優し異世界 ~やさしいせかい~

優し異世界 ~やさしいせかい~

ファンタジーの世界を舞台にした短編集。魔王を討伐するパーティーの話や、ファンタジー世界でバスの運転手をしている女性の話、捨てられたドラゴンを育てる少女の話など、異世界に生きる人間や生き物の姿を描いたヒューマンドラマ。また『浦島太郎』『金の斧銀の斧』など、日本の昔話や世界の童話をモチーフにした作品も収録されている。

正式名称
優し異世界 ~やさしいせかい~
ふりがな
やさしいせかい やさしいせかい
作者
ジャンル
ファンタジー
関連商品
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あらすじ

今日もバス運転手は、担当路線を安全運転していた。そんな中、いつものバス停から常連のおばあちゃんが乗車して来る。交通アクセスの悪いエリアに住んでいるおばあちゃんは、いつも自分を目的地の病院まで安全に連れて行ってくれるバス運転手に感謝の気持ちを伝える。するとバス運転手は申し訳なそうに、この路線は長らく赤字になっており、来月廃線が決まっていると告げるのだった。(エピソード「ファンタジー世界の赤字路線バス」)

登場人物・キャラクター

バス運転手 (ばすうんてんしゅ)

エピソード「ファンタジー世界の赤字路線バス」に登場する。路線バスの運転手を生業にしている若い女性。常連のおばあちゃんとも身の回りの会話をするほど親しい関係を築いている。担当しているバス路線が乗客の減少によって赤字になっており、来月の廃線が決定している。そのため、持病のあるおばあちゃんが、今後どのようにして通院するのか気にかけている。

お嬢さん (おじょうさん)

エピソード「ペットショップにドラゴンを見に行く」に登場する。幼い頃からかっこいいドラゴンを飼育する夢を抱いている少女。ついに夢が叶(かな)う日が訪れ、父親とペットショップに向かう途中、「石竜(せきりゅう)」という種族で、ゴツゴツとした見た目から不人気のドラゴンが飼育放棄されている場面に遭遇する。そして、飼育が難しいとされている石竜をみごとに育て上げる。

勇者 (ゆうしゃ)

エピソード「勇者のはじめてのひと」「勇者とオオカミの旅」に登場する。魔王に支配されつつある国を守るため、果敢にも立ち上がった少年。魔王の討伐とさらわれた姫を救出するため、一人旅をしている。旅の途中で砦の竜やオオカミと出会い、行動を共にする。目的に忠実であり、真っ直ぐで誠実な性格の持ち主。そのため、出会った女性から好意を寄せられることが多いが、勇者自身はまったく気づいていない。

元勇者 (もとゆうしゃ)

エピソード「勇者と、知性ある剣」に登場する。人間たちを苦しめる魔王を討伐するため、立ち上がった少年。旅の途中で知性ある剣の存在を知り、突き刺さっていた岩から剣を引き抜いたことでパートナーになる。明るく前向きな性格で、自らが魔王討伐をあきらめた時には死が訪れるということも認識しているが、あまり気にしていない。剣術と魔法の抜群なセンスの持ち主で、戦いを通して大きく成長していく。

ごろつき

エピソード「勇者と森のごろつきたち」に登場する。森を拠点に生活している男性。森に通りかかる者を、仲間といっしょに難癖をつけて追い払っている。行動を共にする仲間の中ではリーダー的な存在。森周辺に住む者や通りかかった者には暴力的なならず者として忌み嫌われているが、実際は森に住む凶悪なモンスターと戦い、人間を守っている。

将軍 (しょうぐん)

エピソード「橋の扉を守るキレやすい将軍」「15年後の橋の扉を守るキレやすい将軍」に登場する。川にかかった橋を守っている男性。将軍を務めている。橋の入り口には大きな扉があり、そこを通るには通行証または高額な通行料が必要になる。条件を満たさない者は絶対に通してはいけないと国王から命じられており、それを厳守している。屈強な体格で、顔に大きな傷を持つ。口数が少なく高圧的に振る舞うものの、本当は優しく穏やかな性格の持ち主。

息子 (むすこ)

