概要・あらすじ
大学の新入生、包見綿子は、慣れない学生生活に戸惑っていた。授業に遅れそうになり、必死に教室を探すが見つからない。不安がピークに達したとき、綿子は毛布に変わっていた。彼女は、不安になると毛布に変身してしまう特殊体質の持ち主なのだ。強風に煽(あお)られ、宙に舞う綿子はそのまま遠くに飛ばされてしまう。いつの間にか眠ってしまった綿子は、目覚めると偽物協会という場所にいた。毛布姿のまま、会長の五島絵空に抱きかかえられていたのだ。偽物協会とは、既存の生き物の枠からはみ出してしまった「偽物」が集う場所。そこでは、石の偽物、いわとり、サボテンの偽物、サボまっする君、イヤフォンの偽物、嫌フォンなど、へんてこな生き物たちが共存しているのだ。会長は、毛布になった綿子を気に入り、「人間の偽物」として協会に加わってほしいという。それを聞いた綿子は「どうして自分は本物(ふつう)の人間になれないのか」と嘆き悲しむ。すると会長は、綿子に別の提案をする。それは毛布として会長に雇われること。「君にしかできないちゃんとした仕事だ」「ちゃんとした仕事だから、君はもうちゃんとした人間」などとまくし立てる会長に圧倒される綿子。こうして偽物協会にやってきた綿子は、会長のもとで働くことになった。
登場人物・キャラクター
包見 綿子 (つつみ わたこ)
大学1年生の女の子。ショートカットとカチューシャが特徴で、不安が頂点に達すると毛布に変身してしまう体質の持ち主。6歳の頃、不安になると片腕が毛布に変わってしまう珍事を体験。以来、不安になることそのものを避け続ける。その結果、ちゃんとできることが一つもないのでは、という新たな不安に気づく。「人並みにできない不安」と「不安になると変身する不安」のジレンマから、笑って自分をごまかすのが癖になる。偽物協会に受け入れられ、五島絵空会長のもとで働くことになる。
五島 絵空 (ごとう えそら)
偽物協会会長の若い男性。スーツっぽい(けどスーツではない)服を着て、革靴みたいな(プラスチックの)靴を履いている。人の話をあまり聞かない変わり者で、既存の生き物の枠からはみ出してしまった「偽物」たちを認め、世界をちょっぴり楽しくすることを目的としている。子供の頃、ビニール袋の聖地か集合場所のようなところを発見。いろいろなビニールの切れ端が、イワシの群れのように渦を巻いて飛んでいく姿を見て、その行き先に疑問を抱く。それを調べているうちに「偽物」という存在に行き着き、偽物協会の会長になった。
いわとり
石の偽物。川の石だが、鳥になりたがっている。お茶を飲むときは、全身をお茶に沈める。
サボまっする君 (さぼまっするくん)
筋肉モリモリのサボテンの偽物。花屋にいた頃、特別な存在になるため、毎日トレーニングしてムキムキになった。人に抱きしめられたいという願望を持っており、包見綿子にお願いして脱毛サロンに連れていってもらう。愛称は「サボま君」。
嫌フォン (いやふぉん)
どんな耳も拒否し続けてきた、イヤフォンの偽物。蛇のように身体をうねらせて動く。少々口は悪いが根は優しい。
ふにゃコップ
コップの偽物。怠惰な性格で、働くことをものすごく嫌がる。高いところから落下しても「割れるのがめんどくさい」という理由から、割れることはない。
書誌情報
偽物協会 3巻 小学館〈サンデーうぇぶりコミックス〉
第1巻
(2021-12-10発行、 978-4098508143)
第2巻
(2022-06-10発行、 978-4098511785)
第3巻
(2023-01-12発行、 978-4098515523)