兄弟ゾンビ

兄弟ゾンビ

舞台はゾンビが蔓延(まんえん)するようになった日本列島。ゾンビに嚙まれてしまった二人の兄弟が、命よりも大切な「童貞卒業」を果たすため、ノーフューチャーな旅へ出るエロティックで暴力的な青春ストーリー。「ヤンマガWeb」で2021年8月から2022年4月にかけて配信の作品。

正式名称
兄弟ゾンビ
ふりがな
きょうだいぞんび
作者
ジャンル
サバイバル
レーベル
ヤンマガKCスペシャル(講談社)
巻数
既刊2巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

人を食らう凶悪なゾンビが蔓延した日本列島。岡山県に住んでいた青年の土屋一郎土屋次郎の兄弟は、ゾンビとなった母親に襲撃され、遠からずゾンビ化する未満ゾンビとなってしまう。埋葬のため母親の死体をスーツケースに入れて街中へ出た二人は、そこでゾンビ対策センターの所員、菊伊たちに見つかり、執拗(しつよう)に追跡される身となってしまう。そんな中、一郎の彼女、本庄マナミの家にかくまってもらおうとするも、マナミが裏切って通報したことによって計画は破綻。そして山中に隠れ潜み、母親の亡骸を葬った二人は、完全にゾンビ化するまでの10日間に兄弟そろって童貞を卒業することを決意。まずは次郎が思いを寄せている軽音楽部の先輩、荒川ユリノに告白するも失敗に終わり、いよいよ地元に未練がなくなった二人は、童貞から解放してくれる女神を求めて東京を目指す旅へと出発する。その道中、自動車に潜り込んできた未満ゾンビの少女、藤本楓が、自らをいじめている不良たちへの復讐(ふくしゅう)を考えていることを知った二人は、成功時のセックスを条件に彼女に協力することを約束。一郎と次郎は不良たちのたまり場である倉庫を奇襲するが、そこには完全武装した不良の群れが待ち伏せていた。すべては楓をエサにして、リンチする獲物を呼び寄せるという、不良少女の弘中美香子が仕組んだ罠(わな)だったのだ。不良たちに捕まり、凄惨な拷問を受ける二人だったが、これまで美香子にいじめられ徹底的に利用されていた楓が、美香子を嚙み殺したことで状況は一変。窮地を脱した一郎と次郎は、感染した自らの体を武器に不良たちの群れを壊滅に追い込むのだった。完全にゾンビ化した楓を殺し、東京への旅を続行した二人は、定食屋で謎の若い女性、宮原明日香と出会う。病気により余命が1か月だという明日香は、一郎と次郎が未満ゾンビであると知りながら、二人との性行為を受け入れる。兄弟によるデート対決など、さまざなイベントを通じて交流を深め、ラブホテルに赴いた一郎たちは、明日香との行為に及ぼうする直前に現場に現れた菊伊たちに捕まり、連行の途中で明日香の正体が元ゾンビ対策センターの優秀な博士であったことを知らされる。処分場へと連れていかれた一郎と次郎は、ゾンビを兵器化するための実験体にされてしまうが、その結果、一郎はゾンビを超越した超人的な力を得て研究員を殺害。一郎はその力を使って次郎や明日香といっしょに施設から脱出しようとするが、待ち伏せていた菊伊たちから銃撃を受け、一郎たちをかばった明日香は死亡。一郎と次郎は死闘の末、菊伊たちを嚙み殺してゾンビ対策センターを壊滅させるが、その直後に一郎が完全にゾンビ化してしまう。最後に残った次郎は自らの手で兄との決着を付け、東京への旅を再開するのだった。

登場人物・キャラクター

土屋 一郎 (つちや いちろう)

岡山大学に通う男子。自他共に認める文武両道なイケメン。黒髪短髪で眼鏡をかけたスリムな体型で、クールで頼りがいがある。大学では剣道部に所属しており、主将も務めている。つねに煙草を吸っているヘビースモーカー。かわいい彼女もいるが、自惚(うぬぼ)れから無駄に余裕を見せているため、実はまだ童貞。ある日、ゾンビ化した母親に嚙まれてしまい、いずれゾンビ化する未満ゾンビとなってしまう。同じく母親に嚙まれて未満ゾンビとなった弟の土屋次郎と、ゾンビ化する前に童貞を卒業するという目標を掲げ、岡山から東京へ向かう旅に出る。腕っぷしが強く、ゾンビや不良の大群を相手にしてもいっさい臆することない度胸の持ち主。東京への旅路では、何かと頼りない次郎に悪態をつきつつも、兄として体を張って次郎を守っていた。ゾンビ対策センターの所員、菊伊たちにつかまった際、処分場に送られてゾンビを兵器化するための実験体とされ、暴走の結果超人的なパワーを得る。最終的に菊伊たちを殺害して自由の身となるも、その直後に完全にゾンビ化し、自我を失ってしまう。

