ヤクザの若頭とヨワラー女子高生の型破りラブコメディ
本作は、ヤクザの若頭、剛と、組長の一人娘である女子高校生の理世が織りなす、一風変わったラブコメディ。ヒロインの理世は、人が苦しむ姿に快感を覚えるという特殊な性癖「ヨワラー」を持ち、自身の性癖について赤裸々に語る軽妙な語り口と、常識にとらわれない自由奔放な言動が大きな特徴となっている。任侠の本格的な世界観を背景に、型破りな個性を持つ理世の予測不能な暴走が物語の魅力を一層引き立てている。また、護衛役の切谷と理世が繰り広げる、一筋縄ではいかない恋愛模様も展開される。
特殊な性的嗜好の「ヨワラー」
ヒロインの理世は、自ら「ヨワラー」と名乗る特殊な性的嗜好を持つ美少女である。彼女が掲げる「ヨワラー」とは、強い人間が怪我などで一時的に弱り、苦しんでいる姿に興奮を覚える感性を指す。これは、相手を傷つけて楽しむサディズムや猟奇趣味(リョナ)とは異なり、あくまで対象がいずれ回復するという信頼が前提となっている。そのため、相手が命を落とすような事態は「ヨワラー」の美学から外れる。だからこそ、「死なねぇ鉄砲玉」と呼ばれるほどタフな剛は、理世にとってまさに理想の存在といえる。仕事柄、頻繁に傷を負いながらも強がって痛みを隠そうとする剛の姿が、理世の性的嗜好を完璧に満たしている。
任侠と乙女心が融合する変態恋愛譚
現役の女子高校生の理世は、巨大暴力団の組長の一人娘という立場から一般社会に馴染めず、引きこもりの生活を送っていた。彼女は「弱っている姿に惹かれる」という独特の性癖を持っていたが、教育係として現れた若頭の剛と出会うことで、その感情は次第に恋心へと変わっていく。本作の大きな魅力は、恋に落ちた理世の暴走ぶりにあり、剛が傷つくたびに彼女の性癖が刺激され、興奮を抑えきれなくなる様子が、「自慰」といった言葉も交えつつ赤裸々かつコミカルに描かれている。しかし、物語は単なる変態コメディにとどまらず、性的な興奮とは別に純粋な恋心に戸惑い、一喜一憂する乙女としての一面も表現されている。この「どうしようもない変態少女」と「恋する乙女」という強烈なギャップが、任侠の世界観と融合することで、本作ならではの唯一無二の雰囲気を生み出している。
登場人物・キャラクター
切谷 剛 (きりたに ごう)
政財界にも影響力を持つ巨大暴力団「鷲巣組」の若頭を務める男性。組内随一の武闘派で、「死なねぇ鉄砲玉」の異名を持つ。直系の二次団体「黒鳥会」の会長代行および若頭も兼任する実力者で、渡世名は「切谷剛」。ある日、組長から引きこもりの一人娘、理世の世話役を任され、怪我を押して彼女のもとへ向かうが、偶然にも自慰行為を覗いてしまう。さらに、強い人間が弱る姿を好む「ヨワラー」である理世の性癖に、怪我をしていた自身が完全にハマり、一方的に気に入られてしまう。理世の引きこもり解消後も護衛としてつねに付き添うことになり、彼女からの直球な愛情表現にどう応えるべきか、日々頭を悩ませている。行動を共にするうちに、自らも彼女の特殊な価値観に影響され、「ヨワラー」への理解を深めていくことになる。ちなみに、理世の「ヨワラー」オフ会に護衛として参加した際は、「going」というハンドルネームを名乗った。
鷲巣 理世 (わしず りよ)
巨大暴力団「鷲巣組」の組長の一人娘であり、現役の女子高校生。年齢は18歳。組員からは「お嬢」と呼ばれている。人が苦しみ弱っている姿を愛してやまない「ヨワラー」を自称する筋金入りの変態美少女。ただし、故意に人を痛めつけたり、人道に反する行為は猟奇主義(リョナ)の領域であるとして、明確に嫌悪している。組長の娘という立場から学校になかなか馴染めず、引きこもりがちの生活を送っている。実は出不精でオタク気質だが、外面をよく見せようと無理をして空回りしてしまう不器用な一面もある。自身の引きこもりの世話役を任された剛の弱った姿に理想を見出し、彼を気に入る。その後、さらわれそうになった自分を守ってくれた剛に好意を抱き、護衛として四六時中、彼と共に過ごすようになる。ネット上では「ワンプ侍」と名乗り、8歳の頃から「ヨワラー」の魅力を啓蒙し、現在は「包帯同盟」というコミュニティを主催している。
書誌情報
傷口と包帯 3巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2024-11-15発行、978-4065376928)
第2巻
(2025-04-16発行、978-4065388273)
第3巻
(2025-09-17発行、978-4065407851)







