信長

信長

織田信長の生涯を史実に沿って辿る歴史マンガ。信長を天才的な発想力を持つ稀代の革命児としつつ、情け深さもあわせ持つ人間的な人物として描いている。原作は工藤かずや。

正式名称
信長
ふりがな
のぶなが
原作者
工藤 かずや
作画
ジャンル
自伝・伝記
レーベル
KADOKAWA
巻数
既刊7巻
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概要・あらすじ

永禄3年(1560年)5月19日、今川義元率いる4万5千の軍勢が織田信長の居城である清洲に迫っていた。密かに義元の本陣の場所を探らせていた信長は今川家の間者を成敗すると、わずかな手勢を率いて出陣。雷雨にまぎれて義元が野営する桶狭間を目指す。それは信長という男が歴史の表舞台に躍り出た瞬間であった。「うつけ」と呼ばれていた若き頃から天下を視野に入れていた信長は、桶狭間での勝利を機に天下布武に向けて本格的に動き出す。

登場人物・キャラクター

織田 信長 (おだ のぶなが)

尾張を領する織田家の当主。桶狭間の戦いで今川義元の大軍を撃破したのを機に天下取りに向かって邁進することになる。若い頃より奇矯な振る舞いが多く「うつけ」とあなどられていたが、実は天才的な発想力の持ち主で、いち早く鉄砲の威力に着目。京や堺とも繋がりを持つなど尾張統一以前から天下を睨んだ布石を打っていた。果断かつ苛烈で目的のためなら非情になることをいとわない魔王のごとき人物だが、実は情け深く肉親への情も人一倍熱い。 実在の人物、織田信長がモデル。

木下 藤吉郎 (きのした とうきちろう)

織田信長の家臣で、猿に似た面構えをしていることから信長には「猿」と呼ばれている。乱破(「らっぱ」と読む、忍者のこと)上がりの足軽だったが、軽輩の身でありながら美濃の戸沼城攻めを信長に志願。奇計を用いてわずか1日で一兵も使わずに城を陥とし、信長に一目置かれる存在になった。その後も美濃墨俣砦の築城や浅井、朝倉攻めなど数々の合戦で活躍。 明智光秀と並ぶ織田家屈指の武将となる。信長の妹である市を密かに慕っている。実在の人物、豊臣秀吉がモデル。

明智 光秀 (あけち みつひで)

斎藤道三の甥で濃の従兄。朝倉義景の食客となっていたが、織田信長に足利義昭への助力を乞うべく美濃に赴いた際、信長に能力を見込まれて織田家の家臣となった。智勇兼備の将で織田家中において羽柴秀吉(木下藤吉郎)と並び立つ存在になるが、やや情に脆く極力犠牲を避けようとする一面がある。そうした気性が「新しきものは血と灰塵の中からしか生まれない」とする信長との間に齟齬を生み、やがて主君への不信を募らせていくことになる。 実在の人物、明智光秀がモデル。

徳川 家康 (とくがわ いえやす)

元今川家の配下で三河の領主。かつて織田家の人質だったことがあり、その時に「うつけ」と呼ばれていた若き日の織田信長に会っている。桶狭間の戦いで今川義元が敗死した際、信長を試すべく義元の首を今川方の武将へと返すよう進言。信長がその忠告を受け入れて今川の軍勢を駿河に引き返させたのを見て、彼が幼き日に感じた天才のままであることを悟り、今川から独立した後、織田家と同盟を結ぶ決意をする。 実在の人物、徳川家康がモデル。

柴田 勝家 (しばた かついえ)

織田信長に仕える古参の宿将。勇猛果敢な武将だが直情的で信長の行動の真意を読むことができず、自身とは真逆の知将タイプである木下藤吉郎にたしなめられることが多い。色事には無縁の朴念仁に見えるが、実は信長の妹の市のことを密かに慕っている。実在の人物、柴田勝家がモデル。

(いち)

織田信長の妹。かねてから北近江領主の浅井長政のことを慕っており、政略結婚ではなく自身の意思で長政のもとに嫁ぐと兄の信長に表明。供の者を2人だけ連れて美濃から小谷までの最短路を踏破してみせた。小谷城が織田軍に包囲された際、長政に信長への投降を願うが夫の覚悟を知り説得を断念。浅井家と運命をともにするべく死装束をまとうが、長政によって子供たちと一緒に城の外へと出された。 実在の人物、お市の方がモデル。

浅井 長政 (あざい ながまさ)