土屋 次郎 (つちや じろう)

高校生の男子。金髪をツンツンに立てている。やや小太りな童顔の少年で、パンクに傾倒したアマチュアバンドマン。学校では軽音楽に所属しており、ギターを担当している。明るく社交的な性格ながら、女性に関しては奥手で引っ込み思案なところがある。女性とは付き合ったことがなく、未(いま)だ童貞。容姿頭脳共に優秀な兄の土屋一郎にコンプレックスを抱いている。ある日、ゾンビ化した母親に嚙まれてしまい、いずれゾンビ化する未満ゾンビとなってしまう。同じく母親に嚙まれて未満ゾンビとなった一郎と、ゾンビ化する前に童貞を卒業するという目標を掲げ、岡山から東京へ向かう旅に出る。旅に出る前に思いを寄せていた軽音楽部の先輩、荒川ユリノに告白するも、未満ゾンビであることを見抜かれて失恋した。腕っぷしに自信がなく、東京へ向かう旅路中で数多の危機を一郎に救ってもらっていた。

藤本 楓 (ふじもと かえで)

高校生の女子。黒髪を後ろで二つ結びにしている。おとなしい性格で、自己主張が苦手。学校で不良少女の弘中美香子が率いる不良グループからいじめを受けており、1週間前にゾンビが徘徊(はいかい)する廃墟で肝試しを強制され、未満ゾンビとなってしまう。そのため、美香子を酷(ひど)く恨んでおり、東京へ向かう途中の土屋一郎と土屋次郎の自動車に乗り込んで、美香子たちがいる倉庫へ乗り込もうとしていた。復讐が成功すればセックスをさせてあげるという条件と引き換えに、一郎と次郎の協力を取り付ける。しかし、いまだに美香子の下僕として使われている立場で、不良グループがリンチする人間を呼び込むためのエサとして使われている。言葉巧みに倉庫に呼び寄せた一郎たちを裏切り、美香子たちに引き渡した。だが、ゾンビ化を目前にして美香子への恨みが爆発し、彼女の首を嚙みちぎって殺害した。一郎たちに看取(みと)られたのち、完全にゾンビとなってしまう。

弘中 美香子 (ひろなか みかこ)

高校生の女子。ロングヘアにセクシーな雰囲気を漂わせている。冷酷非情な性格で、弱い者を徹底的にいたぶったうえで恐怖におびえる顔を見るのが大好きなサディスト。少しでも自分の気分を害した者に対しては、仲間であってもお構いなしに暴力を振るう。不良グループのリーダーを務めており、多くの生徒をいじめて楽しんでいる。藤本楓にゾンビが徘徊する廃墟での肝試しを強要し、未満ゾンビにした張本人。現在は楓をエサとして使い、自分たちがアジトにしている無人の倉庫に人間をおびき寄せ、リンチや拷問を繰り返して殺害する遊びに熱中している。楓に騙(だま)された土屋一郎と土屋次郎を捕らえて拷問している中で、楓から首を嚙みちぎられて絶命する。

宮原 明日香 (みやはら あすか)

あてもなく街をさまよう巨乳の女性。黒髪をお団子ショートボブでまとめている。とらえどころのない発言をする天然な性格をしている。死臭に敏感で、定食屋で出会った土屋一郎と土屋次郎が未満ゾンビであることを知りつつ、二人に性行為しないかと申し出る。実はゾンビ対策センターの処分場で、ゾンビの研究をしていた天才博士で研究チームの室長を務めており、ゾンビ化を防ぐ特効薬を自らの手で開発した。宮原明日香自身は恋人経由で感染し、すでに未満ゾンビとなっているが、特効薬を定期的に飲むことでゾンビ化を抑えている。未満ゾンビを実験体にしていたことに強い罪悪感を覚えており、恋人の死をきっかけにゾンビ対策センターを離れた過去を持つ。一郎や次郎とデートをしてからラブホテルに赴き、性行為に及ぼうとしていたが、菊伊たちに発見され、処分場に連行される。そのご、施設から脱出しようとした一郎と次郎をかばい、菊伊の手で射殺されてしまう。

菊伊 (きくい)

