だが韮木傑と苣屋駿太郎とのやりとりのなかで、自分の生きる目的を自覚し、再びげぇむへの参加を決意し、ウサギと2人で最終決戦へ臨む。

苣屋 駿太郎 (ちしや しゅんたろう)

ビーチにおける序列No.11の青年。もとの世界では医大生であった。♠の5で初めて有栖良平(アリス)たちに目を付け、ビーチへ来るように誘導した。優秀な頭脳を持つが、他人には一切の情を抱かない。♠の5の攻略法に一早く気づくが、他の参加者には教えようとしなかった。 ビーチでは自らの目的のためにアリスを利用して裏切り、その結果、アリスは手ひどい暴行を受けることとなる。今際の国へ来てから初めて参加したげぇむ、♦の6では、平然と自らの命を危険に晒して知能戦を制する。また、♦のKでは、九頭竜慧一(クズリュー)と対戦。げぇむを通じてクズリューが固執する「命の価値」に興味を持ち、彼が苣屋駿太郎自身の命にどれほどの価値を付けるのかを問う。

堂道 隼人 (どうどう はやと)

もとの世界では中学3年生の男子。失恋と親友の喪失という二重苦に悩まされていた時に巨大な花火を目撃し、今際の国に迷い込んだ。初めて参加したげぇむ、♥の4では、騙されて死ぬよりも他人を騙して生き残る選択をする。しかし、実際に自分が騙した人間が死ぬ姿を見て、激しく後悔することとなった。 その後、同じげぇむに参加していた有栖良平を信じてともに生き残り、今際の国のことを知る。ねくすとすてぇじでは♠のKに参加。屈強な男たちが次々と稚羅日勲(シーラビ)に殺害されるなか、辛くも逃げ出した先で粟国杜園と塀谷朱音に出会う。恐怖からげぇむを放棄していたが、生きるために懸命に足掻く2人の姿を目の当たりにし、ともにシーラビを打ち倒すことを決意する。

山根 魁翔 (やまね かいと)

もとの世界では暴力団に所属する男性だったが、生来の世話焼きでお人好しな部分を捨てきれずにいる。男からDVを受けている女性を助け、彼女を支えていくために、暴力団を抜けて足を洗おうとしていた。そこで今際の国に迷い込む。自らの他人に甘い部分が、げぇむを生き抜くうえで枷になっていることを自覚し、徐々に甘さを捨て非情になっていく。

塀谷 朱音 (へいや あかね)

もとの世界では女子高生。冷めた性格で、自分以外の人間を多少見下しているきらいがある。その原因は素行の悪い母親によるところが大きく、「クズから生まれた自分はクズにしかなれない」と、自分の人生を半ば諦めている。今際の国にやって来て初めて参加したげぇむ、♠の7では、開幕と同時に他の参加者が全滅し、自分も瀕死の重傷を負ってしまう。 辛くもクリアするが、足を切断するほどの傷を負い、義足を付けて生き延びる。ねくすとすてぇじでは♠のKに参加。ありとあらゆる手を使って、自分1人で生き残ることを目的としていたが、堂道隼人と粟国杜園に関わるうちに、その考えに疑問を持つようになる。

宇佐木 柚葉 (うさぎ ゆずは)

クライマーの女子高生。♠の5の会場で有栖良平(アリス)と出逢う。同調圧力の強い世界を、「顔の見えない巨大な化け物の手に囲われた世界」と表現し、独りでいることを好んでいた。唯一の理解者であった登山家の父親が、濡れ衣を着せられて自殺してしまい、その葬儀後に、今際の国へと迷い込んだ。もとの世界と同じく、1人で生き抜こうとしていたところに、♥の7をクリアしてボロボロになっていたアリスを発見。 仲間も居場所も何もかも失って、なお生きたいと叫ぶアリスに、父親を亡くしても独りで生きていこうとしていた自分を重ね、孤独な者同士ともに生きていこうと提案する。長年のクライミング経験でハイレベルなサバイバル能力を体得しており、状況を的確に分析して、げぇむに立ち向かう。 ねくすとすてぇじでは、もとの世界に戻ろうとするアリスに対して、自分が戻ってもまた絶望を味わうだけなのかもしれないと恐怖し、一時はアリスを拒絶する。だが♣のKを通して、アリスとともに最後まで生きていく決意を固める。

