概要・あらすじ
14世紀後半のスペイン。「ファルコ(鷹)」といわれたナバーラ随一の剣客がいた。ファルコは闘いに明け暮れた日々を悔い改め、剣を捨て修道士になる。修道士は頭頂部を剃髪するトンスラにしなければならないのだが、彼にはトンスラに出来ない秘密があった。ドイツへ赴いたファルコは、リリエンタール修道院に身を寄せるが、そこで様々な事件や陰謀に遭遇する。
登場人物・キャラクター
ファルコ
枯草色の髪と薄青色の目、豊かな体躯を持つ。スペインのナバーラで名高い剣客の騎士であったが、数多くの血を流したことを悔い、修道士となった。頭部にキスマークのような痣があるため、他の修道士を惑わせる恐れがあるという理由で、修道士でありながらトンスラにすることを禁じられる。
オド
施療院で働く修道士。元騎士。俗世では法と秩序を守る役人だった。ファルコと同じく豊かな体躯を持ち、剣の腕前もなかなかのもの自治部隊のフリートは役人時代の後輩。
アルヌルフ
写字生。美意識が高く優秀だが、変人。俗世名はアルヌルフ・ノイマン。
マティアス
リリエンタール修道院からケルンの聖ニコラウス学院へ修学している修道士。オドに本の虫と言われるほど勤勉。だが、純粋に学んでいるわけではなく、リリエンタール修道院を乗っ取ることが目的。
院長 (いんちょう)
異常な程の潔癖症で、ファルコが痣のせいとはいえトンスラに出来ず、修道院内の統一が取れていないことを嘆いている。マティアスいわく、「小鳥の心臓」。
副院長 (ふくいんちょう)
マティアスいわく、「功利的」。作中の他の修道士とは違って俗的で何事にも臨機応変に対応する。
ドン・ペドロ (どんぺどろ)
カスティリアの国王。名だたる剣士であったという経歴を持つファルコに興味を持ち、剣を交えるためファルコが身を寄せている寺院へ赴く。誰もが忌み嫌うファルコの頭頂部の痣を肯定的に評価した。
ヤコボ
20年前に聖女サウラの啓示を受け、ケルン大聖堂に納骨されていた彼女の指の骨を盗み出した。精神が少し遠いところに行ってしまっている様子だが、折に触れ天啓のようなものを受け、事件解決の糸口になることを口走る。
ヨハン
13歳の少年。財産を巡り父親が継母の兄弟に殺され、自分も殺されそうになるが、リリエンタール修道院の修道士達に助けられた。その後修道士になる。
マルティナ
15年前聖アンナ尼僧院の院長に森で拾われ、そのまま尼僧院で育つ。正体は15年前盗賊に襲われて行方不明になっていたベルトルド・ブラントの義妹アグネスであった。
ベルトルド・ブラント (べるとるどぶらんと)
ケルンの商人。15年前、盗賊に襲われ父と養母が死亡、2歳の義妹アグネスが行方不明になる。リリエンタール修道院でアルヌルフがデザインしたタペストリーを目にし、養母の生家フォン・ベルグ家の意匠にそっくりなことに驚く。それがきっかけでマルティナが義妹アグネスであることが判明する。
フィリス
ケルンの市営娼館アプフェルに所属する娼婦。ファルコに惚れてリリエンタール修道院まで巡礼する。ミサの最中に聖女サウラに感応し、知らないはずの特殊な祈禱文を暗誦する奇跡を起こす。後に娼婦をやめ、尼になり聖アンナ尼僧院に身を寄せる。
オットー・フォン・ウルリヒ (おっとーふぉんうるりひ)
マティアスと共謀してリリエンタール修道院を乗っ取ろうとした。ファルコを襲撃するが、ファルコが剣で陽光を反射した光に目が眩み転落死した。
場所
リリエンタール修道院 (りりえんたーるしゅうどういん)
『修道士ファルコ』に登場する施設。シトー派の修道院で、ライン川の西にある巨大な僧院である。聖サウラの遺骨があり、奇跡を起こし続けているため、金銭的に余裕がある。
聖アンナ尼僧院 (せいあんなにそういん)
『修道士ファルコ』に登場する施設。年老いた修道女が10人程と10代のマルティナが身を寄せている。ベネディクト会の設立だが、会からはすっかり忘れられてしまっており、貧しい僧院である。