伝染るんです。

伝染るんです。

奇妙な登場人物が日常生活の中で地味に奇妙な言動をして、周囲の人物や読者を不安にさせる、不条理4コマギャグ漫画。1991年に第37回文藝春秋漫画賞を受賞。

正式名称
伝染るんです。
ふりがな
うつるんです
作者
ジャンル
その他ギャグ・コメディ
レーベル
コミック文庫(青年)(小学館)
巻数
既刊5巻
関連商品
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概要・あらすじ

かわうそかっぱかえるなど、様々な登場キャラクターの不条理なやりとりが繰り広げられる4コマ漫画。基本的には、一話完結で構成されている。

全体的にシュールかつナンセンスなギャグが満載で、単行本版では一見、落丁や製本ミスに見えるよう、わざと構成された本の作りがそれをさらに強調している。

登場人物・キャラクター

かわうそ

太った男性が茶色の着ぐるみを着たような、2足で立つ謎の生き物。人語を話し、自分をかわうそと称する。友達にかっぱ、かえるなどがおり、男子中学生を嫌うが、近所の老人達には慕われている。ハワイやビフテキによく知らないまま憧れを抱いており、ハワイに行ったことがあるかっぱには嫉妬を隠さない。 おおむね「かわうそ君」「かわうそさん」と呼ばれるが、近所の知り合い以外には「動物」と呼ばれる事が多い。

かっぱ

かわうその友達だが、かわうその不可解な言動によく振り回される。特に「ハワイに行ったことがある」、「若者の友達が多い」、「ボインの姉がいる」という点がかわうそから強く妬まれている。父親が「紫色のぬらぬらした大男の小役人」だと、なぜかかわうそに思い込まれている。

かえる

かわうそやかっぱの友達の、2足で歩き人語を話すカエル。ハワイに行ったことがありかわうそに妬まれるが、かっぱほどには被害を受けない要領のよさを持つ。幼少期からのアルバムを持っているがおたまじゃくしの姿の写真がなく、それをかっぱに指摘されると照れて誤魔化そうとする。 容姿に似合わず元暴走族のヘッドであり、煙草も嗜む。

しんちゃん

かえるの従兄弟で、おしゃぶりを咥えオムツをつけたカエルの赤ん坊。初登場は生まれた日の翌日で、既にカエルだった。かえると同様、おたまじゃくしについて聞かれると赤ちゃん言葉で誤魔化す。カエルでありながら成長して乳歯が生えたが、かえるやしんちゃんのパパにも丈夫な歯があり、かっぱ以外には特に問題視されていない。

しんちゃんのパパ

しんちゃんの父でかえるのおじ。カールした鼻ひげを生やしている。「無精髭」という店を経営しており、自分の毛深さをかっぱに味わわせようと、あえてムダ毛処理せずかっぱの来店を心待ちにしている。店で自ら蛇踊りのイベントを始め、しんちゃんに心配されている。

下の人 (したのひと)

かわうそを肩車してその上に服を着ている、覆面の男。背が伸びたと周囲に思わせるため、かわうそが雇ったと思われる。周囲の人が彼を気づかうと、かわうそが「下の人などいないっ!」と抗議する。さらに彼ごと肩車する「下の下の人」、かわうそに肩車される「上の人」などのバリエーションもある。

くま

身長数十センチほどの、シルエットが熊に似た小さな生き物。胸の月の輪以外真っ黒で目や口も見えず、言葉も発しないため何を考えているか分からない。山で遭遇した伊藤の周辺にしばしば現れ、意味不明だがおおむね親切な行為をしてゆく。かわうそとも知り合いだが、かわうその奇行に困らされる事が多い。

天狗 (てんぐ)

身長数十センチの小さな天狗。かわうそやくまの知り合いらしく、かわうそに黙ってハワイに行ったことを自ら告白し、どんな罰でも受けると潔く告げる。その後、地味ないやがらせを受けた。

たけひろ

頭と両手、両手首に包帯を巻き、他は常に裸の少年。町や学校でも裸でいる。小学4年生で姓は不明だが、作文の名前欄には最初の字「吉」が書かれていた。しばしばコマの外に「オール5」と書かれており、キャラクターグッズ等でオール5が呼称とされる場合もある。父からしばしば秘密を伝授されるが、それを担任の先生に告げようとして、秘かに監視していた父から弓で射られてしまう。