苅部 大吉 (かるべ だいきち)

有栖良平(アリス)の親友。常に冷静で頭の切れるタイプながら、喧嘩っ早いところがある。アリスとは小学校時代からの旧友。卒業以降は疎遠になっていたが、偶然酔っ払いとの喧嘩に巻き込まれていたアリスを助けて再会する。高校を中退しており「中卒」といじられることもある。自立してバーを経営しており、将来オーストラリアで牧場を営むための足掛かりにしている。 行動力と判断力に優れ、不条理なげぇむを前にしても、諦めず活路を開こうとする。

勢川 張太 (せがわ ちょうた)

高校3年生の男子。有栖良平(アリス)の親友。女好きの遊び人だが、その実、女性の手を握ったことすらない。アリスの能力のなさと家庭環境の悪さに共感し、友人となった。一見お気楽なお調子者だが、その態度は、「自分が笑っていれば、両親は喧嘩をすることがない」という想いから来ている。今際の国に来てからは、げぇむの中で力を発揮していくアリスと苅部大吉に対してコンプレックスを抱き、それを紫吹小織に指摘されている。

紫吹 小織 (しぶき さおり)

有栖良平が今際の国で初めて遭遇した女性。もとの世界ではOLをしていた。♣の3の会場でアリスたちと出会い、何もわからない彼らに、死の危険が伴うゲームに参加させられていることを告げる。協力して生き残ってからは、アリスたちとともに行動するようになり、今際の国についての情報を明かす。グループの中では最年長のため、気丈に振舞っているが、精神的には脆い。 同じく精神的な弱さを抱える勢川張太を誘惑し、肉体関係を結ぶ。

弾間 剛 (だんま たける)

ビーチにおける序列No.1の支配者の男性。もとの世界では歌舞伎町のホストだったが、亡き父親の店を受け継ぎ、商店街の人間から「帽子屋(ボーシヤ)」と呼ばれるようになった。粟国杜園(アグニ)とはもともと親友同士だが、ビーチの人間にはそれを隠している。アグニとともに今際の国に迷い込んだ後、人々に希望を持たせるためにビーチを作り、滞在者をまとめ上げるリーダーとなった。 弁舌に長け、ビーチ内ではリーダーというよりも、カルト教団の教祖のような扱いを受けている。

粟国 杜園 (あぐに もりぞの)

ビーチにおける序列No.2の男性で、武闘派のリーダー。弾間剛(ボーシヤ)とは親友同士。幼少期に父親から激しい暴力を受けており、復讐のために激しい肉体の鍛錬を始めた。しかし、父親は自分の知らない間に死亡しており、それ以来行き場を失った怒りを抱えるようになった。ボーシヤとともに今際の国に迷い込み、彼のビーチ建設を支援する。 素行の悪いメンバーをまとめ上げるリーダーとなり、わざとボーシヤと敵対してビーチの秩序の維持に尽力する。♥の10ではビーチのメンバーを皆殺しにしようとするが失敗、げぇむ終了後に行方不明になる。ねくすとすてぇじでは、自暴自棄の果てに死に場所を求めて♠のKに参加。戦って死ぬつもりであったが、堂道隼人と塀谷朱音とともに行動するなかで、その考えを変化させていく。

韮木 傑 (にらぎ すぐる)

ビーチにおける序列No.4。舌にピアスを付けた粗暴な男で、もとの世界ではゲームエンジニアをしていた。学生時代は気弱な性格で、激しいイジメを受けており、それゆえ他者への共感能力が欠落している。げぇむに対しては恐怖よりも楽しさが勝っており、高難度のげぇむにも怯まない。♥の10では苣屋駿太郎の火炎放射器で全身を焼かれて重傷を負うが、生き延びてねくすとすてぇじに参加。 ♣のKで有栖良平たちと共闘することとなる。

真昼 祐二 (まひる ゆうじ)

ビーチにおける序列No.5の男性。ビーチ結成当時からの幹部で、もとの世界ではITベンチャーの経営者をしていた。非常に聡明で器用であり、世間でいうところの成功は収めて来たが、常にどこか満たされない心を抱えて生きてきた。ビーチでも、持ち前の優秀さで、粟国杜園ら武闘派のメンバーを支援する。ビーチ崩壊後は今際の国の全貌を知るために単独行動し、東京の外が完全に文明の崩壊したジャングルであることを知る。