北近江四郡を治める小谷城城主。織田信長の実妹である市に才能と人格を見込まれ、彼女を娶り織田家と同盟を結ぶ。三好三人衆が信長不在の京を攻めた際にはいち早く軍勢を率いて駆けつけるなど、信長と義兄弟を超えた強い絆で結ばれていたが、朝倉義景との連携を主張する父親の浅井久政に抗しきれず織田家から離反。 やむなく信長の敵に回ったが、心中では義兄と慕い続けていた。実在の人物、浅井長政がモデル。

織田 信忠 (おだ のぶただ)

織田信長の嫡男。父親の名代を任されるようになるが、美濃の大台城攻めにおいて無理な突撃を仕掛けて大敗。切腹して責任を取ろうとするが、信長に諫められ思い留まった。その際、信長より織田家の家督を相続。武田攻めの先鋒大将を務めるなど、以降は信長の片腕として活躍する。実在の人物、織田信忠がモデル。

(のう)

織田信長の正室で、父親は「まむし殿」と称された美濃の斎藤道三。織田家に嫁ぐ際に道三より懐剣を託され、命令があればすぐに信長を殺害するよう言い含められていた。だが、道三が息子の斎藤義龍に討たれたため、父の夢であった天下取りの野望を信長に託す。実在の人物、濃姫がモデル。

蜂須賀 小六 (はちすか ころく)

元乱波(「らっぱ」と読む、忍者のこと)で、野武士集団「蜂須賀党」の頭領。木下藤吉郎とは乱波時代からの旧知で、織田信長より美濃墨俣への築城を命じられた藤吉郎に協力。稲葉一鉄ら斎藤勢の猛攻をしのぎ切り、藤吉郎の成功に一役買った。藤吉郎の才能に全幅の信頼を置いており、以降も彼の副将としてともに戦う。実在の人物、蜂須賀正勝がモデル。

平手 政秀 (ひらて まさひで)

織田信長の守り役を務めていた織田家の老臣。将来、美濃の斎藤道三が信長の天下取りの障害になると予測し、まだ若い信長では道三と渡り合うことはできないと判断。信長が成長する時間を稼ぐため、信長と濃の婚姻による和平を推進した。その後、信長を見限ったという名目で切腹するが、これも将来の美濃攻めのための布石であり、自身の死を口実に家中の者を斎藤家へ潜り込ませていた。 実在の人物、平手政秀がモデル。

織田 信行 (おだ のぶゆき)

織田信長の実弟。織田を率いるのは自分であるという自負から、5回にわたって兄である信長に反旗を翻すがことごとく敗北。信長の真の力を知ってその力量を認めるに至り、母親である土田御前の取りなしもあって許されていた。だが、実弟である自分を殺害するだけの気概がなければ織田家の盟主は務まらないと考え、信長にその覚悟があるのか試すべく、自身を暗殺せんとする兄の策謀にあえて乗る。 実在の人物、織田信行がモデル。

斎藤 道三 (さいとう どうさん)

美濃の領主で濃の父親。「まむし殿」と呼ばれる梟雄で、織田信長の守り役である平手政秀の進言を受け入れて娘の濃を信長に嫁がせるが、娘には自分からの下知があれば信長を討つよう言い含めていた。天下を狙える器量の持ち主だったが息子の斎藤義龍に叛かれ敗死。その際、信長に美濃一国を譲る遺言状を残した。実在の人物、斎藤道三がモデル。

顕如光佐 (けんにょこうさ)

一向一揆を率いる石山本願寺の法主。僧侶ながらカリスマ性と智謀を兼ね備えた傑物で、織田信長を打倒するべく全国の門徒衆を動員。さらに、将軍・足利義昭の力を利用して武田、上杉、毛利といった諸勢力を動かし、大規模な信長包囲網を形成するなど、信長の最大の敵として立ちはだかる。実在の人物、本願寺顕如がモデル。

足利 義昭 (あしかが よしあき)

足利義輝の弟で室町幕府第15代将軍。明智光秀の推薦を受けて織田信長に自身の上洛の援助を要請。信長の力を借りて将軍となった。だが、やがて傀儡であることに不満を抱くようになり、将軍の名で各地の大名に檄を飛ばして信長包囲網を形成し、自らも反信長の兵を挙げる。信長やその家臣たちからは侮蔑の意味を込めて「お歯黒殿」と呼ばれている。 実在の人物、足利義昭がモデル。

松永 久秀 (まつなが ひさひで)

大和の大名で三好三人衆に仕えていたが、織田信長が上洛した際に織田家の家臣となった。越前撤退戦では信長の命を救うが、武田信玄の挙兵に呼応して信長に反旗を翻す。その後、織田家に帰参するが再び寝返り、最後は信長に追い詰められ城を爆破して果てた。かねてから反逆こそ戦国武将の本懐と公言しており、その姿に信長は義父である斎藤道三の面影を見ていた。 実在の人物、松永久秀がモデル。