(きず)

頭と即頭部を包帯で覆った、学生服の少年。近くの人を不安にさせるような言葉を小声でつぶやく。頭の包帯にはおおむね血がにじみ、顔が青ざめている。さらに、バスで「幼い頃、心に深い傷を負った方の優先席」に座っていたことから、幼い頃心に深い傷を負ったと思われる。街中でイチャイチャするカップルを嫌悪している。

モテモテ

『伝染るんです。』で存在が語られた、ニューギニアの奇獣。背中の皮が伸びて袋状になったものの中で暮らす、体長2cmから72cmの生物。フクロイヌ科。この生き物を知らない会社員が課長を「女性にもてる」の意味で「もてもて」と言ったため、激怒された。似た存在に「妖怪アルジ」、「あきらめ猿」などがいる。

伊藤 (いとう)

角刈りの大学生。山でくまと遭遇して死んだふりをしたが、くまにリュックの中を探られる。以後、くまが身近に現れるようになり、意味不明だがおおむね親切なことをされる。くまの影に怯える伊藤だが、少しすつくまが気になり始める。

こけし

頭にこけしを乗せた、概ね半裸の少年。腹から下には経文や絵が赤く書きこまれている。しばしば暗い表情で、周囲の人を不安にさせるような事をつぶやく。道で話しかけてきた人などに「もっとお母さんみたいに聞いてくれ」などと注文をつけることがある。ひったくり事件に遭遇した時は赤マスクとマントをつけた風雲こんにちは丸に変身したが、ひったくりに「こんにちは」と挨拶するだけだった。

(まる)

『伝染るんです。』に登場する生物。球状の肉の塊に口が生えたかのような生き物で、川に棲んでいる。直径は1m近く。大人二人が川に入って抱えるように捕え、焚き火で焼いて食べる「丸焼き」はキャンプの醍醐味とされている。「キューンキューン」と鳴く。

しいたけ

笠に目があり、手足が生えていて2足歩行する椎茸。常に赤いマフラーを巻いている。おいしく食べられることを望んでおり、椎茸を嫌ったり軽く見たりする人間を激しく憎み、時には殴る。肉に対しては対抗意識を燃やしながらも、自分が肉になれるよう特訓をするなど、憧れにも似た感情を抱いている。 なぜか発言はフキダシと活字ではなく、手書き風の文字が浮かぶ。

すずめ

三角帽子をかぶって虚ろな目をした、鳥のような2匹の生き物。通行人の好みや未来を勝手に決めつけて、嘲笑するかのように語り合い、しばしば通行人を怒らせる。体が黒いだけで同じことをするカラスもいるが、すずめの変装と思われる。

山崎先生 (やまざきせんせい)

白い円筒形の体、赤い縞模様の腕、尖った鼻と口、整った目と眉、赤い爪、といった、何の動物かもわからない謎の中学教師。生徒たちも彼の正体を疑問に思い質問するが、いつも軽く聞き流されている。担当教科は英語で生徒思いの良い教師と評判だが、奇行や非人間的な能力をしばしば発揮し、周囲を困惑させる。

斎藤 (さいとう)

とある家庭の庭の木の洞に、5円の家賃で住んでいるオスのかぶと虫。浪人生だったが、後に大学生になる。調子に乗りやすいが打たれ弱い性格で、しばしばショックを受けて泣きながら飛び去っていく。人間のセクシータレントやAV女優を好み、大学にも好きな異性がいる。

「さて久しぶりに」の先生 (さてひさしぶりにのせんせい)

職業などは不明だが、周囲の人々から「先生」と呼ばれ、尊敬を集めている老紳士。「さて久しぶりに弱音を吐くかな」と楽しげに言ってから身を震わせて「もう……終わりだ……」と重々しくつぶやくなど、マッチポンプ的な行動に楽しみを見出していると思われる。また、「犬ひも」という遊びを独自に考案したが、傍から見るとそれは飼い犬の散歩にしか見えない。

星野ミッチィ (ほしのみっちぃ)

可憐な中学2年生の少女だが、世界征服や人々が蟻のように働く世の中を夢見て、その野心をポエムに綴っている。ポエムには「星野ミッチィ」と署名しており、先生に名字を呼ばれたため、「星野」までは本名と思われる。世界征服以外では、友人のトオルにまつわる事が多い。世界征服などの大望は一向に叶わないが、トオルに関するどうでもいい願いはよく叶う。