安梨 鶴奈 (あん りずな)

ビーチにおける序列No.6の女性。もとの世界では警視庁鑑識班の捜査官であった。知能系のげぇむを得意とする。♥の10では、手あたり次第に参加者を殺そうとする武闘派のメンバーに対して、科学と論理を用いて冷静にクリアすることを提案。有栖良平たちと協力する。

佐村 隆寅 (さむら たかとら)

ビーチにおける序列No.8の男性。もとの世界では無職。顔と左腕に入れ墨を彫ったスキンヘッドの男で、武闘派屈指の戦闘力を誇る。通称の由来は「ラスボスのような強さを持つ」ことから。もとの世界では、親とすら関わろうとしない引きこもり。己の力だけが頼りの今際の国を受け入れ、歓迎している。

水鶏 光 (くいな ひかり)

ビーチにおける序列No.13。もとの世界ではアパレル店員。見た目は女性だが、実はニューハーフ。もとの世界に病気の母親を残しており、なんとしても帰還しようと、苣屋駿太郎と協力関係を結ぶ。実家は拳法の道場であり、水鶏光は跡取り息子。自分の性に悩んで道場を継ぐことを放棄し、家を出た過去がある。そのため戦闘能力は高く、佐村隆寅との一騎打ちでは勝利を収めている。

井上 萌々香 (いのうえ ももか)

ビーチにおける序列No.35の少女。もとの世界では女子高生であった。今際の国にやって来た際、九条朝陽とともに偶然でぃいらぁに選ばれ、以後げぇむを運営する側に回る。げぇむを通して参加者を殺し、自分が生き延びることに耐えられなくなり、仕掛け人として♥の10の担当に立候補して自殺する。

九条 朝陽 (くじょう あさひ)

ビーチにおける序列No.37の少女。もとの世界では女子高生であった。今際の国にやって来た際、井上萌々香(モモカ)とともに偶然でぃいらぁに選ばれ、以後げぇむを運営する側に回る。モモカが自殺した後は、げぇむを最後まで見届けようとするが、武闘派の面々に殺されかけて逃亡。有栖良平(アリス)たちと行動をともにするようになる。 暴徒と化した粟国杜園に隙を作るため、でぃいらぁの存在をアリスに明かそうとし、レーザーで殺害される。

竜田 康大 (たつた こうだい)

ビーチにおける序列No.43の少年。もとの世界ではフリーターであった。お調子者のムードメーカー。ビーチ崩壊後沈んでいた面々を励ますため、高級車を修理して乗り回すパフォーマンスを演じる。その後、有栖良平(アリス)たちと♣のKに参加するが、「じんち」を守り切れずに逆転を許してしまう。敗北寸前の状況で、アリスから告げられた感謝の言葉に号泣。 自らの腕の切断を決意し、勝利への道を作る。

桐生 元気 (きりう げんき)

♥のJの参加者。粗暴な男性で、もとの世界ではプロレスラーであった。げぇむ開始直後から、気弱な瀬戸秋文(セト)に目を付け、暴力で支配して自分のマークを教えさせる。3ターン目に意を決したセトから攻撃され、逆上して彼を殺害。禁止事項に触れたため、ゲームオーバーとなる。

瀬戸 秋文 (せと あきふみ)

♥のJの参加者。気弱な青年で、もとの世界でも頻繁にカツアゲにあっており、「ATM君」と呼ばれていた。げぇむ開始直後から桐生元気(ゲンキ)に目を付けられ、暴力でマークを教えるよう強要される。2ターン目の最中に、磐田素那斗からゲンキに立ち向かうよう唆されて彼を攻撃。逆上した彼に撲殺された。

相全 雅喜 (あいぜん まさき)

♥のJの参加者。もとの世界では高級車のセールスマンの男性。弁舌と、相手の心理を読みとる能力に長け、「相手が今一番欲しい言葉」を的確に言ってのける。セールスマン時代の成績は常にトップクラス。げぇむ序盤では能力を遺憾なく発揮し、戦況を有利に運ぶ。だが疑心暗鬼が深まるにつれて、八方美人で特定のパートナーを作っていなかったことが災いし、ゲームオーバーとなる。

松下 苑治 (まつした えんじ)