エピソード「勇者と鉄仮面の戦士」に登場する。魔王の支配から人間たちを救うために立ち上がった勇者の青年。旅の途中で父と再会したものの、彼が自分の親であると名乗ろうとしないため、気づかないふりをして、父を魔王討伐の旅に誘った。突然自分たちの前からいなくなった父親を恨むどころか、再び親子としての時間を取り戻したいと願っている。

鬼の子 (おにのこ)

エピソード「鬼の子と人の子」に登場する。角の生えた少女。モンスターの括(くく)りでは「鬼」に属している。同じ年頃の人間の子供に遊ぼうと声をかけられ、心を通じ合わせていく。頭に角が2本ある以外は人間と変わらない姿をしている。ただし寿命は人間よりも長く、血の色は青い。本来は奥手でシャイな性格ながら、人間の子供たちのおかげで明るい性格になった。

(おに)

エピソード「鬼に金棒を捧げる」に登場する。人間たちの村で暮らしている鬼。性別は男性。心優しく穏やかな性格で、村の雑用も積極的に引き受けており、特に子供たちから人気がある。人間よりも力が強く、身体能力に長(た)けている。その一方で賊から村が襲われそうになった際、村人たちを守る盾のような存在になる。村人たちは有事の際には自分を盾にし、鬼たちの命を守ろうと考えていることに気づいている。そのために村人はふだん優しく接してくれているのだと悟っており、役割を全うするために懸命に戦っている。宝物は村人たちからもらった金棒。

うらしま

エピソード「亀を助けられなかった浦島太郎」に登場する。漁師を生業にしている青年。ある日、砂浜で地域の子供たちから暴行を受けている亀を目撃するものの、ケンカが弱く腕力に自信がないこともあり、見て見ぬふりをしてしまう。そんな自分が情けなくなり、亀に謝罪したことで、以降親しい間柄になる。亀と話をしたり、漁業を手伝ってもらっている。

湖の女神 (みずうみのめがみ)

エピソード「金の斧と銀の斧」に登場する。森の中にある湖を守る美しい女神。湖に落とし物をした人間に、本来の落とし物とは別の魅力的なものを出し、二択をせまってその人間性を見極めることを仕事としている。木こりの少年が湖に斧を落としたことで、いつものように少年の人間性を見極めようとした際に、湖の女神自身にケガがないか心配されてしまう。これまでにない初めての経験に、別れたあとも木こりの少年のことが頭から離れなくなる。

魔術師 (まじゅつし)

エピソード「ノーコン魔術師と魔法が効かない戦士」に登場する。戦士と共に魔王討伐の旅をしている魔術師の女性。絶大な魔力を持っているものの、相手に対しての魔力のコントロールの悪さから、どこのパーティーにも所属できずにいる。そんな中、魔法攻撃が効きにくい特殊体質の戦士から声をかけられ、仲間になる。物静かで素直な性格に見えるが、計算高い一面を持つ。

ヘドロ

エピソード「地球を汚した人類を滅ぼすべく生まれた化物のはなし」に登場する。高度経済成長期に誕生したモンスター。性別は男性。本体部分は環境破壊によって生まれた海のヘドロで、人間に対しての怒りと憎しみによって意志を持つようになった。2020年、ついに地球を滅ぼそうと行動を起こすが、想像していたよりも環境破壊が進んでおらず、さらに親切な少女と出会ったことで、自分は一体何をすればよいのかと戸惑っている。

エース

エピソード「たたかうことを奪われた戦士のはなし」に登場する。「闘獣」という種類のモンスター。性別はオスで、年齢は5歳。闘獣は専用スタジアム内でほかの闘獣と激戦を繰り広げ、勝利することで飼い主である人間にファイトマネーが支払われる仕組みになっていた。しかし、闘獣を保護する目的でスタジアムは廃止され、元飼い主によって動物園で余生を送ることになる。なんの刺激もなく、ただ静かに老いていくだけの生活に恐怖を感じている。

少女 (しょうじょ)