今井 宗久 (いまい そうきゅう)

堺の豪商で、会合衆(堺を支配する自治組織)の1人。広口径で従来のものよりも威力のある三十匁の火縄銃を多数仕入れ、天下取りに近づいた者に高値で売りつけようと考えていたが、最初に求めてきた者が「うつけ」と評判の織田信長だったため当惑。彼の力量を読み誤り、足利義昭を奉じて上洛した信長が二万貫の矢銭を要求してきた時、一度はこれを拒否した。 だが、織田家の圧力に抗しきれず最後は屈服。煮え湯を飲まされたことから信長への復讐を目論む。実在の人物、今井宗久がモデル。

細川 幽斎 (ほそかわ ゆうさい)

足利義昭の側近。頭の切れる陰謀家で、主君である義昭と敵対する織田信長を討つべく、若狭の一向一揆を動かしたり、仇敵の三好三人衆と手を結んだりとさまざまな策を巡らせる。その一方で、信長の能力自体は高く評価している。信長を過小評価する義昭に自重をうながしていたが、自身の反対を押し切って反信長の兵を挙げた義昭に失望。 足利将軍家を離反し、信長に投降する。実在の人物、細川幽斎がモデル。

朝倉 義景 (あさくら よしかげ)

越前の領主。古くから織田家とは敵対関係にあり、北近江の浅井氏と同盟を結んで織田軍を挟撃し、織田信長を窮地に陥らせる。その後も浅井家とともに織田家に対抗し続けるが、信長の急襲を受け一乗谷に撤退。羽柴秀吉(木下藤吉郎)の調略によって家臣らに裏切られ自刃した。実在の人物、朝倉義景がモデル。

浅井 久政 (あざい ひさまさ)

浅井長政の父。義を重んじる昔気質の武将で、織田信長の力量は大いに認めていたが、織田と朝倉が対立した際に信長が浅井家に朝倉攻めについて知らせなかったことを問題視。長政や市の反対を押し切って朝倉家に援軍を送り、信長を窮地に陥らせた。実在の人物、浅井久政がモデル。

武田 信玄 (たけだ しんげん)

甲斐の領主。越後の上杉謙信とにらみ合う状態にあったが、織田信長の比叡山延暦寺(叡山)焼き討ちを知り、足利義昭の求めに応じて織田との決戦を決意。自ら3万の大軍を率いて遠江に攻め込み、三方ヶ原にて徳川家康の軍勢を完膚なきまでに叩き潰すが、直後に病に倒れる。実在の人物、武田信玄がモデル。

武田 勝頼 (たけだ かつより)

武田信玄の息子で、信玄亡き後、甲斐の領主に就任。織田信長を打倒すべく本願寺と連携して織田の領土を攻める。猛将だが短慮なところがあり、信長をみくびったため長篠で大敗。勢力を回復することができず、織田徳川連合軍に追い詰められて天目山にて自刃した。実在の人物、武田勝頼がモデル。

山県 昌景 (やまがた まさかげ)

武田信玄のもとで数々の武功を挙げてきた老将。血気に逸る武田勝頼に危惧を抱き、他の宿将たちとともに長篠からの撤退を主張していた。長篠の合戦では織田徳川連合軍が構築した馬防柵のわずかな隙間を目がけて突撃を敢行。これにより織田軍を一時的に危機に陥らせたものの、後続の部隊が続かなかったため絶望のうちに憤死した。実在の人物、山県昌景がモデル。

上杉 謙信 (うえすぎ けんしん)

越後の領主。「越後の竜」と称される猛将で、宿敵・武田信玄亡き後、北陸に侵攻して来た織田信長と対峙した。織田家の鉄砲隊への対処法を熟知しており、信長をして「今川義元を葬って以来の最強の敵」と言わしめる。実在の人物、上杉謙信がモデル。

斎藤 龍興 (さいとう たつおき)

美濃の領主で斎藤道三の孫。尾張と三河の同盟は美濃にとって脅威になると考え、松平元康(徳川家康)に美濃との同盟を持ちかけるが失敗。さらに、墨俣に城を築かれ宿将の稲葉一鉄らを調略されるなど、ことごとく信長に先手を取られ美濃を奪われることになる。実在の人物、斎藤龍興がモデル。

足利 義輝 (あしかが よしてる)

足利義昭の兄で室町幕府第13代将軍。自身の後ろ楯にと願っていた長尾景虎(上杉謙信)を将軍への最初の謁見者にしたいと考え、将軍拝謁のため京に向かう織田信長一行を配下の者に命じて討とうとするが失敗。これにより、不本意ながら信長に最初の謁見者の栄誉を与えることとなった。実在の人物、足利義輝がモデル。