♥のJ参加者であり、主催者である「♥のJ」を名乗る人物の正体。もとの世界では催眠療法士であった男性。他人を支配することに取り憑かれた「支配中毒者」であり、その欲求を満たすために、げぇむを主催している。序盤で磐田素那斗(バンダ)に自分を支配させることで安全を確保し、終盤で志賀琴子を利用して全員を出し抜く算段であった。 しかし、バンダと矢場旺希が裏で繋がっていたことに気づかず、すべてを見抜かれて敗北した。

磐田 素那斗 (ばんだ すなと)

♥のJの参加者。もとの世界では女性4人を殺害した死刑囚の男性。専門家顔負けの心理学の知識を持ち、序盤から松下苑治(エンジ)を支配下に置いて(実際はエンジによる逆支配であった)げぇむを有利に進める。日常的に人が死に、恐怖と絶望に満ち溢れた今際の国を、「これほどまでに美しい世界を見たことがない」と表現し、今際の国の国民になることを望む。 終盤では秘密裏に矢場旺希と協力し、エンジを出し抜くことに成功する。

矢場 旺希 (やば おうき)

♥のJの参加者。もとの世界では投資ファンドの社長の男性。自信に満ち溢れており、序盤で精神的弱者の志賀琴子を肉体的・精神的支配下に置き、げぇむを有利に進める。もとの世界では富や権力、名声といった人の羨むものは、すべて手に入れてきた。しかし、まったく満足しておらず、今際の国の支配者として君臨することを画策する。 その計画に共感した磐田素那斗と秘密裏に協力し、松下苑治を出し抜くことに成功する。

志賀 琴子 (しが ことこ)

♥のJの参加者。もとの世界ではOLであった。精神的に弱い女性で、げぇむ開始前から矢場旺希(ヤバ)に肉体関係を迫られ、流されるままに支配されるようになる。その後、死者が出ると更に精神の弱さは加速し、ヤバのことを「ヤバ様」と慕うようになる。

久間 欣治 (きゅうま ぎんじ)

ねくすとすてぇじで♣のKを担当する青年。もとの世界ではミュージシャンであった。底抜けに明るく飄々とした性格で、命がけのげぇむを楽しんでいる。仲間割れをして悩む有栖良平(アリス)にアドバイスをするなど、フェアな勝負をするためなら敵に塩を送ることも厭わない。

九頭竜 慧一 (くずりゅう けいいち)

ねくすとすてぇじで♦のKを担当する青年。もとの世界では国際弁護士であった。ビーチのメンバーでもあったが、それはぷれいやぁを監視するための隠れ蓑であった。かつては命の価値は平等で、法はそれを護るために存在していると信じていた。しかし、アメリカの大企業の弁護団体に所属した経験により、貧しい命は淘汰され、法は強者が弱者を支配するシステムであったことを痛感する。

稚羅日 勲 (しいらび いさお)

ねくすとすてぇじで♠のKを担当する壮年の男性。もとの世界ではプロの傭兵であった。ぷれいやぁの殺害を、苦しみに満ち溢れた今際の国から彼らを救済することだと考えている。もとの世界で傭兵として赴いた戦場で、致命傷を負った戦友から自分を殺すように頼まれ、救済だと思い込みながら彼を殺害した経験がある。

集団・組織

ビーチ

弾間剛(ボーシヤ)が作った集団。名前の由来は、根城にしているホテル「リゾートホテル多摩パシフィックビーチ」から。荒廃した今際の国に残された数少ない電気やガスを独占し、贅沢な生活を送っている。ボーシヤいわく「理想の桃源郷(ユートピア)」。メンバーを割り振ってチームを作り、げぇむでの生存率を飛躍的に高めている。 メンバーには序列があり、得られる特権に差異がある。メンバーの最終的な目的は、トランプをすべて集めて、今際の国を脱出することであった。ところが、のちにそれは皆に希望を持たせるためにボーシヤがついた嘘であり、トランプを集めても脱出は叶わないことが判明する。

場所

今際の国 (いまわのくに)

有栖良平たちが迷い込んでしまった現実とは異なる世界。建造物などは現代の日本と同じだが、荒廃し風化しているものも多く、アリスたちのいた時代からは途方もない年月が経過していることが推察される。コンビニやスーパーもそのまま残っており、缶詰などはまだ食べられるものもある。街灯などはほとんど点いていないが、げぇむの会場には明かりが灯っており、滞在者を見つけやすくなっている。 げぇむの会場は東京23区内にのみ存在している。東京から離れるにつれて文明の荒廃が進み、県境はほとんどジャングルに覆いつくされている。