エピソード「ドラゴンを飼うということ」「ドラゴンとお別れするということ」に登場する。祖母からの形見として、ドラゴンの飼育を任されている少女。ドラゴンが大型のため、毎日の世話が大変で自由な時間が取れないことを嘆いている。今は苦労しているが、ドラゴンが死んだら鱗(うろこ)が高額で売れると周囲に吹聴していたところ、本当にドラゴンがこの世を去ってしまう。

おばあちゃん

エピソード「ファンタジー世界の赤字路線バス」「ペットショップにドラゴンを見に行く」に登場する。高齢の女性。夫と二人暮らしで、交通アクセスの悪いエリアに住んでおり、路線バスが主な移動手段になっている。そのため、バス運転手とも親しくしており、顔を合わせると身の上話をするほど仲がいい。利用している路線バスが来月廃線になると聞き、病院にどう通おうかと不安に思っている。

砦の竜 (とりでのりゅう)

エピソード「勇者のはじめてのひと」に登場する。魔王が暮らす城の近くに住む若い女性。2週間前に嵐を避けるために砦の竜が住む家にやって来た勇者を招き入れ、天候が回復するまで共に暮らすことにする。本来の姿はドラゴンで、魔王の手下でもある。勇者を倒さなくてはいけない立場ではあるものの、自分をドラゴンだと知らない勇者といっしょに生活していくうちに、愛情を抱くようになる。

オオカミ

エピソード「勇者とオオカミの旅」に登場する。勇者が暮らす国の姫。周囲からは魔王にさらわれて幽閉中であると認識されている。実際には魔王によって呪いをかけられており、愛する人の前ではオオカミの姿になってしまう。人間に戻っているあいだにメッセージを残すことができず、勇者にオオカミ自身が姫であることを知らせる術もすべて封じられている。勇者を愛しているため、オオカミの姿のまま行動を共にしている。

知性ある剣 (ちせいあるけん)

エピソード「勇者と、知性ある剣」に登場する。強大な魔力を持った伝説の剣。性別は男性。岩に突き刺さっており、真の勇者にしか抜くことができない存在。しかし、元勇者によって引き抜かれ、冒険に同行することになる。剣ではあるものの言葉を話すことができ、自由に移動することはできないが、高い知性を持つ。持ち主の魔力を大幅にアップさせるが、それと引き換えに魔王討伐をあきらめた時には、持ち主を絶命させる呪いを秘めている。

(ちち)

エピソード「勇者と鉄仮面の戦士」に登場する。流浪の冒険者の男性。いつも鉄の仮面をかぶっている。その正体は現在は勇者となって魔王討伐の旅をしている息子の父親で、自らも昔は勇者だった。しかし、周囲からの重圧に耐えられずに家族を残し、一人逃げ出した過去を持つ。本心は息子に父親であると申し出たいものの、いまさらその資格はないと考えている。息子から魔王討伐の旅に誘われ、共に戦うこととなる。

(かめ)

エピソード「亀を助けられなかった浦島太郎」に登場する。海で暮らしている亀。性別はオス。砂浜を歩いていたところ、地域に住んでいる子供たちから、一方的に暴行を受けていた。その光景を見ていながら、助けることができなかったうらしまから謝罪を受けたことで、彼と親しくなる。うらしまと話をしたり、彼の漁業を手伝ったりするのを日課としている。見た目は海亀だが、人間の言葉を理解して話すこともできる。

木こりの少年 (きこりのしょうねん)

エピソード「金の斧と銀の斧」に登場する。森の中にある木を切り倒す仕事を生業にしている少年。ある日、湖に自らの斧を落としてしまい、その際に湖の女神と出会う。斧を落としたことで湖の女神にケガをさせてしまったのではないかと心配したことで、彼女から興味を抱かれるようになる。優しく穏やかな性格ながら、仕事には人一倍厳しいタイプ。

戦士 (せんし)

エピソード「ノーコン魔術師と魔法が効かない戦士」に登場する。魔術師と共に魔王討伐の旅をしている戦士の男性。通常の人間やモンスターよりも魔法攻撃が効きにくいという特殊体質を持つ。絶大な魔力を持っているものの、相手に対しての魔力のコントロールの悪さからパーティーに所属できなかった魔術師をスカウトした。その際に魔術師に一目ぼれするが、本人には告げていない。

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