三好三人衆 (みよしさんにんしゅう)

足利将軍家を傀儡として室町幕府を牛耳っていた三好長逸、三好政康、石成友通の総称。足利義昭を奉じて上洛した織田信長に京を追われるが、信長が岐阜に戻った隙を突いて挙兵。足利義昭の宿舎である本國寺を襲うが、信長の到着までに義昭を討つことができず撤退する。実在の人物である三好長逸、三好政康、石成友通がモデル。

千 与四郎 (せんのよしろう)

堺の豪商で、のちの千利休。織田信長に三十匁という広口径の火縄銃を所望された際、現在もっとも三十匁銃を所有している人物が同じ堺商人の今井宗久であると教示。さらに、堺の商人に近づくには茶会での顔合わせが必要であることを信長に教えた。実在の人物、千利休がモデル。

フロイス

キリスト教布教のため日本にやって来た、イエズス会のポルトガル人宣教師。織田信長の庇護を受けており、岐阜城下にセミナリオ(伝道師や司祭を養成するための神学校)を建設。その見返りとして信長の天下布武に協力している。イエスの教えを守り広めることを第一義としており、信仰のためなら織田家を敵に回すことも厭わないと信長に語る。 実在の人物、ルイス・フロイスがモデル。

狩野 永徳 (かのう えいとく)

狩野派の絵師。当代一流の絵師と名高い狩野常山(のちの狩野山楽)が、安土城天守の襖絵の下に織田軍の比叡山延暦寺(叡山)焼き討ちの絵を密かに描いていたことが発覚。織田信長より天守の絵の描き直しを命じられるが、常山の絵を超える自信を持つことができず苦悩する。実在の人物、狩野永徳がモデル。

ジョバンニ

近江の六角氏の居城である観音寺城をたった1人で守っていたイタリア人の武将。フィリピン沖で難破していたところを通りがかったポルトガル船に助けられ日本へとやって来た。兵器、科学、天文、建築、土木、築城などあらゆる分野に通じている。六角勢が逃げた後も観音寺城に残留し、単身で織田勢を散々に苦しめたことから織田信長に関心を持たれ、従者として織田家に仕えることになる。

若狭坊 厳空 (わかさぼう げんくう)

織田信長が焼き討ちした比叡山延暦寺(叡山)の僧兵。堕落しきった叡山の現状を苦々しく思っており、僧兵たちに追われていた明智光秀を助けた。ただ、叡山への忠誠心は人一倍で織田軍を相手に鬼神のごとき戦いぶりを見せ、叡山の象徴である「不滅の法燈」を守って壮絶な最期を遂げる。

三上 陣兵衛 (みかみ じんべえ)

鉄砲集団「雑賀五組社家郷」の頭領。肉体を極限まで鍛え上げており、通常の種子島よりもはるかに反動の大きい三十匁銃を自在に操る鉄砲撃ちの名人。かつては織田家に仕えており、長篠の戦いにおいて山県昌景を仕留めたが、本願寺に家族を人質に取られたため郷里に戻り一向宗の軍勢に参加。大坂の四天王寺にて不本意ながら織田信長と戦うことになる。

津田 光隆 (つだ みつたか)

織田信長の遊び相手として幼少より仕えてきた織田家の水軍の将。大坂湾の木津川口にて毛利家の水軍と戦うが、現状の織田家の水軍では毛利艦隊に太刀打ちできないことを予見していた。水上における毛利家の戦法を信長に見せるため、あえて捨て石となる。

長谷川 橋介 (はせがわ きょうすけ)

織田信長の小姓。父親の長谷川丹後が姉川の合戦で戦死した後、信長の側に仕えるようになった。実は父親の代から織田家に潜伏していた伊賀の草の者(忍者)で、織田家が伊賀に攻め込んだことから統領の命を受けて信長の命を狙う。

セバスチャン

安土のセミナリオ(伝道師や司祭を養成するための神学校)で学ぶ若いポルトガル人修道士。織田信長の招待を受けてフロイスとともに安土城を訪れるが、城の天守閣を見て信長が全能の神デウスに取って代わろうとする人物ではないかと恐怖。密かに安土を脱出してポルトガルに帰国しようとする。

クレジット

書誌情報

信長 7巻 KADOKAWA

第1巻

(2003-07-23発行、 978-4840104937)

第2巻

(2003-07-23発行、 978-4840104944)

第3巻

(2003-08-23発行、 978-4840104951)

第4巻

(2003-09-22発行、 978-4840104982)

第5巻

(2003-10-23発行、 978-4840109048)

第6巻

(2003-11-22発行、 978-4840109154)

第7巻

(2003-12-22発行、 978-4840109208)

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