イベント・出来事

♣の3

有栖良平たちが今際の国で初めて参加したげぇむ。神社が舞台であり、内容は「おみくじ」。参加者一人一人が、問題の書いてあるおみくじを引き、口頭でそれに回答する。答えはすべて数字であり、誤答すると、正解との差分だけ、誤答者に向けて上空から火矢が放たれる。参加者全員がおみくじを引いた時点で、生き残った者がクリアとなる。

♠の5

有栖良平、苅部大吉、宇佐木柚葉、苣屋駿太郎が参加したげぇむ。舞台はマンションで、内容は「おにごっこ」。参加者はサブマシンガンを持った「おに」から逃げ回りながら、マンション内に1つだけある鍵のかかっていない部屋を探し出す。その部屋がおにの「じんち」であり、そこに触れることができればクリア。「じんち」は部屋の中に2つあり、複数人で辿り着かなければクリアできない仕様となっている。 マンションの周辺には大量の地雷が設置してあり、逃げ出すことは不可能となっている。

♥の2

紫吹小織が初めて参加したげぇむ。環状線を走行する電車内が舞台。5両編成の電車の最後尾からスタートし、先頭の車両まで生きて移動できればクリアとなる。スタート地点から先の4両のうち1両にのみ猛毒のガスが充満しており、一度ドアを開けると次の車両へのドアは5分間開かない。参加者には呼吸器とそれにセットする3つの酸素ボンベが与えられ、ボンベをセットすると5分間だけ酸素を摂取することができる。 つまり、クリアするためには、毒ガスが充満している車両を見抜いて、ボンベを使用しなければならない。

♥の7

有栖良平たちが参加したげぇむ。舞台は植物園で、内容は「かくれんぼ」。参加者は1人が「おおかみ」、それ以外の3人が「ひつじ」に分けられる。参加者は全員首輪とゴーグルを装着し、おおかみがひつじを視認すると、ゴーグルのセンサーが反応して、おおかみとひつじの立場が入れ替わる。制限時間10分が経過した時点で、おおかみだった1人がクリアとなり、残りの3人は首輪が爆発して死亡する。 でぃいらぁからは、「4人のうち誰か1人は生き残る、大変良心的なげぇむです」というアナウンスがされている。

♦の4

安梨鶴奈とその仲間たちが参加したげぇむ。大量の水が流れ込む密室で行われる。部屋の中には電球が1つあり、扉を挟んだもう1つの部屋には3つのスイッチがある。扉を閉めた状態では何度でもスイッチを押せるが、扉が開いた状態で押せるのは一度だけ。両方の部屋に人がいる場合や、スイッチを入れた状態での扉の解放は不可能。この条件で正しいスイッチを押して電球を点灯させることができればクリアとなり、間違えた場合は水に高圧電流が流れて全員死亡となる。

♥の10

ビーチのメンバー全員が参加したげぇむ。舞台はビーチそのもので、内容は「まじょがり」。ビーチのメンバーの1人を殺害した犯人である「まじょ」を探し出し、野外に設置されたキャンプファイヤーで焼き殺すことができればクリアとなる。まじょはビーチのメンバーに紛れ込んでおり、女性とは限らない。

♥の4

堂道隼人が初めて参加したげぇむ。舞台は高層ビルで、内容は「あんけぇと」。参加者は1人ずつビルの屋上から吊るされた清掃用リフトに乗り、リフトが10階まで降りたところからゲームスタート。「〇〇100人に聞きました」というアンケート形式の二択の問題が出される。参加者はその問題の内容について、多数派が多いか少数派が多いかを選択する。 正解すればリフトは上昇し、不正解なら下降する。20階まで到達すればクリアとなり、逆に1階まで落ちれば落下し、ゲームオーバーとなる。

♣の4

山根魁翔が初めて参加したげぇむ。舞台はトンネルで、内容は「らんなうぇい」。入口が塞がれたトンネルの中で、時間が経過するとともに、参加者には4つの「しれん」が襲いかかる。それに耐え、ゴールに辿り着くことができればゲームクリアとなる。しれんの内容は事前には知らされず、げぇむが進むと判明していく。

