ギリシャ神話×現代ヤクザ抗争劇
本作の原典とされるのは、ギリシャ神話を題材としたホメロスの長編叙事詩『イリアス』。アカイア(ギリシア連合軍)とトロイア王国(イリオス)の間で行われた「トロイア戦争」を、現代日本のヤクザ抗争として描いている点が、本作最大の特徴である。トロイアの王子・パリスによる、メネラーオスの妃ヘレネーの誘拐が「トロイア戦争」の原因となったように、主人公である九州伊莉雄会の亀山パリスが、朱維屋会傘下の奴狙組組長の妻、エレネを連れ去ったことが、朱維屋会と伊莉雄会の抗争に発展する。また、アカイアの総大将・アガメムノンを、朱維屋会会長・崇目ムネオ、副大将・メネラーオスを、奴狙オサムともじるなど、登場人物の名称にもこだわりがある。
運命に抗うパリスとエレネ
本作の冒頭は、パリスが見た夢から始まり「パリスの審判」のサブタイトルがついている。『ギリシャ神話』における「パリスの審判」では、「国」「勝利」「美女」を授けるという三人の女神のうち、パリスは「美女」を選んだが、本作のパリスは、すべてを手に入れるとして選択を拒否した。こうして運命に抗ったパリスは、三人の女神に付きまとわれることになる。また、エレネは、やくざ者の父親が組の庇護を受けるため、オサムに売られた過去を持つ。運命を受け入れていたエレネだったが、パリスとの出会いで過去と決別しようとする。本作は、『イリアス』を原典としながら、パリスとエレネを主人公に、二人が運命に抗う姿を描いていく。
登場人物・キャラクター
亀山 パリス (かめやま ぱりす)
九州の任侠組織、伊莉雄会(いりおすかい)・亀松組若頭の男性。亀松組組長の息子。金髪のイケメンで敵も見惚(ほ)れる美しい目をしている。ある日、「国」「勝利」「美女」を授けるという三人の女神の夢を見る。女神の中から一人を選んで、黄金の林檎(りんご)を渡すように言われるが、パリスはこれを拒否。三つ全部を望んだため女神の怒りを買う。強欲で謀略に長(た)けた青年で、日本最大の任侠組織、朱維屋会(あかいやかい)傘下の奴狙組(めねらぐみ)組長の妻、エレネを連れ去り、伊莉雄会と朱維屋会の全面戦争を引き起こす。弓矢の達人で、味覚、嗅覚、聴覚に優れる。
エレネ
日本最大の任侠組織、朱維屋会(あかいやかい)の巨大組織、奴狙組(めねらぐみ)組長、奴狙オサムの妻。ロングヘアーの若くて美しい女性。嫉妬深い奴狙に束縛されており、スマホもPCも持たされず、めったに人前に出ない。自分の境遇に嫌気が差していたところ、朱維屋会のパーティーで亀山パリスと出会い、その夜自宅にやってきたパリスについていく。
アキレス
女神と人間の間に生まれたといわれる半神。金髪とサングラスが特徴の男性で、リュラ(竪琴)を持ち歩いていることも多い。また、クサントスという人間の言葉を話す馬を駆る。日本最大の任侠組織・朱維屋会に呼び出され、エレネを連れ去った亀山パリスを追う。人の頭を軽く握りつぶし、槍投げでヘリコプターを落とすといった超人的な身体能力の持ち主。「日が沈んだ後は戦わない」という独自のルールを持っており、パリスを追い詰めながら、夜になったために帰宅した。
粨 トオル (へくと とおる)
九州の任侠組織、伊莉雄会・粨組の組長。世話になった亀松組組長の顔を立てて会長職を譲っているが、実際は伊莉雄会のトップ。七三分け、黒メガネが特徴で、役人のような外見だが人間離れした腕力の持ち主。亀山パリスを弟のようにかわいがっている。朱維屋会との抗争を避けるために上京するが、パリスの策にはまって朱維屋会と戦うことになる。
書誌情報
イリオス 12巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第1巻
(2022-08-19発行、978-4088923970)
第2巻
(2022-11-17発行、978-4088924885)
第3巻
(2023-02-17発行、978-4088925950)
第4巻
(2023-05-19発行、978-4088926841)
第5巻
(2023-09-19発行、978-4088928234)
第6巻
(2024-01-18発行、978-4088930367)
第7巻
(2024-04-18発行、978-4088932095)
第8巻
(2024-07-18発行、978-4088933054)
第9巻
(2024-11-19発行、978-4088934396)
第10巻
(2025-02-18発行、978-4088935560)
第11巻
(2025-06-18発行、978-4088936932)
第12巻
(2025-10-17発行、978-4088938707)