トオル

クラスメイトのミッチーに好意を抱く、中学2年生の素直な少年。父は医者。スマートな体型で、長い四肢をくねらせながらミッチーと会話する。ミッチーの不可解な言動や、ミッチーから寄せられる謎の期待にしばしば困惑させられる。

ペドロ

トオルにユニークな友達ができるように、とミッチーが願った6日後に現れた、中近東風の少年。ミッチーの願いが作用し易いらしく、願いのままにトオルと仲違いして仲直りし、ゲイリー富田や猫と謎の集会を開き、ミッチーをいじめようとした。

シークレット奥さん (しーくれっとおくさん)

一見では普通の家庭の主婦だが、シークレットシューズのような「装着することで誰にも気づかれず見た目を補整するもの」を好み、周囲の人々に勝手に装着させて、その変化を陰から眺めてほくそ笑むことを趣味としている。明言はされていないが、斎藤の下宿先の大家とよく似ており、同一人物と思われる。

王様 (おうさま)

トランプのキングの図柄のような容姿と服装の、太った男性。日本の庶民的な家屋でお妃様、お姫様と共に庶民的に暮らしているが、周囲の人々は皆彼を「王様」と呼んで敬意を示している。まれに庶民が無礼をはたらく事もあるが、その際は王様により錫杖で殴打される。お姫様への躾は厳しい。

機長 (きちょう)

大型旅客機の機長。乗客に機内放送で笑い声を聞かせ続ける、機体の外壁を這い回り外から乗客を覗き込む、機内放送で「あ」と言ったあと押し黙る、「ばか」と小声でつぶやかれて逆上し機体を1回転させる、といった行為で、乗客をたびたび不安に陥れる。

源さん (げんさん)

こけしが行きつけの寿司屋で働く、若い寿司職人。布団に酢のにおいがつき、うなされていても酢飯を握れば落ち着くほど、寿司に取り組んでいる。好きな言葉は「まぐろ」。だが小さい頃の夢は歌手になることだった。

吉本 (よしもと)

とある会社の社長秘書。社長室へ勝手に動物(かわうそ)を招き入れるが、動物の珍しい行動を目撃するのはいつも社長の方で、いつも悔しがっている。社長が動物と仲良くなるにつれ一層嫉妬し、動物の耳をなくしたり、巨大化させたりした。

総一郎 (そういちろう)

『伝染るんです。』と同時期にビッグコミックスピリッツで連載していた漫画『F』(六田登)の登場人物赤木総一郎とよく似ている。かわうそと親しいらしく、自分の近況を写した絵葉書を送ってきた。その絵葉書はかわうそを感動させたが、次の手紙は叔父への激しい憎しみに満ちたもので、その晩かわうそはうなされた。

ゲイリー 富田 (げいりー とみた)

『伝染るんです。』の登場人物。トオルが立派な郵便局員になることを願ったミッチーにより、ポルトガルから呼ばれた中年男性。トオルの才能に期待し、立派な郵便局員になるための特訓を強いる。だがトオルの肘に骨折の痕があることを知り、郵便局員への道を断念する。このゲイリーとミッチーの期待と特訓の意図を、トオルは最後まで気づかなかった。

その他キーワード

タニス

『伝染るんです。』で存在が語られる架空のスポーツ。競技者がひざに四角いラケットをくくり、ふたご球というボールを打ち合うもの。たけひろの父はその世界選手権者と思われ、たけひろもタニスの世界チャンピオンを志望していた。だがその夢を担任の先生に語ろうとした時、たけひろは、息子に自分と同じ苦しみを味わわせまいとする父に弓で射られてしまう。 同様の経緯で「フルゴン」という遊びや、建物の「定礎」が語られかけた。

書誌情報

伝染るんです。 5巻 小学館〈コミック文庫(青年)〉

第1巻

(1998-11-17発行、 978-4091923417)

第2巻

(1999-01-16発行、 978-4091923424)

第3巻

(1999-03-16発行、 978-4091923431)

第4巻

(1999-05-15発行、 978-4091923448)

第5巻

(1999-07-16発行、 978-4091923455)

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