♦の6

苣屋駿太郎が今際の国にやって来て初めて参加したげぇむ。内容は「ぶらっくじゃっく」。参加者は5人で、1時間の制限時間で、最後の1人になるまで勝ち残ればクリアとなる。ルールは一般的なブラックジャックと同じだが、参加者は軒並みイカサマの手練れであり、一筋縄ではいかないものとなっている。

♣のK

ねくすとすてぇじで有栖良平たちが初めて挑んだげぇむ。内容は「すうとり」。5対5のチーム戦で、2時間の制限時間内に互いの点数を取り合い、最終的に点数の多いチームが勝利となる。両チームの最初の持ち点は1000で、メンバーの5人に任意に振り分けることができる。点数を増やす方法は「ばとる」「あいてむ」「じんち」の3つ。 1つ目の「ばとる」は、プレイヤーが相手チームの人間に触れることで発生し、持ち点が多かったプレイヤーの勝利となる。勝利したプレイヤーは、相手から500点を奪うことができる。2つ目の「あいてむ」は、会場内に隠されたアイテムを手に入れて点数を増やす方法を指す。3つ目の「じんち」は、互いのチームに設定された陣地のことを指す。 相手の陣地に触れることができれば10000点を獲得できるが、陣地を護っている相手プレイヤーと「ばとる」が発生した場合は必ず敗北し、マイナス10000点となってしまう。点数がゼロを下回ったプレイヤーは、レーザーによって殺害される。

♥のJ

ねくすとすてぇじで行われたげぇむ。内容は「どくぼう」。参加者は全員首輪を装着する。会場は刑務所のような作りになっており、参加者の人数分の独房が用意してある。独房は1時間ごとに5分だけ開き、参加者は自分の首輪の後ろに現れたトランプのマークを、その中で当てればクリアとなり、間違えると首輪が爆発してゲームオーバーとなる。 参加者の中には、このげぇむの仕掛け人である「♥のJ」を名乗る人物が紛れ込んでおり、その人物をゲームオーバーにさせることができれば、ぷれいやぁ側の勝利となる。首輪に浮かび上がるマークは自分では知ることができず、他人から教えてもらう他に方法はない。げぇむ中は「1つの独房に2人以上が入ること」「他者の独房への入室を妨害すること」「他者を自力で解答できない状態にすること」の3つが禁止行為とされており、破ると即時ゲームオーバーとなる。

♠のK

ねくすとすてぇじで行われたげぇむ。内容は「さばいばる」。ぷれいやぁ全員が殺される前に、稚羅日勲(シーラビ)を殺すことができればクリアとなる。特定の会場は指定されておらず、他のげぇむ会場を除くすべての場所が会場となっている。そのため、他のげぇむに参加していない状態だと、このげぇむに参加している状態になる。 シーラビは飛行船に乗って移動しており、また数々のトラップをも駆使するため、難易度は非常に高い。

♦のK

ねくすとすてぇじで行われたげぇむ。内容は「びじんとうひょう」。行動経済学における有名な実験「美人投票ゲーム」をモデルにしている。参加者は制限時間1分以内に、1から100の好きな数字を選ぶ。次に全員が選んだ数字の平均値を算出し、その値を0.8倍したものに最も近い数字を選んだ参加者が勝利し、勝者以外の参加者は1ポイント減点される。 減点が10に達した時点で、その参加者はゲームオーバーとなり、極めて高い濃度の酸をかけられて死亡する。これを1回戦とし、最後の1人になった参加者がクリアとなる。

その他キーワード

ぷれいやぁ

今際の国に迷い込み、げぇむに挑戦する者たちの総称。今際の国に来た時点でびざが発行され、その期限が切れると、上空からレーザーを照射されて死亡する。そのため、生き延びるためには、げぇむをクリアしてびざの発行を受け続けなくてはならない。

でぃいらぁ

げぇむに挑むのではなく、運営する側に回った人間たちの総称。ぷれいやぁと同じく今際の国に迷い込んできた。人数はぷれいやぁよりも少ない。ぷれいやぁが入ることのできないシェルターのような施設で、今際の国全体のモニタリングをしているぷれいやぁと同じく、期限が切れたら殺されてしまうびざを持つ。しかし、こちらは担当するげぇむで殺したぷれいやぁの人数分期間が延びる仕組みになっている。 担当するげぇむの難易度はランダムに割り当てられ、ぷれいやぁが生き残れば、担当のでぃいらぁは問答無用で殺害される。また、でぃいらぁの存在をぷれいやぁに明かそうとすると、脳天をレーザーで貫かれて殺害される。

