日浦匡也の過去を描くスピンオフ
本作は『土竜の唄』のスピンオフ外伝で、原作で主人公を務めた菊川玲二は登場せず、原作より10年以上前の時系列で描かれている。阿湖義組若頭・日浦匡也が主人公を務めており、原作では玲二の兄弟分で屈指の強キャラだった匡也が、18歳の若さで「クレイジーパピヨン」の異名を極道界に轟かせるまでの生きざまが、バイオレンスとコメディを交えながら展開される。原作は、元警察官が潜入捜査官として巨大犯罪組織に潜入する長編任侠バトルアクションで、本作同様に独特の世界観が力強くリアルなタッチで描かれる。
バブルを駆け抜けた若き日の匡也が主人公
本作はバブル真っ盛りの時代、匡也がまだ18歳だった頃までさかのぼり、外伝ストーリーが展開される。当時はケンカや女遊びに明け暮れ、ヤクザには絶対にならないと豪語していた匡也は、女性問題で恨みを買ってしまったことから、関東の巨大武闘派暴力団「数寄矢会」の下部組織・阿湖義組と対立する。匡也は拉致されて身動き取れない状態にされるが、組長の阿湖正義にその度胸と胆力を気に入られ、阿湖義組の組員として極道の世界で生きることを決意する。独自の任侠精神と孤高を重んじる匡也は「クレイジーパピヨン」と呼ばれるようになり、まるで蝶のように極道の世界を華麗に舞いながら激動の青春時代を送り、極道界で名を轟かせていく。
悪徳刑事や敵対する暴力団との戦い
阿湖義組の組員になることが決まった匡也は、組長と親子盃を交わす前からさまざまな敵と対峙する。そんな中、薬物の被害に遭った神山麗子が入院し、中毒症状に苦しんでいた。薬物乱用者は麗子だけにとどまらず、売人と組んで女性を薬漬けにしているのが悪徳刑事の兜真矢だと判明する。卑劣な罠にはまって窮地に陥るものの真矢を倒した匡也は、阿湖正義の助けを借りながら復活を果たす。これを機に結束をさらに強めた匡也と正義は、巨大暴力団組織「鳩鴉組」と敵対関係となる。その後、暴力団対策法の施行によって暴力団は公然と活動がしづらくなり、極道界も変化を余儀なくされながらも、数々の伝説を作り上げていく。本作のオリジナルキャラクターとともに、数寄矢会会長・轟周宝をはじめとする原作の重要キャラクターたちの過去も明らかになる。
登場人物・キャラクター
日浦 匡也 (ひうら まさや)
天涯孤独を愛する不良青年。黒の短髪をオールバックにしている。年齢は18歳。自由奔放な性格で、絶対的な自信と色香をまとった色男。蝶や蝶柄を好み、蝶があしらわれた派手なデザインの服や靴を身につけている。安アパートの一室で一人暮らしをしている。行く先々で数多の女性を魅了しており、「誰の男にもならないが一度でも抱けば俺の女」と豪語する。かつては極道を嫌悪していたが、暴力団「数寄矢会」の下部組織・阿湖義組に捕まり、組長の阿湖正義に気に入られたことで極道の世界に身を投じることになる。大胆不敵な行動とケタ外れのケンカの強さを発揮し、のちに大総会で数々の功績を評価され、阿湖義組若頭に就任する。どんな逆境にも屈しない精神力と強運の持ち主。義理人情に厚く、極道ながら薬物を嫌っている。
阿湖 正義 (あこ まさよし)
暴力団「数寄矢会」の下部組織・阿湖義組の組長を務める中年男性。かなりの食通で、パフェなどのスイーツも好む。弓道30段で、釣りやダンスをはじめとする多くの趣味を持つ。ふだんは豪胆でお調子者に見えるが、場の空気が読めない者や利用価値がないと判断した者は容赦なく切り捨てたり、理不尽な罰を与えたりする冷徹さを持つ。部下を返り討ちにした日浦匡也を捕らえ、拷問のために放った矢に動じなかった匡也に興味を持つようになる。匡也の親になると宣言し、彼を極道の世界に引き入れた。匡也のことは極道の常識を破る「ヤクザドリーム」と見込んでおり、期待と信頼を寄せている。薬物事件に巻き込まれて薬物中毒になった匡也を別荘でかくまって熱心に看病し、復活した彼と絆を深めながら、さまざまな強敵と対峙する。
関連
土竜の唄 (もぐらのうた)
長期連載となった高橋のぼるの代表作。問題警察官だった菊川玲二が、潜入捜査官として暴力団の構成員となり、麻薬取引の中心部に近づくため、ヤクザ社会で出世していく。2005年、小学館「週刊ヤングサンデー」に... 関連ページ:土竜の唄
書誌情報
土竜の唄外伝 狂蝶の舞~パピヨンダンス~ 9巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2014-01-30発行、 978-4091858498)
第2巻
(2014-06-30発行、 978-4091862297)
第3巻
(2014-12-26発行、 978-4091866691)
第4巻
(2015-05-29発行、 978-4091870247)
第5巻
(2015-12-28発行、 978-4091873408)
第6巻
(2016-06-30発行、 978-4091876447)
第7巻
(2016-11-30発行、 978-4091892874)
第8巻
(2017-03-30発行、 978-4091894762)
第9巻
(2017-06-30発行、 978-4091895301)