ゾンビ対策センターで所員を務める男性。鋭い目つきの冷酷無比な性格で、目的遂行のためなら違法な手段も厭(いと)わない。ゾンビ対策センターの実行部隊の隊長として街中を巡回し、ゾンビの処分および未満ゾンビの捕獲及び処分する任務に就いている。銃器をはじめとする各種武器の扱いにも精通し、長い針を使用して未満ゾンビの頭部を貫き、瞬時に葬り去る。未満ゾンビのことを人間ではない単なる死人とみなしており、少しでも抵抗したり不遜な態度を取った未満ゾンビを容赦なく殺害していた。任務中に街中で出会った土屋一郎と土屋次郎に逃げられ、東京に旅立った二人を執拗に追跡している。宮原明日香と共にいた二人を捕らえ、処分場へ連行したうえで実験体にした。

本庄 マナミ (ほんじょう まなみ)

土屋一郎の彼女で、大学生の女性。ショートボブヘアで、かわいらしい顔立ちをしている。付き合ってからまだ3か月の関係。未満ゾンビとなり、ゾンビ対策センターに追われる身となってしまった一郎と土屋次郎の二人を自分が住むマンションの部屋にかくまった。しかし、彼らを油断させたあと、ひそかにゾンビ対策センターに連絡して二人を売って賞金を受け取ろうとした。その後、一郎から強引にセックスをせまられるも、まだ人間でいたいと涙ながらに拒絶した。その様子に失望した一郎は、次郎を連れて彼女の前から姿を消す。

荒川 ユリノ (あらかわ ゆりの)

高校生の女子。茶髪で首には黒いリボンを巻いている。学校では軽音楽に所属しており、バンドではボーカルを担当している。勝ち気で口調もぶっきらぼうながら、乙女(おとめ)っぽい一面を持つ。後輩の土屋次郎から思いを寄せられ、荒川ユリノ自身も次郎のことを憎からず思っている。未満ゾンビとなってしまった次郎から告白された際は、思いを受け入れるかのようなそぶりを見せる。しかし、未満ゾンビのことをバケモノと認識しており、次郎の告白も未満ゾンビが感染を拡大させるための巧妙な罠だと思い、次郎の腹をナイフで刺したうえで、ゾンビ対策センターに連絡した。

早川 見波 (はやかわ みなみ)

ゾンビ対策センターで所員を務める女性。ボサボサの髪を長く伸ばしている。つねに気だるそうな雰囲気を漂わせており、極端な面倒くさがり屋。処分場に連行された未満ゾンビを軍用兵器に転用する研究に従事しており、未満ゾンビにさまざまな薬物を注入して経過を観察する実験を繰り返している。未満ゾンビのことを菊伊同様に、人間と思っていない。処分場に連行された土屋一郎に薬物を注入すると、力を暴走させた一郎に殺されそうになるが、間一髪で一郎が自我を取り戻したため、難を逃れていた。

集団・組織

ゾンビ対策センター (ぞんびたいさくせんたー)

日本全土に蔓延するゾンビ全般について対策・排除をする特殊な組織。通称は「ゾン対」。菊伊が率いる実行部隊が、街中などを徘徊するゾンビを始末している。完全にゾンビ化していない未満ゾンビは、捕らえたうえで処分場まで連行している。処分場では宮原明日香をはじめとする研究員が日々ゾンビの研究をしており、品質は十分でないがゾンビ化を防ぐための特効薬も開発されていた。捕獲された未満ゾンビは処分場で実験体として扱われ、軍事用の兵器として転用するための研究で、日々さまざまな薬物を注入されている。ほとんどの未満ゾンビは実験の最中に苦悶して絶命してしまう。

その他キーワード

未満ゾンビ (みまんぞんび)

ゾンビに嚙まれたり、傷つけられたことによってウイルスに感染した人間を指した言葉。未満ゾンビの見た目は人間と変わらず、意識もはっきりしているが、刃物で刺されても死なないなど体が強靭化している。また、体のどこかに徐々に「屍斑」と呼ばれる痣(あざ)が出現し、感染から10日程度が経過すると完全にゾンビ化してしまう。また、感染中は理性が薄れて本能が増幅され、当初は性に関する衝動や執着が強くなるが、時間の経過と共に食欲が増し、人間がただの肉にしか見えなくなる。感染後の土屋一郎と土屋次郎も精神をウイルスにあやつられ、童貞を捨てるために意中の女性に告白したり、女性を求めて東京へと旅立っていた。日本列島にゾンビが蔓延する初期段階で、未満ゾンビによる性交渉やレイプでゾンビが爆発的に増えた過去があり、人々からは蛇蝎(だかつ)のごとく忌み嫌われている。そのため、発見された未満ゾンビはすぐにゾンビ対策センターへ通報され、処分場へ連行されるか、その場で殺処分される。

書誌情報

兄弟ゾンビ 2巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉

第1巻

(2022-01-20発行、 978-4065264737)

第2巻

(2022-06-20発行、 978-4065278031)

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