今際の国の国民 (いまわのくにのこくみん)

ねくすとすてぇじのげぇむを司る者たちの総称。その正体は、かつてねくすとすてぇじまでのすべてのげぇむをクリアした後に、もとの世界に帰ることを選択せず、今際の国に留まって、永遠にげぇむを続けることを選んだぷれいやぁである。

げぇむ

今際の国で毎晩日没後に行われている命がけのゲーム。内容は始まるまでわからず、種類と難易度はすべてトランプで表されている。「♠」は肉体型、「♦」は知能型、「♣」はチームワークが問われるバランス型、「♥」は心理戦型のげぇむであることを意味している。数字は1から13までが存在し、大きいほど難易度が高い。げぇむをクリアすると、その数字分のびざが発行され、同じマークと数字のトランプが手に入る。 例えば、「♠の5」のげぇむをクリアした場合、5日分のびざと、♠の5のトランプが手に入る。

びざ

げぇむをクリアすると発行される紙。持ち主のぷれいやぁの名前と滞在期間が書かれており、その期間を過ぎてしまったぷれいやぁは、上空からレーザーを照射され殺害される。期間を延ばすには、げぇむをクリアして新たなびざの発行を受けるしかない。ちなみに発行されたびざの日付は、7月をループしている。

ふぁあすとすてぇじ

今際の国における序盤の戦い。ぷれいやぁとでぃいらぁが生き残りをかけて争う。この段階で開催されるげぇむの難易度は1~10のものに限定され、でぃいらぁの存在も明かされない。4種類10難易度のすべてのげぇむがクリアされた時点で、ねくすとすてぇじへと移行する。

ねくすとすてぇじ

ふぁあすとすてぇじがすべてクリアされ、でぃいらぁが全滅した後の段階。23区内全域に「絵札」のげぇむの会場が設置される。各げぇむを取り仕切るのは、でぃいらぁでもぷれいやぁでもなく、もともとそこにいた今際の国の国民である。ぷれいやぁ達は任意のげぇむに挑むことができるが、♠のKの会場は、それ以外のげぇむの会場を除いた23区内全域であるため、げぇむへの参加を放棄することはできない。

続編

今際の国のアリス RETRY (いまわのくにのありす りとらい)

麻生羽呂の代表作の一つ『今際の国のアリス』の続編。文明が荒廃した「今際の国」と呼ばれる世界が舞台。大人になった有栖良平(アリス)は、ある日ヒト以外の生命に溢れた渋谷で目を覚ます。そこは、8年前にアリス... 関連ページ:今際の国のアリス RETRY

関連

今際の路のアリス (いまわのみちのありす)

『今際の国のアリス』のスピンオフ作品。原作はシリーズ本編の作者である麻生羽呂。文明が荒廃した「今際の国」と呼ばれる世界が舞台。ある日突然、廃墟と化した京都で目覚めた女子高生・小島亜里朱(アリス)と佐野... 関連ページ:今際の路のアリス

書誌情報

今際の国のアリス 18巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉

第1巻

(2011-04-18発行、 978-4091228192)

第2巻

(2011-09-16発行、 978-4091232694)

第3巻

(2012-01-18発行、 978-4091234445)

第4巻

(2012-07-18発行、 978-4091237798)

第5巻

(2012-10-18発行、 978-4091238979)

第6巻

(2013-01-18発行、 978-4091241719)

第7巻

(2013-05-17発行、 978-4091243041)

第8巻

(2013-08-16発行、 978-4091243638)

第9巻

(2013-12-18発行、 978-4091245144)

第10巻

(2014-03-18発行、 978-4091245809)

第11巻

(2014-06-18発行、 978-4091246677)

第12巻

(2014-10-17発行、 978-4091253088)

第13巻

(2014-12-18発行、 978-4091254160)

第14巻

(2015-02-18発行、 978-4091255600)

第15巻

(2015-05-18発行、 978-4091258373)

第16巻

(2015-09-18発行、 978-4091262066)

第17巻

(2016-01-18発行、 978-4091266989)

第18巻

(2016-04-18発行、 978-4091270979)

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